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last update Last Updated: 2025-12-01 06:00:37
 北へ向かう街道はいつもより暗く見えた。

 馬車は砂利を跳ね飛ばしながら疾走し、美桜は揺れる座席で何度も手を握りしめた。

「早瀬、急げ。馬車が壊れても構わない。行けるところまで飛ばせ!」

「承知しました、旦那様!」

 御者台の早瀬が全力で鞭を鳴らす。

 美桜の胸は張り裂けそうで、ただひとつの祈りだけが頭の中を占めていた。

(どうか……どうか間に合って、無事でいて! 咲良、咲真……!)

「美桜」

 一成がそっと、彼女の震える手を包む。美桜は一成の手を握り返した。

「ごめんなさい……本当に……私が……もっとしっかりしていれば……あの子たちが連れていかれることはなかったのに!!」

「違う」

 一成の声は低く、強かった。

「悪いのは犯人だ。美桜じゃない。子供を奪うなんて……許されることじゃないし、美桜は僕のために客人の対応をきちんとしてくれただけだ。責めてはいけない。あの子たちは必ず……絶対に取り返す!!」

「ええ!」

 力強く頷いた。

 もしこれで薫子の下に子供たちがいたらどうするだろうか。

 また、子供たちにもしものことがあったら……?

 その時は、この命尽きても子供たちの仇をとる!!

 馬車は桐島邸目指して一直線に駆けていった。

 一方、桐島邸の奥、薄暗い女客間では、美桜の予想通り奪って連れ帰った子供たちが簡易の木箱に敷き詰めた敷布の上に眠らされていた。まだ寝ているので泣いてはいない。

「……ふふ……可愛い子たちね」

 浅野薫子が、赤ん坊を覗き込みながら微笑んでいた。

 その顔は狂気と愛情が混ざり合い、異様なまでに歪んでいる。

「京様……これでやっと……私たちに悪い夢を見せた存在は消えるんですわ……!」

 薫子は狂おしいほど嬉しそうに京を見上げる。

 だが京は、蒼白になって震えていた。

「お、おい薫子……これ……本当にやばいぞ……! 浅野家から子を攫うなんて……殺されるぞ、俺たち……!」

「黙って!!」

 薫子が扇子で机を叩く。

「京様はわたくしだけを見ていればいいの! この子は一成の子でもないのよ。あの女が無理やり京様と契り、できた子なのだとしたら、こちらにもこの子を奪う権利がありますわ!」

「だが……!」

「大丈夫。海外商人に扮した手下が助けてくれますわ。今から密かに馬車を移動させ、帝都の外へ売ってしまうこともできるのです。京様が不要というのであれば、そ
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