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第2話

작가:
琴音はうなずいた。「本当よ」

「だめだよ。一ノ瀬家は大金持ちだけど、後継ぎの湊さんはずっと海外にいるんだよ。噂では性格が最悪で、顔にも大怪我を負ってるって。おじいちゃんが決めた結婚じゃなかったら、私だって……

それに琴音、お兄ちゃんが好きだったんじゃなかったの?なんで急に私の代わりに嫁ぐなんて言うの?」

小春はそこで、琴音の顔色が悪いことに気づいた。「もしかしてお兄ちゃんに何かされた?また沙耶さんのせい?私、今からお兄ちゃんに文句を言ってきてあげる!」

琴音は慌てて小春の手を握りしめた。「小春、瑛介とはもう終わったの。もう好きじゃないし、これからは一切関わりたくないの。

小春がずっと小林先輩との駆け落ちを計画して、国を出るタイミングを迷ってるのは知ってるの」

琴音はバッグから航空券を取り出して、小春の手に握らせた。「行きなさい。小林先輩が空港で待ってるわ。10時の便だから、今から行けばまだ間に合う」

小春の目から一気に涙があふれ出た。「でも、あなたはどうするの?」

「2週間後の結婚式は、私が小春の代わりに嫁ぐから」琴音は小春の涙を優しく拭った。「二人とも不幸になる必要はないわ。あなたが幸せになって」

小春は唇を震わせ、最後は琴音を強く抱きしめた。「琴音、この恩は一生忘れないからね」

こうして小春は旅立った。

琴音は空港の大きな掃き出し窓の前に立ち、小春の乗った飛行機が飛び立つのを静かに見届けた。

ガラス越しの日差しが、青ざめた琴音の横顔を照らした。ふと、瑛介と付き合うことになった日のことを思い出す。あの時瑛介は階段の上で、似たようなオレンジ色の光を浴びながら自分に手を差し伸べてくれたのだった。

あの時の自分は本当に馬鹿だった。片思いが、光の中で報われたのだと思い込んでいたのだから。

琴音は悲しそうな笑みを浮かべて空港を後にし、街で一番高級なウェディングドレスショップへ向かった。

店員が愛想よく迎えてくれた。「いらっしゃいませ。どのようなドレスをお探しですか?」

琴音は並んでいる華やかなドレスではなく、シンプルで落ち着いたシルクのマーメイドドレスを選んだ。

「これをいただけますか?持ち帰りたいんです」

店員は目を見開いた。「ご試着はなさらないのですか?」

「大丈夫です」琴音は首を横に振った。「着られますから」

どうせ、この結婚はただの取引なのだから。

一ノ瀬湊(いちのせ みなと)の祖父・一ノ瀬茂樹(いちのせ しげき)は重い病気を患い、自分が生きている内に孫の結婚を見届けたかった。

だが肝心の後継者である湊は、性格も顔もダメな上に、ずっと海外で暮らしている噂が出回っている。そのため、東都の令嬢たちは誰も彼と結婚したがらなかった。

相手が見つからない状況で、一ノ瀬家が藤城家との間にある婚約のことを思い出したのがこれまでの話だった。

今、琴音が小春の代わりに嫁ぐと言えば、一ノ瀬家が断るはずもなかった。

彼らが求めているのは、ただの花嫁なのだから。

その花嫁が誰であろうと、彼らにとってはどうでもいいことだ。

家に戻ると、琴音はウエディングドレスをスーツケースに詰め、身の回りの片付けを始めた。

琴音は引き出しから、写真の束を見つけ出した。写真は全部、瑛介との思い出を記録していた。

高校生の頃に盗み撮りした瑛介の横顔。大学生の時に瑛介とハグする口実を作るために、サークルのみんなに一人ずつ抱きついてようやく手に入れた初めてのツーショット。そして、初めて二人でデートに行った時の、自分の輝いている笑顔……

琴音はそれらを一枚一枚破いて、ゴミ箱に放り込んだ。

瑛介からもらったプレゼントも全て取り出した。ブランドの限定バッグに、特注のネックレス、そして彼が手作りしたコップ……

すべてゴミとして処分した。

最後に、スマホを手に取って、瑛介の好みや嫌いなものに関するメモ書きをすべて消去した。

スマホの画面を消した時、突然電話が鳴った。例の会員制サロンのオーナーからだった。

「椎名さん、以前うちのサロンにいらした際にスカーフのお忘れ物がありまして。お引き取りにお越しいただくことは可能でしょうか?」

琴音は時間を確認して、短く答えた。「わかりました、今から伺います」

サロンはいつも以上に客が多く、とても賑わっていた。

琴音が足を踏み入れると、ロビーに騒々しい声が響き渡った。

「藤城社長が一気に高値をつけました!これで入江さんの今夜のお相手は藤城社長に決まりです!」

琴音は体が凍りついたようになり、思わず顔を跳ね上げた。

2階のVIP個室。その窓際で瑛介はすっと立ち、長い指に挟んだブラックカードを、ステージへ向けて無造作に投げ入れた。

ステージ上では、沙耶が白いワンピースを身に纏い、ボディーガードに付き添われて立っていた。その目元は真っ赤で、とても守ってあげたくなるような姿だった。

琴音の体はわずかに震えた。今夜この会員制サロンで、沙耶を指名できることを、今ようやく思い出したのだ。

階下の人々は一斉にざわついた。

「藤城社長には彼女さんがいるはずだけど、なんで元カノを指名するわけ?」

「何もわかってないな。当時、入江さんに振られた時、藤城社長は頭がおかしくなりそうだったんだよ」

「じゃあ、今回は仕返しのつもりなのか、それとも復縁なのか?」

「入江さんを見つめる藤城社長の目を見てみろよ。憎んでる様子もないし、どう見ても惚れてる顔だぞ」

「それじゃあ、ずっと側にいた今の彼女さんはどうするんだ?あんなに長いこと尽くしたのに、報われないってとこか?なんだ、元カノがちょっと泣いただけで、今カノは完敗だな」

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