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第3話

作者:
周囲のざわめきがどんどん大きくなった。瑛介がどれほど沙耶を愛しているか、琴音はずっと前から知っていた。それなのに、実際に周りに言及されると、琴音の頭の中は真っ白になった。心の一部をえぐり取られたようで、その場に崩れ落ちそうになった。

気がつくと、琴音は瑛介の後を追っていた。

瑛介は沙耶を最上階のスイートルームへ連れていった。気が急いていたのだろう、部屋のドアを閉めることも忘れて、中の声が外まで漏れてきた。

「瑛介!」沙耶が泣きながら問い詰める。「私のことを憎んでいるんじゃないの?私が彼女さんのドレスを汚したからって、1億も要求したくせに。どうして私を買ったの!?

まだ私のことが好きなの……ねえ、そうでしょ……」

瑛介は鼻で笑った。「お前のことが好きだと?」

彼は沙耶の手首をぐっと掴むと、低い声で言い放った。「沙耶、よくそんなことが言えたな。お前を買ったのは、ただお前を苦しめるためだ。それに、お前の初めてはもともと俺のものだったはずだからな。

昔、どうやって俺を誘惑したか、思い出させてやろうか?」

瑛介が吐き出す言葉は一語一句が憎しみに満ちている。だが、重ねる唇には隠しようのない愛情が滲んでいた。

ドアの外に立ち尽くす琴音は、瑛介が沙耶をベッドに押し倒し、焦るようにドレスを破る姿を、ただ見つめることしかできなかった。

衣服が剥ぎ取られ、狭い室内には二人の荒い息遣いだけが響いた。

ついに沙耶の体を自分のものにした瞬間、瑛介の目尻から不意に一滴の涙がこぼれ、彼女の鎖骨に落ちた。

「瑛介、泣いているの?」沙耶は目を見開いた。

瑛介は彼女の腰をきつく引き寄せ、掠れた声で言った。「黙れ」

琴音は全身を激しく震わせた。爪が手のひらに食い込むほどきつく握り締めたが、痛みすら感じなかった。

二人は愛し合い、何度も瑛介が沙耶を求めた。力尽きて気絶した沙耶を、瑛介が腕に抱き寄せて愛おしそうにキスをしながら、何度も優しく沙耶の名前を呼んだ。

見つめていると、琴音の心はついに粉々に砕け散った。

琴音はサロンを出て、足取りがふらついていた。

そして突然、車のヘッドライトに照らされた。

ドン!

避ける暇もなく、琴音は車に跳ね飛ばされ、アスファルトの上に崩れ落ちた。凄まじい痛みが一瞬で全身に広がった。

薄れていく意識の中、通行人が叫び、慌てて救急車を呼んでいる声がぼんやりと聞こえた。

次に目が覚めたとき、病院にいることに気づいた。

「本当によかった、お目覚めですね。これから緊急の手術が必要になります。手術の同意書にご署名をいただく必要がありますので、ご家族に連絡をお願いできますか」

枕元に立つ看護師たちが、焦ったように手術同意書を手にして促してきた。

まだはっきりしない頭で、琴音は無意識にスマホを手に取り、画面の一番上に表示されている番号へ電話をかけた。

コール音が鳴り響く中で、それが瑛介への電話だと、ようやく気がついた。

急いで通話を切ろうとしたが、もう電話はつながってしまった。しかし耳に入ってきたのは、沙耶の吐息の混じった声だった。

「瑛介、彼女さんから電話よ……こんな時間なんだから、急用かもしれないでしょ……行ってあげて、私を帰してよ……もう耐えられないわ……」

次の瞬間、遮るように冷たい瑛介の声が響き渡った。

「放っておけ。

沙耶、俺がお前の時間を丸一晩買ったんだぞ。夜はまだ終わってない。逃げられると思うな」

続いて、甘いキスの音が耳に聞こえた。

ブツリと、通話が一方的に切られた。

看護師は気まずそうに琴音を見つめた。「あの……どなたか他に、頼めるご家族はいらっしゃいませんか?」

琴音は震えながら両目を閉じた。涙があふれて止まらなかった。心臓が、刃物で真っ二つに裂かれたようで、全身が冷えていくのを感じた。

「自分で……署名します。どんな結果になろうとも……自分で責任を負います」

かすれた声を振り絞ると、琴音は震える手でペンを握り、自分の名前を書こうとした。

指先から血液が伝い、真っ白な同意書の上に滴り落ちた。

最後の文字を何とか書き終えた途端、再び意識を失った。

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