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たとえ、この恋が罪だとしても
たとえ、この恋が罪だとしても
Author: 泉南佳那

1・プロポーズ

Author: 泉南佳那
last update publish date: 2025-06-04 12:41:10

神様だか悪魔だかわからない。

その、何かに引き寄せられるように

出会うはずのないわたしたちは出会い

そして恋に堕ちた。

引き返すことはできなかった。

たとえ、この恋が罪だとしても……

*************************************

〈side Ayano〉

「結婚してくれないか」

週末。

いつものように、ふたりで過ごしているときだった。

食後のコーヒーを飲みながら、彼は唐突に告げた。

わたしは藤沢文乃、25歳。

大手メーカーに勤める会社員。

隣にいる高柳俊一と付きあいはじめて、もうすぐ2年になる。

奥手だったわたしの、はじめての恋人。

新年会の帰り道、ふたりきりになったときに「きみが入社してきた日、一目惚れしたんだ」と告白されて。

大学卒業後、親のつてで大手メーカーに就職し、営業部に配属された。

俊一さんはわたしより4歳年上の、頼れる先輩だった。

一流企業勤務。高年収。性格は温厚。

ちょっと堅物すぎるぐらい真面目。

煙草は吸わない。お酒も適量。

ルックスもずば抜けてるってわけではないけれど、まあ、いいほうだと思う。

つまり、結婚相手として申し分ない人。

典型的な職場恋愛。

ふたりの未来もきっと、平凡を絵に描いたようなものになる。

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  • たとえ、この恋が罪だとしても   エピローグ

    「あ……っ」 「こんなに感じてくれてるんだ……。嬉しいな。でも、そんなに固くならないでリラックスしてごらん」 少し掠れたぞくっとする声でつぶやく。「文乃が行ったことのないとこまで、連れてってあげるから」  それから、指と唇でさんざん弄られて…… もう声を抑えることなどできずに、わたしは快楽の波に翻弄されるまま、あられもない声をあげていた。 頭が真っ白になって、気が遠のいていきそうになったとき、安西さんがわたしのなかに入ってきた。   「……はあっ、あや……の」  彼も抑えきれない欲望に声をあげてわたしを突き上げる。 好きという気持ちが心から溢れだして、わたしの全身に漲っていく。  その想いを注ぎ込みたくて、わたしは自分から彼の唇を求めていた。   「す、き……あなたが……好き」    発火しそうなほどの熱い口づけで、彼はその想いに応えた…… *** ふと目を覚ますと、窓の外が白んでいた。 新聞配達のバイクの音が遠くから聞こえてくる。  その音さえ、まるで祝福の鐘の音のように聞こえる。 隣で眠る安西さんの安らかな寝息も聞こえる。 わたしはそっと、彼の背中に口づけ、また微睡(まどろみ)のなかに引き込まれていった……〈the end〉*お読みいただきありがとうございました😊

  • たとえ、この恋が罪だとしても   エピローグ

     ふわふわと宙に浮き上がっているような覚束なさに全身が支配される。 彼の唇はしばらくそこに留まっていたが、顔をあげて、今度はじっと見つめてくる。「頬が上気して薄紅色に染まってる。ああ、カメラに収めたいぐらい綺麗だ」  そんなことを言いながら、彼の手はわたしの足をさすりあげてくる。「でも……やっぱり誰にも見せたくない」  太腿に置かれていた手に力が加わって、左右にゆっくりと押し開かれた。   「あっ……いや……」  思わず閉じようをすると、さらに強い力で押さえられてしまう「そう? そんな蕩けそうな声出してるのに?」  そして、少し意地悪な口調でそんなことを言われる。  「……だって、恥ずかしい……です。そんなふうにじっと見られたら」   「商売柄かな。いつでも見ていたいんだ。美しいものは特にね」  安西さんはわたしを見つめたまま、内腿に舌を這わせていく。そして言った。「……今度は時間をかけて、たっぷり愛してあげるよ」    彼の舌がわたしのもっとも敏感な部分に触れた。「……!」  これまで味わったことのない快楽の波が襲ってくる。   「い、や……やめ……」  わたしは安西さんの髪をかき乱しながら、執拗なその舌を引き離そうとした。    彼の唇が離れた。  ほっと息をつくと、今度は彼の指がわたしのなかを弄りだす。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   エピローグ

     「ありがとう……。嬉しいです。そう言ってもらえると」 そう呟くわたしの髪を耳にかけて、露わになった耳たぶに戯れにそっと歯を立ててきた。 噛まれたと言っても、ほんの軽く触れられた程度だった。 でも、心も身体も敏感になっているわたしは、それだけのことでも思わず声をもらしてしまった。   「あ、うんっ……」 「……その声も好きだよ。そんな声を聞かされたら」 少しかすれた色めいた声で安西さんがつぶやく。「また……欲しくなってきちゃうじゃない」  安西さんの手がわたしの肩に触れ、静かに押し倒される。    彼の舌が首筋をさまよいはじめる。  そっと、舐めあげられたり、ときおり少し強く吸われたり。   そんなことをされると、背中がぞくぞくしてきて、思わず身をよじってしまう。 そんな反応が彼をまた刺激して、今度は指先が胸乳を弄りはじめる。 尖った先端をさすられると、身体の奥深くで得体の知れない何かが蠢きだす。 わたしは思わずびくっと身をこわばらせる。   「こうされると、気持ちいい?」  恥ずかしさに震えながらも、わたしは小さくうなずいた。 安西さんはふっと微笑みをこぼし、「じゃあ、これは?」と言って、  今度は右胸の乳暈を舌でやさしく舐めあげてきた。「……あん」  指とは違う湿った感触に、新たな快楽を掘り起こされて、自分とは思えないような声を出てしまう。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   エピローグ

     彼の部屋で、安西さんはありったけの情熱を注ぐかのようにわたしを抱いた。「安西……さん」 獣のようにわたしを貪る彼にこたえて、いつしか、わたしもあらぬ声をあげていた。   「まだ夢みたいだ。文乃とこうしているなんて」 「わたしも……同じこと、考えてました。今」 情事の余韻に浸ってぼんやりしているわたしに安西さんがつぶやいた。 彼の腕がわたしの身体の下に滑り込んできて、そのまま引き寄せられる。  背後から抱きしめられて、肩口にそっとキスされる。 こわれものを扱うように優しく。  そうした態度のすべてがわたしを幸福の極みに連れて行ってくれた。 あのときは、その幸福が怖かった。でも、今は違う。  そのことが心の底から嬉しかった。「なんで保育士になったの?」  わたしの髪をもてあそびながら、安西さんが尋ねる。「歌にかかわる仕事がしたくて。保育士になれば毎日子供たちと思い切り歌えるなと思って、それで通信で資格を取って……」「文乃らしいな。おれ、文乃の歌、好きだよ。とっても美しい澄んだ声をしてるから。子供たちが羨ましいよ」 そんなふうに褒められたのは初めてだ。  他でもない安西さんに言われたことも相まって、嬉しさがふつふつとこみあげてきた。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   15・3年後

     そう言うと、今度はこれ以上ないほど真剣な表情に変わった。「会いたかったよ。文乃がどう思ってるかわからないけど、おれは今でも文乃が好きだ。その気持ちは少しも変わっていない」 もう、我慢できなかった。  堰を切ったように涙が頬を伝っていく。    店はほぼ満員だし、店員さんも近くにきそうだし、こんなところで泣いたらおかしいと、自分をいさめるのだけど、どうしても止まりそうになかった。「ご、ごめんなさ……い、お、おかしいですよね……こんなところで」 安西さんは優しい眼差しでわたしを見つめながら、ハンカチを差し出した。 そして、「出ようか」と言った。  それからすばやく立ち上がると、わたしをかばうように肩に手を回して歩き出した。 表に出て、駐車場に向かう途中の壁際で抱きすくめられた。「文乃……会いたかった……おれのあやの……」 そう言って、わたしの顎をすくいあげる。  懐かしい彼の唇の感触がわたしの心に灯りをともしていく。「文乃は? おれを好きでいてくれた? 今も変わらない?」  少し不安げにそう尋ねる彼の顔を、わたしは見あげた。「……変わって……ません。ずっと……ずっと好きでした。ずっと、会いたかった」 唇が重なる。  深く、激しく。 まだ、宵の口だし、誰か通りかかるかもしれない。  そんな考えが、ちらっと頭をよぎったが、それでもかまわない。  そう思った。 名残惜しげに唇を離すと、彼は切羽詰まった声音でささやいた。「もう、死んでも離さないから、覚悟して」  

  • たとえ、この恋が罪だとしても   15・3年後

     あのとき、自分は俊一さんへの罪悪感を少しでも薄れさせることしか、考えていなかった。 安西さんの、わたしを想ってくれる気持ちを軽んじたつもりはまったくなかったけれど、結果的に彼の気持ちを踏みにじってしまった。  結局、わたしは自分のことしか考えてなかった。  ひどいことをした。  安西さんの顔がまともに見られない。俯いたままで、わたしは言った。「ずっと、ずっと、あなたのことはもう忘れなければいけない、と思ってました。安西さんにとってわたしは、もう遠い過去になっているはずだって。 それに、本当に、わたし、安西さんみたいなひとには、ぜんぜんふさわしくないし……」    言葉が終わらないうちに、安西さんの手がわたしの頬に伸びてきて、軽くつねられた。 思わず顔を上げると、目が合った。  慈しみに満ちた表情でわたしを見つめている。 初めて会ったときから、わたしを惹きつけてやまない瞳。 その美しい瞳と見つめ、ようやくふたたび安西さんに会えたことの喜びが、わたしの心を満たしはじめた。「何言ってるんだよ。ふさわしいかどうかなんて、おれが決めることだろう」  そのまま、わたしの髪を優しく撫でながら、続けた。「おれが愛する女は、文乃だけだよ」  そう言ったとたん、安西さんはあわてた顔をして、自分の口を両手で押えた。  急にどうしたのだろうと思っていると……「うわ、やば。まじで歯が浮いてきた」と真面目な顔で言う。  本気であわててる姿が可笑しくて、思わず吹き出してしまった。 そんなわたしを見て、安西さんは嬉しそうに言った。 「やっと、笑ってくれたね。その顔が見たかったんだよ」

  • たとえ、この恋が罪だとしても   12・別れのとき

    「心配しなくても、何も教えてないよ。個人情報だって言って突っぱねた」 安西さんはわたしのほうに手をのばした。  その手につかまって椅子からゆっくり立ちあがった。「もう歩ける? 疲れただろう? 着替えておいで。そのあと車で送るよ。ここにいたら打ち上げに連れていかれることになるし」 疲れがピークだったのもたしかだし、ふだんから騒がしい場所が苦手なわたしには、とてもありがたい申し出だった。 玄関へ向かって歩いていくと、酒井さんがわたしたちを見つけて近づいてきた。「えっ、文乃ちゃん、帰っちゃうの?」「具合悪そうなんで送ってく」安西さんはそっけなく、そう返した。「そんなこと言って、やっ

    last updateLast Updated : 2026-03-30
  • たとえ、この恋が罪だとしても   12・別れのとき

     安西さんも疲れたのだろうか、口数がいつもより少ない。 わたしがシートベルトを締めたのを横目で見て、「じゃあ、出すよ」と言ったあとは黙ってしまった。 話しかけなきゃ、と思ったけれど、何ひとつ、言葉は浮かんでこない。 終わってしまった。  もうこれで安西さんとは一緒にいられないのだと、頭に浮かんでくるのはそれだけ。 すこし眠気を感じて目をつぶった。  でも、まだ撮影の興奮から覚めていないせいか、いくら立っても眠りは訪れない。 渋滞にかかることもなく、1時間ほどでわたしのアパートに到着した。 「着いたよ」 そう言った安西さんの声にいつもの軽い調子は影をひそめ、それどころかこわば

    last updateLast Updated : 2026-03-30
  • たとえ、この恋が罪だとしても   11・撮影本番

     つらくて、切なくて……どうにかなってしまいそうで。 気づかないうちに心の内が表情に現れていたのだろう。 安西さんはファインダーから目を外し、じっとわたしを見て、言った。「うん、その表情、いいよ。そう頬杖をついて、遠くを見て。そのまま目線を上げて、そう」 そろそろ日が落ちる。  夕陽が水平線を黄金色に染めていく。「次は海に向かって歩いてみて……。佐藤、ちょっと裾直してきてくれる? うん、OK」  安西さんのよく通る声を聞くのも今日で終わり…… けれど撮影が終盤に近づくにつれ、そうした雑念が、一切消えていった。 俊一さんへのやましさも、紗加さんへの嫉妬も不思議なほど薄れていっ

    last updateLast Updated : 2026-03-30
  • たとえ、この恋が罪だとしても   12・別れのとき

    「安西さ……ん?」  そのまま、何も言わない。 「安西さん……」  沈黙に耐えかねて、もう一度彼の名を呼んだ。 「くそっ! あの男の言った通りだ。おれは最低の、どうしようもない男だよ」  彼は突然吐き捨てるようにそう言った。 それから私の手をさらに強く握りしめた。「きみが……文乃が欲しい」 文乃。  はじめて名前を呼び捨てにされて、身体の一番深いところがビクっと脈うった。「文乃には大事な人がいるのに、きみを不実な裏切り者なんかにしたくないのに、それなのに……、このまま、別れるなんて、どうしても耐えられない。今日で、おしまいだなんて……」 でも、紗加さんは……と言おうとし

    last updateLast Updated : 2026-03-30
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