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第239話

Auteur: 北野 艾
一生かかっても埋められない劣等感を抱いているくせに、涼しい顔を装っているだけなんじゃないの?

もはや詩織など眼中にない。今、志帆が気にするのは海雲の反応だけだ。

彼がこれまで自分を冷遇していたのは、きっと自分の経歴を知らなかったからに違いない。

柊也の金目当てで群がる有象無象の女たちと一緒くたにしていたのだろう。

けれど今、局長が全てを代弁してくれた。これだけの才女だと分かれば、さすがの海雲も態度を改めるはずだ。

「港の再開発は、局長が担当でしたか」海雲の関心は、まるで志帆に向いていなかった。

「ええ、ずっと私が管轄しております。『エイジア』さんが落札する公算が高いですし、柏木さんの提案もなかなかのものでしてね」

局長が太鼓判を押しても、海雲の反応は冷ややかだ。「そうですか。では、私はこれで」

褒めるどころか、視線すら合わせようとしない。

背を向ける海雲に、志帆は焦って声を上げた。「おじ様……」

この距離で聞こえないはずがない。

それでも海雲は足を止めず、詩織に支えられながら遠ざかっていく。

徹頭徹尾、無視を貫かれたのだ。

志帆はすがるような目で柊也を見上げた
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