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・Chapter(25) 今から、エッチするのか

last update Last Updated: 2025-07-08 20:21:56

リビングにまで聞こえてくる、和田マネージャーのシャワーを浴びる音。

その音で緊張が再び高まった瑞穂は、テレビのボリュームを2つ上げる事で高まった緊張を抑えようと試みた。

「ダメだ……、何か他に面白いテレビやってないかな」

瑞穂は深々と吐息を洩らすと、風呂前の和田マネージャーと同じくリモコンでチャンネルを次々と変え、ザッピングをする。

が、瑞穂の興味を惹く番組は無く、諦めた瑞穂はテレビを消すと、ダイブするようにベッドへと突っ伏した。

──今から、和田マネージャーとエッチするのか。

浴室から聞こえてくるシャワー音を耳にしながら、瑞穂は枕に顔を埋める。

和田マネージャーは、どんなセックスをするのか。

そして、そのセックスに自分はどう応えるべきなのか。

他の男との交接の際、義務のように行っていたオーラルセックスも、和田マネージャーを満足させる為にちゃんと行うべきなのだろうか。

思考を巡らせた後、瑞穂はテレビに背を向け、おそらくその向こうに広がっているであろう夜景を夢想しながら、閉めきられた窓に身体を向けた。

形だけ、といった感じで付けられた、モスグリーンのカーテン。

性行為だけが目的だからか、目の前のオフホワイトの壁は日々の暮らしによって汚される事なく、綺麗に塗装されたままである。

枕元には、おそらく和田マネージャーが使ってくれるであろう、避妊具が入れられた陳腐なハート型の容器が置かれている。

「ヤバいー」

高まったテンションから、瑞穂はクロールのように足をバタバタとさせた。

そして、恋愛感情を持った人間とのセックスとは、ここまで気分を高揚させるのかと瑞穂は改めて思う。

もちろん、瑞穂は処女ではない。

セックス自体は今年に入って経験はしているし、恋愛感情を持った人間とのセックスも、数年前にはなるが同棲していた彼氏と幾度もしていた。

しかし、久方ぶりの「恋愛感情を持った人間とのセックス」は、恋に恋をしている中高生時のような甘酸っぱい感情を、瑞穂に対して抱かせていた。

「喉カラカラだ、お茶飲もう……」

瑞穂は立ち上がると、コンビニで買った緑茶を二口程飲む。

その時、身体を洗い終えたのか、先程まで耳に聞こえていたシャワー音が消えた。

そろそろ、和田マネージャーが浴室から出てくると思った瑞穂は、緑茶のペットボトルをテーブルの上に置くと、閉めきられた窓に向き合う形でベッドに横になる
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