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第1060話

Author: レイシ大好き
ここまで来て、まだ安東家の人間をそんなふうに切り分けるなんて。

いったい何の意味があるっていうの?

紗雪は口元を上げた。

「辰琉は安東家に育てられた人間ですよ。子が道を外したら、父にも責任がある。安東社長と、本当に何の関係もないとでも?」

美月はしばらく言葉を失った。

やがて諦めたように息を吐く。

「好きに言えばいいわ。どう言われても、私は二言を翻すことなんてできないから」

紗雪には、その言い分がひどく滑稽に思えた。

でも分かっていた。

美月が一度決めたことは、簡単には変わらない。

ならもう言っても意味がないし、ただ相手を不愉快にさせるだけだ。

そんな骨折り損のこと、ここでする必要なんてない。

「もう決めたなら、これ以上言うことはありません」

紗雪は立ち上がった。

「会長。今後、こういうことは私に相談しなくていいです。ご自分で決めれば」

そう言い捨て、紗雪は踵を返した。

だが美月は、当初の目的を思い出したように呼び止める。

「待ちなさい。他にも話があるのよ」

紗雪は振り向きもせず、淡々と返した。

「結構です。相談されなくても、私は会社の決定に従います」

その態度に、美月の胸に怒りが燃え上がる。

「母親に向かって、その態度は何?」

「会長。ここは会社です。私たちはただの上下関係です」

紗雪は振り返り、鋭い視線で美月を見つめ、少しも引かなかった。

正直、紗雪は怒っていた。

けれど、もう変えられない現実でもある。

それでも胸の奥に澱んだものは、どうしても流れ出てくれない。

まして美月の堂々とした顔を見れば、なおさら苛立ちが募る。

今さら「親だから」と圧をかけられても、言葉が出ないほど呆れるだけだ。

まさか、母娘がここまで来るなんて。

入院していた時は、あんなに穏やかだったのに。

美月もまた、紗雪の気丈な態度に腹を立てていた。

自分は母親なのに、娘から一片の敬意すら感じられない。

それなら、母である意味は何なのだろう。

「紗雪はまだ私を母と思っているの?」

その言葉に、紗雪の動きが止まる。

こんな直接的な問いを投げられるとは思っていなかった。

「いえ、そんなつもりは......」

紗雪は目を伏せる。

心の奥では、確かに美月を母としている。

越えてはならない一線があることも分かっている。

だが、
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