「不味いですね」
爆発音を横目に見ながら、襲い来る男達を躱すニイル。
先程から目の前の5人を相手にし、凡その実力を計れた。
彼らの実力は人間にしてはそこそこ、しかし裏社会では二流もいい所であろう。
つまりニイルにとっては意識すらしないレベルの相手だった。
故に適当に時間を稼ぎ、弟子であるレイの邪魔をさせない様にしていたのだが、どうやら向こうはかなりの苦戦を強いられている様だ。
(俺とした事が、奴の力量を読み違えたな…)
剣による攻撃を避けながら思案するニイル。
ルエルの実力が想定以上であり、レイの勝算がかなり怪しくなって来ている現状に、計画変更を視野に入れた次の行動を模索していた。
(これは奥の手を使っても勝てないかもな…ならば一旦撤退するしかなさそうだが…せめて2人が戻って来るまでレイが持てば良いいんだが…)
現在、ランシュとフィオはニイルに頼まれた任務の為動いている。
ルエルが姿を見せた時点で、通話魔法にて指示を出していたのだ。
&n
「不味いですね」爆発音を横目に見ながら、襲い来る男達を躱すニイル。先程から目の前の5人を相手にし、凡その実力を計れた。彼らの実力は人間にしてはそこそこ、しかし裏社会では二流もいい所であろう。つまりニイルにとっては意識すらしないレベルの相手だった。故に適当に時間を稼ぎ、弟子であるレイの邪魔をさせない様にしていたのだが、どうやら向こうはかなりの苦戦を強いられている様だ。(俺とした事が、奴・の力量を読み違えたな…)剣による攻撃を避けながら思案するニイル。ルエルの実力が想定以上であり、レイの勝算がかなり怪しくなって来ている現状に、計画変更を視野に入れた次の行動を模索していた。(これは奥の手を使っても勝てないかもな…ならば一旦撤退するしかなさそうだが…せめて2・人・が戻って来るまでレイが持てば良いいんだが…)現在、ランシュとフィオはニイルに頼まれた任務の為動いている。ルエルが姿を見せた時点で、通話魔法にて指示を出していたのだ。&n
様々な色の魔法の弾幕の中を、一条の閃光が進む。しかしまるで未来が見えているかの様に、雷の行く先々に魔法を撃ち込まれる。見える者が見れば、レイが自ら魔法に突っ込んで行く様にも見えるだろう。そもそも雷速を見切れる者等そうそう居ないので、その心配は皆無だが。「くそっ!」雷速による反射の、その常軌を逸した速度で無理やり回避するレイ。今は何とかそれで致命傷は避けているが、その重なったダメージ、更に常に雷装状態による肉体的疲労、魔力消費、そして全く太刀打ち出来ない事による精神的焦りが動きを鈍らせつつあった。(まるで奴の掌の上ね!)新たなルートを見出そうと弾幕が薄い箇所を狙い、魔法を切り払い進むが、それすらも読んでいるかの様に防がれるのだった。この世界ではほとんど使い手の居ない、魔法を切る技術。剣聖ザジが得意とし、それを受け継いだレイ。魔法が主流のこの世界において、万能の様にも思える技術だが、使い手が少ない理由、デメリットもちゃんと存在する。まず魔法の知識をしっかりと持ちながら、剣の腕も一流である事が前提の時点で、扱える者が少ないのは当然の話である。魔法への知識が有るなら魔法師に、腕に覚えが有るならば剣士に。どちらかに偏るのが普通で、その両方を極めようとするのは途方も無い努力と、類まれな才能が無ければ出来る事では無い。幸いレイはその両方を兼ね
観戦場から試合場へ飛び降りるルエル。結構な高さが有るにも関わらず、重力を感じさせない様子で降り立った。それに沸き立ち、大歓声が巻き起こる。「ルエル様ー!」「国を守ってくれー!」「悪魔達に正義の鉄槌を!」その声に手を振りながら応え、更に声援が増す。そのルエルの一挙手一投足をレイは見逃さまいと注視し、周りの声も全く耳に入っていない様子だった。(良い集中状態です)怒りで我を忘れ、冷静さを欠いていないか少し心配だったニイルはその様子を見て安心する。どうやらこの2年で、精神的にも少し成長したらしい。多少の忍耐強さは獲得した様だ。「では貴方達の相手は私が引き受けましょう。どうぞ、好きな様に掛かって来なさい。あぁ、ご安心を。ちゃんと手加減してあげますからね?」復讐相手ルエルを弟子レイに任せ、ニイルは残りの5人に向き直る。「あ゛あ゛?」「舐めてんのか!?」慇懃無礼な物言いに、5人が一斉にニイルを睨む。(あっさり挑発に乗って来たな…コイツら本当にルエルヤツの部下か?)レイの方へ意識を向けさせない為に敢えて挑発したのだが、あ
試合場に集められた選手達を見て、レイは違和感に気付く。(1人足りない?)そう、本来であれば8人が勝ち残っている筈が、ここには7人しか集まっていない。(このタイミングで棄権?それとも別の…)何か嫌な予感がする…直感ではあるがそう感じた時、それが正しかったと知る事になる。「この大会をご覧の皆様、お待たせしました」「っ!?」選手達7人は、デューレル王からの言葉を賜わる為に呼ばれた筈。それが本当とは考えていなかったが、それでも何故…「お前が…ここに居る…?」囁く様にレイが呟く視線の先。来賓席より姿を現したのは、因縁の相手ルエル・レオ・ナヴィスタスであった。開会式の時、彼は姿を表さなかった。その為レイはこの場には居ないのだと判断、その後は大会に集中していたのだが、どうやらそれは早計だったらしい。あまりにも突然の邂逅に、様々な感情が溢れ出るレイ。目の前が赤く染まり、今にも飛び掛ろうとした瞬間、横から肩を捕まれハッとする。見ればニイルが首を横に振っていた。フードを被って
「なんだと!?それは本当か!?」部下からの報告に口調も、崩れ思わず大声を出してしまうルエル。何事かと振り返るデューレル王に大丈夫ですと取り繕い、少し離れて報告の続きを聞く。「確かに目標の部屋で、ダル様含む3名が死亡しているのを確認したと」「クソっ!見通しが甘かったか…!」先程ルエルが部下に指示を出したのは2つ。まず1つ目が、この大会に参加している裏社会の人間や傭兵、冒険者等金で動く人間に金を握らせ、この大会参加中は自分の指示に従う様に仕向けた事。こちらの方はかなりの金額を提示しただけに、一も二もなく承諾を得られていた。もう1つは先程の試合で神性付与保持者セルヴィだと判明したスノウと名乗る女の暗殺である。あの神性付与ギフトは見た事が無いが、彼女の持っていた剣なら見た事が有る。以前はあ・の・派・閥・の頭首が持っていた筈なので、それを持っているという事は彼女もかなり上の地位の人間である筈だ。そもそも神性
ニイルが去って少し後、ニイルの試合が始まろうかという時。半泣きになりながら薬を飲み終えたレイと、それを笑いながら囃し立てるフィオ達3人の元に、1人の来客が訪れた。「失礼するわ」「スノウ!?」部屋に入ってきたのは、先程までレイと戦っていたスノウであった。試合直後気を失っていたはずだが、今は元気そうにこちらへ歩いてくる。「良い試合だったわ、まさかこんなに強い女の子が居るなんて思わなかった」そう言いながら手を差し出すスノウ。「その言葉、そっくりそのまま返すわ。どうやってそこまで強くなったのかしら?」レイもその手を握り返しながら答えるが、その時フィオとランシュが異常な程警戒しているのに気付く。「2人共、彼女はさっきまで私と戦っていたスノウよ。試合後に闇討ちしに来た訳じゃ無さそうだしそんなに警戒しなくても…」「そういう訳じゃ無いんだけどね…」先程の戦いを経て、試合の恨みで襲って来るような人間では無いと感じていたレイは、2人を安心させる様に言うがフィオもランシュも警戒を解こうとしない。それに2人の顔を見ながら当然よね、と呟くスノウ。「でも安心して。ニイルにはちゃんと話をして来た。私にはよく分からなかったけれど、彼はちゃんと納得して帰って行ったわ」その言葉に驚愕する3人。