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55.春希の幼稚園

Author: 桜立風
last update publish date: 2026-09-04 12:43:40

「大雅さん、それじゃあまるでお葬式ですよ……」

春希の就園について意見をくれた春奈・圭一夫妻の紹介で、とある幼稚園に見学に行くことになった大雅。

「そうか?……なるべく目立たないように、地味に、と思ったんだけど」

「ダダ漏れるスターのオーラは、そんなんじゃ隠せません」

「……じや、どうすればいいんだよ」

頬を染め、拗ねたような表情で見下ろす大雅に心臓を撃ち抜かれ、思わず胸を押さえる花。

こういう表情はテレビドラマの中では見せない……ホント、反則だと思う。

「と、とりあえず喪服スーツは脱ぎましょう」

寝室に続くウォークインクローゼットへ行き、花は紺色のスーツと薄い水色のワイシャツ、ブルー系のネクタイを選ぶ。

リビングに持っていこうとしたが、下着1枚という姿で仁王立ちで待つ大雅が寝室にいた。

「こ、これを……お召しくださいませ」

「おう」

そんな、見せつけるように割れた腹筋を見せることないのに……下半身に目がいかないように、花はわざと天井に顔を向けた。

「何やってんの?」

「いえ、不躾な視線を向けないように……ですね、」

「いいよ」

思いがけない返事に、花は思わず大雅を見てしまった。する
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    「大雅さん、それじゃあまるでお葬式ですよ……」春希の就園について意見をくれた春奈・圭一夫妻の紹介で、とある幼稚園に見学に行くことになった大雅。「そうか?……なるべく目立たないように、地味に、と思ったんだけど」「ダダ漏れるスターのオーラは、そんなんじゃ隠せません」「……じや、どうすればいいんだよ」頬を染め、拗ねたような表情で見下ろす大雅に心臓を撃ち抜かれ、思わず胸を押さえる花。こういう表情はテレビドラマの中では見せない……ホント、反則だと思う。「と、とりあえず喪服スーツは脱ぎましょう」寝室に続くウォークインクローゼットへ行き、花は紺色のスーツと薄い水色のワイシャツ、ブルー系のネクタイを選ぶ。リビングに持っていこうとしたが、下着1枚という姿で仁王立ちで待つ大雅が寝室にいた。「こ、これを……お召しくださいませ」「おう」そんな、見せつけるように割れた腹筋を見せることないのに……下半身に目がいかないように、花はわざと天井に顔を向けた。「何やってんの?」「いえ、不躾な視線を向けないように……ですね、」「いいよ」思いがけない返事に、花は思わず大雅を見てしまった。するとまだ下着1枚の大雅。……なにしてんの?!両手で顔を隠しながら、指の間から目をのぞかせる花を笑い、大雅は花の手を取る。「出血大サービス……花だから、特別」自分の胸に、腹筋に、花の手を置く大雅。すべらかな感触に鼻血が出そうになる。「はなちゃ〜ん!ごはんたべたよぉ」リビングから春希の声が聞こえてハッとした。いかんいかん、鼻の穴を膨らませて大雅さんの腹をサワサワしてる場合じゃない!「い、今行くね」慌てて離れた花の手首を取り、あっという間に抱きすくめ、唇を奪う大雅。「今度、もっと触って……」「……っ?!」沸騰したやかんのように、花の頭から勢いよく蒸気が吹き出した。「本当に大丈夫かよ……」「大丈夫です!もし入園させたいと思ったら、その時理由を明かせばいいので!」大雅は花の提案で、分厚いレンズの黒縁丸メガネと、付けヒゲをさせられていた。「いいですか、名前は偽名で書いてくださいね?」「……はい」これから行くのは「サンサン幼稚園・入園ご案内カーニバル」という一大イベント。来春の入園を目指す子供と親向けに、園内見学と職員の紹介、幼稚園の特色と教育方針を披露する会だ。花

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    「わぁ……たいがーおはなししてる〜」 数日後の朝、起きてきた春希がリビングの大きなテレビの前で立ち尽くした。 「うん。お仕事がひとつ終わったみたいだね」 カメラのシャッター音とフラッシュの点滅、その中で大雅が、花園ミミを隣に置いて笑顔を作っている。 開局50周年を記念して制作されたドラマのインタビュー会見だ。 ……今朝大雅が、朝のワイドショーで生放送されるから観るよう言ったもの。 『クランクアップお疲れ様でした!主演のおふたりは、ドラマ「トップス」の一番の見どころはどのあたりだとお考えですか?』 『そうですね、雄大な景色と特徴的な街の雰囲気でミステリー感を演出できた海外編でしょうか』 大きな画面いっぱいに大雅が映し出され、料理をしていた花も、思わずテレビに近寄っていく。 『私も同じです。海外編は物語の大きな転換場面なので、ぜひじっくりご覧になっていただきたいです』 画面が花園ミミに変わり、続いて2人で手を振っている。 他にいくつかの質問に答え、インタビュー終盤の場面。1人のリポーターが何かに気づいたようだ。 『あれ……大雅さん、首に何か跡がありますね』 『あぁ、これですか』 画面のなかで大雅は慌てずに首に手を当て、にこやかに笑った。 そしてチラリとカメラに目をやる。 それを見て花は持っていたお玉を落とし、2〜3歩後ろへ後ずさった。 『蚊に刺されたみたいで。無意識に掻きむしったんでしょうね』 「はなちゃん、おたま……」 春希が渡してくれるのも気づかず、花は両手で口元を覆う。 『そんなこと言って大雅さん……!もしかしたら噂の恋人にうっかりつけられちゃったのでは?』 リポーターはそう誘導尋問を口にしながら隣にいた花園ミミに視線をやる。すると彼女は高らかに笑い始め、その明るい笑い声は、観る人にどこか否定を感じさせた。 『まぁ、蚊です』 カメラに向けた笑顔が、自分へ向けたものだとわかる花。……いや、本当にあれは蚊だ。昨夜、パチンっと首を叩く音で目を覚ましたのだから間違いない。 「跡になったら大変だから薬を塗ろうとしたのに……」 これ以上リポーターに意地悪なことを聞かれないよう祈ったところで、インタビューからはけていく2人。 あの虫刺されの跡は、突っ込まれることがわかってたに

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    その後、哲平から追加情報のメッセージが送信されてきた。 「2年前……」 情報によると、父が叔父の暮らす地方都市でたびたび目撃されていたのは、2年ほど前のことだとわかった。 ……ということは、会社も家族も大雅の姉も放り出して消えたあと、父は弟を頼ったことになる。 「嘘をつかれてたのか……」 母の突然の訃報を知らせたが、怪我をしているからと葬式には来なかった叔父。……もともと親密な親戚付き合いをしていたわけではないから、不自然だとも思わなかった。 会社が大変なことになっていること、そして父の失踪も伝えた。 あの時叔父は確かに言った。 「しばらく兄さんには会っていない」と。 「はなちゃん……おきた」 春希の寝ぼけた声が聞こえてハッとした。振り向くと、テナガザルのぬいぐるみの手を引いてトボトボ歩いて来る。 「うん、よく寝たね?!麦茶飲もっか」 携帯は一旦閉じて、花はキッチンに向かった。今日のおやつは朝のうちに作って冷やしておいたスイートポテト。 最近は考え事が多くて、妙に料理が捗る…… いつものようにお昼寝のあとは春希の好きなアニメを流し、お茶を飲ませながら少しずつ目を覚ましてもらう。 この時、いつまでもゴロゴロしていたら要注意だ。体調を崩している可能性がある…… 「はなちゃ〜ん、おなかすいたぁ」 「うん!おやつにしようね」 ……良かった。今日も元気で過ごせそうだ。 花は春希のお気に入りの皿にスイートポテトを盛って、リビングへと向かった。 一緒におやつを食べていると、携帯がメロディを奏でる。……哲平からのメッセージだとしたらあとにしよう。 「……あ、」 少しだけ携帯を覗いて、意外な人からの連絡に思わず声が出てしまった。 『しばらくぶりたけど……元気かな? ミミです!』 メッセージは花園ミミからだった。 春希が庭に飛び出していったタイミングでメッセージを開いてみる。 『山崎哲平って、はなちゃんの昔の友達だって聞いて驚いちゃった!』 「……えっ?なんで、」 しかも昔の友達……そこは訂正すべきか、流していいところか。 それにしても哲平とミミ、どういう繋がりなんだろう。 大雅に言わずに父の捜索に協力してもらっている。ミミから大雅につたわる危険が出てきた……?2

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  • スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……   52.夏から秋へ…変化の兆し

    「野菜の種か。家庭菜園を庭でやりたいって前に言ってたやつ?」 その夜、帰宅した大雅を迎えた花。 ……ソファの前のテーブルに、野菜の種が置きっぱなしだったことに気づいた。 「そうです……早々に種を買っちゃって」 「やってみたらいいよ」 「はい……」 すでに春希は寝室で眠っている時間。花は大雅の前に夕食を用意した。 「あ、今日……春奈さんと圭一さんが来てくださいまして」 「そうみたいだな。メッセージが来てた」 「は……春くん大喜びで、もう、飛んだり跳ねたり大変で……あの、だから今日もいつもより早く寝ちゃって……」 話さなければいけないことがいくつもあるのに、そんな話題を出せば、私たちの暮らしが変わってしまいそうで怖い。 「春希は、本当にあの夫婦に懐いてるよな」 「え?」 言い方に違和感を感じて、つい聞き返してしまった。 「実は少し前から2人に言われてるんだ。……春希の、幼稚園入園のこと」 「あ、そういえば、そんな年齢ですよね」 「そう言われて、少し考えているんだけど」 花が用意した料理に手を付けながら、大雅は思い切ったように話し始める。 「鈴里大雅っていう存在が、幼稚園や小学校に通うようになった春希に、相当な不便を強いるようになるんじゃないかって」 押しも押されぬ国民的スターが保護者である子供を、近所の幼稚園に通わせるわけにはいかないということだ。 「それじゃ、芸能人の子供が多く通うような幼稚園に?」 そんなところがあるのかわからないけれど……そういう場所に通わせるとしたら、大雅さんは春くんと一緒に園内見学とか行くのだろうか。 ……そしたら、子供と一緒に暮らしていることが世間に知られるかもしれない。 自分の子供ではないとしたら誰の子なのかと話題になって……亡くなった姉の子供だと暴かれたら、春くんもマスコミに狙われる? 同時にもし……私との結婚が公になったら。 その関係性は、センセーショナルに世間を賑わすだろう。 そうなった場合、一番にダメージを負うのは誰? 大雅さん……そして春くん…… スキャンダルでドラマやCMを降板になったら、莫大な違約金を背負う可能性があると聞いた話を思い出した。 「花……?まだ、決まったわけじゃないから」 「え……あの、ごめんな

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