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第206話

Author: Raisaa
ドクン。

セレーネの心臓が止まるかと思った。喉がカラカラに乾く。世界が急速に遠ざかり、氷のように冷たくなる感覚に襲われた。

背後に立つディリアンの体は硬く強張り、妻の家族に手を出した者を今すぐ八つ裂きにせんばかりの殺気を放っていた。

だが、セレーネは躊躇しなかった。

「ジェイ、馬車を出して。今すぐよ」

セレーネの声はショックで掠れていたが、ガラスのように鋭かった。

「奥様――」

「今すぐ!」

ジェイは即座に護衛たちに指示を飛ばした。

ディリアンがセレーネの腕を掴んだ。強く握られてはいたが、それは引き留めるというより、懇願するような力加減だった。

「セレーネ、俺も一緒に行く」

しかし、セレーネは彼を鋭く見つめ返した。

「ディリアン、あなたはご自分の仕事を終わらせるべきですわ。わたくしのせいで……あなたの計画を台無しにはしたくありませんの」

彼女は震える息を吐き出した。「わたくしのせいで」

「セレーネ、俺は――」

ディリアンが言い終わる前に、セレーネは激しく首を横に振った。

「わたくしが先に向かいますわ。仕事が終わってから、後でいらしてください。仕事を放り出
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