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王の名を持つ者⑥

last update Last Updated: 2025-06-29 17:00:47

「弱者は不要……まさかここまで四天王が役に立たんとはな」

魔神リンドールはマントを翻し地面へと降り立った。

それを見つめるのは剣聖レオンハルトただ一人。

「ようやくお出ましか、魔神」

「部下があまりに無様な姿を晒していたのでな、出張るわけにもいかなかった」

魔神は忌々しそうに先程首を斬り落としたゾラの死体を見つめる。

次いでレオンハルトを見ると魔神も何処からともなく剣を取り出した。

「それにしても精鋭をよくこれだけ集めたものだな。我の配下がここまでやられるとは思わなかったぞ」

「お前を討ちたいという思いがこれだけ集まったということだ。覚悟せよ魔神」

レオンハルトが剣を構え魔神もそれに倣って剣先を向ける。

どちらが先に動くか、そこに横槍を入れたのはアレンだった。

「やっと出てきたようだね魔神ヴァリオクルス・リンドール!不意を突くのはあまり褒められた行為じゃないけど君相手なら何も問題はないだろう!?バニシングブラスト!」

突然姿を現したアレンに魔神は驚いた表情を一瞬見せたがすぐに障壁を展開する。

「一人だけだと思うな魔神よ。ルナフォートレス!」

今度はクロウリーが現れると背後に巨大な城が浮かび上がった。

砲門全てが火を吹き無数の光線が魔神へと射出される。

「私もいるぞ!グランドパニッシャー!」

最後に姿を見せたテスタロッサが剣を地面に叩きつけると凄まじい衝撃波が魔神へと襲い掛かった。

遅れるものかとレオンハルトも聖剣を掲げ技名を口にする。

「エクス!カリバァァァ!」

四人からなる大技の連続攻撃。

魔神とて無傷ではいられない。

一枚目の障壁がアレンの攻撃により破られると二枚目がクロウリーの

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    「器用な真似を……」レオンハルトは顔を顰めゾラを見る。片腕を失うだけで済んだのはゾラの類まれなる魔法技術のお陰だった。結界を少し斜めに展開し斬撃のほんの少しだけずらしたのだ。その結果真っ二つ、とまではいかず片腕を斬り飛ばすまでに終わった。「痛みは感じるのですよ……?いやはや、流石は聖剣といったところです」「その割にはまだ平気そうな顔をしているな」「まあこれでも一応魔族としては頂点にいますからね……」普通の魔族ならばレオンハルトの一撃が掠っただけで消し飛んでしまう。片腕を失うだけで済んだのは純粋にゾラの耐久力があったからに過ぎない。とはいえこれ以上戦う事は難しく、ゾラは翼を広げると空へと飛び上がった。「何処に行く」「ワタクシはここで退場致しましょう。剣聖を舐めていましたよ……ですが、貴方の技を引き出せたのは僥倖でした」レオンハルトはその言葉に顔を顰めた。魔神をも倒せると言われている剣技エクスカリバーは日に三度放てれば良い方であり、連続使用は剣聖であってもできなかった。既にロックとゾラを相手に二度使用してしまい、残るは一度だけ。対魔神用に二度は置いておきたかったところだが、ゾラが思っていた以上に強く使わざるを得なかったのだ。「ではリンドール様との戦い、見物させて頂きましょう。ああ、ご安心を。ワタクシもこれ以上の戦闘はできませんので手を出す事はありませんよ」「どうだかな……魔法を使えば横槍を入れられるだろう」「フフフ……さぁ?それでは――」ゾラが勢いよく飛び立とうとした瞬間、翼が何者かの攻撃を受け千切れ飛んだ。

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    レオンハルトは後方に跳び剣を上段に構えた。「なんだ?まさか自分が傷を負うのも躊躇わんつもりか?」ロックは距離を取ったレオンハルトを訝しみ、言葉を投げ掛けた。「いや?この技ならば私にダメージは返ってこない」「カッカッカッ!それは無理というものよ!吾輩の魔法を破ることなどできんぞ!」ロックは再度イビルリバースを発動するとニヤニヤとした笑みを浮かべる。それを見てレオンハルトも鼻で笑った。「フッ……確かにその魔法は脅威だ。しかし我が剣は聖剣だということを忘れたか?」「……それくらい知っている。貴様は剣聖なのだから」「ならばその身で受けるといい。私の!全力の一撃を!」レオンハルトが剣を上段に掲げると強烈な光が辺りを照らす。目を覆いたくなるほどの光にロックも顔を背けた。「グゥゥゥッ!なんだこの光は!」「我が剣よ、応えよ!エクスカリバー!」レオンハルトは強い光を放っている剣を勢いよく振り下ろした。それと同時に地面が砕け衝撃波がロックへと襲い掛かる。光の斬撃はロックの魔法を容易に斬り裂いた。「なっ!?イビルリバースが!」「無駄だ。反射させぬ程の火力を出せばいいだけだろう?お前程度でこの技は防げん!」「オオオオォォォッッ!?」光の斬撃はロックの身体を引き裂きその背後にある古城の門すらも斬り裂いてみせた。「グッ……ガハッ……」「終わりだロック・ノック」もはや息も絶え絶えにロックは地面に膝を突き身体は粒子となって消えていく。魔に連なる者にとって光属性は致命的なほどにダメージを受ける。レオ

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