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last update Last Updated: 2025-11-30 06:00:03
 脳裏に浮かぶ顔は、ひとりしかいなかった。

 浅野薫子。

(北には……桐島京の屋敷がある……美麗な女性で海外の人間と交流があって動かせる人物は、薫子さんしかいない!!)

 背中がざわりと震えた。

 そのときだった。

 玄関が騒がしくなり、美桜のいる部屋の扉が勢いよく開かれた。

「美桜!!」

 一成が息を切らし、旅装のまま飛び込んできた。顔は怒りで蒼白になっていて、今にも壁を殴りつけそうなほどだった。

「大丈夫か!? 怪我はないか」

「一成くんごめんなさい……! 私が不甲斐ないばかりに……子供たちが連れ去られてしまったの! 咲良も咲真も………!」

 一成は力強く美桜を抱きしめた。美桜は簡潔に一部始終を彼に説明した。

「すぐ探す。必ずだ。帝都はすでに封鎖した。港も馬車道も、全て止めてある。犯人が見つかるのは時間の問題だ。逃げられない」

 その声は怒りで震えていた。

 だが美桜は首を振り、夫の手を強く握った。

「一成くん……わたし、わかったの。犯人が……」

 一成の目がすっと細まる。

「誰だ?」

 美桜は唇を噛みしめ、強い声で言った。

「――薫子さんよ」

 一成の空気が、凍りつく。

「姉さんが……? まさか」

「まさかじゃないと思う」

「根拠は?」

「馬車が向かった方角は北。その先にあるのは、桐島京の屋敷よ。薫子さんなら、あんな手の込んだことを躊躇わないわ。海外の業者にも通じているだろうし、なにせよ妻だっていう女性が顔を覆って見えなくしていたの」

 言い切る彼女の瞳には、燃えるような強さが宿っていた。

 その表情を見て、一成はぎゅっと美桜の肩を掴む。

「美桜……君、本当に強くなったね」

「強くならなきゃ……! 私は母親よ。咲良も咲真も……絶対に取り返す! こんなことをした犯人が薫子さんだというなら、絶対にゆるさない」

 一成はその姿を見て、一瞬だけ息を飲んだ。

(まるで、真の淑女のようだ。母になって美桜は強くなった)

「わかった。すぐに向かう。だが、美桜……君はここで待って……」

「いいえ。わたしが行くわ」

 一成は目を見開く。

「危険だ」

「それでも行くの! あの子たちが待っているのよ。私のせいであの子たちは怖い目に遭っているわ。この手で抱いて、この手で守るって決めたの! 絶対に取り返す!!」

 一成はしばし黙ったが、美桜の瞳の強さに降参した。

 ふっと息
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