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二人の力が暴く敵の本拠地

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-08-23 04:16:28

翌朝、私は鳥のさえずりで目を覚ました。

カイルの腕の中で、とても安らかに眠れた。

運命の恋人……昨夜の彼の言葉を思い出すと、胸が温かくなる。

「おはよう」

カイルが目を開けて、優しく微笑んでくれる。

「よく眠れたか?」

「とてもよく眠れたわ」

私は彼の胸に顔を寄せた。

「あなたがいてくれたから」

「俺もだ」

カイルが私の髪にキスしてくれる。

「君がいると、心が安らぐ」

幸せな朝の時間。

でも、今日は大切な日。

指輪の力で、敵の本拠地を突き止める日。

「準備はいいか?」

カイルが真剣な顔になった。

「指輪の力を使うのは、危険を伴う」

「分かってる」

私も覚悟を決めた。

「でも、やらなければ」

「そうだな」

カイルが私の手を握った。

「一緒にやろう」

朝食を済ませてから、私たちは庭に出た。

ソフィアも一緒に来てくれる。

「何か手伝えることがあったら、言ってください」

「ありがとう」

私は感謝した。

「あなたがいてくれるだけで心強いわ」

私たちは昨日と同じ場所に座った。

草の上に、三角形を作るように。

でも、今日は私とカイルが手を繋いでいる。

「二人の力を合わせよう」

カイルが私の目を見つめた。

「君への愛を込めて」

「私もよ」

私も彼を見つめ返した。

「あなたへの愛を込めて」

私は指輪を両手で包んだ。

カイルも、その上から手を重ねてくれる。

「心を静めて、石に意識を集中」

母の教えを、二人で実践する。

石が温かくなってきた。

一人で使った時より、ずっと温かい。

愛の力が、魔法を強くしてくれている。

「見せて……」

私が呟いた。

「ザイヴァスの本拠地を」

カイルも一緒に念じてくれる。

石が強く光り始めた。

青い光が、私たちを包んでいく。

頭の中に映像が浮かんだ。

今度は、一人の時よりもずっと鮮明。

まるで、実際にその場にいるような感覚。

暗い地下神殿のような場所。

石造りの巨大な空間に、不気味な祭壇がある。

祭壇の上には、大きな水晶球が置かれている。

「ここが……」

カイルの声が聞こえた。

彼にも、同じ映像が見えているのね。

「ザイヴァスの本拠地」

祭壇の前に、フードを被った人影が跪いている。

「主よ」

その人影が祈るように言った。

「王女と偽王子の力が、覚醒しつつあります」

偽王子……カイルのことね。

「時間がありません」

別の人影が立ち上がった。

「今すぐ、最終段階
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