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第251話

Auteur: marimo
last update Date de publication: 2026-08-10 20:56:22

神崎グローバルトレーディングのビルを出たところで、神山雪乃は息子の康太の手を握ったまま立ち尽くしていた。

高層ビルの前を行き交う人々は、そんな二人を気にすることなく足早に通り過ぎていく。

先ほどの玲子との対峙で、雪乃は精いっぱい強がったつもりだった。

玲子の前では一歩も引かず、冷静な態度を崩さなかった。

しかし、建物を出てしまった今になって、張り詰めていた気持ちが一気に緩んでいた。

胸の奥が苦しい。

足にも力が入らない。

康太が雪乃の顔を見つめて言う。

「お母さん、寒いの?」

その声に、雪乃はハッとした。

気づくと、体中が震えていた。

寒いわけではない。

玲子の言葉や、あの書類、そしてこれから康太を守っていかなければならないという重圧が、今になって一気に押し寄せてきたのだ。

それでも、康太の前で弱いところを見せるわけにはいかなかった。

雪乃は康太の手を握りなおすと、

「そんなことないよ」

と微笑み、歩き出した。

康太は少し不思議そうな顔をしたものの、母親の手を握り返し、その隣を歩いていく。

二人がビルの前から歩き出した直後、黒塗りの高級車が神崎トレーディングの前に止まった。

低く静か
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    神崎グローバルトレーディングのビルを出たところで、神山雪乃は息子の康太の手を握ったまま立ち尽くしていた。高層ビルの前を行き交う人々は、そんな二人を気にすることなく足早に通り過ぎていく。先ほどの玲子との対峙で、雪乃は精いっぱい強がったつもりだった。玲子の前では一歩も引かず、冷静な態度を崩さなかった。しかし、建物を出てしまった今になって、張り詰めていた気持ちが一気に緩んでいた。胸の奥が苦しい。足にも力が入らない。康太が雪乃の顔を見つめて言う。「お母さん、寒いの?」その声に、雪乃はハッとした。気づくと、体中が震えていた。寒いわけではない。玲子の言葉や、あの書類、そしてこれから康太を守っていかなければならないという重圧が、今になって一気に押し寄せてきたのだ。それでも、康太の前で弱いところを見せるわけにはいかなかった。雪乃は康太の手を握りなおすと、「そんなことないよ」と微笑み、歩き出した。康太は少し不思議そうな顔をしたものの、母親の手を握り返し、その隣を歩いていく。二人がビルの前から歩き出した直後、黒塗りの高級車が神崎トレーディングの前に止まった。低く静かなエンジン音が響き、車体がゆっくりと停止する。雪乃は何気なく振り返る。運転手が高級車の後部座席のドアを開けていた。そこから自分より幾分か年上の、高級スーツを身にまとった紳士が降りてくる。背筋は真っ直ぐ伸び、落ち着いた身のこなしには、長年にわたって築き上げてきた地位を感じさせるものがあった。雪乃はその紳士の姿を、固まったまま見つめていた。その男性も雪乃の視線に気づき、二人の目が合った。ほんの一瞬だった。それでも雪乃には、時間が止まったように感じられた。紳士が一瞬息を飲むのがわかった。その表情に、ほんのわずかな動揺が浮かぶ。そして雪乃から目を離し、康太の姿を見た。その眼には少しだけ優しさが宿った気がした。康太は何も知らず、母親の手を握ったまま、その男性を見ている。男性はそんな康太の姿をしばらく見つめていた。だが、一瞬ののち、男性は目を反らすと、足早にビルの中へと去って行った。雪乃はその様子をみていたが、やがてフッと笑うと、「行きましょう」そう言い、康太の手を引っ張ってその場を後にした。康太は母親に引かれるまま歩き出す。雪乃もまた、振り返ることなく前を

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