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26食目・世界のお勉強2

Author: 柊雪鐘
last update Last Updated: 2025-12-13 08:00:23

 昨日はエリザさんと初めての友人・ネリーさんと食事をして別れた。

 今日は祝日、第4サルーテの日。

 月末最後の祝日でルミオールの月、つまり明日から5番目のノクスィ月が始まる。

 この世界で祝日は何か特別なことをするのか、とエリザさんに訊いたところ……特に指定は無く、各々好きに過ごす日のようだ。

 まだフォス=カタリナに来てから3日目、この世界に慣れた感覚はない。

「そういえばエリザさん」

「ん?何かしら」

 目の前で編み物をしてるエリザさんに、ふと思ったことがあって声をかけてみる。

 するとエリザは編み物を続けながら顔を上げた。

「こちらに来てから一昨日、昨日と街を見回して思ったんですけど、この国の人?町の人?皆さん見分けがつくというか、分かりやすいと言うか、すぐにこの仕事の人だなーとか分かるようになってますよね。なんでですか?」

「うふふ、ルシーちゃんは目ざといわね。前も言ったと思うけど、この世界には定期的に異世界人が来るのよ」

「そうですね。私もその一人で、私にこの世界を教えてくれたクリステフさんは何度もそういった説明をされているようでした」

「そ、かれこれ何十年になるかしらね?そういう世界だから分かりやすいに越したことはないのよ。ところでルシーちゃんは昨日この世界についてお勉強していたようだけど、どこまで知ったのかしら?」

「え?」

 問われ、ふと昨日のことを思い出す。

 そういえば昨日勉強をして、息抜きに飲み物を貰ってから勉強は進んでいない。

 フォス=カタリナの歴史と言えど、知っているのはこの世界の住民は皆生活レベルの魔法を使うようになった、その程度だ。

「あー、えっと、魔生歴……でしたっけ。フォス=カタリナという名前をつけられたこの世界と、この世界では生活レベルの魔法しか使わない、というルールが定められた辺りを知ったと思います……」

 若干うろ覚えに近い感覚がしつつ、それでも覚えてる範囲を要約して口に出してみる。

 するとエリザさんは驚いた様子を見せた。

「あらあ、世界の創生から学ぶだなんて!ルシーちゃんの勉強度合いが本気過ぎちゃって、私びっくりだわ」

「え?本気だなんて全然です! でも、おかげでどうして最低限の生活魔法程度なのか気になっていたので、それが知れて良かったです」

「ルシーちゃんったら、謙虚ねぇ……。それで、お洋服の事だったわよね」

「あ、そうだった」

 エリザさんはついに編み物の手を止めてにこりと微笑む。

 そしてゆっくりと口を開いた。

「ルシーちゃんが知った世界創世の続きなんだけど……この世界はね、そうして魔法を生活だけで使っていたら、そのまま弱くなってしまったのよ。人々は低級の魔法を使うだけ、でも魔素で育つ植物や動物達は変わらずいて、魔法として消費されなくなった魔素は世界の環境に影響を与えていく。果てには魔人と呼ばれる強い魔素を受けた人まで現れて、魔族と呼ばれる種族になるまでになったわ。段々と外の環境に馴染めなくなってしまった原住民は、再び生命の危機に陥ったのよ」

「えぇ……」

 語ってくれたのは多分魔生歴になったその後の事だろう。

 しかし救いのない歴史の先にドン引きの声をつい漏らしてしまい、エリザさんは「塩梅って難しいのねぇ」と笑う。

「そして、魔族と原住民で戦争が起こった。魔素を持つ魔族こそフォス=カタリナで生きる権利があるって言い出したのよ」

「そ、それで……?」

「困りに困った原住民には戦う力がないから、助けを求めたのねぇ。自分達ではなく、外に」

「外?」

「ね、ルシーちゃん」

 エリザさんは含みのある笑みを浮かべて、じっと私を見る。

 なんで私?

 私は関係ない。ただの転生者だ。

 転生者……え、転生?

「ま、まさか……」

「そのまさかよ。フォス=カタリナの原住民は、戦えない自分達の代わりに異世界から人を呼んで戦わせたの。転生者をこの世界の『英雄』として讃えて、戦争の道具にしたのねぇ」

 想像もしてない展開に言葉を失う。

 今の時代はどうなのか知らないけど、転生者に優しいこの世界が、私と同じく転生してきた先人達の扱いが『戦争』という言葉一つで酷い扱いのように感じた。

 もしかして、私はとんでもない世界に転生してきてしまったのだろうか。

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