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最終話「ロスト・デイ」

مؤلف: 河内謙吾
last update تاريخ النشر: 2025-11-10 11:00:00

──研究室・深夜。

 りかが押した記憶復元装置の“実行”ボタン。

どれ程の時間が経っただろうか。想はまだ、目を覚まさない。

「神谷さん!……神谷さん!」

 りかの必死な呼びかけも虚しく、想に反応はなかった。

「おいおい……まさか……」

 橘の胸に、最悪の結末がよぎる。

 その静寂を破ったのは──中野の乾いた笑い声だった。

「ふふふ……はーっはっはっ!」

 室内に、嫌なほど響き渡る。

──そ

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  • ロスト・デイ   最終話「ロスト・デイ」

    ──研究室・深夜。 りかが押した記憶復元装置の“実行”ボタン。どれ程の時間が経っただろうか。想はまだ、目を覚まさない。「神谷さん!……神谷さん!」 りかの必死な呼びかけも虚しく、想に反応はなかった。「おいおい……まさか……」 橘の胸に、最悪の結末がよぎる。 その静寂を破ったのは──中野の乾いた笑い声だった。「ふふふ……はーっはっはっ!」 室内に、嫌なほど響き渡る。 ──その時。「……う、ん……」 ゆっくりと、想のまぶたが開く。「ここは……」 装置を外し、周囲を見渡す。──拘束された中野。──寄り添うりか。──そして橘。 ひとりひとり、確かめるように視線を送った。「……そうか。帰ってきたんだな」 そう呟きながら、想は中野に視線を戻す。「あなたは──僕の研究を奪い、そして僕から“記憶”を奪った。……その罪は、決して許されない」「神谷

  • ロスト・デイ   第二十話「作戦決行」

    ──水曜日・深夜0時30分。 いよいよ、すべての決着をつける時が来た。 研究所前に集まった想・りか・橘の三人。緊張感の中、それぞれの覚悟が静かに燃えていた。「いいですか、神谷さん。 作戦通りにお願いしますね」「……あぁ、必ず成功させる」 想が力強く頷く。「中野の側近と思われるスーツの男は、別件で拘束してる」 橘が言いながら、想の肩を軽く叩く。「アイツは叩けば埃だらけだった。 今夜は中野一人、決めるには最適だ」「……ふぅ、よし、行ってくる」 想は一度、深く息を吐き── ゆっくりと、研究所へ入っていった。 ──研究所内。 受付には、前と同じく無表情の女性職員がひとり、薄暗い照明の中で待っていた。 想が近付くと、電話をかけ始める。「……もしもし、神谷さんが来られました」 電話が終わった瞬間、想は受話器を奪うように置き、背後からりかと橘が現れる。「……これは、一体……?」 戸惑う職員。「今日は、終わらせに来ました」 想がまっすぐに言い放つ。「あなたた

  • ロスト・デイ   第十九話「神谷想という男」

    ──りかの考えた作戦が、伝えられる。 想は“記憶をすべて取り戻したふり”をして、研究所に潜入。 中野と対峙し、まずは説得。 もし応じなければ、装置を奪い取り、記憶を取り戻す──という強硬策だった。「……ちょっと、雑すぎやしないかい?」 想は、軽く笑いながらツッコミを入れる。「え? 我ながら、けっこう良い作戦だと思ってたんですけど」「いや、“記憶が蘇ったふり”まではいいんだよ。 でもさ、最後が“力ずくで奪い取る”って……成功する未来が全然見えない」 想は苦笑いを浮かべながら、テーブルを指でトントンと叩く。「でも……“気を引いている間に装置を操作する”って方が、まだ現実的かもな」「それこそ、どうやって1人でやるんですか?」 りかの問いに、想は無言でニヤリと笑う。「……えっ、私も?」「当然でしょ。バディじゃん、俺たち」「……もうちょっとマイルドな作戦、考えません?」「おい、ズルいぞ」 2人のやり取りは、どこか漫才のようだったが、その目は真剣だった。ああでもないこうでもないを繰り返し、時間だけが過ぎていく。──このままでは埒が明かないと判断し、橘も交えて作戦会議を開くことに。

  • ロスト・デイ   第十八話「触れる」

    ──喫茶店・夕方。 橘と別れた後、想とりかは、今後の方針について語り合っていた。「……でも、実際どうやって記憶を戻すか、だな」 想の疑問は、誰もが感じる率直なものだった。「ですね。医学的には、写真や映像、匂いなどの“記憶のフック”が有効って言われてますけど……」「俺の場合、音声だけじゃ、何もピンと来ないんだよね」 2人はそろって肩を落とした。「早くしないと……また、水曜日が来てしまう」 想の表情には焦りがにじんでいた。今日は土曜日。あと数日で、また“あの日”がやってくる。 その夜、再び研究所に向かってしまえば、今度こそ全ての記憶が消されるかもしれない。そう考えるだけで、胸が締めつけられた。「……でもさ、なんで俺、水曜の深夜に限って“動いちゃう”んだろう?」 ふと漏れた想の言葉に、りかの目が鋭くなる。「それ……何かあるのかも。 あの時間じゃなきゃいけない理由……あっ!」 りかが何かに気づいたように、身を乗り出す。「……記憶を“取られた”時間……!」「え、どういうこと?」「もしかしたら、水曜日の深夜0時30分に、記憶を奪われたんじゃないかって&

  • ロスト・デイ   第十七話「協力者」

    ──共に戦うと誓い合った2人。 だが、その第一歩は、思いのほか難しいものだった。「……で、戦うって言っても、俺たち、何すればいいんだ?」 想が素朴な疑問を口にする。 それは、核心でもあった。「まさにそこなんです。まずは、神谷さんの記憶を戻せたらって思ってて…… 特殊な周波数の装置とか言ってましたよね? 何か、思い出せそうですか?」「うーん……さっぱり」「とりあえず、電波でも当ててみます?」「おいおい、俺の脳をチンでもすんのかよ……脳科学者の発言とは思えないな」「……ごめんなさい」 くだけた会話の中、ふと想が気づく。「そういえば、よく研究所までたどり着けたね。俺の名前まで……」「あ、それは……実は協力してくれてる人がいるんです」「協力者?」「中学の同級生なんですけど……今は刑事をしてて。 事故の調書や、研究所の周辺情報も──その人に手伝ってもらってました」 少し言いにくそうに、りかは続ける。「……聞かなかったことにします?」「いや、言ってくれていいよ。ただ、他言しないほうがいいってこと?」「はい&helli

  • ロスト・デイ   第十六話「目的」

    ──長い、長い沈黙。 想は、自分という存在そのものに疑念を抱いていた。“神谷想”という人格すら、誰かに作られた記憶の上に成り立っているのではないか。 かつて自分が生み出した研究が、誰かの記憶を消し、誰かを冤罪に追いやった── その可能性に打ちのめされていた。 聞いてはいけない話を聞いてしまったのかもしれない。りかもまた、迷いを抱えたまま口を閉ざしていた。──どれほどの沈黙が続いただろうか。 先に口を開いたのは、りかだった。「……あなたに、話さなきゃいけないことがあります」 俯く想の隣で、彼女は静かに語り出した。 ──綾瀬りかの弟、優斗。 大学生だった。真面目で、優しくて、家族思いで、将来を嘱望されていた。 ある日、通学中に轢き逃げ事故に遭い、命を落とした。「でも……おかしかったんです」 捕まったのは、ごく普通のサラリーマン。物的証拠も揃っていて、裁判は早かった。 だが、彼だけが言い続けていた。「俺はやっていない。……何も覚えていない。なのに、なぜ記憶が“ある”んだって」 何よりも不可解だったのは── 弟が搬送された病院で、りかが見た“男”の姿だった。「その人……事故の犯人と、全然違う人で

  • ロスト・デイ   第十五話「欠けた記憶」

    ──記憶研究所・3年前「俺の……おかげ? どういう意味ですか?」 目の前には縛られた男──そして信頼していた中野教授。 想は混乱していた。自分がこの状況の“きっかけ”だというのか?「君が発見した認知症の治療法、これは──使い方次第で、大金になるんだよ」「……どういうことですか?」

  • ロスト・デイ   第九話「接触」

    ──想はついに、水曜日の異常行動を目の当たりにした。まったく身に覚えのない、記憶の片隅にも残らない、謎の外出。 ひとり残された喫茶店で、彼はうつむき、頭を抱えていた。「一体、どこに……行ってたんだ……」 すべては次の『水曜日』に明らかになる。だが、期待よりも、恐怖が先に立っていた。「これから、どうなってしまうんだろう…

  • ロスト・デイ   第八話「徘徊」

    ──土曜日・昼 水曜日の記憶が抜け落ちていたこと。そして、その日に会っていた謎の美女──綾瀬りかとの再会。 想は、確かな一歩を踏み出した実感を得ていた。「やっぱり、水曜日以外は忘れてない」 目の前の現実に記憶がちゃんと残っているというだけで、これほどまでに安心できるのか。 連絡先を交換し、彼女からは記憶を取り戻すための協力も申し出てくれた。

  • ロスト・デイ   第六話「追跡」

    ──金曜日・夜 神谷 想は、いつものように仕事を終えて帰宅したものの、ソファに腰を下ろすと深く溜息をついた。「……何も分からなかったな」 あれだけ期待して再生した水曜日の映像には、日常しか映っていなかった。 記憶はない。だが、何かが起きている。それは確実だった。「もう一回、病院行ってみるか……」&nb

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