로그인婚約者である王子により罪を着せられ、処刑されてしまったルナリア しかし心配ご無用、世界一素敵でやばいお義兄さまが、禁術でサクッと蘇らせてくださったのですわー! キュートでホラーな令嬢ルナリアと、妹ラブだが人格破綻者のお義兄さまがイチャイチャしまくるハートフルドタバタコメディ!
더 보기それは——あまりにもありふれた断罪から始まった。
「公爵令嬢ルナリア・アクイール! 王太子ハウエル・マッケンドニーの名において、貴様を処刑する!」 声高らかに宣言する王太子の隣には、うるうるっとあざとく瞳を揺らす可憐な男爵令嬢、アナ・デンバー。 「アナに対する嫌がらせの数々、そしてアナを襲わせようとした暴挙、全て証拠は揃っているぞ、この悪女め!」 細かい字でびっしりと罪状を書き込んだ羊皮紙を振り回して激昂するメガネの男は、宰相子息で王太子の側近候補であるグラン・ディノス。 「残念だよ、あの気高かった公爵家の姫君が、まさかここまで堕ちるとはね」 ギロチン台に向かうルナリアの腰縄を持つのは、騎士団長子息で王太子の友人兼護衛を務めるガイスト・バウアー。 お手本通りすぎるほどの“悪女断罪”の光景であった。 そして、“悪女”ことルナリアは——ギロチン台の前に立たされて、スッと背筋を伸ばして辺りを見回した。 処刑台の足元には人々が押し寄せ、口々にルナリアを罵り、中には石を投げているものもいる。 対面に組まれた見物用の櫓の上に立つのは、アナの肩を抱き寄せてニタニタと笑う元婚約者。 その隣で険悪な表情をしたグランは、ついこの間まで成績を競い合っていた良きライバルだった。 そして背後からルナリアを突き飛ばすガイストは…… 「幼馴染のよしみってやつだ、苦しまずに逝かせてやるよ」 ルナリアはいま一度背筋を伸ばして、それらをぐるっと見回した。 最後に、ハウエルに視線を止めて、彼女は小さく笑う。 「後悔しますわよ?」 ハウエルはこれを鼻先で笑い飛ばした。 「後悔しているのはお前のほうだろう、アナをいじめた時に、さらにはその命を狙った時には、まさかこんな日が来るとは思わなかったんじゃないか?」 「何度も申し上げていますが、それは……」 反論しようとしたルナリアだったが、ふと言葉を止めて笑う。 華やかに、まるで自分の死を祝うかのように。 「それは、もう、どうでも良いことですわ」 ハウエルが片手をあげる。 「諦めが良くてなによりだ、やれ!」 一際大きな歓声が上がった。 巨大な刃は陽の光を反しながら滑り落ちた。 その瞬間、ルナリアの人生は終わった……終わったはず? 「はーっはっはっは! 稀代の悪女と呼ばれた女も、こうなっては形無しだな!」 高らかに笑い声を上げたハウエルだったが、その数日後—— 「バッカモーン!」 「ぷぺらっ!」 外遊から帰ってきた父王に呼び出された彼は、執務室に足を踏み入れた途端に横っ面を張り飛ばされた。 「なっ、なにするんですか父上ぇ!」 腫れ上がった頬を押さえながら抗議するハウエルを見下ろして、王、ギルウェル・マッケンドニーは言った。 「お前はっ! 自分がなにをしたかわかっているのか!」 ハウエルは典型的な総領の甚六であり、父の怒りが理解できない。 「父上の代わりに罪人を一人捌いただけで、悪いことはなにも……」 「それだよそれぇ!」 ギルウェル王は頭痛を堪えるために、自分の眉間を強く摘んだ。 「わし、アクイール嬢を婚約者にした理由、話さなかったっけ?」 「え、あー、聞いてないと思います」 「聞いてるはずなの! わし、婚約前にもちゃんと話したし、今でも年に二、三回はその話してるの! それをお前は……聞いていなかったんだな?」 「いや、え、はあ、いや? 聞いてましたよ?」 「聞いていたらこんなことにはならんの!」 「……すみません、聞いていませんでした」 「ほんっとーにお前は! もう!」 ギルウェル王は更なる頭痛を感じて、こめかみをキュッと強く押した。 「ともかく、後始末をきちんとしろ、それができないなら廃嫡だ」 「えっ、えっ、たかが公爵令嬢一人処刑しただけなのに?」 「それがただの公爵令嬢ならばな、処刑くらい揉み消してやったが……」 「ただの公爵令嬢なのでは……?」 「違うな」 ギルウェル王がこめかみを揉む手を止めて、ハウエルに真剣な眼差しを向ける。 「あれは、我が国最凶兵器と言われる魔導士を、人間にとどめておくための、唯一の鎖だった」 その鎖が絶たれた今…… 「もはや、なにが起きてもおかしくない、とにかく、なんとかしろ」 「な、なんとかって……どうやって……?」 「そんなことくらい自分で考えよ!」 ハウエルを部屋から追い出した後で、ギルウェル王は深いため息をついた。 「まあ、バカ息子ではあるが、目眩しくらいの役には立つだろう……」 こめかみをもみながら窓の外を眺める。 「今のうちに対策をせねばならんな……影!」 王の呼びかけに答えて、部屋の隅、先程までなにもなかった空間にゆらりと空間の揺らぎが立ち上った。 それは明確な裂け目となり、その中から黒装束の男が現れる。 「はい、ここに」 「どのような状態であってもかまわぬ、今すぐ行って、アクイール嬢を回収してこい、回収が無理ならば灰一つ残さぬように焼き尽くせ。相手は魔導士だ、“材料”を与えるわけにはいかない」 「御意!」 影はすぐに処刑場に向かったが、どうやら一足遅かったようだ。 すでにアクイール嬢の体は、ひとかけら残らず誰かに持ち去られた後だった—— ルナリアの遺体を持ち去ったのは、ギルウェル王が恐れていた通り、“最凶”の二つ名を持つ魔導士、レイヴン・アクイール。 彼はルナリアの義兄であり、人格破綻者でもあった。 レイヴンは落とされた首を胴に丁寧に縫い付けている。 「ルナ、君を取り戻すためなら、何を代償にしても構わない」 レイヴンはルナリアの体を儀式用の祭壇にそっと横たえ、その額にキスを落とした。 「さあ、始めよう、復活の儀式を」 レイヴンの手には一冊の魔導書。 先日、厳重に封印が施された金書庫から盗みだした禁書である。 紡がれる古代語の呪文。 古代語が失われた今、発音まで完全に再現して唱えることができるのは、この世でレイヴンただ一人である。 祭壇は怪しい光を放ち始めた。 「ルナ、二度と一人にしない……」 光はゆっくりと命を失ったルナリアの肉体を包み込んだ——ギルウェル王は一応は一国の王だから――果たすべき責任もあれば、守るべき民もいる。だが、相手が王国の最終兵器と呼ばれた男では、正直逃げ出したくはある。ただ王としてのプライドだけが、彼をかろうじて王座につなぎ止めていた。バーンと扉が開いて、最初にルナリアが入ってくる。「頼もー! ですわ!」続いてガイストが。「道場破りじゃないんだから」最後にレイヴンが。「ルナなら道場破りどころか完全粉砕も可能だろうな」ギルウェル王は精一杯背筋を伸ばして、一段高い玉座から三人を見下ろした。「よくぞここまで来た」まるでラスボスのような口のきき方だが、膝はすでにガクガクである。「あー、なんだ、まあ、穏便に行こう、穏便に」だが、レイヴンに慈悲はない。「ダメだ」「そこをなんとか」「ダメだ」「くっ、冷血漢めが!」ルナリアが義兄をかばう。「おにーさまはとても優しい人ですわ!」ギルウェル王とガイストが同時に叫ぶ。「「それ、お前にだけだから!」」実際、レイヴンはルナリア以外の人間には冷淡で冷酷だ。王国の魔導士としてギルウェル王に召し上げられてはいるが、おとなしく言うことを聞いた試しがない。「レイヴンよ、出撃じゃ、南の蛮族を討伐して参れ」「だが断る!」「なんで! これはこの国の平和を守るための重要な戦いじゃぞ!」「興味ないな」「お前が行かないと! 奴らにこの国を蹂躙されちゃうの! 数多の無辜の民が、戦いに命を落とし、泣きくれるのを見たくはないじゃろう?」「俺には関係のない話だな」「冷血漢っ!」これが、ルナリアが絡むとなると、話が変わってくる。「よし、こう考えてみよう、敵がこの国に攻め込んだ場合、真っ先に狙われるのは身分の高い者だ、ルナリア嬢は公爵令嬢だから……」「出撃する」「食い気味ッ?」ともかくルナリアが絡まないなら、他人の命などゴミクズ同然、顧みることもない。これがルナリアを絡めれば面白いほど思いのままに動かせるのだから、王にとってルナリアは使い勝手のいいレイヴンを操るための手駒だった。だが今、その手駒はレイヴンの手の中に……「いや、腕の中だな」王の眼前、しかも最終決戦の雰囲気だというのに、レイヴンはルナリアを抱き寄せてイチャコライチャコラしている。「ルナ、生贄にするんだから、殺さない程度にな」「任せてくださいませ
王座の間へ続く長い廊下(ただし現在はボロボロ)を歩きながら、ガイストはルナリアに聞いた。「なあ、本当に、いいのか」「何がですの?」「今のお前は楽しそうだからさ、本当に、ギルウェル王を生贄にしてまで人間に戻る必要があるのかなって……」ルナリアは即答。「ありますわ!」このゾンビ、迷いというものがない。「私、人間に戻って、おにーさまと結ばれるという、夢がありますもの!」「あー、そうだったな、でも、よく考えろ、人間になるってことはだぞ、公爵令嬢という肩書きを取り戻すということでもあるんだぞ」「公爵……令嬢……?」「やめろやめろ、その、初めて聞いた単語ですわみたいな顔!」「いえ、大丈夫ですわ、少し、過去の記憶が……」公爵令嬢という身分――それはルナリアの自由を縛る鎖だった。身分が高いゆえに、公式の場では他の令嬢方の手本であることを求められる。本来の破天荒さを封じられ、ただ美しく、穏やかに……淑女らしく振る舞うのは、ルナリアにとって苦痛でしかなかった。それでも、父が生きていて、そして過保護な義兄が感情を封じられる前は――家に帰れば、素っ頓狂な振る舞いをしても誰も咎めることはない。むしろ父はそんなルナリアを全肯定してくれたし、義兄に至っては全肯定プラスベタ褒め。だから、ルナリアは妙に卑屈になることもなく、すくすくと育った。それが、父を流行病で亡くしてから、ルナリアの人生は大きく変わった。「公爵令嬢たるもの、大口を開けて笑うものではありません!」ムチがピシリと打ち落とされる。いずれ王妃となるための教育は厳しく、そして、苦しかった。「歩くのが速すぎます! 淑女は常に慌てることなく優雅に、しなやかに! ひだまりを歩く猫のように!」「そんなに食べてはいけません! 淑女たるもの優雅に! 一口食べたらもうお腹いっぱい、という顔をしなさい!」「また背中が曲がっていますよ! しゃんとなさい!」散々鞭打たれて家に帰っても、笑って出迎えてくれる父はいない。ならばと、辛かったことを義兄に話しても、短く「そうか」という返事が返ってくるだけ。暗く、辛かったあの頃を思い出すから……ルナリアはプルプルと首を振って、陰鬱な気持ちを振り払った。「人間に戻っても、私、公爵令嬢には戻りませんわ!」「そんなこと言ったって、身分は自分じゃどうにもならないだろ
と、ハウエルが最高級カツラを夢見るその一方で――「なんだこれは……敵襲か? それとも魔物の仕業か?」城壁を見上げたガイストは、そのあまりの惨状に声を失った。本来なら城のぐるりをしっかりと囲っているはずの石壁は所々に大穴が開いて崩れ、城の全景が完全に丸見えになっている。門は吹っ飛び、二本の門柱だけが寂しく聳え立っている。その前にきちんと門兵が立っているのが、なおさらに侘しい。ガイストの隣に並ぶルナリアは、ちょっと小首を傾げた。「模様替えですかしら?」「いや、これは普通に破壊された後だろう」「ひどいことをする方がいらっしゃるのね!」そのひどいことをした本人であるレイヴンは眉ひとつ動かすことなく。「そうだな」いつもならツッコミを入れるはずのガイストが、この破壊を行なった人物がレイヴンであることを把握していないのだから、完全にツッコミ不在である。「さあ、行きますわよ! ハウエルをぶっ飛ばしますわ!」「違うぞ、ルナリア、目的がまた変わっちゃってるし!」「楽しそうで何よりだ」平然とした顔で歩き出した3人の前に、門兵が槍を立てた。「待て、ここから先には通さぬ!」職務に忠実なこの門番は、腹に力を入れてできるだけ大きな声を出そうとするが、恐怖で震える喉から搾り出されたのは、裏返った、か細い声だった。それもそのはず、レイヴンは有名な“この国最強の魔術師”であり、表情ひとつ変えずに敵を屠る冷酷な男として城内に知られている。「な、何をしにキタァ!」「ほう?」「ヒィッ!」「無駄な殺生はしたくない、どいてくれるな?」「は、はいぃ!」怯えて一歩引いた門兵の間を悠々と通って、3人は城の中に足を踏み入れた。城の中も、もちろんボロボロである。崩れた柱の残骸を撫でてガイストが呟く。「こいつはひでえな、ここで何があったんだ……」と、それに応える声。「何をしらばっくれているのかしら、あなたたちの仲間がやったことじゃない」崩れかけた階段のそばに、アナ・デンバーがいた。本日のグランは四つん這いになって馬具をつけ、アナを背中に乗せている。アナはその“ウマ”に悠々とした様子で横乗りをして、手に持った鞭を手持ち無沙汰に弄んでいる。ガイストは、アナに向かって聞き返した。「これをしたのは、俺の……仲間?」バッとルナリアを見る。ルナリアは首を横に振
そんな父の思惑などつゆほども知らず、ハウエルは元気いっぱい。「出てこい! レイヴン・アクイール!」自ら馬に乗り、百の騎兵と二百の歩兵を引き連れてアクイール邸をぐるりと取り囲む。「出てこないのならば踏み込むぞ!」偉そうに胸を張れば、頭頂部を隠すカツラがずるりとずれる。「くそ、やっぱり安物はダメだな、一刻も早く最高級カツラを手に入れねば!」憤慨するハウエルの前に、斥候に行かせていた兵士が駆け戻ってきた。「報告します! 中には誰もいないようです!」「ふふふ、俺に恐れをなして逃げ出したか、臆病者が!」「そういうわけではないかと……」「どこに逃げようと無駄なこと、これだけの兵が居れば、さしもの奴も敵うまい!」ハウエルは片手をあげ、並びいる兵士たちに号令を出した。「いくぞ! レイヴン・アクイールを追うのだ!」と、兵士を率いたハウエルが探し求める相手、レイヴンは――「ルナ、走ると危ないぞ」「じゃあ、手を繋ぎましょうですわ、おにーさま!」ルナリアとラブラブ城下町デート中であった。「おにーさま、あれはなんですの!」「大道芸だな、見ていくか?」少し遅れて二人に追いついたガイストが、声を上げる。「待てお前ら、何か忘れてないか?」「何か忘れていましたかしら?」「忘れて……いるか?」「城に行くんじゃないのかよ、城に……いま思い出しました、みたいな顔をするんじゃない!」軽い精神的疲労を感じて、ガイストは道の端に腰を下ろした。「頼むからさあ、真っ直ぐ城に行って、さっさと用事を済ませちまおうぜ」「でも、道草は旅の醍醐味なんですわ!」「旅が道草のおまけになってんだよ、お前の場合!」レイヴンが無表情のまま、「まあまあ」とガイストを宥める。「急がば回れ」「急ぐ気すらない奴がそれを言うのか!」正直、もう帰りたい、とガイストは思った。だが二人は大事な幼馴染、ここで見捨てて帰るのはちょっと良心が痛む。「まず目的を確認、ルナリア、何しに城に行くか覚えているか?」「もちろん覚えていますわ、アナ・デンバーをゾンビ化して、隷属の術をかけて、お家で飼いたいという、ガイストの変態的欲求を満たすためですわ!」「違うわ! おばか!」ガイストはフーッと息を吐き出して、遠く空を見上げた。思い浮かぶのは悪女然とした真っ赤なドレスのアナの姿だ。「そもそも、