3人組に指定された日当日。
俺と愛は敬都のことが気になって、指定されたゲームセンターにきていた。 そこには見た目の印象がかなり変わった敬都が座っていた。 自分で「ギャップ」というのを提案したけど、多分誰の目から見ても今の敬都を陰キャと呼ぶ人はいないだろう。 そのくらい見た目が変わっている 髪型だけでそんなに印象が変わるのかと思う人もいるだろうが 洋服にも少しだけ手を入れている 俺たちみたいな陰キャは元々洋服にお金をかけるおしゃれさんではないから洋服の数が少ない。 そんな俺たちにとってキーアイテムになるのが「黒のパンツ」と「無地のシャツ」である。 一件地味というやつもいるかもしれないが、俺たちはおしゃれになる必要はなくて「ダサくない」を目指せばいい。 世の中見見渡せば無地コーデなんか腐るほどあるだろう。 それに前見たテレビでいけてない人たちが「黒なパンツ」をはくだけでましになるみたいな企画をみたことがある。 俺も実際にやってみたのだが妹の真紀からもお墨付きをもらった。 今日の敬都のコーデは黒のパンツに白の無地シャツである。 今の敬都はどこにでも恥ずかしくないはず「なぁ愛。今日の敬都はどうだ」
「そうだね。最初にみっちゃんの家に来た時に比べたら別人って感じかな。まぁみっちゃんの方がかっこいいけど」
「うん。ありがとう」愛はいつもの調子で俺贔屓である
「でも今日の愛も可愛いよ」
「えへへ。みっちゃんと一緒にいるときは私も気合を入れるのです」
「それは俺も頑張らないと」
本当に頑張らないと愛だけが際立ちすぎて「隣の男ダサい」とか思われたら愛の評価が下がるかもしれない
「みっちゃんは今のままでいいよ」
そんなこんな話したいたら3人組の男たちがゲームセンターに入ってきた
改めて調べたのが3人組の男たちは リーダー?みたいな存在が 木村 他A 吉田 他B 浅野 という名前らしい。学校でも悪ぶっているみたいだが決してヤンキーというわけではなくて単に弱いものいじめだけしている3人組らしい。 これは愛が春乃さんから聞いたらしい 「よぉ中村」「うん」
「ってお前中村か?」
「うん」
明らかに驚いているのが遠くからでも伝わる。
見た目は変身できても中身の方は全然自信なさげで木村にも敬都ってバレたみたいだが 一瞬呆気にとられた木村だったがすぐに敬都とわかるといつもの調子に戻っていた「何お前イメチェンなんてしてんの?好きな女でもできたのか」
3人組は敬都見た目をみて馬鹿にしたように笑っている
この1週間敬都の頑張りをみてきた俺としては怒りがこみあがってくる でもここで俺が出て行っても解決しないことはわかっている。 すると敬都が口を開いた「自分たちがイケていないからってひがんでいるの?」
「はぁお前何調子乗ってんの?」
「だから君たちはダサいっていってんだよ。僕みたいな弱いやつにしかたかれないダサいやつって」
「お前ちょっと見た目が変わったからって強くなった気にでもなっているのか」
「強くはなっていないけど、僕の同志をみていると君たちがダサくしか見えないなと思って」
俺は敬都を甘く見ていたなのかもしれない
確かに見た目を変えれば気持ちの部分でも強くなれるとは思っていた でもここまで自分が今までいじめられていたやつに対して強気でいけるとは、いい意味で想定外である。 あの時の俺よりは全然強くてかっこいい男だ「てめぇ。殺してやるよ」
そういって木村は敬都の胸倉をつかんだ
「殴れるものなら殴ればいい。そしたら警察や先生に君たちが僕に金をたかっていたことをそのままいえばいいだけだ」
本当は怖いはずだ。もういい。
俺は敬都に少しでも自信をつけてほしいと思ってギャップを提案したけど いざ敬都が殴られそうになるのをみて弱腰になっていた「そんなの関係ねぇよ。今お前のことをぶっ殺せればそれでいい」
そして木村は敬都を殴ろうとしたとき
俺は頭で考えるよりも早くからだが動いた。 木村が殴るよりも早くあそこの間に入れば敬都は殴られないで済むと思って走った。 しかし俺が間に入る前に「だっさ」
その一言で俺も木村も敬都も一瞬動きがとまった。
「今誰かなんかいったか」
木村も誰がいったのかわからずに周りをみていた
「だからださいっていってんの」
今度ははっきりとその声は聞こえてきて声の主はそこに立っていた
嶋野愛だ。 俺が走り出した瞬間にいつの間にか表に出てきてたんだろう あまりに一瞬の出来事でそこにいた男子は全員状況がわかってなかった「嶋野愛?なんであんたがここにいるんだ」
流石に学校のNO1人気の嶋野愛の存在はしっており。なぜここにいてなぜ突然出てきたのか困惑していた
「それをあんたに話す理由がある?」
「いやないな。でもあんたに口を挟まれる筋合いもないな」
そこいいる愛はいつのも俺と一緒にいる愛ではなくて、学校にいる嶋野愛だった
「それを決めるのはあんたじゃなくて私だから」
「あんたはこいつと知り合いのなのか」
「私とそこにいる中村敬都は友達だよ。だから私の友達を傷つけようとしているあんたに対して文句をいうのは当然だと思うけど」
「嘘だろ。あんたみたいな人がこんな陰キャと友達なわけない」
「だからあんたが私の何を知っているの?私が友達といっているんだから友達でしょ。それ以上でもそれ以下でもないから」
「うっ。。。。」
愛の淡々とした正論に木村も他の男子生徒も声を失っている。
彼氏である俺でも今の愛と真正面から向き合ったら足が震えていたかもしれない そのくらい今の愛は威圧的である。「それで。私の友達に対してそれ以上何かするつもり?あんたたちがやっていることは私も把握しているけど」
「こいつが俺たちに金を渡してきただけで。俺たちは何もしてない」
「あんたたちがそのスタンスでいくなら私はいいけど。これからどうするの?」
「それは。。。」
「これからも友達に手を出すなら、あんたたちが私が社会的に抹殺してあげる。一応これでも学校での信頼は得ているつもりだから。私が今までのこと学校で暴露したらあんたたちみたいな人間の言葉と私の言葉を学校の生徒はどっちを信じるかはわかるよね」
「。。。。」
「なら私の友達に今後一切関わらないとここで誓いなさい」
「。。。。。」
「返事は?」
「はい。」
そう言って木村は敬都から手を放して他の生徒と一緒に帰っていった。
ほんの数分にも満たない時間で愛は全部解決してしまった。 そして俺は全くの役立たずだった。 そにしてにも、愛がキレたらこんなに怖くなるんだ。まぢで悪いことはしないでおこう「愛大丈夫か?」
「みっ。みっちゃ~~~~~~~~~~ん」
「お、おう」
「怖かった」
「あれ怖かったの?全然怖がっているようにはみえなかったけど」
「だってあのままみっちゃんが間に飛び込んでいたらみっちゃんが殴られていたら」
「俺のため?」
「当たり前だよ。あと中村の努力している姿もみてきたから、その努力を馬鹿にしているあいつらに対してムカついたっていうのもあるけど」
「嶋野さん・・・」
横から敬都のかぼそい声が聞こえる
「まぁ9:1でみっちゃんのためだけどね」
「この幸せ者が」
敬都の声は泣きそうになっていた
最後まで愛は愛だった
「でも本当にありがとう。愛がいてくれてよかった」
「えへへ。よしよしして~~~。」
「はいはい」
「ぎゅー」
「はいはい」
「ちゅー」
「それはまた今度ね」
「ぶーーーっ」
「このリア充カップル爆発セロ」
「ごめんごめん」
とりあえずこの件に関しては一段落といっていいだろう。
正直俺ができたことはほんのわずかで、最後は愛がいないと俺たちはダメだったかもしれない。 でも敬都はギャップで強くなることができた。 俺のやってきたこともきっと無駄ではないはず。「あっそうだ」
「どうした敬都」
「瑞樹に言いたいことがあって」
「なんだ」
「本当にありがとう。瑞樹にセットの仕方や服装のアドバイスをもらって自分に自信を持てたよ。ちょっとテンション上がりすぎて木村達に言い返してしまったけど」
「あれは俺も肝を冷やしたぞ」
「うん。でもなんか前よりも強くなれた気がしたから」
「そうか。それならよかった」
「これからも自分磨き頑張るよ」
敬都にとって今回の出来事がマイナスじゃなくてプラスに働いたのならよかった。
「みっちゃんよしよし」
「えっ急にどうしたの?」
「みっちゃんも頑張ったから私からのご褒美」
そう言って撫でられた手はとても優しく、なんか救われたような気がした。
「今日は夕方予約入っていないから店閉めてラーメン食べに行こう」「お店閉めていいんですか?」「いいのいいの。予約制でしているから予約が入っていなくて予定があるときは少し早めにしめるのは結構多いから。それに時間の融通を利かせることができるのは自営業の特権だから」個人的に自営業の都合はよくわからないが、山田さんがいいというのだからいいんだろう。確かに予約制じゃないお店の場合いつお客さんがくるかわからないから営業時間まであけておかないと文句を言う人がいるかもしれないが、予約制だったらコントロールはしやすいのだろう。「それでラーメン食べに行く?」「「いきます」」「よかった。最近の若い子ってこうゆう誘い嫌がる子多いらしいから」それは俺もテレビやSNSで見たことがある。上司からのご飯の誘いが苦だと感じる人は多いらしい。でもこんだけよくしてもらっている山田さんの誘いを嫌と思うわけなくて喜んでという気持ちが強かった。まぁこれが嫌いな上司だったら嫌だと思うのは当然だと思うが。。。会社の上下関係も大変だな・・・山田さんが閉店の準備をしている間、俺と敬都も掃除などを手伝った。夕方5時のタイミングでお店を閉めて、近所のラーメン屋に入った「好きなの頼んでいいから。今日は俺の奢り」「いいんですか?」「当たり前だろ。俺から誘ったうえに高校生に手出しさせるなんて美春に殺される」なんでだろう。俺たちにお金を出させたことを普通に報告してすごく怒っている美春さんが想像できてしまった。美春さんごめんなさい「じゃぁお言葉に甘えて」「おう」俺も敬都も定番のラーメン+チャーハンセットを注文した。「2人はよく飯にいったりするのか?」「2人ではあまりないかもしれないですね」思い返してみると敬都と2人のご飯はないかもしれない「2人はないんですが、よく3人か4人で一緒にいます」「もしかして今日の2人かな?」「そうです」「でも3人ってもしかして瑞樹と嶋野さんと敬都ってこと?」「そうです」「敬都お疲れ様」「はい・・・」なんで敬都がお疲れ様と言われているのかはわからなかったがなんとなく俺と愛のことなんだろうは思う「実際に美容室で働いてみてどうだった?」「はい。すごくいい経験になりました。俺は髪の毛をセットするのは好きだったけど誰かの髪の毛をという視点はあ
「なんで2人がきているの?」「私たちの職場は2日目は午前中で終わるってわかっていたからネットで予約しました」「なるほど」「ダメだった?」「ダメじゃないよ」「よかった」「なんだ二人の知り合いか。それにしても二人ともかなり美人だな」「知り合いというかクラスが一緒の同級生です」「左の人は瑞樹の彼女です」「おい瑞樹。お前は実はすごい系の男だったりするのか?」初めてみる人からしたら俺みたいな陰キャにあんな美人の彼女がいたら不自然に思うのは当然だろう「しかも瑞樹の彼女は学校でもクラスでもNo1と言われているぐらいの人です」「おい瑞樹。お前実は惚れさせる能力でももっているんじゃないか」「持ってませんよ。本当にたまたまご縁がありましてお付き合いすることになりました」「お見合いか」「ほんとですよね。たまたまあんな美人と付き合えるはラノベの主人公ぐらいですよ」「さっきから敬都くんの言葉に悪意を感じるのは気のせいかな」「気のせいです」「まぁ冗談はさておき、嶋野さんと春乃さんはカットで予約してもらっていたけど一人ずつでいいかな?」「はい。愛ちゃんからしてもらおう」「うん」愛のカットの時は後ろには俺がつくようになり、敬都はさくらさんと話しているなんか最近あの二人仲良くなっていないかな「愛さん。なんかこっちを見ているのは気のせいかな?」「本当だよ。俺のカットをみてほしいのに」「あっすいません。ついみっちゃんがかっこよくて見つめていました」「あ、そう...」恥ずかしがることなくストレートな物言いに山田さんは言葉がでなくなってしまっている「嶋野さんは瑞樹のことが大好きなんだね」「はい。みっちゃん以外に興味がないぐらい好きです」「うん。ちょっとまってね。おい瑞樹。お前の彼女なんかすごくないか」「はい。何もしていなかったら才色兼備なんですが、裏ではだいぶポンコツなんです」「そっか。了解。瑞樹せっかくだから嶋野さんの髪の毛ドライヤーで乾かしてあげたら」「えっ。できますか?」「大丈夫。だいたいでいいからやってあげな。多分俺がするよりも瑞樹がした方が嶋野さん喜ぶと思うよ」愛の方を見ていると嬉しそうに目がキラキラしているようにみるのは多分気のせい俺がドライヤーで愛の髪を乾かしている間に山田さんはさくらさんをカットするらしい。さくらさん
「職場体験一日目どうだった?」「めちゃくちゃ楽しかったよ。山田さんって美容師さんも優しくて面白い人だったし。愛は保育園どうだった?」「う~ん。やっぱり子供って難しいよね。予想外の動きをするし変なこと言ってくるし、途中いらってくることもあったけど、さくらからなだめられて落ち着いたよ」「それはよかった」「愛の先生姿みてみたいけどな」「それなら今度みっちゃんの先生になってあげる」「それは恥ずかしいな」「みっちゃんの美容室で働いている姿をみてみたい」「それこそ後ろに立っているだけだよ」「いいのいいの」なぜか上機嫌の愛に違和感を覚えながらも、お互いの近況報告を終えてその日は早めに寝た~職場体験2日目~2日目も1日目と同様に朝から二人のお客さんの予約が入っていて、昼から2人のお客さんが同時に入っているらしい。普段はマンツーマンスタイルでやっているから2人同時に予約を入れることはないそうだが、家族や友達でくる場合は2人同時にすることもあるそうだ。だから今日は俺も敬都も2人組が終わるまではいてほしいといわれた。それでも夜までというわけではないから喜んで了承した。朝のお客さんを終えて昼休憩に入ろうとしたタイミングでお店に女性が入ってきて「「いらしゃいませ」」「私はお客さんじゃないからきにしなくていいわよ」「????」「お~。来たか。2人とも昨日話したけど俺の奥さんの山田美春だ」「山田美春です。よろしくお願いします。あなたたちが瑞樹と敬都ね。昨日の夜2人のことをこの人ずっと話していたから覚えちゃった」「はい。松岡瑞樹です」「中村敬都です」「じゃぁ俺は今からお客さんしてくるから美春が買ってきたデザートでも食べて休憩していていいぞ」「「はい」」「2人ともB&Cはどう?楽しんでる?」「山田さんが予想以上に接しやすくて楽しんで体験できています」「僕も人見知りな方なんですが、山田さんは人見知りな僕でも話やすい環境を作ってくれるから助かります」「まぁあの人の長所だからね。今でこそあんな感じだけど最初の方は不安でいっぱいだったんだよ」「今の山田さんみていたらポジティブな印象しかなないので、ネガティブ山田さんを想像できないです」「そりゃそうよね。私たちが結婚したのはこのお店がオープンして1年後だったの。だからオープンした時はまだ付き合ってい
「昼休憩に入ろうか」美容室は病院や整骨院みたいに昼休みがあるわけではなくて、お客さんが途切れた合間などにお昼ご飯を食べるみたいだ、今の時間は13時だが今から1時間ほど間が空いたからお昼ご飯を食べることになった。「山田さんはいつもお弁当なんですか?」山田さんの弁当は色合いもよく野菜と肉がバランスよく入っているものだった「うちは奥さんが毎日作ってくれている愛妻弁当だ。羨ましいだろ」「羨ましいかはわかりませんがいいですね」「瑞樹ノリ悪いな」「すいません」「山田さん一つ質問良いですか?」敬都が山田さんに質問をした「いいぞ」「B&Cってどうゆう意味があるんですか?美容室っていろんな名前があっておしゃれなものから美容師さんの名字をそのまま使っているところとか様々だと思うんですが、山田さんはなんでB&Cってつけたのかなと思って」「別に大した理由はないけど聞いちゃう?」「はい」「B&Cはな....」「.....」山田さんは数秒間をおいた「ブラックコーヒーって意味だ!!」「????」俺と敬都のあまたの中には?しか思い浮かばなかった「ブラックコーヒーですか?」「そう。俺がお店を独立したのは25歳の時で、独立というよりは元々あった美容師を居抜きという方で引き継いだというのが正しいかな。さっき敬都がいったように美容室の名前っておしゃれだし個性的なものが多いだろ?だからいろいろな候補をあげてもしっくりこなくて。でもお店のオープンの日は決めていたから店名は決めないといけなかった。この名前をつけたときはカフェでオープン準備の事務作業をしていたときで。その時にマスターが淹れてくれたコーヒーがめちゃくちゃ美味しくて、なんか頭のモヤが晴れたような気がしたんだ」山田さんは持っていた缶コーヒーを飲んで続けた「ブラックコーヒーって苦いけど美味しいんだ。最初は苦くて飲めなかったけど徐々に飲み続けていけばブラックしか飲めなくなってしまうぐらい美味しく感じるんだ。美容師は外から見たら煌びらかな印象があるけど実際に働いてみると辛いこと苦しいことはたくさんある。それでも続けていけば美容師が一番いいと思える瞬間があると思う。それに経営も人生も簡単じゃない。こんな美容室になりたいというよりはこの名前は自分に対して「お前の道は甘くないぞ」の意味も込めて付けた感じかな。まぁ最初
「一人目のお客さんは谷口さんっていって30代の女性の方で、メニューはカットとカラーだから敬都はカットの後の掃除やカラーの準備の手伝い、瑞樹は飲み物の準備をお願いするから準備してて」「「はい」」山田さんのやり方は事前にやることを教えてくれるスタイルみたいだ。これは俺と敬都みたいな陰キャにとってはすごく助かる。陽キャにあって陰キャにないもの、それは「コミュ力」である。コミュ力が弱いということは急な展開にも弱いということだ。だからお客さんがきて急に飲み物準備してといわれてもすぐに動くことができない。しかし事前に教えてくれれば気持ち面でも準備することができる。おそらく敬都も同じ気持ちだろ。山田さんの話を真剣に聞いている。早速予約の時間に合わせて谷口さんが来店してきた「「いらっしゃいませ」」事前に言われた通り、お客さんが入ってきたら元気に「いらっしゃいませ」という。元気にいえたかはわからないが俺も敬都も無事にいうことができた「えっ新しいスタッフ雇ったの?」谷口さんはいつも通っている美容室で2人の若者に迎えられて驚いている様子だ「違います違います。この子たちは高校生で職場体験で今日から2日間うちで働いてもらうんです」「なるほど。流石に2人も雇う余裕はないか」「本気出せばいけるっすよ」「いつ本気出すか楽しみだね~~」今の会話だけでも山田さんがお客さんによく思われているのが伝わった席に座ると山田さんは谷口さんに要望などを聞いて髪を切りだした。髪の毛を切っているときの山田さんはさっきまでののほほんとした雰囲気から一転してプロの美容師って感じがしてかっこよかった「ねぇ山田君。いつもよりちょっとかっこつけてない?」「なんでいうんですか。高校生の前だからかっこつけていたのに」「だっていつももっとへらへらしているじゃない」思っていたイメージとは違ったみたいだただ、山田さんの手際の良さは流石の一言で話しながらも素早くカットを終えた「あとはカラーが終わってから仕上げのときに切りますね」「はぁい」敬都は山田さんの切った髪の毛を掃除し、俺は谷口さんに飲みたい飲み物をきき飲み物の準備をしている。たった飲み物を聞くだけの簡単作業ですら緊張してしまっている陰キャですいません。山田さんは話しながらも手早くカラーを塗り終えた。俺も卒業したらカラー
俺と敬都はB&Cという美容室に決めた。B&Cは男性が一人で経営している美容室で、男子生徒が希望ということと家から近かったのもあり、この美容室に決めた。今日は2日間の職場体験の1日目である。職場体験は職場に合わせた服装でいいということで、B&Kの方に電話すると「私服でいいよ」といってもらえたので、今日は愛とデートしたときに着た洋服といつものように髪の毛をセットしてお店に向かった。途中で敬都と合流したが、敬都も最初に出会った時とは見違えるほど髪の毛のセットが上達している。あれからも続けて練習しているのだろう。「こんにちは」「あ~君たちが職場体験の子たちだね」「はい。今日から二日間よろしくお願いします」「君たち2人さ、そのセットは自分でやってきたの?」「はい!ダメでしたか?」「う~~~ん.....めちゃくちゃいけてるじゃん」「はぁ...」「最近子たちはセットが上手だとは思っていたけど二人ともすごく上手だね」「ありがとうございます」「まず自己紹介からだね。俺の名前は山田大輔です。名字でも名前でも好きな方で呼んでくれていいから」「はい。松岡瑞樹です。二日間よろしくお願いします」「僕は中村敬都と申します。よろしくお願いします」「了解。瑞樹と敬都だね。二日間よろしく」流石美容師さん。初めて会って数分で会話の主導権は握りつつ俺たちの緊張をほぐしながら喋りやすい空間を作ってくれている。俺も敬都も人見知り気質があるからこそ、このような方はありがたい「それで今日から二日間体験してもらうんだけど、ざっとうちの店のことについて説明するね。うちの店は見ての通り俺が一人で経営しているお店でスタッフも雇っていないから、カットからシャンプーからドライヤーで仕上げまで全部一人でやっていて、マンツーマンスタイルでやっているから同じ時間帯にお客さんが重なることは基本的にない。それに予約制だから飛び込みで入ってくる人も少ないからある程度余裕をもって体験してもらえるかなと思