——そうこう言っている内に最初の目的地着いた。
場所は、いつも行き慣れている大型ホームセンター。
目的は木炭と薪などの購入、ドラムコードの下見をする予定だ。
早速入り口から入ると、季節ものが堂々とコーナーとして設けていた。
今はバーベキューやピクニックに使うレジャー用品がメインになっている。
やはりレジャーシーズンになると、置いている用品がより多く揃っていた。
「空、木炭は十キロのもので良い?」
「うん、あと、薪があったらそれも二束ぐらいあればお願い」
「OK!」
当然のことだけど、炭や薪にも色んな種類がある。
木炭は我が家でよく使うバーベキュー用の炭のことだ。
(これが安定した火力が出来るから、扱いやすいのよね)
薪は、広葉樹・針葉樹と二種類ある。
我が家では特にこだわりはないけれど、どちらかというと針葉樹が多い。
焚き火など火のつけ始めの回りが早いからだ。
もちろん、火力や燃えやすさ、燃焼時間に違いがある。
(針葉樹のいいところは、着火した後の速さと火力。広葉樹は、火力の安定感から薪ストーブにいいらしい)
どちらとも良いところと苦手なところがある。
その良いところを活かすのが私達の工夫や使い方だろう。
(そうだ、これも買っておこう)
他に次々と欲しい品物をカートへ入れていき、日用品も買い足していった。
キッチンペーパーやラップ、ウェットティッシュとかも最近買いに行けてなかったからだ。
「ここでの買い物はこれぐらいかな?」
「うん、多分……大丈夫と思う」
必要なものを一通り買い揃えることが出来た。
だが……。
(あ、ドラムコードがある。そういえば、この前……)
先日、LIMEでドラムコードについて話していたことを思い出す。
「ねぇ、恭弥さん」
「ん? どした?」
「ドラムコードはどうする?」
「あぁ、そうだなぁ。一回、見てみるか」
ドラムコードが置いているコーナーを見に行くことにした。
けれどこの店舗では、種類はそんなに多くなかった。
「うーん……。値段はまぁ良いんだけど……」
「うん?」
「俺、思ったのはドラムコードよりも電源ポータブル的なものが良いんじゃないかなぁ? どうなんだろう?」
こちらも、一長一短で悩ましいところだ。
そんな中で彼の判断はこうだった。
「今回は保留?」
「悩みどころだけど、一旦保留だな。他は大丈夫?」
「うん」
「じゃあとりあえず、これで会計行こっか」
会計へ向かったらセルフレジで全て精算し終え、店をあとにした。
◇ ◆ ◇
次は、ホームセンターから車で十五分くらいの場所へ走らせた。
近くにある大型ショッピングモールの方だ。
どうやら恭弥さんは、ちょっと寄りたいアウトドアショップがあるということで向かっている。
「俺、ちょっと店員さんと話すことあるから、その間何か見たいものあったら見てきて良いよ」
「あ、うん……。わかった」
返事を返した後、彼はレジカウンターへ向かった。
ひとまず彼が会話している間、ショップ内の商品を一通りに見ていこうと思う。
クッカーや焚き火台・ランタンなどが各コーナーごとに並べられている。
(まずは、ランタンから……。アイデアやデザインなど色々と考えてるなぁ……)
それぞれの会社で工夫していると、感心しながら見ている。
ランタンもヴィンテージ的なデザインがある。
他にも、灯りプレートの取り外し可能といった画期的な使い方が出来るランタンも展示されている。
(へぇー、こんなやり方や器具もあるんだね)
今は昔からあるオイルやガス缶だけではなく、LEDタイプの充電式など電気で灯りも取れる時代だ。
キャンプ用品も年単位のペースではなく、日々進化している。
(次は焚き火台コーナー……。ん?)
あるメーカーが製作した、聖火台みたいなデザインの焚き火台が目についた。
その焚き火台を見て、ふと思う。
(エンスタ映えの為の物かな……? それにしても、凄くオシャレな形だなぁ)
私もエンスタグラムで写真投稿出来たら良いなぁ……とは思う。
けれど、自信を持って人に見せる勇気がないと思ってしまった。
なぜなら、恭弥さんみたいにセンスがないからだ。
(それに……これを使った後の片付けや手入れする場合も大変だろうなぁ)
やはり一番は手軽さといった実用的なことを考えてしまう。
見本用に置かれた展示品のテントも見回り終えると、今度はある道具を目にした。
(あっ、あのケースに入っているものって、確かナイフとかかな?)
ふと見つけたのは、ショーケースに並べられた刃物関連のコーナー。
ここも、色んなメーカーから展示している。
刃を折りたたまず専用のケースで覆うシースナイフ。
取手の中へ折りたたむものはフォールディングナイフ。
他にも、薪割り用に使用するナタや大小さまざまの斧も一緒に売り物として置かれている。
(そろそろ、もう一本、フォールディングナイフを買いたいなぁ)
なぁんて、頭の中で使っているシーンを想像しながら思ったりしている。
そうなると、定番で売れているメーカーが製作しているナイフの方が良いのかなと迷っちゃう。
(それにしても、恭弥さん……まだ女性の店員さんと楽しそうに話してるなぁ……)
私がそう思って羨ましそうに見えたのが、彼なりに気づいたみたいだ。
恐らく私からの視線を感じただろう、ようやく切り上げようとしている。
そして彼は店員との話を終わらせ、紙袋を持ちながら小走りに駆け寄ってくる。
「ゴメン、空。長々と待たせてしまったな」
「……ううん、大丈夫」
「ん? 空、体調悪いのか?」
「そっ、そんなことないよ、本当に大丈夫、だから……」
少し誤魔化したけど、今日は連休の最終日。
だから、ちゃんとお買い物デートを楽しまなきゃ。
無理矢理だけど気を取り直して、別の店へ巡って行った。
(本当はもっと傍にいて、一緒に商品を見ながら色々話したかったなぁ)
本音を心の中で呟きつつも、彼に悟られないようにしまっておくことにした。
——こんな貴重なデートの時間なんだから大切にしたい、と。
——タイマーの待ち時間、彼は私たちの出会いを語ろうと提案してくれた。「俺らって、初めて会ったのは何年前だっけ?」「確か……」そう、あれは出版社の創立記念パーティーのこと。「乾杯!」私は当時、編集社員としてまだ一年か二年目くらいの頃だった。重要な事情がない限り、全社員はそのパーティーへ出席していた。(うぅ……。コミュ障の私にとって雪絵さんがいないと心細いなぁ)しかし、当の本人は別の事情あってどうしても出られないという理由で欠席。彼女以外の仲の良い人は一人も居なくて困っていた。乾杯の挨拶など進行通りに進めた後、歓談会へとフリータイムになった。(どうしよう……。私から話しかけるのも……怖い)その時のことだった。一人の男性から、私が一人でいるのを見かけて声を掛けてきた。「ねぇ。君、一人?」「は、はい……」黒のスーツ姿に紅色のネクタイで締めていて、まるでバーテンダーの佇まい。そして彼の手には、ネックホルダー付きの立派な一眼レフのカメラも持っていた。彼の顔から、優しそうな目の眼差しと柔らかい微笑みを見せる。それが、後の夫・恭弥さんだった。当時の彼は、パーティーの出席者兼写真撮影の担当として呼ばれていた。私はふと、その当時のことで一つ疑問に思っていた。「そういえば、あの時、なんで声を掛けてくれたの?」「ん? あぁ、一人だったからのもあるけど……」「けど?」恭弥さんの顔を少し覗き込むと、なぜか少し頬が赤い。「
——次の日の午後。いよいよパーティーの当日がやってきた。恭弥さんは外の収納庫で、キャンプの道具を取り出してメッシュタープなど設営に勤しんでいる。私はキッチンでの作業として、二品のメニューを庭で料理できるように材料の下準備をする。(恭弥さんの料理は楽しみ! だけど、私の作る料理は……大丈夫かな?)緊張も相まって手が少し震えるけど、ひとまず調理から始めなきゃだ。まずは、ローストチキンの下ごしらえから。(えーと、鶏肉に使う調味料はコレだけかな?)……というのもチキンをスパイスやオリーブオイルにつけて、ある程度寝かさないといけないからだ。私は手袋をはめ、鶏肉をフォークで何箇所か突いてからポリ袋の中に入れる。その中にオリーブオイルやハーブソルト、胡椒、ローズマリーを加えて揉みこんでしばらく置いておく。次は、野菜を切る作業に入る。(昨日買った野菜だけど、皮も食べられる新じゃがを選んだんだね)新じゃがをしっかり水で土落としをして、食べられる一口ぐらいのサイズに切っていった。人参はジャガイモよりも少し小さく乱切りにし、ブロッコリーは軸から切り落として小分けに切っていった。野菜も、ジップ付きの袋にまとめて入れた。(ローストチキンに使う食材の準備は完了。次は、パエリアの下ごしらえ……)量の少ないものを作るのは、意外と容易ではなかったりする。玉ねぎをみじん切りにしておいてから、パプリカを切る。(パプリカは四分の一以下ぐらいしか使わないから残りは冷凍しておこう)
——ある記念日の前日。私と恭弥さんは、今スーパーで食材を買いに行っている。なぜなら、夫婦にとって重要なイベントの準備をしている最中だ。それは……次の日に行う私達の結婚記念日。いつもならレストランで予約を取ったりしている。けれど、今年はちょっとした事情があった。 ◇ ◆ ◇ ——遡ることある日、私が晩御飯を食べている時間。この日のおかずは、人参やジャガイモの入った煮込みハンバーグ。リビングでテレビを見ながら、のんびりと頬張っていた。その最中にピコンっと、スマホから通知音が鳴った。(あっ、恭弥さんからだ)恭弥さん「空、今LIMEしても大丈夫?」私「うん、大丈夫だけど……どうしたの?」何となくだけど、彼がちょっと焦っているような気がした。そして、次のメッセージを見て腑に落ちた。恭弥さん「いつも予約しているレストランなんだけど、今年は臨時休業で予約取れなくなったんだ」私「え? そうなの?」恭弥さん「なんか、オーナーシェフが言うにはお店の設備点検らしい」恭弥さんが予約をしようとしているレストラン。その店は仕事関係も含め、私達が懇意しているイタリア料理のカジュアルレストランだ。夫婦で営む一軒家の小さなお店を構え、コース料理を売りにしている。味は一級品なのに、値段が手の届く範囲のリーズナブル。なんでもオーナーシェフは、下積み時代にホテルや有名料理店で修行を積んでいたらしい。オーナーの奥様も、パティシエのスタッフとして店を手伝っている優しい方である
——カシャッ、タンッ、タンタン。(うん、この写真がいいからこれにして……送信っと!)私はスマートフォンのカメラで、出来上がったカレーライスの写真を数枚撮る。写りのいいいものを選択して、恭弥さんにLIMEで送った。もちろん、メッセージも添えて……。(あとは返事が来るまで待つ……その間冷めないうちに食べてしまおう)彼からの返信を待ちながら、カレーライスを食べることにする。「いただきます」手を合わせて食事の挨拶をした後、カレーの皿に添えた木製のスプーンを手に取る。カレーとご飯の狭間の部分をひと口分すくって口へ運ぶ。(おぉ! ガラムマサラをかけたことで、ピリッとしたスパイシーさが増してる)でもそんなに嫌な辛さはなく、大人なら誰でも食べられる辛味が良い。それも加え奥にある甘みや酸味、旨味といったコクのハーモニーが上手く調和されている。(くぅぅ~、やっぱりカレーは美味しいから最高!)一口食べるごとに、どんどん食欲が増していく。時折、カレーに添えた甘めの福神漬けで食感を変えるととまらない。これを食べて、今年も夏バテから乗り越えられたらいいなぁと思っている。——カレーライスを半分くらい食べた頃……。ピコンッ!スマホからメッセージの通知がきた。(あっ、恭弥さんからだ! どんな返事が来たかなぁ?) 
——扉を開け、外へ出てみる……。(うっ! 眩しい……!)青空の天上から、太陽が燦々と眩しく照らしている。梅雨の期間、あまり外へ出ていなかったから尚更だ。目や肌へ日差しの刺激がより感じる。(今日はそんなにジメジメした湿気が少ないけど、これから先はもっと湿っぽくて暑くなるだろうなぁ)しかし、ここでへたれていたらダメと気合いを入れ直す。もちろん念の為、水分補給用のスポーツドリンクも用意している。この時期でも、やはり熱中症には気をつけたいことだ。(よし、行きますかぁ!)家の外の右端にある収納庫へ向かう。メッシュタープやローチェア、焚き火台などを出していつものように作業を開始する。メッシュタープを立て風に飛ばされないように、紐を引っ掛けられるフック付きレンガ調の重しもつけて固定していく。これからの夏は、日差しが強い。側面のうちの二面分だけメッシュの上から日光避けのシートも一緒に取り付けてある。(今日は出入りする面の遮光シート一枚を、屋根にして立てよう)その後、テーブルとローチェアを設置し、テーブルの近くにはトレー付きの焚き火台を置いた。今回も切炭をメインに使用するけど、そのためには着火の素が必要だ。下に乾かして傘が開いた松ぼっくりと細かい枝木、ナタで捌いた細めの木を山の形になる様に組む。(土台は出来たから、先にカレーの材料を持ってきた方が良さそう)キッチンからカレーのルーやカット済みの野菜やお肉、食器などをひとまとめておく。暑さ対策として、食材は保冷剤の入った小さいクーラーボックスに入
——七月初旬のある日の午後。(ぬぅ~暑い……。暑いよう……)季節は、もう夏を迎えている。薄手の長袖から半袖への衣替えも兼ねて、そろそろ部屋の中へ扇風機を設置しようか迷っていた。最近、この時期の昼間は少しずつ暑くなってきた。天気予報では、夏日に近い気温を示す日中も増えている。けれど山奥の気候は平地と違い、朝と夜はまだ涼しい。(長袖の服もそろそろおしまいかなと思ったら、逆戻りもするしどっちを着ればいいのだろう)こんな心境で毎日迷うから困る。特に雨が降ると冷えて肌寒くなるくらい、昼との気温の差が激しい。ただこれから訪れるであろう厳しい暑さに耐えられるのだろうか?そういわれたら、この先は絶対バテるに違いない。身体が、なかなか外の気温に順応してくれないのである。(暑さを凌ぎれるスタミナが欲しくなるし、そろそろつけたいなぁ……)今のままだと身体がドロドロに溶けてしまうくらい、私は夏バテしやすい体質だから尚更だ。夏を乗り切るために、簡単にスタミナのつくスパイシーなものが食べたい。(うーん、夏といえば……。あっ、それに相応しいメニューがあるじゃないか!)そうだと一人で相槌を打ちながら閃いた。(夏……スタミナがガッツリつくスパイシーなもの……カレーだ!)キャンプ飯の定番メニューの一つだけど、まだ作ったことがない。先週の話には触れていなかったものだが……。&