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第1030話

Auteur: レイシ大好き
きちんと世話をした、それで最後の情分は果たしたつもりだった。

だが、どうやら加津也の考えはそうではなかったようだ。

彼は不満げにそうに言った。

「これまで初芽が俺にしてくれた全部、ちゃんと心に刻んでおきたいんだ。

そんなふうに、軽く言わないでくれ」

加津也は理解できないというように眉を寄せた。

もし以前の初芽なら、きっと甘えてきたはずだ。

だが、彼女の声は冷たく、どこか疲れていた。

「話っていうのはそれだけなら、もう切るね。

病院にいる間、自分の体も大事にして。必要なことがあれば、介護士さんに言って」

そう言って、初芽は電話を切った。

真っ暗になった画面を見つめながら、加津也はしばらく呆然とした。

いつからだろう。

自分が初芽にとって、特別じゃなくなったのは。

確かに、彼女は自分の好きな料理を用意してくれていた。

だが、それも彼女が直接来てくれるのとは違う。

その「重み」がまるでなかった。

ため息をつきながらベッドに横たわり、スマホで二人の過去のチャットを遡る。

そこには、かつての親密さが残っている。

なのに、今はすべてが変わってしまったように感じられた。

一方そのころ、初芽は伊吹の別荘にいた。

電話を切ったあと、彼女の顔にはあからさまな軽蔑の色が浮かんでいた。

さっきの電話、意図が見え見えだった。

ようやく気づいた。

彼は自分を、ただの「便利な存在」としてしか見ていない。

それ以上でも以下でもない。

肩に頭を預けてきた伊吹が、心配そうに彼女を見上げる。

初芽は首を振り、何でもないと答えた。

「変わったとしても、結局は考えが浅いままね」

そう呟いてスマホを置くと、初芽は腕を伸ばして伊吹の首を抱き寄せた。

二人の距離はすぐに縮まり、頬が触れるほど近づく。

伊吹は感じていた。

彼女は救い出してから、本当に変わった。

以前よりもずっと、自分に寄りかかってくる。

今の初芽の瞳には、ほとんど自分しか映っていない。

加津也の話題も、もうほとんど出てこない。

そんな彼女を、伊吹はたまらなく愛しく思った。

彼は認めざるを得なかった。

この女に、心を奪われていることを。

好きという感情には、もともと独占欲がつきものだ。

しかも、彼女を狙う男は自分だけではない。

ならば、手を使ってでも繋ぎ止めなければなら
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