コムハニーゾンビ

コムハニーゾンビ

last updateLast Updated : 2026-10-14
By:  kgn_nekoOngoing
Language: Japanese
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よくある異世界転生モノと聞いたら、何を思いつく? ハーレム、チート、スローライフ。 色々あるだろう。 しかし、私の転生した世界は非常かな。 帝国、王国の国々が戦争末期の異世界。 人々は戦争に勝つために、禁忌の術に手を伸ばした。 そして、異世界には“ソレ”が成功してしまう物質が存在していた。 『ヴァイオネットコムハニー』と呼ばれるソレは、人の体を改造し、特殊能力を持たせることが可能な禁忌の蜜だ。 食べると人のリミッターを外す代わりに、凄まじい中毒性を持つ危険なシロモノ。 そんなものが横行するイカれた異世界で、自分の強さを証明し、生き残ろうと躍起になっていたら、元人間の人外男達からモテる、ハード系ロマンス的な何か。

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Chapter 1

1、転生

よし、今日で神を信仰するのを止めよう。

そう思ったのは、信号無視してきたトラックにはねられ、凄まじい衝撃と共に、死んだと思った次の瞬間のこと。

瞬きをして最初に認識したのは、一面に広がる、赤黒い液体。

えっ、ナニコレ。

自分がなぜ、そんな場所に座り込んでるのかも分からないし、両手には血と思わしきその液体がべっっとりと付着している。

周りを見渡しても、赤黒い液体が湖みたいに拡がってるだけで、それ以外なんにもない。

例えるなら、エ〇ァンゲリオンの赤い海みてえな光景だった。

エ〇ァほぼ見た事ねーけど。

て言うか、なんで裸なの、私。

誰も見てないからアレだけど、されど全裸は恥ずかしいんですけど。

「……?!、え、ちょっと…」

そして、その異変に気付いた。

体が、徐々に小さくなっていってる。

自分の手を見てみた時に、大人の女性から子供の手へと、徐々に退化してるのを認識してしまったから。

え、え、何これ、どうしたらいいの、どうしたら止められるの、これ…!?

ともすれば、このまま消えてしまうんじゃないかと思ったけれど、私の予想に反して、謎の縮小化はすぐに動きを止めた。

しかし、その頃には、私の体は大体幼稚園生くらいの小柄な体に……。

大体100cmとか、そのくらいか…?

いや、もっと小さいかも、知らんけど。

ていうか、心做しか肌がめちゃくちゃ青白い……。

血管が浮いて見えてて、なんか不健康な人間みたいな色になってる……。

そもそも、なんでこんなに小さくなったのか分からない。

つか、ここどこなんだよ!?、私は誰?!どうしたらいいの!?もしかしてあの世!?

地獄に落ちちゃった感じ!?

二十数年やっとこさ生きてきて、人ってこんな呆気なく死ぬん?

もう訳が分からなさすぎて、私は頭を抱えるしかない。

元の世界に戻りたいけど、状況を鑑みるにもう無理ってことは目に見えてる。

少なくとも、私一人の力じゃどうこう出来ないのは確定事項だ。

何もない赤い湖の中で、私は唸る。

『誰そ彼、彼は誰、逢魔時。』

「……?」

不意に上から聞こえてくる、誰かの声。

男か女か分からない。

どちらとも聞こえるし、どちらでもないような……、そんな声。

『さあ、血を啜るのだ。我が下僕…、眷属となる忌みノ子よ。“生まれておいで。”』

ごぽ。

「!?、血が、水位が増して……!」

声がその言葉を発した瞬間、謎の空間が応えるように、血の水位が増し始めた。

だくだくと増していくその中で、どうすることも出来ない私は、せめてもの抗いで立ち上がるが、無駄も無駄。

とうとうその血の湖は、私の顎の下までやってきて、息もまともに吸えなくなってくる。

また、私、死ぬのか……?

こんな意味も分からない空間で……、二度も?

「ごぶ…っ」

トラックに轢かれたかと思えば、今度はこんな気味の悪い空間で。

口の中に鉄臭い液体がなだれ込んで、肺を満たしていく。

苦しい、出たい、ここから出して。

生きたいその一心で、私は思わず、思いっきり上に向かって、手を突き上げた。

「ゴボッ!!」

幸か不幸か。

はたまた、何かの手違いか。

あの赤い水の中でもがいた結果。

「ゲホッ、ごほっ…!」

突然、突き出した手が、文字通り何かを突き破った。

同時に、私を満たしていたあの赤い水が、途端に勢いよく引いていく。

ぇ?と思ったのも束の間。

その両手に見えたのは、“肉片”。

ぐちゃぐちゃの肉片。

なんだ、コレ…なんの破片だ……?

視線を下に落として気付き、私は頭が真っ白になった。

時間が止まったかのように、そこからピクリとも反応出来なくなる。

血肉、人型の。

「おんな……?」

それは、かつて人間の形をしていたであろう人間の女だった。

だが、今や腹が裂け、内臓が剥き出しになり、ぐちゃぐちゃになって地面へまろび出ている。

女は既に死んでおり、大口を開けた状態で、なおかつ目を見開き死んでいた。

だが、私が今この状況において、最も信じられないもの。

「突き破った……?」

そう、これが、一番信じられない事実。

私は、死んだ女の腹をカッ捌いて出てきたのだ。

つまるところ、女を殺したのは、ほぼ私なのが確定している。

手を突き出した時、何かを突き破る感触がしたのは、肉を引きちぎる感覚だった。

女の腹から出てきた証拠に、私と繋がったへその緒が臓物の中でぷかぷかと浮いている。

「ようこそ、マイ・フェア・レディ。逢魔時に生まれた可愛い忌み子。」

ええ、どうしたらいいの…?と、未だ何が起きたか分からないままでいると、不意に低い男の声が響いてくる。

「!」

声のする方へすぐさま顔を向ければ、背の高い燕尾服を纏った男が一人、不快な笑みを浮かべてこっちを見ていた。

「誰…?」

「自己紹介からいこうか。」

くふ、と奇っ怪な笑い声を上げてベラベラと喋りかけてくる男。

自分は夜を生きる吸血鬼だとか、お前は私の使い魔として生まれてきただとか、散々意味の分からない言葉をまくし立てられる。

聞きてえのはそこじゃねえんだよ!と叫びたい。

「ふぅむ…何せ、種が食屍鬼だからな…理解までは出来ないか。」

「え、なに……ぐーる?」

グール…?、ちょっと待てよ…このオッサンさっき、自分が吸血鬼だって言ってたよな。

んでもって、この女を、孕ませた存在がいわゆる、グールとかなんとか……。

状況が状況だけに、焦りがあるからか、脳内の引き出しを散らかしまくって、余計にこんがらがる。

そして、パチャパチャと音を立ててこちらへやって来る存在に、待ってくれるという発想がないのも一つの要因。

「ふむ……やはり一からの教育になりそうだな……。」

燕尾服男は、自分一人で何やら話を完結させているらしく、足元を見てそう呟く。

釣られるように私も男の足元を見ると、なんか円状のラインが引かれている。

何が描かれているのかと思いきや、すっごい怪しい魔法陣。

なんつーの、コレ?

確か、私のいた世界ではペンタクルとか何とか…そんな名前だったよな…?

こんなファンタジックなモンを介して、実際に行動に移してんの初めて見たわ。

燕尾服男、黒魔術的なモノに手を出した上で、こんな悪趣味なことをしたらしい。

何も分からないが、状況的に、クソほどヤバい所に来たのでは…?と察知することは出来た。

「まあそれはどうでもいい。どうせ食屍鬼はこの世界では最弱中の最弱。暇つぶし程度に知能を持った存在がいれば面白いと思ったが…。」

やれやれ、と燕尾服男は勝手に呆れて、勝手に考え込んだ後、パチン!と指を鳴らした。

すると、ずっと禍々しい雰囲気だった空間から一変、突然部屋に誰かが入ってきた。

服装見る限り、多分メイド。

しかも、近世ヨーロッパとかで見るガチモンのメイド服を着たお姉さん達だ。

この光景を見ても、何ら動揺することなく私と、死んでる女の処理を淡々と施していく様は見事なものだった。

メイドさん達の反応を見る限り、燕尾服男は、日常茶飯事にこういうのをやってるっぽい…。

「ぐぇ」

うわぁ…と引き気味にメイドさん達の様子を見ていると、燕尾服男に頬を掴まれた。

「とはいえ、覚えさせればメイドくらいにはなるだろう。連れて行け。」

もうさして私に用はないらしい。

赤い目がそう物語ってた。

手の空いてるメイドさんを呼んで、私をどこかへ連れて行くよう申し付けると、自分だけスタスタとどこかへ行ってしまった。

なんだアイツ…。

困惑したまま、放心状態が解けない。

「はぁ…全くもう…」

「ぇ」

燕尾服男に世話をするように言われたのか、メイドさんはクソデカため息を着いて、私を抱き抱える。

え、やだ、いい歳した大人がお姉さんに抱っこだなんて…と恥ずかしくなった。

しかし、すぐにここでの私は、生まれたばかりのベイビーであることを思い出し、素直にお姉さんの首にしがみ付く。

「ちょっと、首に噛み付かないでおくれよ、アタシはアンタみたいなゾンビになりたくないんだから!」

「ぐふぇ!」

急に頭を引っ張られ、怪訝な顔で怒られた。

結構な力で引っ張られて痛いし、なんでこんな邪険にされんのか分からん…。

我、一応エケチャンなんだけど…。

ていうか、待ってくれ、今お姉さんゾンビつった?

燕尾服男は、私のこと、食屍鬼って言ってたよな?

つまり、この世界は食屍鬼=ゾンビってこと?

随分とファンタジックなバ〇オハザードだな…。

だって、この解釈が正しいのなら、今の私、とある女から生まれた、ゾンビの赤ちゃんってことになる。

「ああ、嫌だ嫌だ。こんな不気味な死体の子を世話なんて。」

ほら、メイドのお姉さんもこう言ってるし、多分そうなんだって。

うわ、鏡欲しい…初見で嫌われるくらい不気味な相貌してるってことだろ?

どんな姿してるんだろう、私…。

そうこう考えていると、メイドさんがある部屋に入って止まった。

なんか物置みたいな、湿っぽい場所。

だが、よく見れば、壁や床がタイルみたいな、水を弾く材質っぽい。

洗濯とかに使うような、木製の桶の中へ私を下ろし、次に別の桶に水を溜めている。

風呂に入れるつもりらしい。

ってことは、ここはメイドさん達のお風呂ってことかね。

部屋を見渡すと、隅の方に、ボロい猫足バスタブみたいなものが置いてある。

肝心のメイドさんは、簡素な手ぬぐいと、石鹸を持って、私の入った木桶をずりずりと手繰り寄せる。

「まっ、お湯を沸かさなくて良いってのがアンタらゾンビの利点ではあるわね。」

え、そうなの?初めて知ったんだけど。

メイドさんは、そう独り言を呟き、続けざまに食屍鬼の赤ちゃんは、お湯で体を洗っちゃいけないとも。

成体の食屍鬼より、皮膚が脆いのでボロボロになってしまうのだとか。

確かに、ゾンビって腐ってるし、基本、漫画とかイラストでもボロボロの印象。

お湯で洗ったら、汚れが落ちやすくなるのと同じ原理なのかね。

その証拠に、冷たいはずの透明な水で体を洗われても、私には別になんともない。

「うー。」

赤ちゃんなので、言葉は発せないが、風呂に入れられて、まあまあ気持ちいい。

血の汚れとか、着いた肉片とかを全部洗われてるので、余計にホッとするというか。

使われてる石鹸は、普通の石鹸とは違うみたい。

なんつーか、ベトベトしてる…。

無臭なんだけど、これ、油かな…?

私のいた世界でも、油を原料とした石鹸とかあるし、不思議でもないんだけど。

これもアレかな、ゾンビの赤ちゃん用の石鹸なのかな。

「なんだい、一丁前に文句かい?恨むなら自分を生んだ母親と、元凶を作った旦那様を恨むんだね。」

おっと。

やっぱし、事態を引き起こした犯人は、あの燕尾服男っぽいな。

私の母親っぽい女の人は…拉致か何かされてきたんかな…?

可哀想だが、自分のことで手一杯なので、ロクに心配すら出来ないのが今の現状だ。

「ったく、“ハニー中毒”の奴隷で実験なんて……悪趣味にも程がある。」

不意に、ボソリと呟かれたメイドさんの言葉。

“ハニー中毒”…?

はちみつのことか?、てか、奴隷って言った?今。

「これからアンタは大変だろうね。奴隷の腹から生まれたゾンビなんて、どこ行ったって無理だろうさ。ここで大人しく働いとくのがいいよ。」

赤ちゃんに対して、凄い過酷な現実突きつけて来るやん。

多分、まだ言語も理解出来ないと思ってるから、こうして同情交じりに言ってくるんだろうけど…。

実はこのエケチャンの中身、成人女性なんですよ、メイドさん。

奴隷だったの、あの女の人?不憫が過ぎるだろ。

しかも、メイドさんの言葉を頑張って理解しようとすると、この世界での食屍鬼って、結構立場低い感じ?

メイドさんの言葉を一つ一つ咀嚼しようと頑張ってはみるものの、どう考えても良い解釈は出来ない。

そして、考えてる内、いつの間にか風呂は終わっていた。

体を拭かれて、布に包まれ、抱き抱えられ、またどこかへ連れて行かれる。

「良いかい、アタシは今から仕事に行かなきゃならない。ただでさえ抱っこして世話をするだけでも、大変なんだ。大人しくしてておくれ。」

抱っこして、仕事してくれんの?

めっちゃいい人やんけ。

噛まれるの嫌とか言ってたけど、優しくない?この人。

私の思いを他所に、メイドさんは手早く脱衣場で私にオムツと着替えを施すと、背中に背負ってくれた。

いわゆる、紐で赤ちゃんを背負うおんぶの形式。

赤ちゃんの世話も仕事なんだろうけど、おんぶしてくれんのはデカイ。

仕事で色んな所回らなきゃいけないだろうから、私はおぶられているその間に、この世界の情報を集めよう。

なんであれ、現実世界の私は、恐らくもう死んでる。

あんだけ盛大にトラックに轢かれて、実は生きてました!は、絶望的だ。

メイドさんの言い分的にも、まずは生き残ることを最優先に考えた方が良いのかもしれない。

食屍鬼の世話を終え、普通の仕事に戻るメイドさんに揺られ、私は廊下の窓から見える、ダークファンタジーな世界を目に焼き付けるのだった。

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狛
狛
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2026-10-09 05:37:59
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1、転生
よし、今日で神を信仰するのを止めよう。そう思ったのは、信号無視してきたトラックにはねられ、凄まじい衝撃と共に、死んだと思った次の瞬間のこと。瞬きをして最初に認識したのは、一面に広がる、赤黒い液体。えっ、ナニコレ。自分がなぜ、そんな場所に座り込んでるのかも分からないし、両手には血と思わしきその液体がべっっとりと付着している。周りを見渡しても、赤黒い液体が湖みたいに拡がってるだけで、それ以外なんにもない。例えるなら、エ〇ァンゲリオンの赤い海みてえな光景だった。エ〇ァほぼ見た事ねーけど。て言うか、なんで裸なの、私。誰も見てないからアレだけど、されど全裸は恥ずかしいんですけど。「……?!、え、ちょっと…」そして、その異変に気付いた。体が、徐々に小さくなっていってる。自分の手を見てみた時に、大人の女性から子供の手へと、徐々に退化してるのを認識してしまったから。え、え、何これ、どうしたらいいの、どうしたら止められるの、これ…!?ともすれば、このまま消えてしまうんじゃないかと思ったけれど、私の予想に反して、謎の縮小化はすぐに動きを止めた。しかし、その頃には、私の体は大体幼稚園生くらいの小柄な体に……。大体100cmとか、そのくらいか…?いや、もっと小さいかも、知らんけど。ていうか、心做しか肌がめちゃくちゃ青白い……。血管が浮いて見えてて、なんか不健康な人間みたいな色になってる……。そもそも、なんでこんなに小さくなったのか分からない。つか、ここどこなんだよ!?、私は誰?!どうしたらいいの!?もしかしてあの世!?地獄に落ちちゃった感じ!?二十数年やっとこさ生きてきて、人ってこんな呆気なく死ぬん?もう訳が分からなさすぎて、私は頭を抱えるしかない。元の世界に戻りたいけど、状況を鑑みるにもう無理ってことは目に見えてる。少なくとも、私一人の力じゃどうこう出来ないのは確定事項だ。何もない赤い湖の中で、私は唸る。『誰そ彼、彼は誰、逢魔時。』「……?」不意に上から聞こえてくる、誰かの声。男か女か分からない。どちらとも聞こえるし、どちらでもないような……、そんな声。『さあ、血を啜るのだ。我が下僕…、眷属となる忌みノ子よ。“生まれておいで。”』ごぽ。「!?、血が、水位が増して……!」声がその言葉を発した瞬間、謎の空間が応えるよ
last updateLast Updated : 2026-08-18
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2、束の間の安息
さて、この世界に、食屍鬼、いわゆるゾンビとして生を受けてから、はや数週間。 集めた情報をここで整理してみよう。 まず、私が爆誕した、この屋敷、この場所について。 私が今いる屋敷は、『ヴェルヴァン邸』と呼ばれる、吸血鬼が住んでいる大きな家だ。 家主の吸血鬼なる者が、あの燕尾服男。 読んで字のごとく、燕尾服男の種族は吸血鬼、またはヴァンパイア。 ヴァンパイアが住む土地柄とあって、この辺りはいわゆる魔物系が統治する国々が連なっているのだとか。 私の住んでいた現代で言うところの、連邦というやつ。 そして、上流階級は基本、人間ではなくそういう人外達が大半らしい。 実にファンタジックである。 あの燕尾服男は、かなり悪趣味な性悪である代わりに、仕事なら出来るらしい。仕事だけなら。 なので、格式のある貴族の立ち位置なのだと、メイドさん達が話しているのを聞いた。 ちなみに、私をおんぶしてあっちこっちに仕事しに行ってる件の優しいお姉さんメイドは、『モニカ』という名前らしい。 私と違って、モニカはちゃんとした人間。 というか、あの吸血鬼は綺麗な娘の血が好きなので、メイド兼、それ用に雇われているらしい。 はっきり言おう、キモイね。 良い歳こいて綺麗な娘の血が好きって言う、この部分。 健康な人間の血とかじゃダメなの?って聞きたい。 「はぁ…全く、人使いが荒いこと。子守りに掃除に、買い出しなんて…ったく。」 モニカは相変わらず私をおんぶして、ぶちぶち文句を呟きながらも、しっかりとやることはこなしていた。 出来るメイドというヤツである。 なんつーか、モニカは姉御肌気質な所がある。 面倒見が良いのだ。 多分、買い出しに応じたのも、半分は外に出ることで、私というエケチャンの発達を促すためだろう。 買い出しがてら、外の景色を見せることで、刺激になるからエケチャンの成長にちょうどいい。 しかも、中身が成人女性なら、屋敷外がどんな感じかが分かるチャンス。 未だ文句を垂れながら、行きつけの商店街で買い物をしているモニカの背中に揺られ、私はキョロキョロと周りを見渡していた。 当たり前だが、異世界なので、見たこともない食べ物や雑貨、洋服など、様々なモノが売られている。 モニカはその中で、お菓子作
last updateLast Updated : 2026-08-22
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3、不穏
この世界へ転生してから五年。 まずいことになった。 何がダメって、あの吸血鬼野郎、どうやら違法なモノをこの土地で密輸しようとしていたらしい。 私もモニカから話を聞いたから、未だに事情が飲み込めてない。 だが、仕事の出張に見せかけて、実は秘密裏に何か別のモノを懐に収めようとしていたらしく、それが何らかの理由で外部に漏れたらしい。 なんか、今回の仕事相手が、吸血鬼に加担していたらしいが…。 荷物を運ぶ予定だった人間が、なぜか別の人間にすり変わっていたらしく、それが混乱を招き、外に情報が漏れたのだと。 そのため、国家権力を持つ人間達が、真っ先にそれを嗅ぎ付けてしまった。 あの吸血鬼や、それに噛んでいた連中を捕まえようと動き出しているらしく、私やモニカはバカンスを楽しむ前に、逃亡するハメに。 慌てて屋敷に帰って隠蔽工作をするべく、馬車に揺られている状態だった。 「ったく、面倒なことになっちまったもんだよ。」 馬車の外を眺め、ブツブツ文句を言ってるモニカ。 それもそのはずだ。 独立のための金を貯めてる最中に、金の発生源が厄介事に手を出していたなんて。 モニカからしてみれば、クソが!って感じだろうな。 「触らぬ神に祟りなしって思ってたけど…やっぱり、一定数知っておかなきゃならないこともあるもんだね。」 こうなるまで全く気付かなかった。 屋敷内や、屋敷外でも、あの吸血鬼の悪どい部分なんぞ、嫌という程聞いてきたから。 「“人間”から“吸血鬼”になって暇なのは分かるがね、限度ってもんがあるよ。」 「…?」 え、人間から、吸血鬼……? あの男、元から吸血鬼だった訳じゃないのか…? ここへ来て、異世界の新情報を耳にした。 この五年間、メイドの仕事に追われるばかりで、情報源は全部モニカからの話だった。 偏りが出てしまうのは仕方ない。 他の連中は、私が食屍鬼だからと、マトモに口を聞いてくれたこともないから。 「ねえ、モニカ…その、あの人って元から吸血鬼だったんじゃないの…?」 「はぁ?…ああ、そういや、アンタは元から食屍鬼だったんだか。」 一瞬、怪訝な顔になったものの、知らないのも無理はないと、モニカはため息混じりに説明を入れてくれた。 「旦那様は、厳密には元人間さ。『コムハニ
last updateLast Updated : 2026-08-26
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4、アバンスプリズン
ガシャン!と無慈悲に響いた鍵の閉まる施錠音。 特殊な手錠をされ、私が連れて行かれた先は、カビ臭い、小さなボロ部屋だった。 「今日から、ココがお前の部屋だ。食事は一日二回。食屍鬼のお前にもコムハニーが出る。」 感謝することだな。と、嘲るように呟く看守の男。 当然のごとく、看守の男は人間じゃないし、えげつないほど獣臭い。 犬の獣人らしいが、風呂入ってんのか、コイツ。 心中で悪態を着くものの、食屍鬼の非力な女では太刀打ちなぞ出来るはずもなく。 無慈悲に部屋にぶち込まれて、ドアを閉められた。 救いなのは、私が“囚人”じゃないってことだけ。 私の今いるこの場所は、いわゆる『監獄』。 コムハニー中毒の中でも、特に素行の悪いヤツらが集まる場所。 厳密には監獄と言っていいのかは怪しいけれど……されど中の様子を見れば、そうだと言われても仕方がない。 逆にそれが正しいまである。 “アバンスプリズン” そう呼ばれるこの場所は、一応、本当に一応説明すると、更生施設らしい。 私が働いていた、あの吸血鬼の屋敷が位置する国は、連邦系の国だという話をどこかでしたと思う。 あの臭い看守が言うには、ここは、そんな国の軍人や、やらかしたコムハニー中毒者が、社会復帰を目指す場所、だそうです。 プリズンとか付いてる時点で、更生出来るかは、お察しって感じなんだけど。 「………。」 ぶち込まれた薄暗い部屋を見渡しながら、私は掃除をするでもなく、とりあえずベッドを探した。 もう、今日一日で散々嘲られ、馬鹿にされ、挙句の果てには、ここで娼婦としてやっていけと。 未だ、自分に突き付けられたこの事実が受け止めきれない。 一度寝て、現実逃避がしたいと、ベッドと思わしきものを探したのだが……。 「うぇ……まさか、これがベッド……?」 ようやっと、シーツと思わしきモノを見つけたと思いきや、それは、乱雑に床に敷かれた布切れ達。 しかも湿気てるし、イカ臭ぇ……。 私が来る前に、この部屋にいた娼婦が、体躯のデカイ女だったらしい。 自分の体躯と合った男とヤるワケだから、その衝撃を逃すためか、何枚も何枚も布切れが敷かれている……。 てか、臭いどころか、ロクに洗濯もしてないらしく、布がカビてる……。 「オェ……」 ゲロ
last updateLast Updated : 2026-09-03
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5、遭遇
ドンドンドンドン!! ドンドンドンドン!! 「!?」 不意に嫌な夢を見て魘されていた所を、大音量のドアノックで叩き起された。 「おい、食屍鬼!まだ寝てんのかぁ!?」 この声は、恐らく昨日の臭い犬看守だな。 ボリボリと頭を掻きながら、ガチャ、とドアを開ければ、むわっと獣臭い嫌な臭い。 「ヴ……」 ちょっと嘔吐きそうになるのを、気合いで誤魔化し、何の用だと不細工な面して、看守を見上げた。 「おお、良い朝だな。ほらよ、返してやるよ。コレ。」 犬の看守は、ポイッと私に何かを放り投げてくる。 それが何かを確認する間に、 「さってと〜、レモンちゃんのとこにでも行くかな〜♡」 と、看守はキモイ声を上げてスタスタと行ってしまった。 お気に入りの娼婦のとこに行くついでに、“コレ”を届けに来たらしい。 私の手の中にあったのは、モニカのジュエリーボックス。 あの夜の後、私はどうやら、このアバンスプリズンに運ばれ、蘇生されたらしい。 否、蘇生というか…なんというか……。 あの犬看守から話を聞かされた所、私の記憶と相違があったのだ。 まず、あの吸血鬼について。 あの野郎は、件の雨の夜に既に死亡していたらしい。
last updateLast Updated : 2026-09-06
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6、仕事
「痛っ……」 ブツ、と皮膚がガラス片で裂かれる感触と同時に、スウッと数秒でなくなっていく切り傷。 やはり、コムハニーの能力で得た力は本物らしい。 こうして、その辺に落ちてたガラス片で皮膚を裂いても数秒の内に元通りになる。 ただ、一つだけ気になったことがある。 「……貧血かな…。」 そう、多分、再生させること自体に、『血』そのものが必要になってくるんじゃ?ということ。 なんでかって言うと、私はコムハニーの能力を確かめるために、さっきまで痛みを我慢して、自分を傷つけまくってた。 地雷系娘のように、めっちゃリスカして、めっちゃ再生させてた。 一度、四肢を切断というか、体を八つ裂きにされた身なので、皮膚をちょっと切るくらいなんだという倫理観になってきてる。 その弊がいか、なんか、貧血の時に来る体調不良が自分に襲いかかってきていた。 頭のモヤモヤ、めまい、体が怠いだとか。 あと、座ってるのに、重心が安定しなくてフラフラする。 ちょっとモロな話、生理の時とかにくる貧血の症状とよく似てるのだ。 今の私は食屍鬼なので、そういうのはないんだけど、元の世界にいた時は、それを幾度となく体験してきた。 なので、多分再生させるごとに、私の体は血を消費して、皮膚を作っているのではないか…? と、こんな見解に至ったのだ。 「…でも…この分だと、何回か怪我したら自動的に血を使って再生するわけだから、すぐに貧血になるな……。」 やっぱ、そこら辺の性能は、失敗作と言われる食屍鬼とだけある。 さっきボコられた時と、今の自傷回数的に、大きな怪我を一つしたらすぐに貧血になると思う。 血があれば自動的に再生しちゃうから、この怪我の治癒、ちょっと待った!とかも出来ない。 「……。」 やっぱり図体がデカイ方が、持てる血の量も、その分多くなるよなぁ……。 うーん……。 自分の小ささにはメリットもあるし、デメリットもある。 ぶっちゃけ食屍鬼ってゾンビだし、生きてるモノの血を吸うだけなら何でも良かったりしないかな……。 「あの吸血鬼みたく、誰か血袋になってくれる便利なヤツとか、いないかな……。」 そんなことありえねーだろと思いつつ、部屋の隅で大の字に寝っ転がる。 あの吸血鬼は、モニカや他のメイド達を血袋兼、お世話係として雇っていた。 言い方は悪いが、私も同じ
last updateLast Updated : 2026-09-16
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7、思わぬ収穫
あれから一週間後。 今の私の手元には、ピンキー野郎の服と、銅貨が二十枚ちょっとある。 一週間、皿洗いで、みっっちりと働いた。 そして、なぜこんなにも単価が安いのか、働いていく内に分かった。 魔法だ。 ここの囚人には、当たり前のように魔法が使える術が備わっている。 ピンキー野郎から、レモンとかいうクソビッチに至るまで、みんな魔法が使える。 だから、皿洗いに関しても、あの量を片付けるのなんて、基本的な水の魔法を使えば簡単なのだ。 足元を見てたわけじゃなくて、それだけ簡単だから、単価が安いのである。 そうとは知らない私は、一週間、一枚一枚泡まみれになって皿を片付けていた。 周りのヤツらには、お前魔法すら使えねえのかよ!とバカにされまくったが、めげずに一週間通い続けた。 おかげで風呂に入れなかった分、皮肉にも泡まみれになったことで、ちょっとだけ体は綺麗になった。 で、今現在。 その成果が、目の前にあるわけだが。 「銅貨二十枚ありゃ、パンは買えるけど、一日二食分買ってたら一瞬で底が尽きるよな……。」 そう、食べ物を買うにしても、仕事一週間に対して、二、三日そこら辺の食事しか買えないことを思うと、コスパが悪いこと悪いこと。 うーん…一回で何食分か持つ方法はないものか……。 「…なんか甘い物食べたいな。」 色々、小さい脳みそを使って考えはしたが、まずは一週間頑張ったし…と、もう無駄使いの方向性へ傾いてる。 でも、買いたいものは、ケーキとかクッキーとかのお菓子ではなく、実は例のヨウシュナシ。 あれは行く店によっては、銅貨一枚で買える。 モニカと行っていた八百屋では、少なくとも銅貨一枚あったら、丸々一個買えてた。 だから、この銅貨があれば、少なくとも二十個近いヨウシュナシが手に入る。 「一個くらい良いだろ…頑張ったし。」 甘ったれた自分の意思に抗いが付けられず、結局私は懐に銅貨が入った袋を持って、食堂に出かけた。 目指す先は、コムハニーカウンターのオッサン。
last updateLast Updated : 2026-09-19
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8、メルト
その日の夕食の終わり頃。 朝の間に、オッサンから、次の夕食時に約束のものを持ってくると言われた。 だが、人が多いとモノを渡す時に見られて面倒なので、人が空いて来てからにしろと言伝を預かっている。 囚人や娼婦が夕食を食べ終わるのを待ってから、私は意気揚々とコムハニーカウンターに向かった。 私が来ると、オッサンは約束通り、くちゃくちゃの紙袋に包まれたモノを渡してくる。 「おお、あんがとう。」 中を確認すると、ヨウシュナシが三つ。 頼んでおいた通りのものだ。 オッサンは、嬉しそうにモノ受け取る私を見て、顎に手を置いている。 「ひとつ聞きてえんだが、お前、舌腐ってんのか。」 「そんなワケねーだろ。」 確かに腐ってるけども、味覚までは腐ってねーぞ。 藪から棒に失礼なことを言われ、私は半ギレで言い返す。 「食えたもんじゃなかったぞ、ソレ。確かに銅貨一枚で買えたが、なんかクソほど苦かったし。」 「えっ、わざわざ買ったの?」 まさか本当に買って食ったのか、コレ。 「買ったよ。」 なんか悪いか。と堂々とした態度を崩さないオッサンを見て、私はあー…と視線を逸らす。 「いやまさか、本当に買うと思わなくて…。」 「まあ、十中八九、食い方があるんだろうなとは思ったよ。」 舌の上がまだ痺れてる感覚がする…と、呻き声をあげるオッサン。 「ああ。これ、果肉食えないんだよ。中の果汁だけ吸い出すんだ。」 紙袋からヨウシュナシを一個取り出す。 刃物がないので、ブチ!っとヘタの部分を無理矢理手で引きちぎり、飲み口となる部分を雑に作成。 飲み方を実演した。 「ナルホド。キモイと思ってた部分が、まさかストロー代わりになるとは思わなんだ。」 「それは謝罪料としてやるよ。じゃーな。」 紙袋にあったヨウシュナシの一個は、オッサンの手間賃と謝罪料としてやると、私はその場を後にする。 紙袋を手に携えながら、ルンルン気分で部屋に戻り、早速ヨウシュナシを飲もうとした。 ドンドンドンドン!! 「いるんでしょ、食屍鬼!!出て来なさいよ!!」 しかし、ここで思わぬ事態。 聞き知ったクソビッチのキンキン声がすると、私はうんざりした。 紙袋を布団にしている布の中に隠し、私は立ち上がる。 ここで無視しても、結局部屋を開けてきやがるので、意味がないのだ。 鍵をかけ
last updateLast Updated : 2026-09-22
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9-1
ドンドン、ドンドン。 ふと、目を開ければ、もう部屋は明るかった。 いつの間にか、眠ってしまったらしく、誰かがドアを叩く音で目を覚ました。 けど、ノック音は、いつもみたいな乱雑で乱暴なものじゃない。 ドアを軽く叩いてるだけのもの。 しかし、誰であろうと今日は出る気にはならなかった。 昨日のことがあってから、どうにも人と会うのが億劫になってしまった。 監獄から出たいと思うのに、監獄のスラム街に建つこの部屋から出たくない矛盾。 「……。」 「食屍鬼、食屍鬼」 「…。」 ドアの向こうで知っている声がして、思わず布の中で顔を上げた。 ローザの声がしている。 ずっとドアの外で私を呼んでいる。 「怒ってんのか?、周りのヤツらから聞いたんだ、俺、メルト起こしてたんだってな。それで、囚人と娼婦がお前使って、賭けやってたんだろ?災難だったな。」 「……。」 もぞ、と布の中で身じろぎしながら、私はローザの気だるげな声を聞く。 「お前がコムハニー持ってたおかげで助かったよ、正気に戻れた。」 あのままいたら、暴走して最悪死んでただろうから。と、ローザは何でもないような口調で呟いてくる。 なんで平然と、そういう生き死にの概念が話せるんだろう。 いや、ここは監獄なんだから当たり前か。 元の世界での価値観や、メイド時代での価値観と合わせちゃいけないんだ。 この場所はイカれてる。 改めてそう思った。 私は食堂とこの部屋しか行き来してないから、まだ本物の監獄を知らないんだ。 「出て来いよ。コムハニーくれたんだから、礼くらいはするよ。」 食屍鬼と、もう何回目か、私を呼び続けるローザ。 「食屍鬼?」 部屋にいないのか?と、ドアの向こうでわずかに、ペタリと何かに触れた音がした。 そうして少しの間の後、なんでもないように鍵をかけたドアが開く。 魔法でドアを開けたらしい。 やがて、キョロキョロと周りを見渡した後、隅っこで丸くなっていた私を見つけたらしい。 「何だよ、いるんじゃねーか。無視すんなよ。」 「………。」 ペロ、と薄い布を捲り、私の存在を確認するローザ。 だが、起き上がる気のない私を見て、少し面倒くさそうな顔をした。 「指食いちぎったの怒ってんのかよ。あんなのココじゃ日常茶飯事だぞ。俺なんか、舌噛みちぎられて死にかけたことあるし
last updateLast Updated : 2026-09-23
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9-2
「ずっと思ってたけど、お前魔法使えるんじゃねえか、何で嘘ついたんだよ。」 ボロい住処から外に出てすぐ、ローザが不服そうな顔で私に呟いた。 魔法?と一瞬首を傾げかけたが、すぐに“あの時”の赤黒い線のことだと思い立った。 「いや、私にも分かんない……」 「発現したてってことか?」 「多分…。」 あの赤黒い線がなんなのか、私にもよく分からない。 ただ、私の感情に反応して、行動を起こしていることは少し理解出来た。 そうでなければ、ローザに噛みちぎられた指がなんの痕も残すことなく再生するはずがない。 というか、この跡形もなく怪我が再生する能力、レモンにボコられた時もそうだったような…? 「発現したてってことは、まだコムハニーそんなに食ってないのか、お前。能力に目覚めたばっかって感じだな。」 「そうなの…?」 能力や魔法は、コムハニーの摂取量で変わるってことなのかと、私はローザを見上げる。 そういえば、ローザに着けたあの細い傷、もう治ってるな。 魔法で治したのかな。 「コムハニーを初めて食った後も、継続的に摂取しないと、そりゃ魔法は発現しねえよ。ここへ来た時に、カウンターで貰ったのか?」 「ああ、一回だけ…ガスマスク付けた猫耳のオッサンに貰った。」 「キメラのオッサンか、最近出張ってること多いな。」 「そういや、元々は医者だって言ってたような…。」 “俺、ここの担当じゃねえもん。”って言ってたな。 最近出張ってるってことは、それだけ治安も悪くなってきてるってことなんだろうか。 「普段は医務室にいんだ。腕は良いぜ。なんせランカー直々に金積まれてるほどだからな。」 「ふーん。」 まあ金持ちの生まれだし、その金をたっぷり使って、たくさん勉強して来たんなら納得ではある。 「でも、マトモに診てもらえんのは、ソイツらの部下か娼婦ばっか。金とかコムハニー持ってないヤツは、基本追い払われる。」 「…まあ、うん。」 そこら辺は甘くないんだろうな。 私も多分、怪我した時とかは診てもらえないだろうから、気を付けよう…。 「でも、あのオッサン、最初はアラクネの種で通ってたはずなんだよな〜。キメラだって知ったの、俺も最近なんだよ。」 キメラって割と珍しめだから、なんかコンプレックスで
last updateLast Updated : 2026-09-24
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