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27食目・それはきっと切なる願い

Penulis: 柊雪鐘
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-14 08:00:20

「でもね、ルシーちゃん、安心してほしいの」

「え?」

「戦争はね、とうに終わってるの。原住民も、魔族も、この世界に生まれた生き物でどちらもその尊厳はある。この世界に生まれた以上、そこに優劣は無いのよ――ってことで、丸く収まったの」

 エリザさんの言葉に「そうなんだ……」と、ほっと胸を撫でおろす。

 戦争が無事に終わったのならば、私の命はすぐにでも危機に晒されることは無いのだと、安心できた。

 ……否、まだこんなことで安心できる訳がない。

「でも、ちょっと待って。この世界に生まれた以上?それって転生者は含まれるんですか??」

「あはは、良い所に目をつけるのねぇ!そう、そこが問題なの!」

 潔く、そして大きく、それでも優雅さを保ちながらエリザさんは笑い飛ばす。

「戦争が無事締結するのは良かったのだけど、心許ない魔法の力を集約させて編み出した召喚魔法は強力だったわ。戦争は終わってもその召喚魔法には終わりが無くて、この世界に転生者は増えていく。戦力として呼び出された転生者、そして戦争が終わってもなお呼ばれる転生者、今度はこちらが問題になってしまったわ」

「わあ、泥沼……。その上で、私が来たということですか……」

「ルシーちゃんはまだいい方ね。だってあなたはどんな結末であれ、ちゃんと人生を終えてこちらへ来たでしょう?でも、この時の転生者は違うのよ」

「えっ……」

「彼らはまだ人生の途中、転移者だったのね。魔法で人手を呼ぶことに精一杯で、呼ばれた人については思考の外だったようよ。ある意味、研修職らしさはあるけどね」

「じゃあ、今ある環境があるのは……」

「こちらの世界に呼ばれた彼らの為に、これから呼ばれる転生者の為に、宿主制度も転生者免許も見た目で誰がなんのお仕事をしているか分かる制服も、ぜーんぶ転生者の為。転生者を生み出してしまった私達エルドアマリナ王国民は、転生者を同じ王国の民として認めなければならない。どれもお互いの距離感を広げない為に作られた制度なの」

 エリザさんのお話を聞いて、言葉を失う。

 出会う人が優しいのも、色々世話を焼いてくれたり教えてくれるのも、全部転生者の為。

 全てが転生者を生み出した責任として作られたものだったとは。

 しかも、その制度が生まれて暫くが経っている。

 自分には見えない犠牲者の姿が、脳裏でちらついた。

「……あの、今は私のように死んでしまった人だけが転生するんですよね?」

「ええ。ルシーちゃんが通ってきた召喚用の魔法陣は消せなかった。それでも、機能の抑制はできるようになったの。こちらへ呼ぶ魂の選別、召喚の周期とかね。それを成功させたのが、転生したばかりのルシーちゃんにこの世界を教えたクリステフ様よ」

「そう、だったんですか……。エリザさん、詳しいですね……」

「うふふ、宿主制度を受ける人は、こういった時代背景を学んで理解した人じゃないと申請できないのよ」

「それも制度の内なんですか?」

「もちろん。こちらの世界に渡って来て、何も説明できないまま『この世界をお楽しみください』なんて言えないでしょ?」

 にこりとエリザさんは微笑む。

 その笑みにはどんな努力があったのだろう。

 『子供が欲しいから』と言っていたけど、簡単な気持ちで受けたものではないだろうし、こうして制度を利用できるようになるのもかなり努力したのではないかと思う。

 そして、こうしてこの世界に飛んできて、この世界の説明を受けながら生活を始めようとする自分がなんとも恵まれているような気がした。

 素直に、ありがとうって言いたい。

「……あ、そっか」

「うん?」

 ……ふと、腑に落ちたことがあった。

 それは別れ際のクリステフさんの言葉。

『今後の貴女達の生活を支えることですが、出来ればこの国を嫌わず、貴女がこれから生活する国として愛して頂ければと思っております』

 それはきっとこの国の歴史を知っても、この国を好きでいて欲しい。

 そんな願いが込められているんだろう。

 そんなことを思った。

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