処刑された悪役令嬢ですがサクッと禁忌を犯す程度のお義兄様に溺愛されて幸せですわ!

処刑された悪役令嬢ですがサクッと禁忌を犯す程度のお義兄様に溺愛されて幸せですわ!

last updateLast Updated : 2026-08-11
By:  八街ヒサシOngoing
Language: Japanese
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婚約者である王子により罪を着せられ、処刑されてしまったルナリア しかし心配ご無用、世界一素敵でやばいお義兄さまが、禁術でサクッと蘇らせてくださったのですわー! キュートでホラーな令嬢ルナリアと、妹ラブだが人格破綻者のお義兄さまがイチャイチャしまくるハートフルドタバタコメディ!

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Chapter 1

お義兄さまはサクッと禁忌を犯すのですわ!①

それは——あまりにもありふれた断罪から始まった。

「公爵令嬢ルナリア・アクイール! 王太子ハウエル・マッケンドニーの名において、貴様を処刑する!」

声高らかに宣言する王太子の隣には、うるうるっとあざとく瞳を揺らす可憐な男爵令嬢、アナ・デンバー。

「アナに対する嫌がらせの数々、そしてアナを襲わせようとした暴挙、全て証拠は揃っているぞ、この悪女め!」

細かい字でびっしりと罪状を書き込んだ羊皮紙を振り回して激昂するメガネの男は、宰相子息で王太子の側近候補であるグラン・ディノス。

「残念だよ、あの気高かった公爵家の姫君が、まさかここまで堕ちるとはね」

ギロチン台に向かうルナリアの腰縄を持つのは、騎士団長子息で王太子の友人兼護衛を務めるガイスト・バウアー。

お手本通りすぎるほどの“悪女断罪”の光景であった。

そして、“悪女”ことルナリアは——ギロチン台の前に立たされて、スッと背筋を伸ばして辺りを見回した。

処刑台の足元には人々が押し寄せ、口々にルナリアを罵り、中には石を投げているものもいる。

対面に組まれた見物用の櫓の上に立つのは、アナの肩を抱き寄せてニタニタと笑う元婚約者。

その隣で険悪な表情をしたグランは、ついこの間まで成績を競い合っていた良きライバルだった。

そして背後からルナリアを突き飛ばすガイストは……

「幼馴染のよしみってやつだ、苦しまずに逝かせてやるよ」

ルナリアはいま一度背筋を伸ばして、それらをぐるっと見回した。

最後に、ハウエルに視線を止めて、彼女は小さく笑う。

「後悔しますわよ?」

ハウエルはこれを鼻先で笑い飛ばした。

「後悔しているのはお前のほうだろう、アナをいじめた時に、さらにはその命を狙った時には、まさかこんな日が来るとは思わなかったんじゃないか?」

「何度も申し上げていますが、それは……」

反論しようとしたルナリアだったが、ふと言葉を止めて笑う。

華やかに、まるで自分の死を祝うかのように。

「それは、もう、どうでも良いことですわ」

ハウエルが片手をあげる。

「諦めが良くてなによりだ、やれ!」

一際大きな歓声が上がった。

巨大な刃は陽の光を反しながら滑り落ちた。

その瞬間、ルナリアの人生は終わった……終わったはず?

「はーっはっはっは! 稀代の悪女と呼ばれた女も、こうなっては形無しだな!」

高らかに笑い声を上げたハウエルだったが、その数日後——

「バッカモーン!」

「ぷぺらっ!」

外遊から帰ってきた父王に呼び出された彼は、執務室に足を踏み入れた途端に横っ面を張り飛ばされた。

「なっ、なにするんですか父上ぇ!」

腫れ上がった頬を押さえながら抗議するハウエルを見下ろして、王、ギルウェル・マッケンドニーは言った。

「お前はっ! 自分がなにをしたかわかっているのか!」

ハウエルは典型的な総領の甚六であり、父の怒りが理解できない。

「父上の代わりに罪人を一人捌いただけで、悪いことはなにも……」

「それだよそれぇ!」

ギルウェル王は頭痛を堪えるために、自分の眉間を強く摘んだ。

「わし、アクイール嬢を婚約者にした理由、話さなかったっけ?」

「え、あー、聞いてないと思います」

「聞いてるはずなの! わし、婚約前にもちゃんと話したし、今でも年に二、三回はその話してるの! それをお前は……聞いていなかったんだな?」

「いや、え、はあ、いや? 聞いてましたよ?」

「聞いていたらこんなことにはならんの!」

「……すみません、聞いていませんでした」

「ほんっとーにお前は! もう!」

ギルウェル王は更なる頭痛を感じて、こめかみをキュッと強く押した。

「ともかく、後始末をきちんとしろ、それができないなら廃嫡だ」

「えっ、えっ、たかが公爵令嬢一人処刑しただけなのに?」

「それがただの公爵令嬢ならばな、処刑くらい揉み消してやったが……」

「ただの公爵令嬢なのでは……?」

「違うな」

ギルウェル王がこめかみを揉む手を止めて、ハウエルに真剣な眼差しを向ける。

「あれは、我が国最凶兵器と言われる魔導士を、人間にとどめておくための、唯一の鎖だった」

その鎖が絶たれた今……

「もはや、なにが起きてもおかしくない、とにかく、なんとかしろ」

「な、なんとかって……どうやって……?」

「そんなことくらい自分で考えよ!」

ハウエルを部屋から追い出した後で、ギルウェル王は深いため息をついた。

「まあ、バカ息子ではあるが、目眩しくらいの役には立つだろう……」

こめかみをもみながら窓の外を眺める。

「今のうちに対策をせねばならんな……影!」

王の呼びかけに答えて、部屋の隅、先程までなにもなかった空間にゆらりと空間の揺らぎが立ち上った。

それは明確な裂け目となり、その中から黒装束の男が現れる。

「はい、ここに」

「どのような状態であってもかまわぬ、今すぐ行って、アクイール嬢を回収してこい、回収が無理ならば灰一つ残さぬように焼き尽くせ。相手は魔導士だ、“材料”を与えるわけにはいかない」

「御意!」

影はすぐに処刑場に向かったが、どうやら一足遅かったようだ。

すでにアクイール嬢の体は、ひとかけら残らず誰かに持ち去られた後だった——

ルナリアの遺体を持ち去ったのは、ギルウェル王が恐れていた通り、“最凶”の二つ名を持つ魔導士、レイヴン・アクイール。

彼はルナリアの義兄であり、人格破綻者でもあった。

レイヴンは落とされた首を胴に丁寧に縫い付けている。

「ルナ、君を取り戻すためなら、何を代償にしても構わない」

レイヴンはルナリアの体を儀式用の祭壇にそっと横たえ、その額にキスを落とした。

「さあ、始めよう、復活の儀式を」

レイヴンの手には一冊の魔導書。

先日、厳重に封印が施された金書庫から盗みだした禁書である。

紡がれる古代語の呪文。

古代語が失われた今、発音まで完全に再現して唱えることができるのは、この世でレイヴンただ一人である。

祭壇は怪しい光を放ち始めた。

「ルナ、二度と一人にしない……」

光はゆっくりと命を失ったルナリアの肉体を包み込んだ——

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お義兄さまはサクッと禁忌を犯すのですわ!①
それは——あまりにもありふれた断罪から始まった。「公爵令嬢ルナリア・アクイール! 王太子ハウエル・マッケンドニーの名において、貴様を処刑する!」声高らかに宣言する王太子の隣には、うるうるっとあざとく瞳を揺らす可憐な男爵令嬢、アナ・デンバー。「アナに対する嫌がらせの数々、そしてアナを襲わせようとした暴挙、全て証拠は揃っているぞ、この悪女め!」細かい字でびっしりと罪状を書き込んだ羊皮紙を振り回して激昂するメガネの男は、宰相子息で王太子の側近候補であるグラン・ディノス。「残念だよ、あの気高かった公爵家の姫君が、まさかここまで堕ちるとはね」ギロチン台に向かうルナリアの腰縄を持つのは、騎士団長子息で王太子の友人兼護衛を務めるガイスト・バウアー。お手本通りすぎるほどの“悪女断罪”の光景であった。そして、“悪女”ことルナリアは——ギロチン台の前に立たされて、スッと背筋を伸ばして辺りを見回した。処刑台の足元には人々が押し寄せ、口々にルナリアを罵り、中には石を投げているものもいる。対面に組まれた見物用の櫓の上に立つのは、アナの肩を抱き寄せてニタニタと笑う元婚約者。その隣で険悪な表情をしたグランは、ついこの間まで成績を競い合っていた良きライバルだった。そして背後からルナリアを突き飛ばすガイストは……「幼馴染のよしみってやつだ、苦しまずに逝かせてやるよ」ルナリアはいま一度背筋を伸ばして、それらをぐるっと見回した。最後に、ハウエルに視線を止めて、彼女は小さく笑う。「後悔しますわよ?」ハウエルはこれを鼻先で笑い飛ばした。「後悔しているのはお前のほうだろう、アナをいじめた時に、さらにはその命を狙った時には、まさかこんな日が来るとは思わなかったんじゃないか?」「何度も申し上げていますが、それは……」反論しようとしたルナリアだったが、ふと言葉を止めて笑う。華やかに、まるで自分の死を祝うかのように。「それは、もう、どうでも良いことですわ」ハウエルが片手をあげる。「諦めが良くてなによりだ、やれ!」一際大きな歓声が上がった。巨大な刃は陽の光を反しながら滑り落ちた。その瞬間、ルナリアの人生は終わった……終わったはず?「はーっはっはっは! 稀代の悪女と呼ばれた女も、こうなっては形無しだな!」高らかに笑い声を上げたハウエルだったが、その数日後——「
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ルナリアが王家の長子であるハウエルの婚約者に選ばれたのは13歳の時。政治的なあれこれや家格などを考慮した結果の、完全なる政略結婚であった。その日からずっと、ルナリアは我慢してきた。いずれ王族になるのだから表情管理が重要だと言われて、自分の感情を表に出すことを我慢した。泣くことも、怒ることも我慢する代わりに身につけたのは、完全無欠なる美しいアルカイックスマイル。淑女たるもの身につけるものにも細かなルールがあると言われて、好きな服を着ることを我慢した。夜会用の華やかなドレスや、公式行事で着る仕立ての良いドレスがクローゼットに詰め込まれたが、本当はそんなもの、少しも好きじゃなかった。淑女は夫を立てるべしと言われたから、ハウエル王子の愚行に眉を顰めることを我慢した。もちろんルナリアは、ハウエルのことなど、これっぽっちも好きじゃない。それでもルナリアは、いずれ王妃となる身として、健気に王妃教育をこなし、高貴な淑女としての振る舞いを心がけてきた。いつしか彼女は “磁器人形の姫君”と呼ばれるようになった。手入れの行き届いた肌は白く美しく、社交の場では穏やかな笑顔を常に絶やさず、常に淑女として正しい振る舞いをする姿は、まるで人形のようではないかと。もちろん、妬みを存分に含んだ蔑称である。だがその二つ名に相応しく、高貴で貴族的であり、そして淑女の手本から外れる行動をしない……生前のルナリアは、そんなガッチガチの淑女だったのだが……「私、復活ですわ!」ルナリアは、儀式のために組まれた祭壇の上で、ガバッと飛び起きた。格好は、およそ淑女らしからぬ、スッポンポンである。肌は白を通り越して青白く、血の通っている気配が一切ない。首にはぐるりと一周、黒い糸で縫い付けられた跡。そう、ルナリア・アクイールはゾンビとして蘇ったのだ。祭壇の前に立っていた彼女の義兄、レイヴンがドレスを差し出す。「ルナ、これ」ルナリアはドレスを受け取るよりも早く、兄の両頬を両手でむぎゅっと挟んで、彼の顔を覗き込んだ。「にーさま、目が!」レイヴンの右の目玉は失われ、空っぽになった眼窩が暗闇を抱いている。「どうして、どうして兄様の美しいお目目が……!」取り乱すルナリアに対して、レイヴンはふっと僅かに頬を緩めて笑った。「君を甦らせるために使ったんだ」「そんな!」「いいんだ
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ゾンビ生活って楽しいですわ!①
ゾンビだって腹は減る。人間の“腹が減る”とはまた違う感覚だが、減るもんは減る。ということで、レイヴンが最初にルナリアに教えたのは、ゾンビの食事についてだった。「ゾンビは、身体機能は停止しているのだから、普通の食事から栄養を摂ることはできない。だから普通の食事は必要ないが、人を食う」ルナリアは見た目ゾンビだが、まだ人間的な精神を失っていない。だから最初は、さすがに反抗した。「それは人倫的にアウトですわ」「いや、食べると言っても、消化するわけじゃない、魔術的には、食事ではなくて生贄だ」「そういう問題じゃありませんわ、私のお食事のために、人間が犠牲になるということでしょう?」「だが、食べなければ人の姿を保てない」「難しい問題ですわねえ」「じゃあ、こういうのはどうだ?」二人は、山賊のねぐらがある山の奥へと出かけた。「ここの山賊は悪逆非道で、近隣の村におりてきて女子供にまで手を出し、幾つもの村を焼き払ったそうだ」「そんなの、人間の所業じゃありませんわね」「ああ、だから、罪悪感なく食い散らかすことができるだろ」しかも討伐依頼は出されているけれど、ギルドは何度も討伐任務に失敗している。ここで山賊団を壊滅させても、誰からも責められることはない。「ゾンビは食い溜めが効く、安心して存分に食い散らかせ」「了解ですわ、にーさま」ルナリアはゴスロリドレスの裾を軽快に揺らして、山賊の住む洞穴に飛び込む。逆に、いきなりゾンビに飛び込んでこられた山賊の方は、びっくり仰天。「な、何者だ!」「女?」「ただの女じゃなさそうだ、油断するな!」慌てて立ち上がるが、それよりも早くルナリアが——「うふふ、私、ゾンビになってから、とーっても力持ちになりましたのよ!」得物を手にする暇すら与えず、山賊たちをぶっ飛ばす。「ヒイッ、ば、化け物!」そう言いながら這って逃げる山賊を掴み上げて、ルナリアが笑う。「乙女に向かって失礼ですわね」「や、やめてくれ、助けてくれ……死にたくない!」「あなたのような悪人は、今までその言葉を言われる側だったのでしょうね、で、そのうちの一回でも、見逃してあげたことがございますの?」「……な、ないけど」「では、私も見逃してはあげませんわ」「ひゃああああ!」その後も掴んでは投げ、叩きのめしては齧り、踏み潰しては蹴り飛ばし、洞
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二人がいちゃついているその一方で、ハウエル王子の方は——「ガイスト! ガイストはいないのか!」彼は友人であり護衛でもあるガイストを自室に呼びつけた。部屋に入ってきた彼は、人相が変わって見えるほどに両頬を腫れ上がらせていた。「お呼びですか」「なんだ、その顔は」「はい、ルナリアを処刑したことで親父に怒られまして」「お前もか!」二人は顔を見合わせて、大きなため息をつく。「たかが公爵令嬢一人処刑しただけなのに……」「そうですよね、俺もそう思います」「しかもうちの父上、この後とんでもないことが起きないように早々に対策をしろとか言い出してな」「具体的には?」「ふん、ルナリアの義兄のことは知っているか?」「はい、まあ、一応幼馴染ですので」ガイストとアクイール家の義兄妹は幼馴染だ。子供の頃は屋敷の庭で一緒に遊んだこともあるが……「なんか、不気味なやつだなって思っていました、表情は変わんないし、何考えているかわからないし」「そうか、それはまあいい、その男がな、ルナリアの死体を持って姿をくらましているらしいんだ」「死体を? うえっ、やっぱり気持ち悪ぃヤツ!」「それでな、この男を探し出して、連れて来いって、父上に言われたんだ、生死は問わないらしい」「そうなんですね」「なんで他人事みたいな顔をしてるんだ」「えっ?」「お前が探しに行くんだよ」「俺がですかっ?」「そうだ。言っておくが、自分で行くのがめんどくさいからじゃないぞ、戦略的選択というやつだ」ハウエルが偉そうに顎を上げる。「お前はあの義兄妹とは幼馴染だろ、だとしたら、行動パターンを予測して居場所を探し出すことができるはずだ」「無理ですよ、ほんと、何考えてるのかわからない男だったんですから」「いいから行け! レイヴンを見つけるまで帰ってくることは許さん!」横暴だが、それでも王子からの命令だ。逆らうわけにはいかない。「でもなあ、ほんとどこ探せばいいのか……」ハウエルに追い払われたガイストは、手始めにアクイール邸へとやってきた。逃亡中の相手が、そんなわかりやすいところに潜伏しているとは思えないが、他に思い当たる場所がなかったのである。案の定レイヴンは不在で、耳の遠いおじいちゃん執事がガイストを出迎えた。「バウアー家の坊ちゃんじゃないですか、どうぞ中へ」ガイストは応接
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