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episode.30

Penulis: 甘寧
last update Tanggal publikasi: 2026-04-20 13:00:00

「この後、時間ある?一緒にランチなんてどうよ?」

 そう、亜美に誘われるがまま、ファミレスへとやって来た。

「ごめんね。子供がいると小洒落たカフェは入れなくて」

「ううん。私もファミレスこっちの方が気が楽だし」

 子供をあやしながら、私の事まで気にしてくれる。母親は偉大だと言うが、本当だと実感する。

「ほら、何食べる?イチゴあるよ」

 メニューを開き、まだ読み書きのできない娘に指をさして何が食べたいか問う姿は、母そのもの。小さい頃から知っている人が、お母さんしている姿は、見ていて不思議な感じがする。

 嫌な感じではなく、新鮮でほのぼのとする。

「亜美も立派なお母さんね」

「そうはいうけど、子育てってホント大変よ?言うことは聞いてくれないし、部屋は散らかってばっかり。この間も、買ったばっかりの服、汚されたんだから」

 怒ったような口調で話すが、顔は全然そんな事ない。あまりにも態度と言葉がちぐはぐだもんだから、思わずクス
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  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.32

    優弥に背中を押され、仲佐さんと話す事とになったが…… (沈黙が重い……) いざ面と向かってしまうと何を話していいのか、頭が真っ白になって言葉が出てこない。 空に浮かぶ雲を眺めて、気持ちを落ち着かせようと深呼吸を何度もするが、落ち着くどころか緊張感が増してくる。 「……ごめんね」 か細い声が重い空気を打ち破った。 「……え?」 何が?とは聞けず、空気が抜けた様な声しか出ない。 「不安にさせちゃったね……」 「!」 眉を下げて弱々しく微笑む仲佐に、紗千香は戸惑いを隠せない。その言葉の意味が分らないほど馬鹿じゃない。 「君にはしっかり話さなきゃいけないと思いつつ、何も聞いてこない君に甘えてしまっていた」 項垂れ、頭を抱えている。まるで、懺悔している様に…… 「……噂通り、香里とは男女の仲だった。お互い、いい歳だからね。結婚も視野に入れていたんだけど、ちょうど仕事が忙しくなり始めた頃でね。仕事と恋愛の両立が出来ずに別れてしまったんだ」 「……」 「香里も納得してくれた思っていた。……けど、今頃になって寄りを戻したいと言って来た」 ドキッと胸が跳ねる。答えを聞きたいけど、聞くのが怖い。 「大丈夫。聞いて?」 私の様子に気が付いて、手を握りしめながら真っ直ぐに目を見てくる。いつものように穏やかで優しい瞳。たったそれだけの事なのに、安心感を得られた。 「香里の事は愛していたし、別れたばかりの時は後悔もした。いつまでも考えていても仕方ないと、忘れるように仕事に打ち込んでいた。しばらくすれば、香里の事も忘れ仕事ばかりの日常に戻った」 昔を思い出しながら語る仲佐さんは何処か寂し気だけど、愛おしそうな表

  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.31

    「私は……」 亜美に問われて、すぐには答えられず言葉に詰まる。 亜美の言う通り、優弥を選べば幸せになれる。けど、それは私の本当の気持ちじゃない。優弥ならそれも全て受け止めてくれるとは思う。でも、それは優弥の優しさに甘えて優弥の気持ちを利用しているだけ。 それで幸せと言えるだろうか……「私は…仲佐さんと一緒にいたい。どんな結果になろうと後悔はしない」 真っ直ぐ、亜美の目を見つめたまま言い切った。 二人の間に重苦しい空気が漂い、しばしの沈黙。息が止まりそうなほどの緊張感に、紗千香の額に汗が滲む。「──はぁ~」 大きな溜息が聞こえ、息を吹き返した。「まったく、あんたは一度決めたら頑固なんだから……」 眉を下げ、苦い笑みを浮かべた。「正直、私は優弥の肩を持ちたいけど、あんたの気持ちも大事にしたい」「亜美…」「まあ、当たって砕けるのも、一度くらいは酷い目に合うのも経験。いつでも泣ける場は用意しておいてあげる」 子供に向けるよな温かい笑顔で勇気づけられた。 まさか素直に受け入れてもらえるとは思わず、少し意外だった。学生時代の亜美だったら、何が何でも止めていた。 亜美もまた、子供が出来て心に変化が生まれたんだろう。みんな恋をして成長していく。(私も前に進まなきゃだね……)「亜美、ありがとう」「別に、私は特別なことは言ってないよ。ただ、あの紗千香が本気の恋をしてることが嬉しいだけ」「……本当、恋って面倒で苦しいね」「それも思い出になる時がくるよ」「そうなればいいな……」 明日には地元を離れる。帰ったら、仲佐さんと話をしよう。自分の気持ちを話して、仲佐さんの気持ちを聞こう。いつまでも逃げていられない。 *** そうして次の日、帰り支度をして家を出ると、目の前に優弥が立っていた。「行くのか?」「うん

  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.30

    「この後、時間ある?一緒にランチなんてどうよ?」 そう、亜美に誘われるがまま、ファミレスへとやって来た。「ごめんね。子供がいると小洒落たカフェは入れなくて」「ううん。私もファミレスが気が楽だし」 子供をあやしながら、私の事まで気にしてくれる。母親は偉大だと言うが、本当だと実感する。「ほら、何食べる?イチゴあるよ」 メニューを開き、まだ読み書きのできない娘に指をさして何が食べたいか問う姿は、母そのもの。小さい頃から知っている人が、お母さんしている姿は、見ていて不思議な感じがする。 嫌な感じではなく、新鮮でほのぼのとする。「亜美も立派なお母さんね」「そうはいうけど、子育てってホント大変よ?言うことは聞いてくれないし、部屋は散らかってばっかり。この間も、買ったばっかりの服、汚されたんだから」 怒ったような口調で話すが、顔は全然そんな事ない。あまりにも態度と言葉がちぐはぐだもんだから、思わずクスッと吹き出した。「もぉ!紗千香も早く結婚しなさい!」「いや、私は……」「優弥がいるじゃない」 絶対出てくると思った……「あいつほど紗千香の事知ってる人いないでしょ。学生の頃からずっとアンタ一筋だし。浮気の心配はないでしょ?」「……」 今の私には、物凄く刺さる言葉。一途に想われているのは嬉しいが、その反面、ちゃんと向き合わないといけないというプレッシャーがある。「それとも、他に気になる人がいる感じ?」「!!」 黙って肩を震わすと、目ざとい亜美はニヤッと口角を吊り上げた。「──へぇ?それは知らないなぁ?何処のどいつだ?うちの紗千香の心を奪ったのは」 楽しげに詰め寄ってくる。こうなった亜美は執拗い。話すまで問い詰めて来るのが目に見えている。「……怒らないでよ……?」 そう前置きした上で、仲佐さんに対する気持ちや関係……香里さんの事に至るまでを話して聞かせた

  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.29

    優弥から貰った包みには、見せつけるように見せてきた同じネックレスが入っていた。 「アイツもこんなことするんだ」 ちょっと意外。お揃いのものなんて付けるような奴じゃない。それは裏を取れば、私となら一緒のもの付けてもいいという事になる。 「……独占欲丸出しじゃん……」 呆れながら、ネックレスを眺めた。 どこかで、優弥と一緒になった方がいいんじゃないかって思いもある。けど、その度に仲佐さんの顔が浮かんでくる。まるで私によそ見するなと言い聞かせているようで…… 「自分の方こそよそ見してるくせにさ……」 クッションを抱きしめながら呟いた。 それでも、忘れられないんだから私も大概だと思ってる。チラッとスマホに目を向ける。通知はなく、画面は真っ暗なまま。 向こうが連絡をくれないなら、こちらからすればいいだけの事。そう思ってはいるが、返事がなかったら?拒否されていたら?そう思うと怖くて、手が動かない。 「今何してるんだろう……」 香里さんと一緒?私の事なんて気にもしていないのかな…… (……) 考えれば考えるほどマイナスな考えしか思い浮かんでこない。 「このままじゃ駄目だ!」 勢いよく立ち上がりながら声を上げた。 「こんな部屋にいるから要らない事ばかり考えちゃうんだ。いい天気だし、散歩にでも行こうかな」 近所に池のある公園があることに気が付き、軽く羽織れるものを手に家を出た。 *** 公園に着くと、平日のお昼だと言うのに人が多くいることに驚いた。ほとんどは子連れだが、それにしても多い。 子供は無邪気でいいなぁ……

  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.29

    今日も紗千香ちゃんからの連絡はない…… 仲佐はメッセージの届いていないスマホを手に、溜息を吐いていた。 こちらから何度も連絡を入れようとした。だが、俺が何を言っても言い訳にしかならないから、今はそっとしておいた方がいいと香里から言われた。確かにその通りかもしれないと、連絡できずにいる。 「なぁに?しけた顔して」 「……誰のせいだと思ってる」 「あら、人のせいにしないでくれる?紗千香ちゃんから連絡ないのは、普段から疑われる行動をしていた貴方のせいじゃない?」 「……」 香里の言葉に何も言い返せない。疑われるような事をした覚えはないが、それは俺が思っているだけで、紗千香ちゃんがどう思っているかは分からない。 そもそもあの日は、香里がアポもなしでやって来た。全身は何故か泥に塗れていて、シャワーを貸してとせがまれ、仕方なく部屋にあげたに過ぎない。 紗千香ちゃんが帰ってくる前に追い出すつもりだったが、タイミングよく鉢合わせしてしまった。 状況的には最悪。誤解されてもしかないが…… 「はぁ……」 項垂れる仲佐の姿を香里はほくそ笑むように見つめ、スマホを手にした。その画面には『優弥』と表示されていた。 *** 紗千香と別れた優弥は、自分のスマホが鳴っていることに気が付いた。 「はい」 『あ、優弥君?私』 「ああ、香里さんですか?」 電話の相手は香里だった。 『そっちはどう?上手くいった?』 「まあ……そっちはどうなんです?」 『まあまあってところかしら』 飲み会で会った日、香里の口車に乗せられた感じで二人の仲を割く計画を立てた。

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    「お待たせ」 次の日、優弥は時間通りに家にやって来た。ラフな格好のように見えても清潔感はしっかりあって、女性ウケの良さそうな車に、助手席のドアを開けてエスコートしてくれる。 恋愛対象として見た事無かったから気づかなかったけど、これは…… (女子が黙ってないわ) これが俗に言うスパダリってやつなのかと、しみじみ感じた。 「なんだ?見惚れた?」 「馬鹿じゃないの?なんで私が優弥に見とれんのよ」 「えぇ?そんなこと言って、結構図星なんじゃないのか?」 ハンドルに手を掛けながら、揶揄う様な言葉を投げてくる。確かに、少しぐらいは見惚れたかもしれないが、悔しいから絶対に言ってやんない。 「どこに行くの?」 車がゆっくりと動き出すと、優弥に問いかけた。 「ああ、隣の市に大きなショッピングモールが出来たんだよ。俺もまだ行ったことないからさ。一緒にどうかと思って」 「へぇ、知らなかったな」 「そりゃそうだろ」 車の中は終始笑い声が絶えず、1時間ほどの距離もあっという間だった。 目的地に着いてからも、優弥は「疲れないか?」なんて、私の事を気遣っては声をかけてくれた。こういう気遣いも昔から変らない。 一緒に買い物をして回って気が付いたが、私と優弥の趣味は結構似ているらしい。 「ええ!?学生の時は気付かなかった!」 「そりゃお前、俺なんて眼中になかったんだろ?ひっどい奴だよな」 「そんな事……あった?」 「お前さぁ、そこは嘘でも否定するところだろ!」 「あはははは!ごめんごめん!」 怒った風を装い、手を振り上げる優弥から笑いながら逃げる。年甲斐もなくはしゃいでる自覚はある。それだけ楽しいって事なん

  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.20

     優弥この日、休暇の紗千香は最寄り駅へと来ていた。 先日の同窓会で会えなかった友達から「会いたい」という連絡があったからだ。「紗千香!」 「亜美!」 笑顔で駆け寄り、再会を喜ぶように強く抱きしめ合った。  柏木亜美は幼稚園から仲で、優弥と三人よく一緒にいた。同窓会の日は、亜美の子が熱を出してしまったので欠席だった。「元気だった!?随分と都会染みた格好してんじゃん!」 「見ての通り。そっちこそ、大丈夫なの?」 「子供?もう全然よ。今日は旦那に押し付けてきたわ」 「あははは!相変わらずだなぁ」 この変わらないノリが昔に戻ったようで心地よい。「おいおい、俺を忘

  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.18

    「ん……今何時……」 重い瞼をこじ開け、寝返りを打ちながらスマホを探すと、目の前にスマホを置く手が見えた。 きっと紗千香が気を利かせてくれたのだろうと、顔を上げお礼を言おうとした。 「あ、ありが──……」 顔を上げ、目が合った人物に思わず息を飲んだ。 「なに、その顔」 「え、は……?なんでお前が……?」 不満げに眉を顰め、睨みつける香里がそこにいた。 「

  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.17

    紗千香はまだ夢を見ているような心地で、仕事場であるスタジオへとやってきた。 昨夜、お互いの存在を確かめるように体を重ねた。何度も何度も名前を呼び、キスを交わし、身体を求めた。 今も仲佐さんの温もりが体に残っていて、全身が包まれているような感じがする。 「紗千香ちゃん、おはよう」 「あ、那奈さんおはようございます!」 「あら?あらあらあら?何かあった?」 察しの良い那奈はすぐに紗千香の変化に気が付き顔を緩ませて近付いて来た。

  • その声、独り占めしてもいいですか?   episode.22

     ガヤガヤと賑いながら酒を酌み交わしているのを目にしながら、何故私はここにいるのだろうと問わずにはいられなかった。 隣には不機嫌で仏頂面の優弥。反対側には不気味なほど笑顔の仲佐さん。更にその隣には香里さんまでいる。他にも数人知った顔はいるが、酒の席なのであまりこちらを気にしていない。「ごめんねぇ。ここはおじさんが驕るから、好きなもの頼んでよ」 小柴さんは罪悪感からか、優弥を気遣って声をかけてくれている。「いいですよ。紗千香の仕事知るきっかけにもなりますし。……まあ、遠慮なく驕ってもらいますけど」「あ

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