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第296話
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クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第296話
「ええ」深雪は頷いた。「覚えておいて。できるだけ大きく騒ぎにするのよ。静雄を世間の矢面に立たせる！」「承知しました」大介は命を受け、その場を後にした。オフィスに残された深雪の目は冷たく光っていた。静雄、あんたが情を捨てたのだから、私も容赦はしない。「静雄がリゾートで芽衣と逢瀬を重ねている」という記事がすぐに主要メディアに拡散された。世論はたちまち沸騰した。＜静雄って男、あまりに無責任だ！＞＜会社が崩壊寸前だってのに、女と遊んでる余裕があるのか！＞＜目が曇っていたな、どうしてこんなのを社長に選んだんだ！＞＜こんな奴に会社を任せる資格なんてない！＞＜今すぐ辞めさせるべきだ！＞松原商事では、急遽株主総会が開かれた。「前回、あいつは自分の資金を担保にして会社を救うと言っておきながら、その後は姿を消した。それでも女の方は容赦せず、我々にわずかな猶予を与えただけだ。だが肝心の執行者がいなければ、取締役会は完全な権限を行使できない。結果、会社は立ち行かなくなっている！」報道の追い打ちに、取締役たちの怒りは爆発した。「今がどういう状況か分かっているのか？！看病するにしても、自分の立場を忘れるとは何事だ！」「大介、静雄は何か言い残してはいかなかったのか？」「......いいえ」大介は首を横に振った。「社長はそれについて私に話しませんでした」「ならば今すぐリゾートに行って、静雄を連れ戻せ！」ある株主が机を叩いて命じた。「どうあっても会社に戻らせ、大局を収めさせろ！」「......はい」大介は答えたが、その声には隠しきれない疲れがにじんでいた。女に振り回された挙げ句に自分が板挟み。一体自分は何のために働いているのか...... だが、この局面はもはや会社の生死に関わる。静雄が戻らなければ、本当に松原商事は終わる。そこで、大介は深夜でリゾートへ向かい、ついに静雄の前に現れた。「社長、今すぐご同行ください！」開口一番、彼は告げた。「株主たちは会議を開き、社長を解任しようとしています！」「何だと？！」静雄は愕然とした。「そんな馬鹿な......」「ご存知なかったのですか？」大介は声を荒げた。「社長と芽衣様のリゾートでの逢瀬が報道
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第295話
「静雄、お願い......今回は私の言うことを聞いて。私たちの未来のためだと思って......少しの間でいいから、休んでくれない？」芽衣は涙に濡れた瞳で彼を見上げた。その儚げで切なげな姿に、静雄の心は揺らぎ、ついに頷いてしまった。「......わかった。君の言う通りにするよ」「やっぱり、私のこと一番大事にしてくれるよね」芽衣は泣き笑いしながら、強く彼を抱きしめた。静雄はその背中を軽く叩きながら、複雑な眼差しを浮かべていた。だが、会社の状況は待ってはくれない。深雪と遥太の攻勢は日に日に激しさを増し、松原商事の株価は下落を続け、市場シェアは削られ、人心は乱れて危機が迫っていた。このままでは、本当に会社が潰される。「早く戻らなければ......」そう思いながらも、病弱を装い彼に縋る芽衣の姿を前に、静雄はどうしても踏み出せずにいた。その時、携帯が震えた。発信者は大介だ。静雄は逡巡した末、通話を取った。「社長、一体いつ戻られるんですか！」スマホの向こうで、大介の声は切羽詰まっていた。「会社はすでに大混乱です。株主全員が社長の帰還を待っています！」「俺は......」静雄が言いかけた瞬間、芽衣が素早く携帯を奪い取った。その後、電話には無機質な切断音だけが響いた。「あの女は......まるで災いそのものだ！」大介は思わず机を叩いた。「なぜ社長は彼女の言いなりになるんだ！このままじゃ、本当に会社が潰れてしまう！」「株主たちにはどう説明すれば......」隣にいた助手が不安げに尋ねた。「どうするも何も......もう成り行きに任せるしかない」大介は深い溜息を漏らした。「今できるのは、せめて会社を必死でつなぎ止めることだ」「でも......」「もういい！」大介は遮った。「社長が戻るのを待つしかないんだ」「......せめて早く帰ってきてくれれば」助手は暗い声で呟いた。大介もまた、胸の中は先の見えない不安で埋め尽くされていた。その頃、深雪のオフィスで。「社長は依然として戻ろうとしません」大介が報告した。「芽衣様が彼を縛りつけていて、会社へ戻す気配はありません」「戻らないならそれでいいじゃない」深雪は冷ややかに言った。「
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第294話
「はい！」部下たちは声を揃え、元気に返事をした。遥太の命令のもと、深雪の会社は松原商事の市場シェアを狂ったように奪っていった。松原商事の株価は下落の一途を辿った。社員たちも動揺し、完全に混乱状態だ。ついに株主たちが黙っていられなくなった。彼らは次々に静雄へ電話をかけ、すぐに帰社して事態を収拾するよう迫った。「松原社長、一体いつ戻られるんですか！」ある株主は電話で切羽詰まった声を上げた。「会社はもう崩壊寸前です！このままでは本当に終わってしまいます！」「そうです、社長！」別の株主も追い打ちをかけた。「今すぐ戻って采配を振るっていただかないと！」静雄は鳴り止まぬ電話に頭を抱えた。もちろん彼自身も今すぐ会社に戻りたい。だが、芽衣が必死に彼を引き止めていた。「静雄、行かないで！」病床の芽衣は蒼白な顔で、彼の手を強く握りしめた。「苦しくて......あなたにそばにいてほしいの」「芽衣......わかってる。でも会社の方も......」静雄は困り果てた顔をした。「嫌よ！」芽衣は涙ながらに叫んだ。「私にはあなたが必要なの！あなたがいなくなったら、一日だって生きていけない！」「馬鹿なことを言うな！」静雄は胸を締めつけられる思いで彼女を抱きしめた。「俺がお前を見捨てるはずがないだろう。でも会社もこのままじゃ......」「やっぱり私を置いて行くんだわ！」芽衣は子どものように駄々をこねた。「私の体を気にかけてくれるのはあなただけよ！いなくなったら、私はもう耐えられない！」「芽衣......頼む、そんなこと言うな」静雄は深いため息をついた。「わかった。しばらくは行かない。会社のことは電話やオンライン会議で処理する。これでいいか？」「本当？」芽衣は涙に濡れた瞳で見上げた。「私を騙さない？」「騙すわけないだろう」静雄は彼女の髪を撫でた。「だが、深雪がこの隙を突いて会社を蝕んでいる。放置すれば、本当に俺たちの未来が危うくなる」「静雄......」芽衣は彼の胸に寄り添い、頷いた。だがその表情には、一瞬だけ陰りが走った。リゾートの陽光はあまりにも明るく、静雄の心の暗雲を逆に際立たせた。彼はバルコニーのデッキチェアに腰掛け、携帯を見つ
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第293話
「過去のことはもう言うな」静雄は言った。「俺たちは前を向くべきだ」「でも......どうしても考えてしまうの」芽衣の声には、悔しさとやり場のない思いが滲んでいた。「もしあの時、私があなたを離れなければ......今、あなたのそばにいるのは私で、深雪なんかじゃなかったはず」「芽衣......」静雄は言葉を失った。「私だって思ったの。もし別れなければ、どんなに良かったかって」芽衣は続けた。「でも、この世に『もしも』なんてない。私たちはもう取り返しのつかないすれ違いをしたのよ」「いや、まだ終わってない」静雄は突然、強い口調で言った。「俺たちは今、また一緒にいるじゃないか」「でも......私たちの間には、もうあまりに多くのものが横たわっている」芽衣は悲しげに首を振った。「人も、過去も、全部......本当に戻れるの？」「戻れるさ」と静雄は答えた。「俺たちがまだ愛し合っている限り、何ものも邪魔はできない」「でも......深雪が......」芽衣は言い淀んだ。「深雪は俺たちの障害にはならない」静雄の目は突然、残忍な光を宿した。「俺がすべて片づける」延浩の容体は皆の心を占めていた。深雪は看病を続け、一瞬でも彼から離れるのが怖かった。幸いにも延浩は体が丈夫で、数日休養しただけで日常生活ができるほどに回復した。その日、彼はベッドに寄りかかり、資料を手に険しい顔をしていた。そこへ深雪がご飯を運んできた。「どうしたの？」深雪は心配そうに声をかけた。「松原商事の財務レポートに不審な点があることに気づいた」延浩は資料を差し出した。「ここを見ろ。それからここ。明らかな不正がある」深雪は資料を受け取り、目を走らせた。読み進めるほどに、心臓が締めつけられる。それは意図的に仕組まれた大穴であり、金額も莫大で、松原商事の根幹を揺るがしかねないものだ。「これはいつのレポート？」深雪は問いただす。「ここ数期の分だ」延浩は即答した。「静雄が資産を移している可能性が高い」「あの男め！」深雪は奥歯を噛みしめた。「松原商事を空っぽにするつもりなのね！」「まだ仮説だ。証拠が要る」延浩は冷静に言った。「すでに調査を進めさせている
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第292話
「だから？」深雪が聞いた。「俺は奴らチンピラのアジトを秘密裏に押さえ、警察に匿名で通報するつもりだ。まとめて捕まえるぞ」延浩の動きは素早かった。証拠を手に入れるや否や、彼はすぐに警察へ送った。警察も即座に行動し、その場所に突入、全員を逮捕した。さらに捜査の過程で、彼らの口座に最近巨額の入金があったことが発覚した。その資金の出どころを追うと、送金元は陽翔の口座だ。この知らせに、遥太は冷笑した。「陽翔か、前回こっぴどくやられてまだ懲りてなかったのか。深雪に手を出すとは......今回は必ず地獄を見せてやる！」彼の眼には怒りの炎が燃え盛り、すべてを焼き尽くす勢いだ。「落ち着いて」深雪は彼の手を押さえ、静かに言った。「君の気持ちはわかる。私だって同じ。でもいまは芽衣と全面対決する時じゃない」「だが......」遥太が食い下がろうとした瞬間、深雪がきっぱり遮った。「あなたが私のために復讐したい気持ちはうれしい。でも、私たちの第一の目的は静雄を倒し、松原商事を掌握することよ」深雪の声は穏やかだったが、反論を許さない力があった。「そうしてこそ、寧々の仇を討ち、芽衣と陽翔に本当の報いを与えられるの」「......でも、陽翔を今すぐにでも叩き潰したい」遥太は悔しそうに顔を歪めた。「もちろん放っておくつもりはない」深雪は首を振った。「この件は警察に任せる。彼を必ず法の裁きにかけさせる」その目に冷たい光が宿っていた。「私は必ず陽翔が裁かれるまで監視するから」「うん......それが一番いい」遥太は息を吐き、しぶしぶ頷いた。一方、リゾート施設で。静雄は芽衣を連れ、療養という名目で滞在していた。芽衣は病弱を装い、ことさらに静雄へ寄りかかっていた。「静雄......私って本当に駄目な女ね」芽衣は彼の胸にもたれ、弱々しい声で囁いた。「いつも体を壊して、あなたに迷惑ばかりかけて......」「そんなこと言うな」静雄は彼女の髪を撫で、優しく答えた。「ただ疲れているだけだ。休めばすぐに良くなる」「でも......最近は何をしても辛くて......生きる気力すらなくなりそうで」芽衣の目には涙が光った。「これって、ひどい病気なんじゃないかしら？」「
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第291話
深雪は答えず、黙ってラーメンを延浩の前に差し出した。彼が夢中になって食べる姿を見つめながら、自然と口元に安堵の笑みが浮かんだ。「ゆっくり食べて、熱いから」彼女は柔らかく声をかけた。その姿はまるで優しい妻のようだ。「うん」延浩は頷きながら口を動かし、もぐもぐとしながら言った。「君の作る麺は本当に美味しいな」「好きなら、もっと食べて」深雪は笑みを浮かべた。「これから毎日でも作ってあげる」「本当か？」延浩は顔を上げ、深い情を込めて彼女を見つめた。「じゃあ約束だ」深雪はその視線に思わず赤くなり、うつむいて小声でつぶやいた。「約束なんて......」それを聞いて、延浩は明るく笑った。「君はいつも強がりだな」深雪の頬は赤らみ、彼を睨むように見て言った。「先に食べなさい、冷めちゃうから」「わかった、君の言う通りにするよ」延浩は笑って再び箸を進めた。遥太がわざとらしく咳払いをし、二人の甘い空気を断ち切った。「そろそろ本題に入ろう」深雪は我に返り、頷いた。「ええ。もう大介には命じてあるわ。静雄と芽衣の動きを密かに監視している」「大介？」延浩は顔を上げた。「信用できるのか？」「うん、信用できる」深雪は即座に答えた。「元は静雄の部下だったけど、今は完全にこちら側についている。どう動くべきかも分かっている」「それならいい」延浩は頷いた。「とはいえ、慎重に動かないとな。静雄は何をしでかすかわからない」「ええ、気をつけるわ」深雪の目は鋭さを帯びていた。その時、遥太が口を開いた。「さっき情報が入った。静雄は芽衣を連れて会社を離れ、あるリゾートに向かったらしい。芽衣の病状悪化を理由に、療養するそうだ」「やっぱり......」深雪の眉がわずかに吊り上がった。「芽衣の病は芝居だったのね」「その通り」遥太は肩をすくめた。「あの女、本当に演技がうまい」「ふん、せいぜいその程度の芝居だわ」「どうする？」遥太が聞いた。「今がチャンスだ。静雄に致命的な一撃を与えるべきじゃないか？」「もちろん」深雪の目が冷たく光った。「静雄がいない時こそ、松原商事の市場を奪う好機。スピードを上げるわ」「承知した。すぐに段取り
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