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第2話

Autor: ちょうどいい
今度の三連休は、義母の藤本明美(ふじもと あけみ)のところへ新年の挨拶に行くことになっている。

私が自分と杏の荷物を準備をしていると、朔が申し訳なさそうな顔でやって来た。

「中山に用事を頼まれてさ。悪いけど、杏と二人でタクシー捕まえて母さんのところに行っててくれないか。

遅くても2時間後にはそっちに合流できるから。帰りはちゃんと俺の車で帰ろう」

中山仁(なかやま じん)というのは、朔の大学時代の友人だ。

朔は私に知られて都合が悪いことがあると、いつも仁の名前を言い訳に使った。

私が黙っているのを見て、朔はだんだん焦りだし、一方的に話を打ち切った。

「じゃあ、そういうことで」

そのまま背を向けて出て行こうとする朔を呼び止めると、彼はうんざりした様子で振り返った。

「瑠奈、引き止めても無駄だ。今日は絶対に行かないといけないんだ」

そのピリピリした様子に呆れながら、私は玄関に置いてある荷物を指さした。

「忘れ物があるって、言いたかっただけよ。

この二つは中山さんへの手土産で、残りはお母さんへのだから、車に運んでおいて」

朔は何とも言えない顔で私を数秒見つめた後、荷物を抱えて出て行った。

元日の朝、タクシーを捕まえるのは簡単ではなかった。

幸い、行き先が似た近所の人が、藤本家の実家の近くまで送ってくれた。

暗くて寒い冬の日で、地面は小雨で濡れていた。

気をつけて歩いていたのに、足を滑らせて転んでしまった。幸い、杏は無事だった。

ふらつきながら朔の実家に着くと、明美にひどく叱られた。

「朔はどこ?自分の奥さんと子供の送り迎えもしないなんて、どういうつもり?

あなたも人が良すぎるわよ。こんな寒い日に、無理して来なくたっていいのに!」

明美は私の手当てをしながら、杏を抱いて隣に座った。

「正直に言いなさい。朔と何かあったんでしょ?」

私は笑顔で何でもないと説明した。

明美はそんな私をちらりと見てから、朔に電話をかけた。

それでも朔はすぐには帰ってこなかった。

彼が帰ってきたのは夕方の5時で、あろうことか綾子を連れていた。

綾子は私には目もくれず、にっこりと笑って、明美だけに挨拶した。

「明美さん、私一人で行くあてもなくて……今日は厚かましくも、夕飯をごちそうになりに来ちゃいました」

明美は不機嫌そうな顔で、朔に言った。

「いったい誰を連れてきたの。人の家に来て挨拶もできない人なの?」

綾子は顔をこわばらせ、朔をちらりと見ると、いやいや私に挨拶をした。

明美はふんと鼻を鳴らすと、私を座らせて、台所へ向かった。

私は二人に会釈して、足を引きずりながら杏のいる部屋に戻った。

しばらくして、朔がドアをノックし、話があると言ってきた。

彼は傷がついた私の手のひらを見つめながら、心から申し訳なさそうに謝った。

「ごめん。俺がちゃんと送るべきだった」

その仕草に私はびくっとして、急いで手を引っ込めた。

「大丈夫よ、大した怪我じゃないから」

朔は手をあげたまま、長い間黙り込んでいた。私が何か言い訳を見つけてその場から逃げ出したいと思うほど、長い時間だった。

ようやく朔が口を開いたと思ったら、綾子を連れてきた理由を語り始めた。

「来る途中で綾子から電話があったんだ。年始に一人で家にいるって言うから、一緒に連れてきただけだ。入江先生は俺の恩師でもあるからな」

ベッドで起き上がろうとしている杏をちらりと見て、私は生返事をした。

「わかってるわ。彼女はあなたの恩師の娘で、妹のようなものでしょ。その入江先生が亡くなる前に面倒を見てやってくれって頼んだしね。お正月に食事くらい、当たり前じゃない」

朔と言い合いになる度、彼はいつもその言葉で私を言いくるめてくるから、もう目をつぶっていても暗唱できるくらいだった。

でも、いざ私がその言葉をそっくりそのまま返すと、朔は面白くなさそうな顔をした。彼は突然、声を荒げた。

「怒ってないなら、なんで怪我したって俺に言わないんだ?

お前は痛がりで、髪でちょっと指を切っただけでも泣いてたじゃないか。なのに今日は転んでも、俺に教えもしない!」

私は頭を抱えたくなった。

今さら過去の話を蒸し返して、何をしたいのか分からなかった。

きっと朔は、彼自身が昔したことなんて忘れてしまったのだろう。

あの頃、両親を亡くしたばかりの綾子は海外から帰国することになった。

朔は特に綾子を心配し、彼女の面倒を見ていた。

私はその様子が気に食わなかったけれど、事情が事情で、口を出すこともできなかった。

ある日、友人たちと食事をして店から出たところ、道端ではしゃいで走ってきた子供たちが、自分たちの集まりにぶつかりそうになった。

朔はその時とっさに綾子をかばい、私は看板にぶつかって腰を痛めてしまった。

私は3日間入院し、朔はその間ずっと付き添ってくれた。

朔の行動に腹を立てていた私は、腹いせに、彼に3日間綾子との連絡を禁止した。

その場所での、朔の氷のように冷たい声は今でも忘れられない。

「誰かと話すことすら駄目なのか?お前のそれは異常な束縛だ。

ちょっとぶつかっただけで、もう歩けるじゃないか。大げさに騒ぐなよ」

その時の私は怒りのあまり、朔と大喧嘩した。

でも、今となってはもう喧嘩する気にもなれなかった。

これ以上話すのは、ただ時間の無駄だとしか感じられなかったからだ。

私は黙り込んだまま、何も言わなかった。

朔がゆっくりと近づいてきて、声を低めて言った。

「俺と綾子はただの友達だ。昔からの付き合いで、もし本当にその気があったら、とっくの昔に……」

彼の言葉を遮るように、部屋の奥で杏が起きたのかわっと泣き始めた。

私はすぐ朔の隣を離れて、早足で杏の様子を見に行った。

「杏、大丈夫よ。ママが来たからね」
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