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7・満天の星空の下

Penulis: 泉南佳那
last update Tanggal publikasi: 2025-06-30 08:33:07

 安西さんは地面に頭がつくかと思うほど頭を下げた。

「お願い、うんと言って。承知してくれたら針千本飲むよ。いや、百本、うーん、5本ぐらいで許してくれるとうれしいけど……」

本当に、子どもみたいな人。

とても世間に名の知られたカメラマンだなんて思えない。

こんなふうにこの人に頼まれて、断れる人がこの世界にいるんだろうか。

もう答えは決めていたけれど、わたしは少しだけ意地悪したくなって、言った。

「じゃあ5本でいいけど、今ここで飲んでくれます?」

「えっ?」

「カバンにソーイングセットが入れてあるんです。針5本ぐらいなら入ってると思うから」

今度は安西さんがちょっと焦った顔になった。

「う、うん。飲むよ。よし、飲んでやる。約束破ったんだから」

我慢できずに今度はわたしが吹き出した。

「嘘です。さっきの仕返し!」

「ああ、よかったー。えっ、じゃあ、承知してくれるの?」

「はい。もう乗りかかった舟です。その代わり、やっぱり素人に頼むんじゃなかったとか後で言わないでくださいね」

「文乃ちゃん、最高! ありがとう!」

ぱっと目の前から星空も街の夜景も消えた。

安西さんにぎゅっと抱きしめられ
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  • たとえ、この恋が罪だとしても   エピローグ

    「あ……っ」 「こんなに感じてくれてるんだ……。嬉しいな。でも、そんなに固くならないでリラックスしてごらん」 少し掠れたぞくっとする声でつぶやく。「文乃が行ったことのないとこまで、連れてってあげるから」  それから、指と唇でさんざん弄られて…… もう声を抑えることなどできずに、わたしは快楽の波に翻弄されるまま、あられもない声をあげていた。 頭が真っ白になって、気が遠のいていきそうになったとき、安西さんがわたしのなかに入ってきた。   「……はあっ、あや……の」  彼も抑えきれない欲望に声をあげてわたしを突き上げる。 好きという気持ちが心から溢れだして、わたしの全身に漲っていく。  その想いを注ぎ込みたくて、わたしは自分から彼の唇を求めていた。   「す、き……あなたが……好き」    発火しそうなほどの熱い口づけで、彼はその想いに応えた…… *** ふと目を覚ますと、窓の外が白んでいた。 新聞配達のバイクの音が遠くから聞こえてくる。  その音さえ、まるで祝福の鐘の音のように聞こえる。 隣で眠る安西さんの安らかな寝息も聞こえる。 わたしはそっと、彼の背中に口づけ、また微睡(まどろみ)のなかに引き込まれていった……〈the end〉*お読みいただきありがとうございました😊

  • たとえ、この恋が罪だとしても   エピローグ

     ふわふわと宙に浮き上がっているような覚束なさに全身が支配される。 彼の唇はしばらくそこに留まっていたが、顔をあげて、今度はじっと見つめてくる。「頬が上気して薄紅色に染まってる。ああ、カメラに収めたいぐらい綺麗だ」  そんなことを言いながら、彼の手はわたしの足をさすりあげてくる。「でも……やっぱり誰にも見せたくない」  太腿に置かれていた手に力が加わって、左右にゆっくりと押し開かれた。   「あっ……いや……」  思わず閉じようをすると、さらに強い力で押さえられてしまう「そう? そんな蕩けそうな声出してるのに?」  そして、少し意地悪な口調でそんなことを言われる。  「……だって、恥ずかしい……です。そんなふうにじっと見られたら」   「商売柄かな。いつでも見ていたいんだ。美しいものは特にね」  安西さんはわたしを見つめたまま、内腿に舌を這わせていく。そして言った。「……今度は時間をかけて、たっぷり愛してあげるよ」    彼の舌がわたしのもっとも敏感な部分に触れた。「……!」  これまで味わったことのない快楽の波が襲ってくる。   「い、や……やめ……」  わたしは安西さんの髪をかき乱しながら、執拗なその舌を引き離そうとした。    彼の唇が離れた。  ほっと息をつくと、今度は彼の指がわたしのなかを弄りだす。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   エピローグ

     「ありがとう……。嬉しいです。そう言ってもらえると」 そう呟くわたしの髪を耳にかけて、露わになった耳たぶに戯れにそっと歯を立ててきた。 噛まれたと言っても、ほんの軽く触れられた程度だった。 でも、心も身体も敏感になっているわたしは、それだけのことでも思わず声をもらしてしまった。   「あ、うんっ……」 「……その声も好きだよ。そんな声を聞かされたら」 少しかすれた色めいた声で安西さんがつぶやく。「また……欲しくなってきちゃうじゃない」  安西さんの手がわたしの肩に触れ、静かに押し倒される。    彼の舌が首筋をさまよいはじめる。  そっと、舐めあげられたり、ときおり少し強く吸われたり。   そんなことをされると、背中がぞくぞくしてきて、思わず身をよじってしまう。 そんな反応が彼をまた刺激して、今度は指先が胸乳を弄りはじめる。 尖った先端をさすられると、身体の奥深くで得体の知れない何かが蠢きだす。 わたしは思わずびくっと身をこわばらせる。   「こうされると、気持ちいい?」  恥ずかしさに震えながらも、わたしは小さくうなずいた。 安西さんはふっと微笑みをこぼし、「じゃあ、これは?」と言って、  今度は右胸の乳暈を舌でやさしく舐めあげてきた。「……あん」  指とは違う湿った感触に、新たな快楽を掘り起こされて、自分とは思えないような声を出てしまう。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   エピローグ

     彼の部屋で、安西さんはありったけの情熱を注ぐかのようにわたしを抱いた。「安西……さん」 獣のようにわたしを貪る彼にこたえて、いつしか、わたしもあらぬ声をあげていた。   「まだ夢みたいだ。文乃とこうしているなんて」 「わたしも……同じこと、考えてました。今」 情事の余韻に浸ってぼんやりしているわたしに安西さんがつぶやいた。 彼の腕がわたしの身体の下に滑り込んできて、そのまま引き寄せられる。  背後から抱きしめられて、肩口にそっとキスされる。 こわれものを扱うように優しく。  そうした態度のすべてがわたしを幸福の極みに連れて行ってくれた。 あのときは、その幸福が怖かった。でも、今は違う。  そのことが心の底から嬉しかった。「なんで保育士になったの?」  わたしの髪をもてあそびながら、安西さんが尋ねる。「歌にかかわる仕事がしたくて。保育士になれば毎日子供たちと思い切り歌えるなと思って、それで通信で資格を取って……」「文乃らしいな。おれ、文乃の歌、好きだよ。とっても美しい澄んだ声をしてるから。子供たちが羨ましいよ」 そんなふうに褒められたのは初めてだ。  他でもない安西さんに言われたことも相まって、嬉しさがふつふつとこみあげてきた。

  • たとえ、この恋が罪だとしても   15・3年後

     そう言うと、今度はこれ以上ないほど真剣な表情に変わった。「会いたかったよ。文乃がどう思ってるかわからないけど、おれは今でも文乃が好きだ。その気持ちは少しも変わっていない」 もう、我慢できなかった。  堰を切ったように涙が頬を伝っていく。    店はほぼ満員だし、店員さんも近くにきそうだし、こんなところで泣いたらおかしいと、自分をいさめるのだけど、どうしても止まりそうになかった。「ご、ごめんなさ……い、お、おかしいですよね……こんなところで」 安西さんは優しい眼差しでわたしを見つめながら、ハンカチを差し出した。 そして、「出ようか」と言った。  それからすばやく立ち上がると、わたしをかばうように肩に手を回して歩き出した。 表に出て、駐車場に向かう途中の壁際で抱きすくめられた。「文乃……会いたかった……おれのあやの……」 そう言って、わたしの顎をすくいあげる。  懐かしい彼の唇の感触がわたしの心に灯りをともしていく。「文乃は? おれを好きでいてくれた? 今も変わらない?」  少し不安げにそう尋ねる彼の顔を、わたしは見あげた。「……変わって……ません。ずっと……ずっと好きでした。ずっと、会いたかった」 唇が重なる。  深く、激しく。 まだ、宵の口だし、誰か通りかかるかもしれない。  そんな考えが、ちらっと頭をよぎったが、それでもかまわない。  そう思った。 名残惜しげに唇を離すと、彼は切羽詰まった声音でささやいた。「もう、死んでも離さないから、覚悟して」  

  • たとえ、この恋が罪だとしても   15・3年後

     あのとき、自分は俊一さんへの罪悪感を少しでも薄れさせることしか、考えていなかった。 安西さんの、わたしを想ってくれる気持ちを軽んじたつもりはまったくなかったけれど、結果的に彼の気持ちを踏みにじってしまった。  結局、わたしは自分のことしか考えてなかった。  ひどいことをした。  安西さんの顔がまともに見られない。俯いたままで、わたしは言った。「ずっと、ずっと、あなたのことはもう忘れなければいけない、と思ってました。安西さんにとってわたしは、もう遠い過去になっているはずだって。 それに、本当に、わたし、安西さんみたいなひとには、ぜんぜんふさわしくないし……」    言葉が終わらないうちに、安西さんの手がわたしの頬に伸びてきて、軽くつねられた。 思わず顔を上げると、目が合った。  慈しみに満ちた表情でわたしを見つめている。 初めて会ったときから、わたしを惹きつけてやまない瞳。 その美しい瞳と見つめ、ようやくふたたび安西さんに会えたことの喜びが、わたしの心を満たしはじめた。「何言ってるんだよ。ふさわしいかどうかなんて、おれが決めることだろう」  そのまま、わたしの髪を優しく撫でながら、続けた。「おれが愛する女は、文乃だけだよ」  そう言ったとたん、安西さんはあわてた顔をして、自分の口を両手で押えた。  急にどうしたのだろうと思っていると……「うわ、やば。まじで歯が浮いてきた」と真面目な顔で言う。  本気であわててる姿が可笑しくて、思わず吹き出してしまった。 そんなわたしを見て、安西さんは嬉しそうに言った。 「やっと、笑ってくれたね。その顔が見たかったんだよ」

  • たとえ、この恋が罪だとしても   14・会いたい

    〈side Takito〉 文乃と互いの気持ちを確かめあったその翌日から5日間、仕事でオーストラリアに行かなければならなかった。 こんなときに、5日も文乃と離れるなんて最悪の極み。  ひとときだって離れていたくなかったのに。 滞在中、仕事のない時間は文乃のことばかり考えていた。 電話をしようかとも思ったが、声を聞いたら最後、今すぐ日本に帰りたくなって、仕事に支障がでそうな気がしたので、理性を総動員して控えた。 今、帰りのフライトだ。無事到着すれば、ようやく文乃に会える。 あの日は時間的にも精神的にもゆっくり話をする余裕がなかったが、文乃の彼氏ともちゃんと話して、できればきっちり

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-01
  • たとえ、この恋が罪だとしても   13・告白

     家についたときには、もう日付が変わっていた。  玄関のドアを閉めたとたん、これまで経験したことのない疲れに襲われた。  泥のなかで、もがいているように身体が重い。  何もせずに、一刻も早く眠りたい。  でもまだやらなければならないことがある。  わたしは俊一さんにメールを打った。  話したいことがあるから、明日、どうしても会いたいと。************ 「最近、様子がおかしいとは……思ってたよ。結婚に不安を感じてるのかなって。でも、まさか、そんな……」 他に好きな男がいるって、どういうことだよ……そう言って、俊一さんは血がにじむほど唇をかみしめた。 関節が白くなる

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  • たとえ、この恋が罪だとしても   14・会いたい

     はじめは困ったような表情を浮かべていたけど、すぐに以前と変わらぬ笑顔を向けてくれた。 おれは間違っていた。  彼女の芯は、ガラスのような脆いものでなく、もっとしなやかで強靭なものだったんだ。 それほど、彼女は凛として美しかった。 相変わらず緊張はしていたけれど、もうおどおどしていなかった。  品格すら漂わせていた。 そして、メイクをして衣装に着替えた文乃は、間違いなく、思い描いたとおりの女だった。 完璧だ。おれの仕事はただそれを記録するだけだった。 撮影の終盤、ライトを浴びた彼女の頬が一瞬きらめいた。 その頬を伝う涙を、こぼれおちていく瞬間を捉えた。この日撮った写真のな

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-04-01
  • たとえ、この恋が罪だとしても   14・会いたい

     「何? なんか、顔についてる?」  そう聞くと、 「いや、誰っすか、『あやの』って。寝言でうるさいほど言ってましたけど」「おれの最愛の人」  臆面もなくそう言うと、アシスタントはやってられないという感じで肩をすくめた。 入国ゲートを出ると、まっさきに携帯の電源を入れ、文乃に電話をした。 つながらない。 無機質な機械の声が〝電波の届かないところにいるか、電源が入っていないのでかかりません〟と冷たく繰りかえすだけ。「くそっ。なんだよ。なんで繋がらないんだ」  業を煮やして、空港からそのまま文乃のアパートまで車を飛ばした。 着いたころにはもう日が落ちて薄暗くなっていた。 通

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