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第2話

Author: ユタ
どうやって病院まで辿り着いたのか、自分でも全く覚えていなかった。

道中、私のスマホは狂ったように鳴り続けていた。

あの忌まわしい写真が、ウイルスのように次々と拡散されているのだ。

だが、そんなことはもうどうでもよかった。

頭の中にはただ一つの想いしかなかった。

お母さん、死なないで、と。

救急救命室の赤いランプが点灯している。

私は力なく廊下のベンチに崩れ落ちた。

ふと、七年前のことを思い出した。

当時の智司は苦学生で、冬でも薄っぺらいジャケット一枚しか持っておらず、学食では常に一番安い定食を選んでいた。

私が彼を気に掛けるようになったのは、彼が図書館の隅で、水を飲みながらコッペパンをかじっていたからだ。

私が自分のお弁当をそっと彼の前に差し出すと、彼は長い間呆然とし、耳を真っ赤に染めた。

その後、私は彼が奨学金をもらえるよう手助けし、割のいいアルバイトも紹介してやった。

事情を知った母は、迷うことなくまとまったお金を振り込んでくれた。

「あの子の学費は、全部私が出してあげるわ」

やがて私たちは付き合い始めた。

卒業の年、智司はついに実家の黒崎家から見つけ出された。

彼は幼い頃に誘拐され、ずっと行方不明になっていた黒崎家の末っ子だったのだ。

これで彼もついに報われたのだと、自分のことのように一晩中嬉し泣きをした。

だが、黒崎家は彼が私と付き合い続けることを決して許さなかった。

周りの人間は皆、彼が財閥の御曹司として返り咲いたのだから、私のようなごく普通な女など真っ先に捨てられるだろうと思っていた。

しかし、彼は私を捨てなかった。

彼は黒崎家の本邸の前に、三日三晩ひざまずいて懇願したのだ。

私が駆けつけた時、彼の両膝はひどく腫れ上がり、立ち上がることもできない状態だった。

それでも彼は私に向けて笑ってくれた。

「初、俺は絶対にお前を手放したりしないからな」

一番辛い時期を乗り越えたのだから、これからは幸せな日々が待っているのだと思っていた。

だがその後、すべてが変わってしまった。

彼はどんどん忙しくなり、黒崎家の後継者として学ぶべきことがあまりにも多く、会社の仕事が少しずつ彼を押し潰していった。

卒業したら結婚するという約束は、一年後、また一年後と先延ばしにされていった。

私は彼を理解し、ずっと耐えてきた。

そして、心奈が現れた。

彼女は黒崎家と昔から付き合いのある名家の令嬢で、特例として智司の会社にコネ入社してきたのだ。

彼女は口を開けば、「智司さんは私にとって実のお兄ちゃんみたいな存在なの」と言っていた。

だが私には分かっていた。

彼女が智司を見る目は、決して「兄」を見るそれではないことだ。

二人はいつも深夜まで二人きりで過ごし、一緒に出張し、同じ部屋に泊まることさえあった。

私がそのことを何度か咎めると、智司は私が気にしすぎだと呆れ顔で言った。

「心奈にはちゃんとした婚約者がいるんだ。

お前、何を馬鹿な妄想をしているんだよ!」

その後、心奈の婚約者がわざわざ私を訪ねてきた。

彼女がマリッジブルーに陥っており、うつ病が悪化しているのではないかと心配だから、心理カウンセリングをしてやってほしいと頼んできた。

だが、診察の結果、彼女がうつ病など患っていないことが判明し、婚約者はその場で婚約を破棄した。

私は、智司もこれで彼女の本当の性根に気づいてくれるものとばかり思っていた。

だが、あの日を境に、智司が私を見る目つきは完全に変わってしまったのだ。

「初、お前はそんなに心奈のことが目障りなのか?」

まさか彼が心奈のために私をこんなふうに陥れるなんて……

先ほどの光景を思い出すたび、心臓が再びギリリと痛み出した。

急救救命室のドアが勢いよく開き、私の意識は急激に現実に引き戻された。

医者がマスクを外して言った。

「とりあえず状態は安定しましたが、心不全の進行が予想以上に早く、一ヶ月以内に心臓移植を行わなければ、命の保証は……」

最後まで言われなくても、意味は痛いほど理解できた。

かつて母の心不全が初めて発覚した時、智司は私の手を固く握り、心底痛ましそうな目をしてこう誓ってくれたのだ。

「初、安心してくれ。俺が絶対にドナーを見つけ出してみせるから」

私は震える手でスマホを取り出し、智司に電話をかけた。

私の声はひどく震えていた。

「智司、ドナーは見つかった?」

電話の向こうで、数秒の沈黙が流れた。

「ああ、見つかったよ」

心臓が大きく跳ね上がり、安堵の涙が止めどなく溢れ出した。

「本当?そのドナーは……」

「ただし、一つ条件がある」

彼が冷酷な声で私の言葉を遮った。

私は呆然とした。言葉を返す間もなく、彼が言葉を続けた。

「今すぐ謝罪文を出せ。

お前が心奈に嫉妬し、彼女のうつ病が嘘だとわざとデッチ上げたとな。

そうすれば、ドナーの心臓はお前のものだ」

彼はわずかに間を置き、続けた。

「一時間以内に自分で文章を考えてSNSに投稿しろ。

さもなければ……ドナーの提供を正式にキャンセルさせる」

私はその場に完全に凍りつき、骨の髄まで冷え切っていくのを感じた。

かつて、黒崎家の前で三日三晩ひざまずき、一生私を守り抜くと誓ってくれたあの男が、今、私の母の命を盾に取り、私が犯してもいない罪を被るよう強要しているのだ。

「智司……あの時、うちの母さんの支援がなければ、あなたは大学を卒業することすらできなかったかもしれないのよ」

だが電話の向こうの智司の声は、あくまで氷のように冷たかった。

「あの時出してもらった学費なら、とっくの昔に返したはずだ。

この数年間、俺がお前たちにどれだけの金を注ぎ込んできたか、自分でも分かっているだろう?

さあ、どうする?」

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