LOGIN神山に連れられるのは体育館の裏側の、さらに自然に木々が生えてる中。なんだよ、どこに連れていく気だよ……と恐る恐るついていけば「ここ、みて」と神山がこちらを振り返る。
「静かにな」 「ええ……?」 茂みの奥。大きな桜の木がある。周りに生えている雑草をそっと掻き分けて促す神山の隣にいき覗き込めば――。 「……狐と狸? 仲良く眠ってる……」 「そーそー。これ、最近見つけてさ。ちょいちょい見に来てたんだ」 「へぇ……」 2匹は巣穴があるわけでもない、隠れスポットのような体育館裏の隅で寄り添うように眠っている。 「普段の生活してるだけなら気付かなそうだけど、学校の七不思議探してたら見つけたの?」 「そう。なー神谷、写真撮るの上手いだろ? 1枚撮ってほしい」 「……わかったけど」 もう少し近づいてカメラを構えても2匹は気持ち良さそうに眠っている。カシャ、と音を立ててシャッターを切り神山の元まで戻る。 「よし。後でそれちょーだい。新聞の記事にしよう。ずっと考えてたんだ。新聞部と写真部は合同にした方がいいって」 鼻歌交じりで校門に戻る神山を見つめ……慌てて追いかける。 「ま、待って!」 「なに?」 「もし……新聞の記事にしちゃったら。大勢の生徒があの2匹を見に行っちゃうんじゃない?」 「……というと?」 神山の純粋な疑問。目をぱちぱちさせて僕を見ている。他の生徒たちとは違って、彼は意見を聞いてくれる……と信じ、予測出来たことを伝えていく。 「狐と狸の……居心地いい場所を失くしてしまうと思う……見守る生徒だけじゃないと思う。動物に悪戯する生徒もいるよ」 「……ふむ」 神山は少し考え……僕を見て「そうかもね」と頷いた。 「ごめん。七不思議の1つを見つけられそうだったのに」 「いいよ。これからまた探していけばいいし。というか、神谷がちゃんと意見言えるんだって衝撃の方が強いかな」 「……記事にして悪い方向に転がるのが嫌だなって、思っただけだよ」 校門前。「じゃあ……」と歩き出す僕に「さっきの写真確認だけしてもいい?」と神山に声をかけられる。 「いいけど……」 先程撮った画像を見返す……も、不可解な現象に眉を顰める。狐と狸の写真を見たかっただけの神山は、中々カメラを見せない僕に「なに、どうしたの」と覗き込もうとし、咄嗟に隠してしまう。 「なんだよ? 別に笑わねえって。ピンボケしてたとしても」 「そ……そういうわけじゃ、なくて」 「じゃあなに? 狐と狸写ってんだろ?」 「……それが――」 もう一度見て、やっぱり変だと確信する。カメラを差し出せば、僕の神妙な顔に神山は顔を顰めつつ覗き込む。……そして「なにこれ」と呟いた。 「……俺たち、確かに狐と狸が眠っている姿を見たよな」 「うん……」 「じゃあ、これは……一体――」 僕が撮ったはずの写真には、動物2匹の姿がなかった。神山に連れられるのは体育館の裏側の、さらに自然に木々が生えてる中。なんだよ、どこに連れていく気だよ……と恐る恐るついていけば「ここ、みて」と神山がこちらを振り返る。「静かにな」「ええ……?」 茂みの奥。大きな桜の木がある。周りに生えている雑草をそっと掻き分けて促す神山の隣にいき覗き込めば――。「……狐と狸? 仲良く眠ってる……」「そーそー。これ、最近見つけてさ。ちょいちょい見に来てたんだ」「へぇ……」 2匹は巣穴があるわけでもない、隠れスポットのような体育館裏の隅で寄り添うように眠っている。「普段の生活してるだけなら気付かなそうだけど、学校の七不思議探してたら見つけたの?」「そう。なー神谷、写真撮るの上手いだろ? 1枚撮ってほしい」「……わかったけど」 もう少し近づいてカメラを構えても2匹は気持ち良さそうに眠っている。カシャ、と音を立ててシャッターを切り神山の元まで戻る。「よし。後でそれちょーだい。新聞の記事にしよう。ずっと考えてたんだ。新聞部と写真部は合同にした方がいいって」 鼻歌交じりで校門に戻る神山を見つめ……慌てて追いかける。「ま、待って!」「なに?」「もし……新聞の記事にしちゃったら。大勢の生徒があの2匹を見に行っちゃうんじゃない?」「……というと?」 神山の純粋な疑問。目をぱちぱちさせて僕を見ている。他の生徒たちとは違って、彼は意見を聞いてくれる……と信じ、予測出来たことを伝えていく。 「狐と狸の……居心地いい場所を失くしてしまうと思う……見守る生徒だけじゃないと思う。動物に悪戯する生徒もいるよ」「……ふむ」 神山は少し考え……僕を見て「そうかもね」と頷いた。「ごめん。七不思議の1つを見つけられそうだったのに」「いいよ。これからまた探していけばいいし。というか、神谷がちゃんと意見言えるんだって衝撃の方が強いかな」「……記事にして悪い方向に転がるのが嫌だなって、思っただけだよ」 校門前。「じゃあ……」と歩き出す僕に「さっきの写真確認だけしてもいい?」と神山に声をかけられる。「いいけど……」 先程撮った画像を見返す……も、不可解な現象に眉を顰める。狐と狸の写真を見たかっただけの神山は、中々カメラを見せない僕に「なに、どうしたの」と覗き込もうとし、咄嗟に隠してしまう。「なんだよ? 別に笑わねえって。
職員室に課題を届け、やっと帰路につけば、先に帰ったはずの神山が校門前にいた。周りをキョロキョロしていて何やら探しているようだ。 そのまま無視して校外へ出ても良かったが……少し。ほんの少し気になってしまい「何か探してるの?」と声をかけた。「ん? おー、神谷じゃん。こんな時間まで珍し……いや、居残りさせられた感じか」「……まあ」「お疲れ〜」 神山はいつも周りにいる同級生たちと同じように僕と会話をし、少しむず痒くなる。大体は相手もぎこちなく敬語を使ってきたりするのに。でもそれは……僕が相手に心を開いていないから、というのも感じ取っている。わかってはいるけれど、身構えてしまう。 そんな僕を知ってか知らずか、神山は「良いネタないかな〜」と校門前から校舎を見上げる。「良いネタ?」「おう。俺、新聞部なんだけどさ。学校であった出来事を当事者にインタビューして記事にして掲示板に貼るわけ。でも『サッカー部優勝候補!』とか『全生徒に聞いた! 好きな教師ランキングトップ10!』とかありきたりなものでつまんなくてさ……」「ふぅん」 全生徒に聞いた割に僕にはアンケート来てなかったなあ。と思いながら話を聞いていく。「なんかこう……もっとこう、読む人を惹きつけられるものを記事にしたい! と思って」「……それを、今探してるの?」「そう。俺が今狙ってるのは『学校の七不思議』」「……」 クラスの人気者である神山からそんな言葉が出るとは。少し現実味がないなあ、と思ってしまう。「僕たちの学校に二宮金次郎の銅像はないから、六不思議になっちゃうんじゃない?」「まーまー。王道な話じゃなくても。なんか話題になったら良いなと思って。とりあえず七つ、良いネタを探したい!」「……いつも周りにいる同級生たちに声かけたら探してくれるんじゃない? どうしてわざわざ1人で……」「一度尋ねたんだけど。『誰かと誰かは恋人いるのに他の人と浮気してる』みたいなしょうもないものばかりで。一応学校代表の新聞部だから、誰かを下げる記事は出来ないんだよね。他の部員もそこまで本気じゃないし」「……どうして神山くんは新聞を作りたいの?」 新聞部は文化部の1つ。彼ならスポーツ部に入って人気を掻っ攫っていきそうだというのに。何故わざわざ地道な作業が必要な新聞部に? 神山は僕を見て口角を上げると「天下取りた
同級生たちが神山の席に群がっていれば次第に朝のHRが始まるチャイムが鳴った。担任が教室に入ってきて、委員長の号令でのろのろと立ち上がる。「おはようごさいまーす」と皆も適当に挨拶して着席すれば、担任も眠そうにしながら今日の予定を話していく。 淡々と聞いていれば、ふと目が合ってしまった。まずい、と思った時にはもう遅い。「今日提出の課題は神谷が集めて職員室まで持ってくるように。期限は放課後まで。いいな?」「……はい」 せめて昼休憩が終わるまでにしてほしかった。放課後だと最後まで提出しない人がいそうだし、何よりすぐに家に帰ることが出来なくなる。 朝のHRで提出じゃなかったことに「急いでやったのに〜」「期限伸びた! ラッキー」と周りの同級生が盛り上がる一方、僕の気分はどんよりと重くなる。(今日はついてない……) 同級生に突き飛ばされるわ、花は踏み潰されるわ、教師の手伝いさせられるわで散々だ。 *「ごめん、あともうちょっとだけ待っててもらっていい⁉︎」「……はい」 案の定。まだ課題を終えてない同級生が放課後に必死に問題を解いている。今そんなに頑張っているなら数日前にも出来たでしょ……と言える訳もなく。教室に居残ってその子が問題解き終えるのを待つ。 その間、暇だったから窓際に行き空を見つめる。昼間とは違う夕焼け色。グラデーションが綺麗で、思わず1枚パシャリと撮る。「……神谷くんさあ、ちょっと手伝おうとは思わないの?」 問題を解いていた子が少し恨めしげにこちらを見ながら声をかけてくる。「え?」「いや、写真撮ってる暇があるなら課題手伝ってくれてもよくない?」 もう殆ど全員が僕に提出した。諦めて提出しない人も中にはいた。まだその方が僕にはありがたかった。そもそも事前に終えていたらすんなり僕は家に帰ることが出来ていたのに、往生際が悪い生徒1人のために居残っているのにその言い草は何なのか。「いや……この課題、1週間前に出されていたものだよ。僕は事前に終えていたし、提出間近になって今頃やり出す人の神経がわからないんだけど……」「なんだよ? あーあ、ミヤマの時は手伝ってくれて助かったのにな〜。陰キャのお前じゃ苦労するわ〜」「……」 腹が立つ生徒だ。言い返すことも面倒になり窓際の席に座って空を眺めることにした。 夕焼けの空に藍色が混じってきた頃、机
朝、学校へ向かう途中。道端に咲いてる小さな花を首から下げたカメラで一枚撮る。その花は夜の間に降っていた雨の雫が朝日に照らされて、きらきらと輝いていた。 満足していたら、後ろから追いかけっこをしていた同級生と体がぶつかり僕の体は横に倒れる。それなりに大きな衝撃だった。地面に打ち付けられた僕は呻きながら相手を睨みつければ「ごめん、気付かなくて!」と謝られる。「怪我はない?」「ない、けど」「じゃーよかった! あー女子じゃなくてよかった〜! アイツら何かと集団で煩いからさ〜!」 同級生はそのまま一緒にいた友人と歩いていく。1人残された僕は、のろのろと立ち上がり……先ほど綺麗だと思っていた小さな花が、踏み潰されてしまったところを見る。(まあ、こんな小さなものを気にするのは僕くらいだろうな……) ズボンについた汚れを取り払い、教室に向かう。 * 朝のHRが始まる前に先ほど撮った花の写真を見返す。同級生に踏まれてしまったけれど、直前に撮ったものだったから朝日に照らされた雫も綺麗に撮れている。いいものを撮れた、と少し胸が弾む。(次の展示はこの写真にしようかな――)「何見てんの?」 背後から突然声をかけられ、ハッとカメラの画面を消す。「あー見たかったのにー」と残念そうに呟くのは、僕の後ろの席の……神山 慧護だった。「……別に。大したものじゃないから」「ふーん。神谷って写真部なんだっけ」 神山は僕のことを神谷と呼ぶ。何を隠そう、僕たちは苗字が似てるから席も前後だった。いつも皆に囲まれて人気の神山と、ずっと1人で写真ばかり撮っている僕は対照的だった。「かみや」までは2人とも被ってしまうので、同級生は神山を呼ぶ時はあだ名で「ミヤマ」と言っていた。「……写真部だけど……何?」「なるほどねえ。ね、今見てたやつ見せてくれない?」「……嫌です」「ちぇー、つまんなー」 唇を尖らせる。クラスで人気の神山を怒らせてしまったか、と身構えるも彼は僕から興味を失くしたように机に上半身を乗せて伸びをする。「ミヤマ〜、課題やった⁉︎ 写させて!」「帰りにアイス奢ってな〜」 今日提出の課題をまだ終わらせていない生徒たちがわらわらと後ろの席に集まっていく。「お前らちょっとは自力で解けよ〜」と笑う神山と「ごめんて〜
山奥にある学校に、狐と狸がやって来た。 山から山への移動中だったが、ふと気になりふらりとやって来たのだ。 周りを探索しながら体育館裏に回り込むと、一本の小さな桜が植えられていた。 『狐くん狐くん。桜がありますよ。丁度いいお昼寝スポットです』 『おい、ちょっと寄り道しただけだ。ここは人間が多いんだから見つかったら厄介だぞ』 狐が戒めると狸は『そうですね……』としゅんと頭を下げてトボトボ……と狐の元まで来る。 特に目ぼしいものはなさそうだ。 学校を後にしようと思えば、目の前で座り込み泣いている生徒に出会しギョッとする。 人間の気配には警戒しているつもりだったのに気付くことができなかった。 狐はそのまま通り過ぎようとしたが、狸はのそのそと生徒に歩み寄り『大丈夫ですか?』というように鼻を近づける。 『相手は人間だぞ。危険だから離れろ』 狐が言うも狸は『敵意は感じられませんよ』と狐を見つめる。 『どうしたんですか、生徒くん。この時間はお勉強している筈ですよね』 「……ぐすっ、ぐすっ」 生徒は泣いているばかりで狸の存在にも気付いていないようだった。 オロオロしている狸は狐を見て『狸はもうだめです……』という顔をする。 泣いてる生徒と、落ち込む狸。 狐は仕方ないと生徒のそばに行き座る。 『いいんですか? 狐くん』 『どうせ生徒が泣き止まないとお前も動かないだろう』 狐と狸は気の迷いで生徒と仲良くなった。その生徒は毎日1人で体育館裏にやって来てぼんやり空を見上げている。 通り過ぎるはずだった学校に2匹は棲みつくようになり、体育館裏の小さな桜の木の下で眠るようになった。 いつも泣いていた生徒は、両脇に2匹が座っていることに不思議がっていたものの、初めて心許せる相手に出会えて次第に笑顔が増えていった。 生徒にとっても狐と狸の存在は大きくなっていった。 言葉は交わせないものの友達だった。 * ……長い間、眠っていた気がする。 目を覚ますと、ナニカが校舎を徘徊している。 いつかは暴走してしまうと思っていた。月の光を浴びると狐と狸は力を宿し、ナニカを抑え込む存在となる。 『……狐くん、行きましょう』 『わかっている』 狐と狸は最近見つけた〝憑依しやすい人間〟に会うために校