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プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~
プライド崩壊の夜~元妻、二人目の妊娠~
Author: 魚ちゃん

第1話

Author: 魚ちゃん
村田明里(むらた あかり)は不思議でたまらなかった。昨夜、夫である二宮潤(にのみや じゅん)はベッドの上で自分を激しく翻弄した。一体どうしたっていうんだ。

そして今朝、明里は理由を知った。

潤の弟・二宮隼人(にのみや はやと)が婚約するのだ。

しかも、その女性は潤の初恋の相手だった。

つまり、潤が長年想いを寄せていた女性が、彼の弟と結婚することになるのだ。

なんとも皮肉な話だ。

昨夜、潤が自分の腰を掴み、赤い目で、まるで狂ったように何度も激しく抱いてきたことを思い出し、明里は言いようのない虚しさに襲われた。

明里が階下に降りると、既に身支度を整えた潤が出かけるところだった。

190cm近い長身は、それだけで威圧感を与えていた。

長年、高い地位にいるせいか、彼の整った顔立ちよりも、その強いオーラに目が行きがちだった。

しかし、実際は、潤の顔立ちは端正で、どんなに冷徹な表情をしていても、美男子であることは隠しきれない。

さらに、広い肩幅に細い腰、スラリと伸びた長い脚は、高級スーツに包まれ、力強さと自信を醸し出している。

二宮家の御曹司である夫は、落ち着き払っていて、常に冷静沈着であることを、明里はとっくに知っていた。

まるでこの世に、彼の感情を揺さぶるものは何もないかのようだった。

ただ一人、あの女性を除いては……

明里は胸に込み上げる苦しさを押し込め、潤を見ないようにして、ダイニングへと向かった。

潤は明里を一瞥すると、カフスボタンを直し、そのまま出て行った。

二人は一言も言葉を交わさなかった。

ドアが閉まる音を聞き、明里は苦笑いした。胸に、じんわりと痛みが広がる。

こんな冷え切った結婚生活を受け入れられると思っていたのに……

自分の気持ちはどうすることもできなかった。この男に、少しずつ心を奪われていく。

明里は朝食を食べるものの、味も分からず、ぼんやりとしていた。

スマホが鳴り、明里は出ると、席を立った。「すぐ行きます」

午後になり、明里は研究所で疲れ切っていた。

これまで息の合った岩崎凪(いわさき なぎ)と組んでいたのに、彼は突然異動になり、新しく来た田中俊介(たなか しゅんすけ)はデータ分析が苦手だった。

一人で二人の仕事を抱え、さらに心のモヤモヤも重なり、余計に疲れていた。

仕事を終え、スマホを見ると、潤からメッセージが届いていた。【今夜、屋敷へ戻れ】冷淡な短い文字だった。

隼人と清水陽菜(しみず ひな)の婚約発表だろうと明里は思った。

隼人は、潤の異母兄弟だ。

そして陽菜は、潤が忘れられない女性だった。

兄弟が同じ女性を好きになるなんて。

今夜の夕食は……きっと一触即発の空気になるだろう。

二宮家の屋敷に着いた明里は、玄関を入ろうとしたところで、角に佇む潤と陽菜を見つけた。

少し離れていたため、何を話しているのかは聞こえなかった。

しかし、潤がプレゼントの入った袋を陽菜に渡すのが見えた。

陽菜の顔は、幸せそうな笑みに満ちていた。

彼女は、守ってあげたくなるような顔を上げていた。その表情は、明里が見慣れた、か弱い乙女の表情そのものだった。

一方、潤は、この角度からは横顔しか見えないものの、高い鼻筋と引き締まった顎、そして少しだけ上がった口角が印象的だった。

明里と一緒にいる時には決して見せない笑顔だった。

明里の心は、締め付けられるような痛みを感じた。

明里は爪を手のひらに食い込ませ、視線を逸らし、階段を上った。

ヒールが石段に当たる小さな音が響いた。

その音に気づいた潤は、こちらを振り返った。先ほどの笑顔は消え、冷たい視線で、表情も硬かった。

明里は潤を見ずに、ドアを開けた。

そして、潤は立ち去ろうとした。

その時、陽菜が潤に声をかけた。「潤さん、明日の午後は時間ある?隼人は彼の先生のとこに行くから、一緒に動物病院付き合ってくれない?」

潤は低い声で答えた。「明日の午後は会議があるんだが……ちょっと確認してみる。とにかく、早く中へ入るんだ。寒いだろ」

陽菜は微笑んで言った。「潤さん、先に入ってね。隼人に電話する」

潤が去るのを見届けると、陽菜の口元に笑みが浮かんだ。それは、自信に満ちた、勝ち誇ったような笑みだった。

リビングに入った明里の耳に、嫌味な声が飛び込んできた。

「食事に来るのに、何度も催促させるなんて、どういうつもり?二宮家の嫁なら、もっと自覚を持つべきでしょう。結婚したら、家で夫を支え、子供を育て、家事をするのが当たり前なのに、外で仕事をするなんて、みっともないわ!」

明里が視線を向けると、潤の継母である九条真奈美(くじょう まなみ)がソファに座っていた。いかにも裕福な貴婦人といった雰囲気だ。

しかし、言葉は辛辣で、傲慢だった。

二宮家は大きな家業を抱えており、潤の祖父である二宮和夫(にのみや かずお)が亡くなってからは、潤が中心となって切り盛りしていた。

真奈美は継母であり、潤とは折り合いが悪く、当然、二宮家の財産は全て自分の息子に相続させたいと思っていた。

彼女は潤が嫌いだったし、明里も嫌いだった。

当時、和夫の指示で潤と明里が結婚することになった時、誰もが村田家は二宮家には釣り合わないと思っていた。

ただ一人、真奈美だけは、この結婚を喜んでいた。

潤が身分の低い女性と結婚すればするほど、隼人が釣り合う相手と結婚して家業を継ぐのに有利になるからだ。

今の息子の婚約者には、真奈美はとても満足していた。

清水家には息子が二人いるが、娘は陽菜一人だけなので、とても大切にされていた。

陽菜の上には二人の兄がおり、二人とも彼女をとても可愛がっていた。そして、将来は隼人の助けとなるだろう。

こうして比べてみると、明里は何の取り柄もない女に見えた。だから、誰もいない時は、真奈美は遠慮なく明里に辛く当たった。

しかし、真奈美が言い終わるか終わらないかのうちに、潤が明里の背後に現れた。

彼は手を伸ばし、明里の背中に手を当て、冷たく言った。「ここで何をしている?入れ」

明里は潤の手を避け、中へ入った。

潤は握り拳を作り、指の関節が白くなった。

真奈美は立ち上がり、上品な笑みを浮かべて言った。「潤、いらっしゃい。もうすぐ食事よ」

潤は真奈美に向かって冷たく言った。「なぜリビングにいるんだ?キッチンにいるべきだろ?二宮家に嫁いできたなら、夫を支え、子育てをし、家事をするのが当たり前だろ!」

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