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世界に広がる愛の輪と新たな脅威

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-09-17 06:07:11

ガルバニア王国での成功から一週間が過ぎた。

私たちは王都に戻る途中、各地で素晴らしい光景を目にしていた。

街道沿いの村々で、人々が愛を語り合っている。

恋人たちが手を繋ぎ、家族が微笑み合っている。

愛の輪が、確実に広がっていた。

「すごいわね」

私は馬車の窓から外を眺めていた。

「ガルバニア王国の話が、もう他の村にまで伝わってる」

「愛を取り戻した話は、人々の心に希望を与えるからな」

カイルが微笑んだ。

「君たちの活動が、世界を変え始めてる」

確かに、変化を感じる。

人々の表情が明るくなった。

愛を語ることを恥じなくなった。

素晴らしいことね。

「リア様」

セラフィナが資料を持ってきた。

「各国からの報告が届いています」

「どんな?」

「愛の騎士団の活動に感銘を受けた人たちが、各地で愛を守る活動を始めているとか」

各地で愛を守る活動?

「具体的には?」

「東のアルヴェリア王国では『愛の祭り』が開催されました」

「南のベルガディア共和国では『愛の学校』が設立されたそうです」

愛の祭り、愛の学校……

素敵な響きね。

「私たちが蒔いた種が、あちこちで花を咲かせてるのね」

「でも」

ザイヴァスが困った顔をした。

「気になる報告もあります」

「気になる報告?」

「西のノルディア帝国から、不穏な動きがあるとか」

ノルディア帝国……

聞いたことのある名前ね。

確か、大きな軍事国家だった気がする。

「どんな動き?」

「愛の騎士団を『危険な組織』として警戒しているそうです」

危険な組織?

私たちが?

「なぜ危険なの?」

「『愛は人を弱くする』『軍事力を削ぐ』と考えているらしいです」

なんて偏った考え。

愛は人を弱くするどころか、強くするものなのに。

「それに」

セラフィナが続けた。

「ノルディア帝国は、近隣諸国への侵攻を計画しているという噂も」

侵攻計画?

「つまり、戦争を起こそうとしてるということ?」

「可能性があります」

「そして、愛の騎士団の活動が、その計画の邪魔になると考えている」

これは……深刻な問題ね。

愛を広げる活動が、戦争の引き金になってしまうかもしれない。

「どうしましょう?」

マーサが不安そうに尋ねた。

「活動を控えた方がいいのでしょうか」

「いえ」

私は首を振った。

「むしろ、もっと積極的に活動すべきです」

「でも、危険では?」

「危険だからこそ、愛が必要なの
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