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第365話

Author: 北野 艾
彼は源治に拒絶されたことを思い出していた。

あれほど鮮やかに、まるで詩織以外はあり得ないと言わんばかりの態度で。

最大の誠意を見せたはずなのに、源治の心は微動だにしなかった。

悠人はどうにも納得がいかず、去り際の源治に単刀直入に問い質していた。「真田さんは、江崎社長がいるから我々との提携を拒むのですか」

源治の答えは明快だった。「その通りです」

「あなたは公私混同をしない方だと思っていましたが」

「無論です」源治は誠実に答えた。「しかし、相手にもよります。江崎さんは常に起業家の視点から問題を捉えていました。対して神宮寺さんと柏木さんは、終始投資家としての視点しか持っていない。それが決定的な違いです。起業家が必要としているのは、単なる資金援助だけではないんですよ」

源治の意思は固く、悠人は選択を迫られていた。

だが、彼には志帆をこのプロジェクトから外すという選択肢はなかった。

ホテルに戻った悠人が次の一手を思案していると、父親の神宮寺悠玄(じんぐうじ ゆうげん)から電話が入った。

明日午後に江ノ本市に到着する。その後、高村静行教授のもとへ挨拶に行くので同行せよとのことだった。

悠人は承諾した。

……

その夜、詩織のもとに百合子から連絡が入った。事業計画書に目を通し、大いに満足したという。

さらに彼女は、あんな退屈な書類をどうやってこれほど面白く、人の心を打つものに仕上げたのかと尋ねてきた。

詩織は少し考え、こう答えた。「ある人から、事業計画書は『ラブレター』だと思って書けと教わったの」

百合子はその表現を初めて耳にしたと言い、感嘆とともに深く同意した。

確かに、事業計画書の目的は投資家の心を動かし、プロジェクトに興味を持たせることにある。

意中の女性に振り向いてもらうためにラブレターを書くように、相手の琴線に触れる内容でなければ、選ばれることはないのだ。

百合子と来週の買収案件についての面談を取り付けた直後、今度は京介から着信があった。

明日、高村教授のもとへ同行できるかという打診だ。

詩織は即答した。たとえ時間がなくとも、無理にでも作るつもりだった。

「じゃあ、明日迎えに行くよ」

「うん、待ってる」

翌日、京介は時間通りに華栄の本社ビル前に現れた。その手には一束のひまわりが抱えられている。

「この近くで花屋を見かけて
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