一瞬の隙を突き、ルエルに深手を負わせる事に成功したレイ。
その後呪いを付与させる事も出来、恐ろしい程に順調に計画は進んでいる。
ニイルの言う通りルエルの慢心を突いた作戦だったが、ここまで見事にハマるとはレイも内心では驚きを隠せないでいた。
しかし予想以上に深刻な事態も同時に起こっている。
それはレイへのダメージが大きい事だ。
『神性付与』を発動するまでの間に受けたダメージが、治癒魔法で少しは回復出来たもののかなり尾を引いている。
何より現状マズイのが、『神性付与』の弊害が、現在進行形で続いている事だ。
ニイルより授かったこの『神性付与』だが、能力はニイル曰く、色々な物が良く視える、との事だった。
実際に使ってみると、視力が良くなるという事では無く、見えなかった物や見ても分からなかっ
自分の体からミシミシと音を立て、骨が軋んでいくのを感じるレイ。何とか現状から逃れようとするが、上からの重力が動く事を許さない。「ぐう…ううううううう!」降り注ぐ重力に抗い、空いている左手をルエルへと伸ばす。しかし重力に逆らえず、すぐ地面を掴むことになってしまった。そんな様子を見下ろすルエル。先程までの慇懃無礼な所作とは打って変わって、粗野な態度で口を開く。「これ程の傷を負うのは久しぶりだ。てめぇみてぇな小娘がよくもやってくれたな?」その瞳は怒りの炎を湛え、ギラギラとした雰囲気を醸し出している。口調すらも先程とは全くの別物であり、まるで別人の様だとレイは感じた。「…それが…本性って訳?…随分猫を被って…いるのね?」レイが挑発する様に口を開くも、それには答えず代わりに重力が増し、更に地面へと押し潰されていく。「あう!」「口の利き方には気ぃつけろガキ。今がどんな状況かよく考えてから喋るんだな。てめぇの命は俺が握ってんだからよ?」もはや怒りの感情を隠しもしないルエルに内心焦りと、そして未だに計画通りに事が進んでいる事に、笑みを浮かべそうになるレイ。何故ならまだ自分は生きているから。
一瞬の隙を突き、ルエルに深手を負わせる事に成功したレイ。その後呪いを付与させる事も出来、恐ろしい程に順調に計画は進んでいる。ニイルの言う通りルエルの慢心を突いた作戦だったが、ここまで見事にハマるとはレイも内心では驚きを隠せないでいた。しかし予想以上に深刻な事態も同時に起こっている。それはレイへのダメージが大きい事だ。『神性付与ギフト』を発動するまでの間に受けたダメージが、治癒魔法で少しは回復出来たもののかなり尾を引いている。何より現状マズイのが、『神性付与ギフト』の弊害が、現在進行形で続いている事だ。ニイルより授かったこの『神性付与ギフト』だが、能力はニイル曰く、色々な物が良く視える、との事だった。実際に使ってみると、視力が良くなるという事では無く、見・え・な・か・っ・た・物・や見・て・も・分・か・ら・な・か・っ・
「なんだと!?」聞き慣れた、しかし有り得ざる言葉を聞き、動揺を隠せないルエル。彼の聞き間違いで無ければ目の前のレイはこう言ったのだ。『神性付与ギフト発動オープン』と。それは裏社会ですら、まことしやかに囁かれる都市伝説。しかしその中でも上位の権力者や実力者は存在を知り、その存在になるべく関与しないという暗黙の了解が出来ている程の禁忌アンタッチャブルである。そしてルエルもその存在を知り得る人物の1人であり、その部下であるベルリが実際に使っていた事から、普通の人間より身近な存在だった。しかし先に述べた通り『神性付与ギフト』、及び『神性付与保持者セルヴィ』にはなるべく関与しない、というか各組織がその存在を徹底的に隠蔽している為、誰が『神性付与保持者セルヴィ』でどんな能力を持っているか、詳細を知り得てはいなかった。(先程のスノウという女、奴も私の情報網には引っ掛かっていなかったが故に、その存在に気付かなかった。しかしあの能力からどこの所属かは大体検討がついてはいた。だがこの女は…)自分の記憶をよく思い返しても、かつて自分が滅ぼしたあ・の・国・の人間に『神性付与保持者セルヴィ』が居たと
「不味いですね」爆発音を横目に見ながら、襲い来る男達を躱すニイル。先程から目の前の5人を相手にし、凡その実力を計れた。彼らの実力は人間にしてはそこそこ、しかし裏社会では二流もいい所であろう。つまりニイルにとっては意識すらしないレベルの相手だった。故に適当に時間を稼ぎ、弟子であるレイの邪魔をさせない様にしていたのだが、どうやら向こうはかなりの苦戦を強いられている様だ。(俺とした事が、奴・の力量を読み違えたな…)剣による攻撃を避けながら思案するニイル。ルエルの実力が想定以上であり、レイの勝算がかなり怪しくなって来ている現状に、計画変更を視野に入れた次の行動を模索していた。(これは奥の手を使っても勝てないかもな…ならば一旦撤退するしかなさそうだが…せめて2・人・が戻って来るまでレイが持てば良いいんだが…)現在、ランシュとフィオはニイルに頼まれた任務の為動いている。ルエルが姿を見せた時点で、通話魔法にて指示を出していたのだ。&n
様々な色の魔法の弾幕の中を、一条の閃光が進む。しかしまるで未来が見えているかの様に、雷の行く先々に魔法を撃ち込まれる。見える者が見れば、レイが自ら魔法に突っ込んで行く様にも見えるだろう。そもそも雷速を見切れる者等そうそう居ないので、その心配は皆無だが。「くそっ!」雷速による反射の、その常軌を逸した速度で無理やり回避するレイ。今は何とかそれで致命傷は避けているが、その重なったダメージ、更に常に雷装状態による肉体的疲労、魔力消費、そして全く太刀打ち出来ない事による精神的焦りが動きを鈍らせつつあった。(まるで奴の掌の上ね!)新たなルートを見出そうと弾幕が薄い箇所を狙い、魔法を切り払い進むが、それすらも読んでいるかの様に防がれるのだった。この世界ではほとんど使い手の居ない、魔法を切る技術。剣聖ザジが得意とし、それを受け継いだレイ。魔法が主流のこの世界において、万能の様にも思える技術だが、使い手が少ない理由、デメリットもちゃんと存在する。まず魔法の知識をしっかりと持ちながら、剣の腕も一流である事が前提の時点で、扱える者が少ないのは当然の話である。魔法への知識が有るなら魔法師に、腕に覚えが有るならば剣士に。どちらかに偏るのが普通で、その両方を極めようとするのは途方も無い努力と、類まれな才能が無ければ出来る事では無い。幸いレイはその両方を兼ね
観戦場から試合場へ飛び降りるルエル。結構な高さが有るにも関わらず、重力を感じさせない様子で降り立った。それに沸き立ち、大歓声が巻き起こる。「ルエル様ー!」「国を守ってくれー!」「悪魔達に正義の鉄槌を!」その声に手を振りながら応え、更に声援が増す。そのルエルの一挙手一投足をレイは見逃さまいと注視し、周りの声も全く耳に入っていない様子だった。(良い集中状態です)怒りで我を忘れ、冷静さを欠いていないか少し心配だったニイルはその様子を見て安心する。どうやらこの2年で、精神的にも少し成長したらしい。多少の忍耐強さは獲得した様だ。「では貴方達の相手は私が引き受けましょう。どうぞ、好きな様に掛かって来なさい。あぁ、ご安心を。ちゃんと手加減してあげますからね?」復讐相手ルエルを弟子レイに任せ、ニイルは残りの5人に向き直る。「あ゛あ゛?」「舐めてんのか!?」慇懃無礼な物言いに、5人が一斉にニイルを睨む。(あっさり挑発に乗って来たな…コイツら本当にルエルヤツの部下か?)レイの方へ意識を向けさせない為に敢えて挑発したのだが、あ