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87. 中間

Auteur: Mr.Z
last update Dernière mise à jour: 2025-07-01 15:44:05

 他に方法は無いのかな。未来ルイを助ける、他の方法は。走り続ける中、ルイと考え続けた。

 でも、今の私たちに出来る事は無い。ただ今を生きるのに精一杯なままで⋯⋯

「あいつと俺は枝の分かれ目で繋がってる。だから分かる、あいつは簡単に消えたりしない」

「うん⋯⋯」

 話し合っていると、最後の出発ロビー前へと辿り着いた。私の立ち絵が用意されている。水色のパーカー、水色のプリーツミニスカート、白のショートブーツ、左に纏めた長髪、今の私の格好まんまだ。

 ここに私の死因が⋯⋯

 ⋯⋯ん、なに?

 私の横を"半透明の何か"が通り過ぎていく。

 灰色の⋯⋯蝶⋯⋯?

 それは誘うように、ロビー内へと入って行った。私とルイは顔を合わせ、中へと入る。そこには、灰色蝶が何匹も上で漂っていた。

 さらに目線を上にすると、天井には大きな赤字で"新崎ユキの死"。壁際には、立体プロジェクションマッピングで私の紹介PV。

「ユキのはこんな感じか」

「⋯⋯あんま見なくていいから」

 すると、一匹の蝶がゆっくりと上から降りてきた。

 この蝶だけ、他と違う⋯⋯?

「付いて行ってみましょ」

 先導するように進む"光った灰色蝶"、身体からは"残像のような灰粒子"を発している。

 これ、私の"灰涅槃の鬼鎌"から出る粒子と同じ⋯⋯?

 付いて行った先、"灰色のリフト?"がぽつりとあった。その上で蝶が舞っている。

 ⋯⋯それに乗れって事?

「行くしかないな」

「みたいね」

 乗った瞬間、リフトは下へと降り始めると同時に、目の前に【07:00】という謎の時間が表示された。

「⋯⋯なにこれ?」

 【06:59】【06:58】【06:57】と時間が減っていっている、何が始まったの⋯⋯?

「ユキ! 上見ろッ!」

「え!?」

 上を向くと、なんと上の方が少しずつ砂のように消えていっていた。

 まさかこのタイムリミット⋯⋯この世界の終わりってこと!?

 リフトが搭乗ロビーへと着く頃、"YUKI's LOST GATE"を直線先に見つけた。

「走るぞッ!」

 【06:30】【06:29】【06:28】、時間が刻々と過ぎていく。搭乗橋を駆け抜けると、中間地点の広い空間へと出た。

 そこには⋯⋯

「!? なんでヒナ、ノノ、アスタ君が!?」

「⋯⋯どうなってやがる」

『(たぶん⋯⋯これが最後の話に⋯⋯なる)』

 これ、未来ルイの
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