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第372話

Author: レイシ大好き
紗雪はうなずいた。

「さっき胸が苦しいって言ってたから、特別に薬を買ってきたの。早く飲ませてあげて」

「はい」

秘書がその場を離れようとしたとき、紗雪が声をかけた。

「私が買ったってことは言わないで、飲まない可能性があるから」

秘書は少し不思議に思ったが、言われた通りにすることにした。

この二人って、母娘なんだよね?

ただの薬を渡すのに、なんでこんなにまわりくどいことをするんだろう?

普通、母娘だったらもっと堂々としていいんじゃないの?

そう思いつつも、最終的には指示通りに従うことにした。

きっと、そういう母娘の距離感なんだろう。

彼にはよく分からないけど、まあ尊重するしかない。

自分はただのサラリーマンだし、そこまで深入りする必要もない。

それに、大事なのは雇い主、

つまり会長の体調をしっかり管理することだ。

厳密に言えば、彼の直属の上司は会長一人だけだ。

そう考えると、彼の中でさらに気持ちが固まった。

とにかく会長の健康を守ること。

それ以外のことは、関わらない。

秘書が部屋に入ると、ちょうど美月が胸を押さえて大きく息をしているところだった。

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