スクープ!《学校に棲みつく2匹と、消えた生徒の行方》

スクープ!《学校に棲みつく2匹と、消えた生徒の行方》

last updateLast Updated : 2026-09-24
By:  伊吹ハナUpdated just now
Language: Japanese
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陽キャ×陰キャ。交わらない2人を繋ぐのは学校に潜む怪異︎ ︎ 学校主催の肝試しが、悪夢の始まりだった。校舎は異空間と化し、生徒たちを次々と捕食するグロテスクな〝怪異〟が徘徊し始める。 写真だけが友達の内気な僕、神谷縁(受け)。クラスの人気者・神山慧護(攻め)に誘われ参加した肝試しで、僕たちは出口のない恐怖に閉じ込められてしまった。僕のカメラだけが、この惨劇の「真実」を写し出していく。 途中で出会った動物2匹の不思議な力を借りながら怪異の暴走を止めようと心に決める縁と慧護。そして明かされる怪異の正体。 この学校に隠された過去の悲劇とは? 正反対の二人が命懸けで真相を追う、学園ホラーミステリー!

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Chapter 1

狐と狸の棲みつく場所

氷室彩葉(ひむろ いろは)は力なくベッドに横たわり、冷たい器具が、鈍く痛む下腹部を滑っていく感触に耐えていた。

「赤ちゃんは……大丈夫ですか……?」震える声で尋ねると、医師は憐れむように溜息をついた。

「切迫流産です。残念ながら……お子さんの心音は、もう聞こえません」

その瞬間、彩葉はシーツを強く握りしめた。心臓が氷の手で鷲掴みにされたように、軋む。

「仮に心音が確認できたとしても、出産は推奨できませんでした。火災で大量の有毒煙を吸い込まれている。胎児への影響は計り知れません」

二時間前──氷室グループ傘下の新エネルギー研究室で火災が発生し、彩葉は開発中の最新チップを守るため、躊躇なく炎の中に飛び込んだ。

チップは守れたものの、彼女自身は濃い煙に巻かれて意識を失ったのだ。

救急室に運ばれた時、体は擦り傷だらけで、下半身からは血が流れ、目を覆いたくなるほどの惨状だったという。

家庭と仕事に昼夜を問わず奔走し、心身ともに疲れ果てていた彼女は、この時になって初めて、自分のお腹に新しい命が宿っていたこと──妊娠二ヶ月だったことを知った。

「あなたはまだ若い。きっとまた授かりますよ」

医師はそう慰めながら、「今は安静が第一です。ご主人に連絡して、付き添ってもらってください」と告げた。

身を起こすことすら億劫な体で、彩葉は夫である氷室蒼真(ひむろ そうま)に電話をかけるのを躊躇った。

二日前、彼は息子の氷室瞳真(ひむろ とうま)を連れてM国へ出張したばかりだ。

「プロジェクトの商談だ」と彼は言っていた。仕事中の彼が、邪魔をされることを何よりも嫌うことを、彩葉は知っていた。ここ二日間、彼からの連絡は一切ない。それほど忙しいのだろうか。

その時、携帯の短い振動が静寂を破った。

画面に表示されたのは、異母妹である林雫(はやし しずく)の名前。

震える指でメッセージを開いた彩葉は、息を呑んだ。

そこに添付されていたのは、一枚の写真。雫が息子の瞳真を抱きしめ、二人で笑顔のハートマークを作っている。そしてその隣には、眉目秀麗な夫・蒼真が静かに座っていた。

結婚写真すら「くだらない」と撮ろうとしなかった彼が、その写真の中では、薄い唇の端をわずかに上げ、滅多に見せない穏やかな笑みを浮かべていた。

その姿は、まるで幸せな三人家族そのものだった。

【お姉ちゃん、今ね、蒼真さんと瞳真くんとミュージカルを観てるの。「ナイチンゲールの歌」って、お姉ちゃんが一番好きな作品よね?お姉ちゃんの代わりに、私が先に観ちゃった!】

チケットは常に完売で、手に入れることすら困難な人気の演目。

いつか一緒に観に行きたい、と何度も蒼真に伝えたが、いつも冷たく突き放されるだけだった。

「今忙しいんだ。それに瞳真もまだ小さい。また今度だ」

……忙しいんじゃなかった。ただ、自分と行きたくなかっただけなんだ。

元々張り裂けそうだった胸に、鋭い杭を打ち込まれたような激痛が走る。

それでも諦めきれず、病室に戻った彩葉は腹部の痛みに耐えながら、蒼真に電話をかけた。

数回のコールの後、低く、それでいて芯のある冷ややかな声が鼓膜を揺らす。

「……どうした」

「蒼真……ごめんなさい、体調が悪くて、病院にいるの。少しだけ、早く帰ってきてもらえないかな……?」彼女の顔は蒼白で、声には力がなかった。

「こっちはまだ商談中だ。戻るのは二日後になる。家のことは山根に任せろ」蒼真の態度は、どこか冷めていた。

彩葉はスマホとを握りしめる。「……ねえ。もしかして、雫と一緒にいるの?」

その問いに、蒼真の声は露骨な苛立ちを滲ませた。「彩葉、そんな詮索に何の意味がある?もう五年だぞ。雫は妹のようなものだと何度も言ったはずだ。仮に一緒にいたとして、それがどうした。

最近のお前は、仮病まで使って同情を引こうとするようになったのか?」

「パパ、声大きいよ!僕と雫の邪魔しないでよ!」

電話の向こうから、瞳真の高い声が響いた。「もうママなんてほっときなよ!本当にうざいんだから!」

彩葉が何かを言う前に、通話は一方的に切られた。

ほんの少しの時間すら、彩葉のために割いてはくれない。

がらんとした病室で、彼女は布団を固く握りしめ、体の芯から冷えていくのを感じていた。

三日後、彩葉は無理を言って退院した。

研究開発部の仕事が、まだ山のように残っていたからだ。

特に今回の新製品発表会は、蒼真も期待を寄せている。そして自分にとっても、この二年間心血を注いできたプロジェクトを、成功させたかった。

夕方、疲れ切った体を引きずってブリリアージュ潮見の自宅に戻ると、リビングから楽しげな笑い声が聞こえてきた。

息子の瞳真と、雫の声だ。

胸がどきり、と嫌な音を立てる。彩葉はとっさに身を隠し、鉢植えの影からリビングの様子を窺った。

ソファには、氷室父子の間に座る雫の姿があった。テーブルの上には、バースデーケーキ。そして彼女の首には、赤いルビーのネックレスが輝いていた。それは某高級ブランドの世界限定品だ。

先月、ショーウィンドウで見かけて心惹かれたものの、目を見張るような値段に諦めた、あのネックレス。

それが今、雫の胸元を飾っている。

「蒼真さん、素敵なプレゼントをありがとう。すごく嬉しいわ」雫はペンダントに優しく触れ、潤んだ瞳で男の端整で凛々しい顔を見つめる。「でも、こんな高価なもの……これからは無理しないで。気持ちだけで十分嬉しいから」

蒼真は淡然とした表情で言った。「金などどうでもいい。お前が喜んでくれるなら、それが一番だ」

「ねえねえ雫、お目々閉じて!」瞳真がはしゃいだ声で言った。

雫が素直に瞳を閉じると、瞳真は小さな手で、色とりどりのクリスタルが繋がれたブレスレットを彼女の腕に通した。

「もう開けていいよ!」

「わぁ、綺麗!」雫は驚きの表情を見せた。

瞳真はへへっと笑い、頭を掻く。「これね、僕が一つひとつ選んで、糸に通したんだ。雫への誕生日プレゼント!」

「ありがとう、瞳真くん。一生大切にするわ」雫が身をかがめて瞳真の額にキスをしようとした、その時。

瞳真は自ら顔を上げ、ちゅっ、と音を立てて雫の頬にキスをした。

瞳真は父親に似て、どこか冷めた子供だった。実の母親である彩葉にさえ、ほとんど懐こうとしなかったのに。

自分が喉から手が出るほど欲しかったものを、雫はこんなにもたやすく手に入れてしまう。

嫉妬と絶望で、胸の奥がキリキリと痛んだ。

瞳真はキラキラした目で雫を見つめ、真剣な顔で言う。「雫は体が弱いから、これからは僕とパパが守ってあげる。だから安心してね」

「ふふっ……ありがとう。頼りにしてるわね」雫は恥じらうように頬を染め、ちらりと隣の男に視線を送る。

蒼真は切れ長の瞳を細め、自らケーキを一切れ切り、雫の手に渡す。

血の気が、すうっと引いていく。立っていられなくなりそうだった。

全身全霊で愛した夫は、他の女の誕生日を祝い、命がけで産んだ息子は、母親からすべてを奪った女を守ると誓う。

彩葉は、赤く染まった目で静かに笑った。そして踵を返すと、五年もの間自分を縛り付けた結婚という名の牢獄から、毅然と歩み出した。

自宅の外は、冷たい雨が降っていた。

全身ずぶ濡れになりながら、彩葉は道端に立ち、久しぶりにかける番号を呼び出す。電話の向こうから、懐かしい声が聞こえた。

「お嬢!お久しぶり!元気か?」

「えぇ、元気よ」彼女は微笑んだ。その美しい瞳には、かつてないほど冷徹な光が宿っていた。

「離婚することにしたの。だからお願い、離婚協議書を用意してちょうだい。なるべく、早くね」

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狐と狸の棲みつく場所
山奥にある学校に、狐と狸がやって来た。 山から山への移動中だったが、ふと気になりふらりとやって来たのだ。 周りを探索しながら体育館裏に回り込むと、一本の小さな桜が植えられていた。 『狐くん狐くん。桜がありますよ。丁度いいお昼寝スポットです』 『おい、ちょっと寄り道しただけだ。ここは人間が多いんだから見つかったら厄介だぞ』 狐が戒めると狸は『そうですね……』としゅんと頭を下げてトボトボ……と狐の元まで来る。 特に目ぼしいものはなさそうだ。 学校を後にしようと思えば、目の前で座り込み泣いている生徒に出会しギョッとする。 人間の気配には警戒しているつもりだったのに気付くことができなかった。 狐はそのまま通り過ぎようとしたが、狸はのそのそと生徒に歩み寄り『大丈夫ですか?』というように鼻を近づける。 『相手は人間だぞ。危険だから離れろ』 狐が言うも狸は『敵意は感じられませんよ』と狐を見つめる。 『どうしたんですか、生徒くん。この時間はお勉強している筈ですよね』 「……ぐすっ、ぐすっ」 生徒は泣いているばかりで狸の存在にも気付いていないようだった。 オロオロしている狸は狐を見て『狸はもうだめです……』という顔をする。 泣いてる生徒と、落ち込む狸。 狐は仕方ないと生徒のそばに行き座る。 『いいんですか? 狐くん』 『どうせ生徒が泣き止まないとお前も動かないだろう』 狐と狸は気の迷いで生徒と仲良くなった。その生徒は毎日1人で体育館裏にやって来てぼんやり空を見上げている。 通り過ぎるはずだった学校に2匹は棲みつくようになり、体育館裏の小さな桜の木の下で眠るようになった。 いつも泣いていた生徒は、両脇に2匹が座っていることに不思議がっていたものの、初めて心許せる相手に出会えて次第に笑顔が増えていった。 生徒にとっても狐と狸の存在は大きくなっていった。 言葉は交わせないものの友達だった。 * ……長い間、眠っていた気がする。 目を覚ますと、ナニカが校舎を徘徊している。 いつかは暴走してしまうと思っていた。月の光を浴びると狐と狸は力を宿し、ナニカを抑え込む存在となる。 『……狐くん、行きましょう』 『わかっている』 狐と狸は最近見つけた〝憑依しやすい人間〟に会うために校
last updateLast Updated : 2026-09-24
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1似てる苗字
 朝、学校へ向かう途中。道端に咲いてる小さな花を首から下げたカメラで一枚撮る。その花は夜の間に降っていた雨の雫が朝日に照らされて、きらきらと輝いていた。 満足していたら、後ろから追いかけっこをしていた同級生と体がぶつかり僕の体は横に倒れる。それなりに大きな衝撃だった。地面に打ち付けられた僕は呻きながら相手を睨みつければ「ごめん、気付かなくて!」と謝られる。「怪我はない?」「ない、けど」「じゃーよかった! あー女子じゃなくてよかった〜! アイツら何かと集団で煩いからさ〜!」 同級生はそのまま一緒にいた友人と歩いていく。1人残された僕は、のろのろと立ち上がり……先ほど綺麗だと思っていた小さな花が、踏み潰されてしまったところを見る。(まあ、こんな小さなものを気にするのは僕くらいだろうな……) ズボンについた汚れを取り払い、教室に向かう。 * 朝のHRが始まる前に先ほど撮った花の写真を見返す。同級生に踏まれてしまったけれど、直前に撮ったものだったから朝日に照らされた雫も綺麗に撮れている。いいものを撮れた、と少し胸が弾む。(次の展示はこの写真にしようかな――)「何見てんの?」 背後から突然声をかけられ、ハッとカメラの画面を消す。「あー見たかったのにー」と残念そうに呟くのは、僕の後ろの席の……神山 慧護だった。「……別に。大したものじゃないから」「ふーん。神谷って写真部なんだっけ」 神山は僕のことを神谷と呼ぶ。何を隠そう、僕たちは苗字が似てるから席も前後だった。いつも皆に囲まれて人気の神山と、ずっと1人で写真ばかり撮っている僕は対照的だった。「かみや」までは2人とも被ってしまうので、同級生は神山を呼ぶ時はあだ名で「ミヤマ」と言っていた。「……写真部だけど……何?」「なるほどねえ。ね、今見てたやつ見せてくれない?」「……嫌です」「ちぇー、つまんなー」 唇を尖らせる。クラスで人気の神山を怒らせてしまったか、と身構えるも彼は僕から興味を失くしたように机に上半身を乗せて伸びをする。「ミヤマ〜、課題やった⁉︎ 写させて!」「帰りにアイス奢ってな〜」 今日提出の課題をまだ終わらせていない生徒たちがわらわらと後ろの席に集まっていく。「お前らちょっとは自力で解けよ〜」と笑う神山と「ごめんて〜
last updateLast Updated : 2026-09-24
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2融通効かない人
 同級生たちが神山の席に群がっていれば次第に朝のHRが始まるチャイムが鳴った。担任が教室に入ってきて、委員長の号令でのろのろと立ち上がる。「おはようごさいまーす」と皆も適当に挨拶して着席すれば、担任も眠そうにしながら今日の予定を話していく。 淡々と聞いていれば、ふと目が合ってしまった。まずい、と思った時にはもう遅い。「今日提出の課題は神谷が集めて職員室まで持ってくるように。期限は放課後まで。いいな?」「……はい」 せめて昼休憩が終わるまでにしてほしかった。放課後だと最後まで提出しない人がいそうだし、何よりすぐに家に帰ることが出来なくなる。 朝のHRで提出じゃなかったことに「急いでやったのに〜」「期限伸びた! ラッキー」と周りの同級生が盛り上がる一方、僕の気分はどんよりと重くなる。(今日はついてない……) 同級生に突き飛ばされるわ、花は踏み潰されるわ、教師の手伝いさせられるわで散々だ。 *「ごめん、あともうちょっとだけ待っててもらっていい⁉︎」「……はい」 案の定。まだ課題を終えてない同級生が放課後に必死に問題を解いている。今そんなに頑張っているなら数日前にも出来たでしょ……と言える訳もなく。教室に居残ってその子が問題解き終えるのを待つ。 その間、暇だったから窓際に行き空を見つめる。昼間とは違う夕焼け色。グラデーションが綺麗で、思わず1枚パシャリと撮る。「……神谷くんさあ、ちょっと手伝おうとは思わないの?」 問題を解いていた子が少し恨めしげにこちらを見ながら声をかけてくる。「え?」「いや、写真撮ってる暇があるなら課題手伝ってくれてもよくない?」 もう殆ど全員が僕に提出した。諦めて提出しない人も中にはいた。まだその方が僕にはありがたかった。そもそも事前に終えていたらすんなり僕は家に帰ることが出来ていたのに、往生際が悪い生徒1人のために居残っているのにその言い草は何なのか。「いや……この課題、1週間前に出されていたものだよ。僕は事前に終えていたし、提出間近になって今頃やり出す人の神経がわからないんだけど……」「なんだよ? あーあ、ミヤマの時は手伝ってくれて助かったのにな〜。陰キャのお前じゃ苦労するわ〜」「……」 腹が立つ生徒だ。言い返すことも面倒になり窓際の席に座って空を眺めることにした。 夕焼けの空に藍色が混じってきた頃、机
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3僕とは正反対の人
 職員室に課題を届け、やっと帰路につけば、先に帰ったはずの神山が校門前にいた。周りをキョロキョロしていて何やら探しているようだ。 そのまま無視して校外へ出ても良かったが……少し。ほんの少し気になってしまい「何か探してるの?」と声をかけた。「ん? おー、神谷じゃん。こんな時間まで珍し……いや、居残りさせられた感じか」「……まあ」「お疲れ〜」 神山はいつも周りにいる同級生たちと同じように僕と会話をし、少しむず痒くなる。大体は相手もぎこちなく敬語を使ってきたりするのに。でもそれは……僕が相手に心を開いていないから、というのも感じ取っている。わかってはいるけれど、身構えてしまう。 そんな僕を知ってか知らずか、神山は「良いネタないかな〜」と校門前から校舎を見上げる。「良いネタ?」「おう。俺、新聞部なんだけどさ。学校であった出来事を当事者にインタビューして記事にして掲示板に貼るわけ。でも『サッカー部優勝候補!』とか『全生徒に聞いた! 好きな教師ランキングトップ10!』とかありきたりなものでつまんなくてさ……」「ふぅん」 全生徒に聞いた割に僕にはアンケート来てなかったなあ。と思いながら話を聞いていく。「なんかこう……もっとこう、読む人を惹きつけられるものを記事にしたい! と思って」「……それを、今探してるの?」「そう。俺が今狙ってるのは『学校の七不思議』」「……」 クラスの人気者である神山からそんな言葉が出るとは。少し現実味がないなあ、と思ってしまう。「僕たちの学校に二宮金次郎の銅像はないから、六不思議になっちゃうんじゃない?」「まーまー。王道な話じゃなくても。なんか話題になったら良いなと思って。とりあえず七つ、良いネタを探したい!」「……いつも周りにいる同級生たちに声かけたら探してくれるんじゃない? どうしてわざわざ1人で……」「一度尋ねたんだけど。『誰かと誰かは恋人いるのに他の人と浮気してる』みたいなしょうもないものばかりで。一応学校代表の新聞部だから、誰かを下げる記事は出来ないんだよね。他の部員もそこまで本気じゃないし」「……どうして神山くんは新聞を作りたいの?」 新聞部は文化部の1つ。彼ならスポーツ部に入って人気を掻っ攫っていきそうだというのに。何故わざわざ地道な作業が必要な新聞部に? 神山は僕を見て口角を上げると「天下取りた
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4スクープのネタ
 神山に連れられるのは体育館の裏側の、さらに自然に木々が生えてる中。なんだよ、どこに連れていく気だよ……と恐る恐るついていけば「ここ、みて」と神山がこちらを振り返る。「静かにな」「ええ……?」 茂みの奥。大きな桜の木がある。周りに生えている雑草をそっと掻き分けて促す神山の隣にいき覗き込めば――。「……狐と狸? 仲良く眠ってる……」「そーそー。これ、最近見つけてさ。ちょいちょい見に来てたんだ」「へぇ……」 2匹は巣穴があるわけでもない、隠れスポットのような体育館裏の隅で寄り添うように眠っている。「普段の生活してるだけなら気付かなそうだけど、学校の七不思議探してたら見つけたの?」「そう。なー神谷、写真撮るの上手いだろ? 1枚撮ってほしい」「……わかったけど」 もう少し近づいてカメラを構えても2匹は気持ち良さそうに眠っている。カシャ、と音を立ててシャッターを切り神山の元まで戻る。「よし。後でそれちょーだい。新聞の記事にしよう。ずっと考えてたんだ。新聞部と写真部は合同にした方がいいって」 鼻歌交じりで校門に戻る神山を見つめ……慌てて追いかける。「ま、待って!」「なに?」「もし……新聞の記事にしちゃったら。大勢の生徒があの2匹を見に行っちゃうんじゃない?」「……というと?」 神山の純粋な疑問。目をぱちぱちさせて僕を見ている。他の生徒たちとは違って、彼は意見を聞いてくれる……と信じ、予測出来たことを伝えていく。 「狐と狸の……居心地いい場所を失くしてしまうと思う……見守る生徒だけじゃないと思う。動物に悪戯する生徒もいるよ」「……ふむ」 神山は少し考え……僕を見て「そうかもね」と頷いた。「ごめん。七不思議の1つを見つけられそうだったのに」「いいよ。これからまた探していけばいいし。というか、神谷がちゃんと意見言えるんだって衝撃の方が強いかな」「……記事にして悪い方向に転がるのが嫌だなって、思っただけだよ」 校門前。「じゃあ……」と歩き出す僕に「さっきの写真確認だけしてもいい?」と神山に声をかけられる。「いいけど……」 先程撮った画像を見返す……も、不可解な現象に眉を顰める。狐と狸の写真を見たかっただけの神山は、中々カメラを見せない僕に「なに、どうしたの」と覗き込もうとし、咄嗟に隠してしまう。「なんだよ? 別に笑わねえって。
last updateLast Updated : 2026-09-24
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