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16.瓦解

Author: 空空 空
last update Huling Na-update: 2025-04-19 19:25:44

「レベル、52……!? そんなの、何かの間違いだよな……? 夏山さん……。だって、10レべと19レべの奴が合体して……それで50なんて……計算合わないじゃんか!! そんな……」

 そんな無茶苦茶なことがあっていいのか?

俺たちは勝って、乗り越えて、そうやって自分の生活に戻っていく。

それでよかったじゃないか。

なのに、それを許さないのか?

俺たちは神に見放されたとでもいうのか?

 何から何までひっくり返る。

全部が台無しになる。

台無しにされる。

この運命から逃れられるすべなどないというのか。

「ちく、しょう……」

 ミミズクが手のひらを力強く握りしめる。

そして俯きながら小さな声でそう吐き捨てた。

「ちくしょう、ちくしょう……。やっと軌道に乗って来たのに、みんなであがいてあがいて、強くなって、やっとみんな笑うようになったのに……」

「りぃだぁ……」

 ミミズクはきつく唇を結んで、肩を震わせる。

そして静かに涙を流した。

「いいさ、どうせ死ぬつもりだった身だ。なんだっていい」

「え、死ぬつもりだったって……どういう?」

 ミミズクの口から飛び出した言葉に思わず驚く。

その疑問に答えるのはキツツキだった。

「もともとこのパーティ、最初は一緒に死のうっていうので集まったんだよね」

 キツツキの言葉に、さらにヤマガラが続いた。

「でもさ、なんか一緒に居たら楽しくなっちゃって……死にたくないなって、思ったんだ。みんなね」

 ミミズクが、袖で涙をぬぐう。

そして、覚悟を決めた目でこう言った。

「だから、みんなは死なせない。……お前たちに会えて、ほんとに楽しくって……ありがとうな」

「ちょっとりぃだぁ、何言って……」

 ミミズクの言い回しに不穏なものを感じたのか、キツツキが眉を顰める。

キツツキの不安そうな言葉を背に受けて、ミミズクは前に踏み出した。

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……!!」

 せっかくぬぐった涙がまたあふれ出す。

そして……。

「ちくしょぉぉぉぉぉぉ……っっっ!!!!」

 あろうことかモンスターの方へ走り出した。

「ちょっとりぃだぁ……!!」

 ミミズクの方に走り出しそうになるキツツキの首根っこを、スズメとハチドリが押さえる。

ヤマガラは黙って顔を伏せた。

 ミミズクはモンスターの前で盾を地面にたたきつけて立ちふさがる。

そして決して振り返らずに、仲間
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