処刑された悪役令嬢ですがサクッと禁忌を犯す程度のお義兄様に溺愛されて幸せですわ!

処刑された悪役令嬢ですがサクッと禁忌を犯す程度のお義兄様に溺愛されて幸せですわ!

last update최신 업데이트 : 2026-10-20
작가:  八街ヒサシ연재 중
언어: Japanese
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婚約者である王子により罪を着せられ、処刑されてしまったルナリア しかし心配ご無用、世界一素敵でやばいお義兄さまが、禁術でサクッと蘇らせてくださったのですわー! キュートでホラーな令嬢ルナリアと、妹ラブだが人格破綻者のお義兄さまがイチャイチャしまくるハートフルドタバタコメディ!

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1화

お義兄さまはサクッと禁忌を犯すのですわ!①

それは——あまりにもありふれた断罪から始まった。

「公爵令嬢ルナリア・アクイール! 王太子ハウエル・マッケンドニーの名において、貴様を処刑する!」

声高らかに宣言する王太子の隣には、うるうるっとあざとく瞳を揺らす可憐な男爵令嬢、アナ・デンバー。

「アナに対する嫌がらせの数々、そしてアナを襲わせようとした暴挙、全て証拠は揃っているぞ、この悪女め!」

細かい字でびっしりと罪状を書き込んだ羊皮紙を振り回して激昂するメガネの男は、宰相子息で王太子の側近候補であるグラン・ディノス。

「残念だよ、あの気高かった公爵家の姫君が、まさかここまで堕ちるとはね」

ギロチン台に向かうルナリアの腰縄を持つのは、騎士団長子息で王太子の友人兼護衛を務めるガイスト・バウアー。

お手本通りすぎるほどの“悪女断罪”の光景であった。

そして、“悪女”ことルナリアは——ギロチン台の前に立たされて、スッと背筋を伸ばして辺りを見回した。

処刑台の足元には人々が押し寄せ、口々にルナリアを罵り、中には石を投げているものもいる。

対面に組まれた見物用の櫓の上に立つのは、アナの肩を抱き寄せてニタニタと笑う元婚約者。

その隣で険悪な表情をしたグランは、ついこの間まで成績を競い合っていた良きライバルだった。

そして背後からルナリアを突き飛ばすガイストは……

「幼馴染のよしみってやつだ、苦しまずに逝かせてやるよ」

ルナリアはいま一度背筋を伸ばして、それらをぐるっと見回した。

最後に、ハウエルに視線を止めて、彼女は小さく笑う。

「後悔しますわよ?」

ハウエルはこれを鼻先で笑い飛ばした。

「後悔しているのはお前のほうだろう、アナをいじめた時に、さらにはその命を狙った時には、まさかこんな日が来るとは思わなかったんじゃないか?」

「何度も申し上げていますが、それは……」

反論しようとしたルナリアだったが、ふと言葉を止めて笑う。

華やかに、まるで自分の死を祝うかのように。

「それは、もう、どうでも良いことですわ」

ハウエルが片手をあげる。

「諦めが良くてなによりだ、やれ!」

一際大きな歓声が上がった。

巨大な刃は陽の光を反しながら滑り落ちた。

その瞬間、ルナリアの人生は終わった……終わったはず?

「はーっはっはっは! 稀代の悪女と呼ばれた女も、こうなっては形無しだな!」

高らかに笑い声を上げたハウエルだったが、その数日後——

「バッカモーン!」

「ぷぺらっ!」

外遊から帰ってきた父王に呼び出された彼は、執務室に足を踏み入れた途端に横っ面を張り飛ばされた。

「なっ、なにするんですか父上ぇ!」

腫れ上がった頬を押さえながら抗議するハウエルを見下ろして、王、ギルウェル・マッケンドニーは言った。

「お前はっ! 自分がなにをしたかわかっているのか!」

ハウエルは典型的な総領の甚六であり、父の怒りが理解できない。

「父上の代わりに罪人を一人捌いただけで、悪いことはなにも……」

「それだよそれぇ!」

ギルウェル王は頭痛を堪えるために、自分の眉間を強く摘んだ。

「わし、アクイール嬢を婚約者にした理由、話さなかったっけ?」

「え、あー、聞いてないと思います」

「聞いてるはずなの! わし、婚約前にもちゃんと話したし、今でも年に二、三回はその話してるの! それをお前は……聞いていなかったんだな?」

「いや、え、はあ、いや? 聞いてましたよ?」

「聞いていたらこんなことにはならんの!」

「……すみません、聞いていませんでした」

「ほんっとーにお前は! もう!」

ギルウェル王は更なる頭痛を感じて、こめかみをキュッと強く押した。

「ともかく、後始末をきちんとしろ、それができないなら廃嫡だ」

「えっ、えっ、たかが公爵令嬢一人処刑しただけなのに?」

「それがただの公爵令嬢ならばな、処刑くらい揉み消してやったが……」

「ただの公爵令嬢なのでは……?」

「違うな」

ギルウェル王がこめかみを揉む手を止めて、ハウエルに真剣な眼差しを向ける。

「あれは、我が国最凶兵器と言われる魔導士を、人間にとどめておくための、唯一の鎖だった」

その鎖が絶たれた今……

「もはや、なにが起きてもおかしくない、とにかく、なんとかしろ」

「な、なんとかって……どうやって……?」

「そんなことくらい自分で考えよ!」

ハウエルを部屋から追い出した後で、ギルウェル王は深いため息をついた。

「まあ、バカ息子ではあるが、目眩しくらいの役には立つだろう……」

こめかみをもみながら窓の外を眺める。

「今のうちに対策をせねばならんな……影!」

王の呼びかけに答えて、部屋の隅、先程までなにもなかった空間にゆらりと空間の揺らぎが立ち上った。

それは明確な裂け目となり、その中から黒装束の男が現れる。

「はい、ここに」

「どのような状態であってもかまわぬ、今すぐ行って、アクイール嬢を回収してこい、回収が無理ならば灰一つ残さぬように焼き尽くせ。相手は魔導士だ、“材料”を与えるわけにはいかない」

「御意!」

影はすぐに処刑場に向かったが、どうやら一足遅かったようだ。

すでにアクイール嬢の体は、ひとかけら残らず誰かに持ち去られた後だった——

ルナリアの遺体を持ち去ったのは、ギルウェル王が恐れていた通り、“最凶”の二つ名を持つ魔導士、レイヴン・アクイール。

彼はルナリアの義兄であり、人格破綻者でもあった。

レイヴンは落とされた首を胴に丁寧に縫い付けている。

「ルナ、君を取り戻すためなら、何を代償にしても構わない」

レイヴンはルナリアの体を儀式用の祭壇にそっと横たえ、その額にキスを落とした。

「さあ、始めよう、復活の儀式を」

レイヴンの手には一冊の魔導書。

先日、厳重に封印が施された金書庫から盗みだした禁書である。

紡がれる古代語の呪文。

古代語が失われた今、発音まで完全に再現して唱えることができるのは、この世でレイヴンただ一人である。

祭壇は怪しい光を放ち始めた。

「ルナ、二度と一人にしない……」

光はゆっくりと命を失ったルナリアの肉体を包み込んだ——

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お義兄さまはサクッと禁忌を犯すのですわ!①
それは——あまりにもありふれた断罪から始まった。「公爵令嬢ルナリア・アクイール! 王太子ハウエル・マッケンドニーの名において、貴様を処刑する!」声高らかに宣言する王太子の隣には、うるうるっとあざとく瞳を揺らす可憐な男爵令嬢、アナ・デンバー。「アナに対する嫌がらせの数々、そしてアナを襲わせようとした暴挙、全て証拠は揃っているぞ、この悪女め!」細かい字でびっしりと罪状を書き込んだ羊皮紙を振り回して激昂するメガネの男は、宰相子息で王太子の側近候補であるグラン・ディノス。「残念だよ、あの気高かった公爵家の姫君が、まさかここまで堕ちるとはね」ギロチン台に向かうルナリアの腰縄を持つのは、騎士団長子息で王太子の友人兼護衛を務めるガイスト・バウアー。お手本通りすぎるほどの“悪女断罪”の光景であった。そして、“悪女”ことルナリアは——ギロチン台の前に立たされて、スッと背筋を伸ばして辺りを見回した。処刑台の足元には人々が押し寄せ、口々にルナリアを罵り、中には石を投げているものもいる。対面に組まれた見物用の櫓の上に立つのは、アナの肩を抱き寄せてニタニタと笑う元婚約者。その隣で険悪な表情をしたグランは、ついこの間まで成績を競い合っていた良きライバルだった。そして背後からルナリアを突き飛ばすガイストは……「幼馴染のよしみってやつだ、苦しまずに逝かせてやるよ」ルナリアはいま一度背筋を伸ばして、それらをぐるっと見回した。最後に、ハウエルに視線を止めて、彼女は小さく笑う。「後悔しますわよ?」ハウエルはこれを鼻先で笑い飛ばした。「後悔しているのはお前のほうだろう、アナをいじめた時に、さらにはその命を狙った時には、まさかこんな日が来るとは思わなかったんじゃないか?」「何度も申し上げていますが、それは……」反論しようとしたルナリアだったが、ふと言葉を止めて笑う。華やかに、まるで自分の死を祝うかのように。「それは、もう、どうでも良いことですわ」ハウエルが片手をあげる。「諦めが良くてなによりだ、やれ!」一際大きな歓声が上がった。巨大な刃は陽の光を反しながら滑り落ちた。その瞬間、ルナリアの人生は終わった……終わったはず?「はーっはっはっは! 稀代の悪女と呼ばれた女も、こうなっては形無しだな!」高らかに笑い声を上げたハウエルだったが、その数日後——「
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②
ルナリアが王家の長子であるハウエルの婚約者に選ばれたのは13歳の時。政治的なあれこれや家格などを考慮した結果の、完全なる政略結婚であった。その日からずっと、ルナリアは我慢してきた。いずれ王族になるのだから表情管理が重要だと言われて、自分の感情を表に出すことを我慢した。泣くことも、怒ることも我慢する代わりに身につけたのは、完全無欠なる美しいアルカイックスマイル。淑女たるもの身につけるものにも細かなルールがあると言われて、好きな服を着ることを我慢した。夜会用の華やかなドレスや、公式行事で着る仕立ての良いドレスがクローゼットに詰め込まれたが、本当はそんなもの、少しも好きじゃなかった。淑女は夫を立てるべしと言われたから、ハウエル王子の愚行に眉を顰めることを我慢した。もちろんルナリアは、ハウエルのことなど、これっぽっちも好きじゃない。それでもルナリアは、いずれ王妃となる身として、健気に王妃教育をこなし、高貴な淑女としての振る舞いを心がけてきた。いつしか彼女は “磁器人形の姫君”と呼ばれるようになった。手入れの行き届いた肌は白く美しく、社交の場では穏やかな笑顔を常に絶やさず、常に淑女として正しい振る舞いをする姿は、まるで人形のようではないかと。もちろん、妬みを存分に含んだ蔑称である。だがその二つ名に相応しく、高貴で貴族的であり、そして淑女の手本から外れる行動をしない……生前のルナリアは、そんなガッチガチの淑女だったのだが……「私、復活ですわ!」ルナリアは、儀式のために組まれた祭壇の上で、ガバッと飛び起きた。格好は、およそ淑女らしからぬ、スッポンポンである。肌は白を通り越して青白く、血の通っている気配が一切ない。首にはぐるりと一周、黒い糸で縫い付けられた跡。そう、ルナリア・アクイールはゾンビとして蘇ったのだ。祭壇の前に立っていた彼女の義兄、レイヴンがドレスを差し出す。「ルナ、これ」ルナリアはドレスを受け取るよりも早く、兄の両頬を両手でむぎゅっと挟んで、彼の顔を覗き込んだ。「にーさま、目が!」レイヴンの右の目玉は失われ、空っぽになった眼窩が暗闇を抱いている。「どうして、どうして兄様の美しいお目目が……!」取り乱すルナリアに対して、レイヴンはふっと僅かに頬を緩めて笑った。「君を甦らせるために使ったんだ」「そんな!」「いいんだ
last update최신 업데이트 : 2026-08-11
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ゾンビ生活って楽しいですわ!①
ゾンビだって腹は減る。人間の“腹が減る”とはまた違う感覚だが、減るもんは減る。ということで、レイヴンが最初にルナリアに教えたのは、ゾンビの食事についてだった。「ゾンビは、身体機能は停止しているのだから、普通の食事から栄養を摂ることはできない。だから普通の食事は必要ないが、人を食う」ルナリアは見た目ゾンビだが、まだ人間的な精神を失っていない。だから最初は、さすがに反抗した。「それは人倫的にアウトですわ」「いや、食べると言っても、消化するわけじゃない、魔術的には、食事ではなくて生贄だ」「そういう問題じゃありませんわ、私のお食事のために、人間が犠牲になるということでしょう?」「だが、食べなければ人の姿を保てない」「難しい問題ですわねえ」「じゃあ、こういうのはどうだ?」二人は、山賊のねぐらがある山の奥へと出かけた。「ここの山賊は悪逆非道で、近隣の村におりてきて女子供にまで手を出し、幾つもの村を焼き払ったそうだ」「そんなの、人間の所業じゃありませんわね」「ああ、だから、罪悪感なく食い散らかすことができるだろ」しかも討伐依頼は出されているけれど、ギルドは何度も討伐任務に失敗している。ここで山賊団を壊滅させても、誰からも責められることはない。「ゾンビは食い溜めが効く、安心して存分に食い散らかせ」「了解ですわ、にーさま」ルナリアはゴスロリドレスの裾を軽快に揺らして、山賊の住む洞穴に飛び込む。逆に、いきなりゾンビに飛び込んでこられた山賊の方は、びっくり仰天。「な、何者だ!」「女?」「ただの女じゃなさそうだ、油断するな!」慌てて立ち上がるが、それよりも早くルナリアが——「うふふ、私、ゾンビになってから、とーっても力持ちになりましたのよ!」得物を手にする暇すら与えず、山賊たちをぶっ飛ばす。「ヒイッ、ば、化け物!」そう言いながら這って逃げる山賊を掴み上げて、ルナリアが笑う。「乙女に向かって失礼ですわね」「や、やめてくれ、助けてくれ……死にたくない!」「あなたのような悪人は、今までその言葉を言われる側だったのでしょうね、で、そのうちの一回でも、見逃してあげたことがございますの?」「……な、ないけど」「では、私も見逃してはあげませんわ」「ひゃああああ!」その後も掴んでは投げ、叩きのめしては齧り、踏み潰しては蹴り飛ばし、洞
last update최신 업데이트 : 2026-08-11
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②
二人がいちゃついているその一方で、ハウエル王子の方は——「ガイスト! ガイストはいないのか!」彼は友人であり護衛でもあるガイストを自室に呼びつけた。部屋に入ってきた彼は、人相が変わって見えるほどに両頬を腫れ上がらせていた。「お呼びですか」「なんだ、その顔は」「はい、ルナリアを処刑したことで親父に怒られまして」「お前もか!」二人は顔を見合わせて、大きなため息をつく。「たかが公爵令嬢一人処刑しただけなのに……」「そうですよね、俺もそう思います」「しかもうちの父上、この後とんでもないことが起きないように早々に対策をしろとか言い出してな」「具体的には?」「ふん、ルナリアの義兄のことは知っているか?」「はい、まあ、一応幼馴染ですので」ガイストとアクイール家の義兄妹は幼馴染だ。子供の頃は屋敷の庭で一緒に遊んだこともあるが……「なんか、不気味なやつだなって思っていました、表情は変わんないし、何考えているかわからないし」「そうか、それはまあいい、その男がな、ルナリアの死体を持って姿をくらましているらしいんだ」「死体を? うえっ、やっぱり気持ち悪ぃヤツ!」「それでな、この男を探し出して、連れて来いって、父上に言われたんだ、生死は問わないらしい」「そうなんですね」「なんで他人事みたいな顔をしてるんだ」「えっ?」「お前が探しに行くんだよ」「俺がですかっ?」「そうだ。言っておくが、自分で行くのがめんどくさいからじゃないぞ、戦略的選択というやつだ」ハウエルが偉そうに顎を上げる。「お前はあの義兄妹とは幼馴染だろ、だとしたら、行動パターンを予測して居場所を探し出すことができるはずだ」「無理ですよ、ほんと、何考えてるのかわからない男だったんですから」「いいから行け! レイヴンを見つけるまで帰ってくることは許さん!」横暴だが、それでも王子からの命令だ。逆らうわけにはいかない。「でもなあ、ほんとどこ探せばいいのか……」ハウエルに追い払われたガイストは、手始めにアクイール邸へとやってきた。逃亡中の相手が、そんなわかりやすいところに潜伏しているとは思えないが、他に思い当たる場所がなかったのである。案の定レイヴンは不在で、耳の遠いおじいちゃん執事がガイストを出迎えた。「バウアー家の坊ちゃんじゃないですか、どうぞ中へ」ガイストは応接
last update최신 업데이트 : 2026-08-11
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③
「……ここは……?」目を覚ましたガイストが最初に見たものは、至近距離でじっとこちらを見つめる、表情筋乏しいレイヴンの顔だった。「うわあああ!」驚いて飛び起きれば薄暗い部屋の中、ガイストは床に描かれた魔法陣のど真ん中にいる。両手両足首は荒縄でぎっちり縛られて、最低限の動きしかできない状態。絶体絶命危機一髪の状況である。「これって、俺のこと、本気で生贄にしようとしてるってことっ?」そう叫べば、傍に立つレイヴンが答える。「そうだが?」「いやいやいや。そんな平然と言うことじゃなくない?」「だが、ルナリアは人間に戻りたがっている」「そういうことが聞きたいんじゃない、まず、なんで俺を生贄にしようと思ったの! 幼馴染の情とかないの?」「ある。だから殺しはしない」「あ、生贄ってそういう……」「君の生命力をルナに与え、君にはゾンビとして生きてもらう」「それって死とほぼ同意じゃん!」「同意ではないだろう、だって……動けるぞ?」「ああ、ああ、お前は昔っからそういうやつだったよな! ほんと、何考えてるかわかんねえ!」なんて言い争っているところに、ドアが開いてルナリアが入ってきた。「にーさま、生贄の準備はできまして?」彼女の方も、幼馴染を生贄にすることに全く躊躇がない。床に転がっているガイストを睥睨して冷たく笑う。「ふふ、私、怒ってますのよ……だから、あなたを生贄に選んだのですわ」突如、レイヴンが早口で語り始める。「ただの食事とは違い、復活のための生贄には被術者間に精神的な繋がりが必要だ。今回は怒りという感情のつながりを足がかりに二人の生命力を入れ替え……」「にーさまストップですわ! 細かい説明はいらないのです!」「そうか」「私が簡単に説明いたしますわね、つまり私はあなたに対して腹を立てている、だから、その怒りの感情を足がかりに魂を結んで、入れ替えて、ポイしちゃおうと、そういう感じですわね、にーさま?」「完璧だ、さすがはルナリア」ガイストは震え上がって、拘束された手足をモゾモゾと動かしながらルナリアの足元に這い寄る。「つまり、怒っているのか? 俺がお前を処刑台に送ったから」「あー、それは、そんなに怒ってませんわ、だって、そのおかげで私、こんなに自由なんですもの!」「じゃあなんで!」「お忘れですの? あなた、私のお人形を壊しま
last update최신 업데이트 : 2026-08-11
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④
「むはあっ!」次に目を開けた時、ガイストは、自分がアクイール家の使用人部屋に寝かされていることに気づいた。天井には飾りも素っ気もなく、梁が剥き出しのまま。窓はガラスを使わない質素な鎧戸。家具は作り付けの衣装ダンスとベッドだけが置かれた、簡素で少し埃っぽい部屋。着ているものはいつの間に着替えさせられたのか、アクイール家のお仕着せである。「なっ、なんだよ、これ!」意識を失う直前、イケニエにされかけたことを思い出したガイストは、お仕着せを脱ぎ捨てて自分の体を確かめた。「腕は、ある。足も、無事だ、ゾンビ化している気配は……ないな」ただ、心臓の真上、左胸に焼き印を押したようにくっきりとアクイール家の家紋が刻み付けられている。「これが……」その紋章をなぞりながら呟いたガイストの言葉を、部屋に入ってきたレイヴンが引き取った。「隷属の印だ。気に入ったか?」レイヴンの後に続いて入ってきたルナリアが「きゃっ」と両眼をふさぐ。「露出狂がいますわ!」「ち、違う、これはだな……」「ちょっと鍛えてマッチョな筋肉がご自慢だからって、どこでもここでも裸になるのは変態ですわ!」「いや、聞けよ!」ガイストはお仕着せを地面に叩きつけて地団駄を踏む。「100歩譲って、隷属の印はよしとしよう、思ったよりかっこいいしな! でもなんで、使用人のお仕着せなんて着せるんだよ、俺は騎士だぞ!」ルナリアとレイヴンが、顔を見合わせる。「だって、なあ?」「ええ、だってですわねえ」「俺より弱いくせに……」「そうね、よわよわ騎士なんて、いりませんものねえ」ガイストがさらにジタバタと地団駄を踏む。「誰が弱いって、誰が! 確かに魔術では敵わないかもしれないけれど、筋肉なら、俺のほうが上だ!」ルナリアが「ははん」と鼻先で笑う。「うちのおにーさま、脱ぐとすごいですわよ? それもあなたみたいに“見せるための筋肉”じゃなくて、形よく鍛え上げられた“使うための筋肉”がみっちりと、ですわ!」「嘘つけ、見せてみろよ!」「んまあ、男同士で素肌を見せ合うなんて! そんな禁断の花園におにーさまを誘わないでくださいませ!」「……なんだか、お前が頓珍漢なことを言うの、久しぶりに聴いたような気がする」仲良く遊んでいた幼い頃は――こんなやりとりが当たり前だった。「レイヴンはガキ
last update최신 업데이트 : 2026-09-10
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⑤
最初に思い浮かんだのは、ハウエルとグランと並んで、貴族学園の門を潜った入学式の日の光景だった。ハウエルが傲慢ぶりを隠しもせずに言う。「いまさら下々のものに混ざって、何が学べるというのか……俺はもう、王子教育を受けている身だぞ?」傍に立つグランも、「ははん」と鼻先で笑う。「同感です、私のような天才児を、このような凡才どもと同列に扱おうとは、我が父上は実に愚かだ」そしてガイストは、偉そうに腕を組んでふんぞりかえっている。「どいつもこいつもヒョロヒョロしやがって、弱そうだな!」3人とも、反抗期真っ只中であった。しかもこの年頃にありがちな万能感と選民思想――つまり厨二の病に罹患していたのだから目も当てられない。かたやは自分が守るべき主君、もうかたやは共に彼を支える仲間。自分たちはエリートなのだという自負があった。だから、いつでも3人で固まって、他の者を寄せ付けもしない。(あれ、これって逆に俺ら、孤立してたのでは?)そして、三人とも、反抗期真っ只中なのだから、ともかく“大人たちの決めたこと”に逆らいたくて仕方なかった。「親が決めた婚約者とかさあ、俺の人生をガッチリ先回りして決められちゃってる感じがしてさあ、まじダルい」グランも、そしてガイストも、そんなハウエルに同調した。「わかります、それにあの女、私よりも頭が良くて、いつだってそれを鼻にかけているように感じる! あんな女と結婚するなど、ハウエル様の人生最大の損失です!」「それに、いつも人形みたいな作り笑いで気持ち悪い。昔はあんなじゃなかったのに、今のルナリアは多分、王太子妃という身分が欲しいだけに違いない!」そんなことをわいのわいのと言い合っていると、本当にルナリアが身分と立場にしか興味のない悪女に思えてくる。万能感ばかり抱えて、悪ぶることがかっこいいと思っていたあの頃。(つまり黒歴史ー! 勘弁してくれ!)そんな彼らは、クラスメイトとして、男爵令嬢アナ・デンバーと知り合った。「えー、王子様とー、そのみぎうでのひととー、ひだりうでのひとー? わ、わ、すごぉーい、私、すごい人たちと知り合いになっちゃったー」ともかく、アナの言葉は反抗期の少年たちの自尊心を、たっぷりと満たしてくれた。「さすがガイストくん、力持ちー」「知らなかったー、グランくんって物知りだねー」「そのとおりですぅ
last update최신 업데이트 : 2026-09-15
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⑥
「お兄様とおデートですわ!」先頭を歩くのは、ゾンビなのに元気いっぱいのルナリア。「デートではない、アナ・デンバー狩りだ」物騒なことを言いながら、その後ろを歩くのはレイヴン。「ま、待ってくれ、置いていかないで!」よろよろと二人の後を追うのはガイストだ。3人が歩いているのは魔物が多く住むマガイルの森のど真ん中。人すら通らぬ獣道を辿っての旅ゆきだ。ガサガサっと近くの草むらが揺れて、眉間に鋭いツノを生やした一角うさぎ《ホーンラビット》が飛び出してきた。見た目は可愛いが、動くものなら何にでも突進してくる危険な魔物だ。ガイストは騎士の端くれ。素早く腰の剣を抜き、ホーンラビットに斬り掛かった。しかし……「うさちゃんをいじめちゃめっ! ですわ!」一歩前に出たルナリアは、ためらうことなくホーンラビットの後ろ首をむんずと掴み、ぎゅっと胸元に抱き寄せる。さすがの魔物もゾンビの腕力には敵わず、ルナリアの腕の中でジタバタと暴れることしかできない。「うふふ、ふわふわでとっても可愛らしいですわ」ガイストは、そんなルナリアを見て肝を冷やす。「ルナリア、それはうさぎじゃないんだ、俺が斬ってやるから、下に置け」「いやですわ、こんなに可愛い子を斬るなんて、私が許しませんわよ!」「いや、可愛くないんだって、魔物なんだから!」「魔物でも、可愛ければ正義ですわ!」その時、ホーンラビットがひときわ大きく暴れて、ルナリアの手首を蹴り上げた。「あっ!」ルナリアはゾンビだから、その体は生身の人間よりも脆い。手首はブチっとちぎれて吹っ飛び、その隙にホーンラビットは逃げ出す。「あらあら、元気なうさちゃんですこと」ガイストは大慌てでルナリアの手首を拾い上げる。「ど、ど、どうすんだよこれ!」「やあねえ、ガイストったら、大袈裟に騒いで」レイヴンが懐から裁縫セットを取り出す。「騒ぐな」ガイストから手首を奪い取ったレイヴンは、それを針と糸で元の位置に丁寧に縫い付け始めた。「お兄様、黒い糸は嫌ですわ、可愛くないですもの」「そうか、じゃあピンクなんてどうだ?」「可愛いですわ! さすがお兄様!」あっという間にルナリアの手首復活である。レイヴンは裁縫セットをしまいながら言った。「アナ・デンバーがゾンビになった時のために、お前も裁縫ぐらい練習しておくといいぞ」「
last update최신 업데이트 : 2026-09-19
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⑦
グランの実家であるディノス家は、代々宰相を務める超名門家だ。いつでも王家からの呼び出しに応えられるようにと、その領地は王都のほど近くにある。土地は肥沃で農業が盛んであり、特産物はワイン。街道一本で王都と繋がっているため華やかな都会の流行が入ってくるのが早く、商業的にも発展した、第二の王都と呼ばれる豊かな領地だ。そんな領地で育ったグランは苦労知らずで、頭はいいが世間には疎い、典型的な“温室育ちのおぼっちゃま”である。彼は今、ルナリアの処刑に加担したことを父に怒られて領地で謹慎中なのだが……「ぼっちゃま、これ以上の買い物は、やばいですって」そう言い出したのは、グランの従者であるマクガニー。その主人であるグランは、私室にドレスのカタログを山のように持ち込んで、アナ・デンバーへの贈り物選びに余念がない。「アナは正式に王太子の婚約者になったんだ。他と比べて見劣りするようなものを着せるわけにはいかないだろう!」「だから、なんでそれをぼっちゃまが贈るんですか、そういうところも、ご当主さまに怒られましたよね?」確かに、グランは父に言われている。「女に宝飾品を贈るのは婚約者の役目、婚約者でもないお前が何をしとるんだ」と。しかしグランの解釈は……「そうか、お前には、アレがそう聞こえたのか」「いや、そうとしか聞こえませんよ」「父は“宝飾品を贈るのは”と言った。つまり、ドレスならば宝飾品には当たらないだろう?」「そういうの、“曲解”って言うンすよ、まあ、いいですけれど」どうせグランは屁理屈を捏ねて人の意見など聞きはしない。幼い頃からの付き合いであるマクガニーは、それをよく知っているから、それ以上何かを言うつもりはなかった。「で、どのドレスにするンすか」などと、楽しくドレス選びをしている最中、突然に部屋のドアが蹴り開けられた。「なっ、ノックもなしに、無礼だぞ!」顔を上げれば、半死半生の兵士を片手で引きずったルナリアが入り口に立っている。「ルナリア・アクイール! 死んだはずでは!」グランの悲鳴よりも早く、マクガニーが懐から短剣を抜いた。彼は代々ディノス家当主の懐刀として仕える家の生まれであり、そこらの兵士よりもよほど戦闘力が高い。「ぼっちゃま、下がっていてください!」きゅっと逆手に短剣を構え、ルナリアと睨み合う。ルナリ
last update최신 업데이트 : 2026-09-21
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⑧
昼時になれば兵士たちが大挙して押し寄せるディノス家の大食堂の馬鹿でかいテーブルの上には、色とりどり種々雑多なスイーツが並んでいる。ど真ん中の席に座るルナリアは、大量のスイーツを前にニコニコ顔だ。その両隣に座るのは、無表情で紅茶を啜るレイヴンと、申し訳なさそうに縮こまって座るガイスト。そしてルナリアの向かいに座るグランは、「解せぬ!」という顔をしていた。ルナリアが一際高らかに雄叫びを上げる。「これこれ、これぞおもてなしですわぁ!」ためらうことなく両手を伸ばして、手近にあったケーキをむんず、むんずと掴む。「いただきますわぁ!」大口を開けて、並ぶスイーツを次々と平らげてゆく。その様子を、グランが嘲笑った。「やはりゾンビだな、礼節も気品も忘れたか」ルナリアはケーキを食べる手を止める。「あら、礼節も気品も忘れてはいませんわ。ただ、お上品を装うのはもうやめましたの」「はっ! ゾンビだからか!」「ええ、ゾンビですもの」「元人間だったプライドとかないのかよ!」「ありませんわ! 人間の、それも淑女の手本でいる必要はもうないのですわ。私、自由ですわ!」「ちっ、嫌味も効かないのかよ」「あ、ごめんあそばせ、嫌味でしたのね?」グランは激昂する。「あー、もー、ほんとそういうとこ腹立つ!」「そう? なんか……本当に、ごめんあそばせね?」「むきー!」かなり長い間地団駄を踏んで、疲れ果てたグランは、椅子にドサリと腰を下ろした。「で、挨拶に来たんだっけ? なんの挨拶だ?」「それはもちろん、これから敵同士になるから? 正々堂々戦いましょうね、っていう? そういう挨拶ですわ」「ちょっと待て、色々ツッコミどころが多いぞ」だからと言ってこれ以上のことを聞いても、相手がルナリアでは頓珍漢な答えしか戻ってこない気がする。グランは、ルナリアの隣に座るレイヴンに目を向けた。「敵同士なのか、僕たちは」「少なくとも仲良しではないな」「やはり、ルナリアを処刑したことを恨んで……」「それに関しては、むしろ感謝している」「お前も話が進まないなっ!」グランは仕方なく、ガイストに向かって手招きした。「ちょっと、こっちに来い」「なっ、なんだよ」「だいたい、なんでそっち側に座ってるんだよ、お前はこっち側だろ」「いや、それがさあ……」「いいからこっちに来い、
last update최신 업데이트 : 2026-09-24
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