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7食目・異世界転生者、免許をもらう。

Penulis: 柊雪鐘
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-24 08:00:32

 大きな扉を通って中に入ると、来客者を案内するように石畳の床には紺色の絨毯が敷かれていた。

 絨毯の先には長く大きなカウンターがあり、受付なのか等間隔に人が並んでいる。

 ちなみに来客はエリザさんのような待ち人のような服装をしている人もいれば、お仕事をされているのか異国風でもピシッとキメた服装をしている人もいる。

 みんなここに、何かしらの用事があるようだ。

 あ、あの人の背中、おっきい武器背負ってる……。

「ルシーちゃん、こっちよ」

 受付や用事があるのか通路を移動している人がいる中を、エリザさんは迷うことなく縫うように進んでいく。

 このままだと私が迷子になりそう。

 大人しくその背をついていくことにした。

 カウンターの端から2番目、『転生者登録窓口』の受付でエリザさんは声をかける。

「こんにちは、今よろしいかしら?」

「大丈夫ですよ。本日はどのようなご要件で?」

「こちらのルシーちゃん――ルシェット・サイファ=明音の異世界転生者免許の取得手続きをお願いしたいの」

「かしこまりました。ではルシェットさん、こちらへ」

「あ、はい」

 受付のお兄さんのじっと見つめる視線に、私はエリザさんの隣に並ぶ。

 するとお兄さんはまず胸元の名刺を見せてきた。

「初めまして、ルシェットさん。私は今回の手続きを担うアスパィア・ヴィッヒューと申します」

「あ、あす……?ゔっ、ヴィっ……」

 にこりと微笑むお兄さんは気さくそうで朗らかな笑みなのに、名前の難度はとても高い。

 なんて言ったかも把握できないし、何より発音も難しすぎる。

「なるほど、名も苗字も馴染みのないもののようですね。あ、呼びにくいと思いますので私のことは|義政《よしまさ》でいいですよ」

「急に渋いですね?」

「よく言われます」

「それでは書類のチェックを開始します」と義政さんはエリザさんから渡された書類に目を通す。

 さっきの自己紹介の流れはわざとだろうか、中々手慣れているように感じた。

 ……にしても義政って、まるで江戸時代のような……。

「確認事項です。名前はルシェット・サイファ=明音、17歳でニホン出身、宿主制度利用者であるエリザ・サイファとの親子関係了承済み……大丈夫そうですね。では次、ルシェットさんに質問します」

「あ、はい」

「この世界の名前は?」

「フォス=カタリナですよね」

「この王都の名前は?」

「スカイクート、でしたっけ」

「ええ。こちらの通貨についてお話は聞きましたか?」

「はい。銅、錫、銀、金、稀貨の5種類でしたよね」

「正解です。金銭感覚はまだ備わっていないと思うので、異世界転生者貴方がたに分かりやすい説明をすると、金貨1枚で1万円です」

「な、なるほど……? もしかして、日本人用の説明文あります?」

「そうですね。他国からの転生者もいますが、ニホン出身者はそこそこ多いんですよ。で、ある程度説明をすると理解してくれるので、色々と手間が省けていつも助かってます」

 にこっと微笑む義政さんは、それはもうキラキラしい笑顔だった。

 きっと、過去に何かあったんだろうな……。

「ではこれから免許の方を発行させていただきます。この免許についていくつか説明しますね」

 そんな言い出しから、義政さんの説明が始まる。

 要約すると……

 ・免許を持つ者はスカイクートの住人として認められ、生活における衣食住や医療、設備を優先的に受けることができる。

 ・正規の給与額で就職することができる。

 ・フォス=カタリナの住民として全ての権利を得られる。……とのこと。

 ひとつずつ説明を貰って、私の手には運転免許証みたいなカード型の免許が与えられた。

 魔法の世界でもそこは変わらないのね、と思うことなかれ。

 魔法を持ってない相手、(つまり転生者ね)にも免許の所持を見せることは大切なのだそうだ。

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Komen (1)
goodnovel comment avatar
亜依
明音ちゃん、まさかの転生者だったとは…! 異世界に飛ばされる展開から、 クリステフさんやエリザさんとの出会いまでが丁寧で、 読んでいてずっとドキドキしてました... この世界の人たち、みんな優しくて温かくて…… エリザさんの娘になってほしいという言葉も胸にくる…...... ルシーちゃん呼びもめちゃくちゃ似合ってて好きです…! 転生者が他にもいる世界だからこそ、宿主制度とか名前のルールとか、免許とかパスポートみたいな仕組みがあるのも面白い... 明音ちゃんちゃんがこの世界どんな新しい人生を歩むのかワクワクします...️...
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