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第284話

Auteur: 北野 艾
詩織と密はロビーで智也を待ち、合流してから三人でゲートへ向かった。

ちょうど出社ラッシュの時間帯だ。エレベーターホールは黒山の人だかりで、乗るまでに相当待たされるのは目に見えている。

もっとも、会議の時間にはまだ余裕があった。三人も大人しく列の最後尾に並ぶことにした。

五分ほど経った頃だろうか。背後の人波がモーゼの海割れのように左右へ分かれ、ざわつき始めた。

前に並んでいた女性社員が、慌てて詩織の腕を引いて脇へ寄せる。「ちょっと、退いて!通路空けて!『奥様』のお通りよ」

まるで王族のパレードだ。

智也はいぶかしげに眉をひそめた。

ここはエイジア・ハイテックの本社ビルであり、ここにいるのは彼らの社員たちだ。

その彼らが『奥様』と呼ぶ人物といえば……

答えが脳裏に浮かぶより早く、その姿が視界に入ってきた。柏木志帆だ。

秘書とアシスタントを従え、社員たちが恭しく開けた花道を、我が物顔で歩いてくる。

彼女は迷わず社長専用エレベーターの前まで進み、指紋認証パネルに指をかざした。解錠音が響くと、彼女はようやく一般エレベーターの列に並ぶ詩織たちへと視線を向け、優越感に浸った笑み
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