Masuk私は素早く飛び起きた。
急いで自分の服を掴み取り、静かに身にまとった。ボタンを留める指がもたつく。10秒以内に見つからないものには目もくれなかった。マギーはドアのそばに留まり、顔をベッドの方に向けていた。
ゼッドが身じろぎした。
私たちはふたりとも完全に行動を止めた。
彼は長く息を吐き出した。その腕がシーツの上——さっきまで私の体があった場所——へと伸び、そのまま止まった。彼の規則正しい呼吸が再び戻ってくる。
マギーが私の手首を掴み、 we は動き出した。
ホテルから足を踏み出した瞬間、朝の冷たい空気に頬を撫でられた。タクシーのドアが閉まって初めて、私は息を吹き返すことができた。
ドアが閉まるやいなや、私はマギーに向き直った。
「私、どうやってあの部屋に行ったの?」
マギーはどこまで話すべきか推し量るように、長い間私を見つめていた。そして、息を吐き出した。
「飲み続けてたんです。止めようとしました、誓って止めようとしましたよ。でも、彼が視界に入った時には、ボスは完全に正気を失ってました」彼女は一呼吸置いた。「部屋の向こうにいる彼を見つけるなり……まるで何かに引き寄せられるみたいに向かって行ったんです。二度も間に割って入ろうとしたのに、私なんて目に入ってないみたいに通り抜けて」
私は目を見開いて彼女を見つめた。「……私が、彼に近づいたの?」
「『近づいた』なんて生ぬるいものじゃないですよ」彼女は唇を噛みしめた。「会場で一番強い力を持つアルファの真ん前に歩み寄って、彼の目を真っ直ぐ見つめて言ったんです。『あんなに恐ろしい顔をしてるのに、魅力的な目をしてるのね』って。直訳するとそんな感じです」
私は目を閉じた。
「彼は笑いましたよ」マギーは言葉を続けた。今でも笑いを堪えているのが声で分かった。「本当に笑ったんです。そしてそのまま……ボスを自分のものにした。彼の部下が二度ほど引き離そうとしましたけど、彼は二度とも手で制して追い払いました。その後に何があったかは、私にも断片的にしか分かりません。追いつく前に、ボスのほうが彼の車に乗せられてしまったので」
私は目を開け、窓の外を見やった。
彼は自分の部下を遠ざけた。一考の猶予もなく私を追い払うことだってできたはずなのに、彼は私を側に置くことを選んだ。ゼッドのようなアルファが、気まぐれでそんなことをするはずがない。
なぜ?
その疑問が胸の奥に居座り、離れなかった。
◇
それからの車内は、エンジンの低い唸り声以外、静まり返っていた。マギーは無言で運転手に支払いを済ませ、私たちは一緒に家の中へと入った。
家へ帰るまでの20分間、私は「自分は平気だ」と自分自身に言い聞かせていた。
だが、誰もいない空っぽの家が、その強がりを一瞬で打ち砕いた。
その時、記憶がフラッシュバックした。
暗闇の中で喘ぐ、恥じらいを捨てた自分の声。「お願い、ゼッド、お願い——」 嵐のような彼の青い瞳が、私をまるで尊く、そして罪深い存在であるかのように見つめていた。窓の外で街の光が滲む中、彼の手が私を押し開く。耳元で響く低い唸り声。「そうだ、小さな嵐(リトル・ストーム)。俺のためにイけ」
私は閉めた玄関のドアに背中を押しつけ、体中の熱が引くまでそのままじっとしていた。
なぜ彼は許したのだろう?その疑問が頭から離れない。
私はドアから身体を離した。
自分が築き上げたすべてを見回すと、目に浮かぶのはあのシルバーのドレスを着たレイラの姿だけだった。乾杯で呼ばれたケーリクの名前。私がふたりの関係にすべてを注ぎ込んでいる裏で、彼らが密かに作り上げていた生活。私が自分の人脈を使って、彼に最初の重要な投資家たちを紹介した。誰も彼を信じなかった時、私は彼のオフィスで遅くまで残り、彼を信じ続けた。ベッドで冷たく静かな夜を過ごすたびにレイラに電話をかけ、彼女に慰められながら電話口で静かに泣いた。
あのふたりが。
私の知らないところで。
一体、いつから?
悲しみは涙となって溢れ出たりはしなかった。私はもう泣かない。それは光が追い払ってくれるのを待つ、重い影のように訪れた。私が築き上げたと思っていたすべて——結婚生活も、最も親しい友情も——根底から腐り切っていたのだ。私は梯子(はしご)に過ぎず、彼らはふたりでそれを登り切ったあと、私を蹴り落とした。
私の顎が引き締まった。悲しみは、より冷酷な何かへと形を変えていく。
「車のキーを取って。ケーリクに会いに行くわ」私は命じた。
マギーはじっと私を見つめた。「本気ですか?」
私は彼女の目を見据えた。「ええ」
◇
車を運転するのは嫌いだった。主導権を失う感覚、無防備になる感覚が嫌だった。けれど今日ばかりは、自分で選んだ何かを感じる必要があった。私は自らハンドルを握った。
指関節が白くなるほど強く握りしめ、まるで悪魔に追われているかのように車を飛ばした。マギーは助手席で、珍しく口を閉ざしていた。
ケーリクの秘書は、私がデスクを通り過ぎざまに立ち上がった。「ムーンベイン夫人、お待ちください!これから重要な会議が始まります、入れません——」
私は足を緩めなかった。彼のオフィスのドアを押し開ける。
ケーリクはノートパソコンから顔を上げた。その顔に驚きがよぎったが、すぐに不機嫌そうな表情へと取り繕った。「ディライラ。今は困るんだが」
私は部屋の中へ一歩踏み出した。マギーが後に続き、無言でドアの脇に立った。
「あなた、レイラと婚約したのね」私は言った。
彼はゆっくりと背もたれに体を預けた。「何の話だ?」
私は見もせずにマギーへ手を差し出した。彼女は私の掌にスマホを乗せた。部屋を横切り、それを彼のデスクの上に置いて再生ボタンを押し、一歩下がった。
動画が私たちの間の沈黙を満たした。二度と忘れることのできない拍手と乾杯の声が、鐘の音のように響き渡る。
『レイラとケーリクに!』
彼は顔の筋肉ひとつ動かさず、顔色ひとつ変えずにそれを見ていた。動画が終わると私を見上げたが、その瞳は平板で、かつて愛に似た面影すら完全に消え去っていた。
「結婚生活なんて、もう何年も前から破綻していただろ、ディライラ」彼の声は退屈そうですらあった。「君も分かっているはずだ。子供もいない、跡継ぎもいない。一体これ以上何を期待していたんだ?」
その言葉のひとつひとつが、私の胸を抉り取っていく。
そして彼はデスクの引き出しに手を伸ばし、一枚の書類を取り出して自分の前に置いた。立ち上がりもせず、私とまともに目を合わせる誠意すら見せずに、それをデスク越しに私へと滑らせてきた。
「先月、作成させておいたものだ」と彼は言った。「離婚届だ。サインしようがしまいが、あとは弁護士が処理する」彼は腕時計に目をやった。「それと、君と、君の呪われた子宮(しきゅう)を拒絶する。終わりだ、ディライラ。ずっと前から終わっていたんだよ」
私はその書類を見つめた。
私の中で何かが弾け飛んだ。限界を遥かに超えて耐え続けてきた何かが、ゆっくりと、確実に砕け散る音だった。私の中の狼が、胸の奥深いたくさんの秘密の場所で弱々しくすすり泣いた。彼女はまだ何かが変わるのを待っていたのだ。あの長かった年月。静まり返った朝、虚しい夜、身体はそこにありながら心はとうに去っていた男と向き合って食べた食事。分かっていたのだ。自分の一部はずっと知っていた。それでも私は留まり、築き、与え、望みを捨てなかった。
私は彼を愛していた。
一番胸が痛んだのはそこだった。裏切りでも、レイラでも、ふたりの間に置かれた書類でもない。私が心から、愚かにもこの男を愛しており、彼がその愛を見つめながら、守る価値など何もないと切り捨てたという事実だった。
3秒。
自分に3秒間の猶予を与えた。
それから息を吐き出し、一歩前へ踏み出した。口から出た声は妙に落ち着いており、内面のボロボロな自分とは似ても似つかないものだった。
「よくもそんな口を」私は少し身を乗り出した。「私があなたのために開いてあげた扉の数々を忘れたの?あなたが飢えを満たす術も持たなかった頃、私の人脈を使って引き合わせてあげた投資家たちのことを?世界中があなたを見限っていた時、私があなたのオフィスで遅くまで残り、あなたを信じ続けた日々を?私があなたを作り上げたのよ、ケーリク。あなたが今立っている足場は、すべて私が積み上げたものなの」私は彼の視線から目をそらさなかった。「それを、処理すべき厄介払いみたいに書類を滑らせて渡すなんて」
部屋の中が静まり返った。
ケーリクの顎が固くなった。彼の視線が私を通り抜け、ドアの方へと向けられた。「出て行け、ディライラ」
私は振り返った。
そして、彼がそこにいた。
ゼッドが配下を従え、入り口に立っていた。背が高く、威厳に満ち、昨夜私をバラバラに解きほぐしたのと同じ磁力のようなオーラを放っていた。彼の嵐のような青い瞳が私の瞳と重なる。私たちの間の空気に火花が散った。衝撃、熱、羞恥、そしてもっと暗く飢えた何かが、一瞬にして私を満たした。彼は私たちが何をしたかを完全に知っている。そして、少しも驚いてはいなかった。
ケーリクが声を荒らげた。「出て行けと言ったんだ!」
私は外へ歩き出した。
◇
マギーと私は、会議室のガラス壁のすぐ外にある廊下で立ち止まった。ガラス越しに、ゼッドがまるで王が王座を主張するように上座に着くのが見えた。ケーリクは洗練されたプレゼンテーションを開始した。それは私が作り上げるのを手伝った、彼の姿だった。
隣でマギーが息を吐き出した。「どうします、ボス?」
私はゼッドを見つめた。記憶が鮮明に、容赦なく蘇ってくる。
暗い車内、耳元で聞こえた彼の低い声。「お前を他の男じゃ満足できない体にしてやる、小さな嵐」 私の中に挿し入れられた彼の指が絶妙に蠢き、その舌が私のクリトリスを貪る。背中をシートから反らし、絶頂が突き抜ける中で太ももを激しく震わせた私。ケーリクとの何年もの結婚生活で得たどれよりも、激しく、長く、深かった。その後、彼に強く締めつき、彼が何度も私を波の中に突き落とすたび、首筋に低く囁かれる褒め言葉にすすり泣いた私。
私は指先を軽く唇に当て、ゆっくりと息を吐き出した。
私の体はまだ心地よく痛み、まだ彼を求めて乾いていた。
背筋を伸ばすと、苛烈な計画が胸の中で芽生えた。
「マギー」私は低く、揺るぎない声で言った。「アルファ・ゼッドについて、何が分かっている?」
キャロラインの視点母の声がドア越しに、眠気で重く聞こえてきた。「キャロライン? 起きてるの、ねえ?」マシューの手はまさにその位置に残っていた——二本の指がむき出しの肌に触れ、掌の付け根が私の中心に押し付けられたまま。どちらも動こうとしなかった。背中はまだ壁に当たり、彼の体がまだ私を囲んでいた。部屋の中で聞こえるのは、速すぎて大きすぎる私たちの息だけだった。暗闇の中で彼を見つめた。彼も見つめ返した。目の中の問いははっきりしていた。俺にどうしてほしい?答えを考える暇もないうちに、また柔らかなノックが響いた。声をゆっくり眠そうなものに無理やり変えた。「うん、ママ。起きてる」わずかな間があって、外の床板が彼女が体重を移す音で軋んだ。「何か聞こえた気がしたの」彼女は言った。「大丈夫?」マシューの指が一度、私に対して痙攣した。頰の内側を金属の味がするほど強く噛み、声を均一に保った。「大丈夫。ただ……眠れなくて。さっき水を取りに起きただけ」「何か要る? お茶? 別の毛布?」「ううん。大丈夫。もう寝て」静けさが戻り、マシューが触れているすべての場所を鋭く意識させられた。胸の温かさ、太腿の間に押し付けられた彼の太腿、そしてすでにどれだけ近づいていたかの残る証拠。母の声が柔らかくなった。「わかったわ、いい子。少し休んで」足音が廊下をゆっくり遠ざかり、彼女の寝室のドアが微かに閉まる音が続いた。あと三度の鼓動、固まったまま聞いた。何もなかった。マシューの額が私の額に落ちた。息が口元を掠めた。手はまだ脚の間から動いていなかった。廊下が静かになった瞬間、マシューは手を引き始めようとした。私は彼の手首を掴んだ。彼は固まった。指が彼の肌に痕が残るほど食い込んだ。二人ともまだ息が速すぎた。母との間一髪が、すべての神経末端を生々しくしていた。「捕まりそうだった」彼は私の口に向かって囁いた。「キャロライン——」「わかってる」「止めなきゃ」「わかってる」どちらも動かなかった。彼の手は脚の間に残り、指はまだ私の濡れで滑っていた。背中はまだ壁に押し付けられ、彼の体がまだ私を囲んでいた。恐怖は消えていなかった。ただ別のものに変わっていた。今は熱のように皮膚の下に座っていた。彼はもう一度試みた。声がより深く、より掠れて。「これは狂ってる」「わかってる」手を
マシューの視点二年前、私はほとんど義理の妹の処女を奪いかけた。だがあの夜は突然訪れたわけではなかった。その数か月前から、私たちは最後の一線以外のすべてをすでに越えていた。空が明るくなるまで続いた深夜の会話。家の皆が眠っている暗いキッチンでの服の下の手。彼女が自分の手首を噛んで静かにしている間、バスルームのカウンターで彼女の太腿の間に置いた私の口。家族の夕食の後、車の後部座席で彼女の指が私のチンポを包み、扱いている間ずっと私の目を見つめていたこと。私たちは自分がしていることに名前をつけなかった。何でもないふりもしなかった。キャロラインは、皆が称賛する私の姿を超えて見てくれる唯一の人間だった。夕食中に笑顔を浮かべていても、プロジェクトが私を生きたまま食い尽くしていることを彼女は知っていた。私が沈黙するのは冷静だからではなく、頭が残酷に傾いたからだと知っていた。彼女は裏のポーチやガレージに私を見つけ、最悪の時が過ぎるまでただ一緒に座っていた。他の誰もそうしなかった。他の誰も気づきさえしなかった。私は一度も彼女を妹として見たことがなかった。両親が結婚して皆が同じ家に移り住んだ最初の週から、彼女はただのキャロラインだった。明るく、鋭く、胸が痛くなるほど美しかった。髪を結い上げるときの首の長い線。不適切なことに笑わないようにしているときの口の曲線。私を見るときだけ柔らかくなる目。私は彼女を、決して和らぎのない、定常的で絶え間ない疼きとともに欲していた。あの最後の夜、家は真夜中を過ぎて静かになっていた。両親は廊下の端で眠っていた。私はベッドに横になり、壁越しのすべての音を追い、彼女が立ち上がって床板を渡る音を聞いた。ドアを開けた。彼女は廊下に立っていた。太腿の途中で終わる薄いスリープシャツ。むき出しの脚。むき出しの足。肩に広がる髪。低い光の中でも、不公平に感じるほど美しかった。私たちは互いに見つめ合った。「眠れないのか?」私は聞いた。声は掠れて出た。「あなたもでしょ」私は近づいた。数か月の盗まれた触れ合いと未完の会話が周りに押し迫った。彼女は顎を上げた。薄いコットンの下で胸が上下するのが見えた。「これは悪い考えよ」彼女は囁いた。「わかってる」それでも私は彼女にキスした。最初の接触は、すでにしたことと、まだ欲していることのすべてを運んでいた。彼女は私の
キャロラインの視点二年前、私はほとんど義理の兄に処女を奪われそうになった。私たちはそれについて一度も話さなかった。翌朝、彼は家の皆がまだ眠っているうちに車に荷物を詰め、まともに別れも告げずに出ていった。距離は贈り物だと自分に言い聞かせた。両親が結婚した後、同じ屋根の下で暮らした時間は、必要だったまさにその時に終わった幻想だったと自分に言い聞かせた。いろんなことを自分に言い聞かせた。今、雪山の家までの最後の三マイルで雪がさらに激しく降り、タイヤが回るたびに同じ玄関、同じ廊下、古い部屋の間の薄い壁に近づいていく。クリスマス週間で、ホテルも早期の退出もできない。私の運命は本当にそんなに呪われているのだろうか?見覚えのない黒いSUVの後ろに車を止め、エンジンを切って、冷えていく金属の音を聞いた。玄関の明かりが点いた瞬間から脈が上がっていた。階段にたどり着く前に玄関のドアが開いた。マシューが入り口に立っていた。暗いセーターを着て、袖を肘までまくり、同じ鋭い顎。雪が半秒髪にかかり、すぐに溶けた。すぐに笑わなかった。私もそうしなかった。「遅いな」と彼が言った。「渋滞」彼は脇に寄って私を中に入れた。玄関は松の香りと、母が十二月にいつも灯すシナモンのキャンドルの匂いがした。コートを取ったとき、彼の指が首の横に触れた。皮膚の下で熱が広がった。先に私のほうが離れた。母がキッチンから現れ、タオルで手を拭き、義理の父がそのすぐ後ろにいた。次の数分は抱擁と雪の感想と運転についての質問で埋め尽くされた。母は私の肩を掴んで疲れて見えると言った。父はマシューの背を叩いて、先月地元の新聞に載ったシカゴのプロジェクトについて聞いた。マシューはいつもの有能さで答えた。話が私に向くと、質問は柔らかくなった。まだ契約の合間?紹介が必要?私は笑って大丈夫だと言った。マシューは母の頭越しに私を見て、何も言わなかった。彼らは私を古い部屋に入れた。マシューの部屋は隣で、以前と同じ。間の壁はいつも薄かった。カーペットの真ん中に立ち、スーツケースを開けたまま、向こう側で彼が動く音を聞いた——引き出しが開き、ブーツが床に落ちる低い音。すべての音が伝わった。ドアを閉めて、彼の足音を追わないようにした。夕食は七時に始まった。義理の父のいとこが一晩のために車で来ていて、声と目が増えた。私はマシュ
シーラの視点彼はまだ見つめていた。十五フィートのアスファルトと薄れゆく金色の光が私たちを隔て、警備員は動いていなかった。乳首はまだ親指と人差し指に挟まれ、頂きは硬く暗く、薄い黒いタンクトップは脇に引っ張られて、胸の重い曲線全体が外気にさらされていた。もう片方の手は大きく開いた太腿の間に埋まったままで、指は滑り、今はただ腫れた熱に触れているだけだった。隠さなかった。目を逸らさなかった。彼が一歩近づいた。また一歩。ベルトの無線が一度、静電気を立てて鳴った。やっと出た声は低く掠れていて、何かもっと濃いものの向こうから無理に押し出されたようだった。「お客様。これは許可されていません」私は乳首をゆっくり指の間で転がし、彼の目が落ちるのを見た。顔に戻すまで、まる一秒長く留まった。答えなかった。アクセス道路を車が通った。どこかで犬が吠えた。脈が脚の間で重く、ゆっくり打った。彼は喉を鳴らし、もう一度試みた。今度は口調がより厳しかった。「身を隠してください。今すぐ」私は頭を傾けた。その動きで自由な方の胸が揺れた。もっと強く摘まみ、柔らかな音が漏れ、彼の顎が緊る正確な瞬間を見た。「じゃあ通報すればいい」私は言った。声は落ち着きすぎて、無関心に近かった。疼く乳首の頂きを小さな円で動かし続けながら待った。彼は唾を飲み込むと顎が緊った。暗い制服のズボンの前がすでに形を変えていた。生地に押しつける太い輪郭が見えた。彼は私が気づいているのに気づいた。シャツの襟の下に赤みが差した。「公然わいせつで切符を切ることもできます」彼は言った。脅しは薄く聞こえた。「通報することも」私は肩をすくめた。タンクトップがさらにずれた。両方の胸はほとんどむき出しで、襟ぐりは下で役に立たなく伸びていた。「どうぞ」彼がまた一歩近づいた。制服の微かな糊の匂いと、その下の温かい匂いがわかるほど近く。目がまた落ちたとき、皮膚に物理的な触れ合いのように感じるほど近く。「運転の資格はありますか?」彼は突然尋ねた。声が鋭くなり、まだ立てる公式の立場を探るように。「……何か影響を受けているように見えますが」ゆっくり笑みが口を引いた。脚の間の指をさらに下に滑らせ、襞を割り、どれだけてかてかしているか、どれだけ準備できているかを見せた。「自分で中に入って確かめてみますか?」自由な手でドアのロックを外し、数イ
シーラの視点目を開けた。駐車場はまだそこにあった。光がわずかに低くずれ、金色がより濃く、より裏切るような色に変わっていた。手はすでに太腿のもっと上にあり、指先がデニムスカートの裾の下に潜り、むき出しの熱い肌を撫でていた。今度はためらわなかった。残りを滑らせ、たぶん履くべきではなかったであろう紐パンツのびしょ濡れの股間を見つけ、押し付けた。柔らかく、壊れた音が口から漏れた。噛み締めるのが遅すぎた。陰核への圧は完璧で、それでいて足りなかった。ゆっくり円を描いて擦り、すでにどれだけ腫れているか、生地が張りつき引きずられるかを感じた。もう片方の手は錨のようにハンドルに残り、指の関節が白くなった。タンクトップはさらにずれていた。片方の乳首が完全に浮き出て、薄い黒いコットンに暗く硬く尖っていた。少しだけ体を反らせ、生地がそれを擦るようにし、感覚がまっすぐに脚の間へ駆け落ちた。駐車場の向こうのアクセス道路を車が通った。遠い歩道を犬を連れた女が歩き、スマホを耳に当てていた。誰も見なかった。見ないことが、よりひどくした。より良くした。捕まるかもしれないという可能性が皮膚の下で脈打ち続けた。指を紐パンツの端に引っ掛けて脇へずらした。冷たい空気が濡れた熱に触れた。指がむき出しの肉を見つけ、予想通り、それは滑り、腫れ、疼いていた。バスの少年が自分のチンポを扱いたように、自分を扱いた。命がかかっているかのように。二本の指が私の汚れた中を滑り、集め、陰核に塗り広げた。円を描き。押し。きつく集中した模様で擦り、腰が座席から浮いた。レザーが太腿の裏側に張りついた。わずかな動きごとに柔らかく卑猥な音がした。気にしなかった。聞かせてやれ。運転席側を誰かが通り、脚を開いた私を見て、その間で動く手を見て、半分落ちたタンクトップの下で胸が上下するのを見てくれ。その考えだけで、また新しい濡れが指を覆った。一本を中に押し込み、ゆっくり、自分の体のきつい締め付けを感じ、二本目を加えた。伸びは完璧だった。短く浅い突きで自分を犯し、親指はまだ陰核を動かし、二重の感覚で視界の端がぼやけた。頭はバスに戻り続けた。手の中の彼のチンポの重さ。彼がイったときに私を見た目。茶色の瞳に、驚きと感謝と、少しの破壊が混じっていた。あのとき私は力を感じていた。今も感じていた。これは私のものだった。駐車場、リスク、ゆっ
シーラの視点駐車場は半分ほど埋まっていて、刻一刻と空いていく。私のような人間が動くには、まさに絶好のタイミングだった。ハンドルの後ろに座り、脚を少し開いたまま、素の太腿が温かいレザーに張りついていた。動くたび、ゆったりした黒いタンクトップが胸を擦った。下着はつけておらず、薄い生地は通気口から吹き込む冷たい空気をほとんど防いでくれず、乳首は硬く疼いていた。私はすでに濡れていた。その濡れ方に上品さなどなかった。汚らしく、恥知らずに濡れていて、短いデニムスカートの縫い目が太腿を閉じれば張りつくほどだった。でも閉じなかった。開いたままにして、見られるかもしれないという可能性に働かせた。これが私のすることだった。私は露出狂だった。こういう場所——公共の駐車場、忙しい歩道に近い静かな路地、犬を散歩させたりスマホをチェックしたりする人がまだいる公園の端——に車を走らせ、自分を触った。時には寸止めだけ。別の時には、視界が白く飛ぶほど激しくイって、ハンドルを握りしめなければ体を支えられなかった。いつも窓はわずかに開けたまま。いつもリスクが舌の上で重く甘く乗っていた。左側のどこかで車のドアが閉まる音がした。アスファルトを渡る足音。脈が跳ねた。音だけで、脚の間に新しい熱い湿りが広がった。見なかった。見れば簡単すぎる。知らないほうがいい。もしかしたら。誰かがちらりと見て、私の胸の上下が速すぎることや、タンクトップの片方がすでに肩から滑り落ちていることに気づくかもしれないという可能性。息を吸った。アスファルト、熱い金属、自分の肌の微かな親密な匂いと、隠す気のない興奮の匂いが一度に鼻を突いた。手は太腿の上に置かれ、指を動かすたび柔らかい内側の肌に触れた。まだ上には動かしていなかった。まだ、このまま走り去るかもしれないふりをしていた。長い一日の後の休憩のつもりでいるふりを。そんなことはなかった。髪をかき上げようと手を伸ばしたとき、タンクトップがまたずれた。冷たい空気が片乳の上の曲線にキスした。乳首はさらに硬く尖り、黒い生地の下に小さな硬い頂きとしてはっきり見えた。車の前を通る誰でも見える。二度見すれば、ここで何をしているのか正確にわかるだろう。陰核の後ろで、低く、定常的で執拗な鼓動が始まった。指をもう一寸上に滑らせた。自分の体の熱さに驚いた。驚くべきではないのに。これは