第1009話

その頃、高坂グループの他の幹部たちも、すでにこの件を耳にしていた。

彼らが冬樹のオフィスの前に集まっているのは、日奈の騒動について話をつけるためだった。

日奈が芸能界でどれほど傍若無人に振る舞おうと、これまでは誰も口を出せなかった。

だが、今回の件は会社のイメージを大きく損ない、彼ら自身の利益にも直結する問題だから、もはや黙ってはいられなかった。

冬樹がドアを開けた瞬間、目に入ったのは険しい表情をした幹部たちの顔だった。

何が起きているのか分からぬままに立ち尽くす冬樹へ、一人の幹部が怒りを含んだ声で言った。

「冬樹様、あなたのご両親は妹さんを探すために、しばらく会社のことをすべてあなたに任せています。

それなのに、こんな大事を起こして……これでご両親が安心して妹さんを探せると思いますか？」

「……何があった？」冬樹は眉をひそめた。

幹部たちは互いに譲らず、我先にと日奈のしたことを説明し始めた。

話を聞くにつれ、冬樹の顔色はみるみるうちに青ざめ、最後には怒りに満ちていた。

全員の説明が終わると、彼は短く息を吐き出し、低い声で言った。

「わかった。すぐに対処する」

そう言い残すと、冬樹は足早にオフィスへ戻った。

怒りで頭がいっぱいになり、出かける目的すら忘れてしまっていた。

オフィスへ入るや否や、冬樹は日奈の電話番号を押した。

「日奈、いったい何をしているんだ！今すぐこの件を収めて、高坂家への影響を最小限に抑えろ！そうしないと――」

冬樹は深く息を吸い込んだ。

「俺たちは終わりだ」

確かに彼は日奈を愛していた。

だが、それは自分の未来を犠牲にするほどではなかった。

両親はまもなく引退し、この会社はいずれ自分の手に渡る。

それを彼女のせいで失うわけにはいかなかった。

日奈はちょうどネット上で激しく炎上され、心身ともに追い詰められていた。

そんな中で冬樹の冷たい電話は、まさに追い打ちだった。

「冬樹……どうしてそんなこと言うの？今、あなたが一番必要な時期なのに……どうして見捨てるの？」

彼女はいつもの泣き騒ぐ芝居を使った。

だが、今回は通じなかった。

「南雲華恋に謝れ。彼女の許しを得ろ。そうしないと……」

冬樹は、長年の情を考えてそれ以上は言葉を続けなかったが、もう一度強く念を押した。

「とにかく南雲の怒りを鎮めて