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出立の朝、影は光に戻る

Author: ふりっぷ
last update Petsa ng paglalathala: 2026-09-21 10:08:43
 戦線が、静かになっていた。

 ジギスムント率いる旧第一軍が西方から突入して以来、

 城壁へ押し寄せていた黒い波は、目に見えて薄くなっている。

 蟻たちは徐々に砂漠側へ引き寄せられ、

 空を覆っていたハエの群れも散り始めていた。

 焦げ臭い風の中で、兵士たちがようやく呼吸を取り戻す。

「……押し返せてる」

 アレクシスは西壁の上から遠くを見つめたまま、低く呟いた。

 眼下では、まだ黒煙が立ち上っている。

 だが、先ほどまでの絶望的な圧力は消えていた。

 隣にはフェルマーが立っている。

 魔導眼鏡のレンズに、複雑な術式が流れていた。

「西方戦域の魔力反応を確認」

 淡々とした声。

「ジギスムント自ら、ベル・ゲラーテ分体を撃破したようです」

 その言葉に、周囲の兵士たちがざわついた。

「本当か……?」

「たった一軍で……」

「恐るべき強さだ……」

 畏怖と警戒。

 そして、僅かな安堵。

 敵であるはずなのに、

 その名が今は救援のように響いていた。

 アレクシスは苦く笑う。

「味方になると、これほど頼もしいとは――」

「まだ味方と決まったわけではありません」

 フェルマーは即座に返した
ふりっぷ

戦線が、ようやく静まった。 けれど、戦いは終わっていない。 魔王城の奥に待つベル・ブリュードを止めるため、 ヒマリは最後の決断をする。

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  • ゴミとして捨てられた聖女、王国を奪う   出立の朝、影は光に戻る

     戦線が、静かになっていた。 ジギスムント率いる旧第一軍が西方から突入して以来、 城壁へ押し寄せていた黒い波は、目に見えて薄くなっている。 蟻たちは徐々に砂漠側へ引き寄せられ、 空を覆っていたハエの群れも散り始めていた。 焦げ臭い風の中で、兵士たちがようやく呼吸を取り戻す。「……押し返せてる」 アレクシスは西壁の上から遠くを見つめたまま、低く呟いた。 眼下では、まだ黒煙が立ち上っている。 だが、先ほどまでの絶望的な圧力は消えていた。 隣にはフェルマーが立っている。 魔導眼鏡のレンズに、複雑な術式が流れていた。「西方戦域の魔力反応を確認」 淡々とした声。「ジギスムント自ら、ベル・ゲラーテ分体を撃破したようです」 その言葉に、周囲の兵士たちがざわついた。「本当か……?」「たった一軍で……」「恐るべき強さだ……」 畏怖と警戒。 そして、僅かな安堵。 敵であるはずなのに、  その名が今は救援のように響いていた。 アレクシスは苦く笑う。「味方になると、これほど頼もしいとは――」「まだ味方と決まったわけではありません」 フェルマーは即座に返した。 感情を交えない声だったが、その目は戦場を冷静に測っている。「ですが……今のうちに動くべきだ」 アレクシスが振り返る。「動く?」「ヒマリ様が、そろそろ決断される頃です」     ◆ 王都・臨時指揮室。 ヒマリは、机の上に広げられた地図を見つめていた。 視線の先にあるのは、王都西方。 黒い塔のように聳え立つ魔王城。 その中心部では、今も赤黒い光が脈打っている。 弱まってはいない。 むしろ、戦場の犠牲を吸い込んで歓喜しているように見える。「フェルマー」 ヒマリは静かに顔を上げた。「王都に来た魔物。あれは、分体だと名乗っていた」 フェルマーはすぐには答えなかった。 一秒。 沈黙してから、ゆっくり頷く。「はい」 彼は地図へ視線を落とした。「ベル・ゲラーテは、 魔王城コアから供給された魔力による分体」「先ほど撃破されたことで、 クルス側の制御権は一時的に上昇してる」『ああ』 胸の奥で、クルスの声が響いた。『少なくとも魔導砲は完全に抑え込めた』 ヒマリは地図の上から指を滑らせる。 王都の脅威が軽減し、西壁も押し返した。 そして、沈黙す

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