Masuk湊斗との思い出を振り返っていた瀬奈は、ある大きな木の前で足を止めた。
「……昔と何も変わっていないわね」
瀬奈は子供の頃、湊斗とよくこの木に登って遊んでいた。昔から運動神経が良かった湊斗に、瀬奈はまるで追いつくことができなかった。
そのとき、彼はいつも瀬奈が来るまで待ってくれていて――
そんな優しい湊斗はもうどこにもいなかった。
この木は何も変わっていないのに、どうして私たちはこんなにも変わってしまったのだろう。瀬奈はそう思いながら、木を見上げた。
夏には見事なまでに花を咲かせているが、冬である今は枯れ果て、葉一つ見当たらない。
それがまるで、今の瀬奈の心を表しているようだった。最初から、花を咲かせたことなんて一度もなかったが。
「奥様……」
背後に控えていた一馬が心配そうに声をかけた。
「ここはね、私と湊斗がよく遊んでいた場所なの」
「ええ、存じております……私は昔から社長についておりましたから」
一馬は湊斗の七つ年上で、彼の幼馴染でもあった。湊斗にとっては最も信頼のおける相手で、兄のような存在だった。当然、瀬奈も昔から彼のことを知っていた。
「付き合わせて悪かったわね。もう帰りましょう」
瀬奈は一馬と共に来た道を戻った。二人でたくさん遊んだこの公園を歩いていると、走馬灯のように彼との思い出が頭に流れた。
転んで膝を擦りむいたときに手を差し伸べてくれた彼、足の遅い瀬奈を気遣って少し先で待ってくれていた彼、父親に叱られて泣いたときに優しく慰めてくれた彼の姿が鮮明に浮かんだ。
しかし、今ではどれも何の意味もないものだった。
彼は変わってしまった。理由はわからないが、瀬奈を酷く嫌うようになったのだ。あまりにも突然のことだった。
「長かったなぁ……」
今年で結婚生活も二十年を迎えようとしている。長いようで短い二十年だった。瀬奈も湊斗ももう三十八歳だ。
そんな彼は歳をとってもなお美貌は健在で、今でも多くの女性を惑わせていた。神宮司財閥のトップという地位もあり、湊斗の元には未だに美しい女性たちが寄ってくる。
本邸から夫の女性関係の噂を聞くのは何よりも辛いことだった。
瀬奈は家までの道のりを一馬と共に歩いている最中、前から見知った顔が歩いてきたことに気が付いた。
「誰かと思ったら、湊斗の奥さんではありませんか」
「……沙織さん」
両親が亡くなったときからずっと湊斗の傍を守り続けた、彼の最愛の嶋田沙織(しまださおり)だった。
「久しぶりですね、奥様」
「……ええ、そうですね」
沙織は朗らかな笑みを浮かべたが、目は笑っていなかった。神宮司財閥では、お飾りの瀬奈ではなくもはや彼女が湊斗の妻として幅を利かせているようだ。
そして沙織と湊斗との間には二人の子供がいた。湊斗は最も愛する沙織との子を後継者として育てているようだ。
「どちらへ行かれていたんですか?」
「散歩をしていました」
「そうだったんですね。奥様は子供もいないので普段何をしているのかずっと気になっていたんです」
「……」
瀬奈は何も言うことができなかった。いくら彼の正式な妻であるとはいえ、子供がいない時点で私の勝ちだと言われているようだった。
しかし、ここで沙織と争ったところで意味がない。湊斗の気持ちが沙織にある時点で、瀬奈の負けは確定しているようなものだったから。
「奥様は自分の立場を理解しているようですね、湊斗の妻が出来た方で私も助かりました」
瀬奈は湊斗の女性関係にこれまで口を出したことがなかった。彼の妻である以上、苦言を呈してもいいはずなのに。彼女はあえてそれをしなかった。
初日に言われた約束を破って彼に嫌われることを恐れていたからだろう。彼女はいつだって湊斗をどうにかして振り向かせようとしていた。しかし、今はそうする必要もなかった。
彼女は湊斗の最愛を前に、ゆっくりと口を開いた。
「――私、湊斗とは離婚するつもりなんです」
「お、奥様……!?」
驚いた一馬が声を上げ、沙織は目を見開いた。
「沙織さんにすべてお譲りしようと思っているんです……」
「……驚きました、奥様が湊斗から離れる決意をするだなんて」
沙織の表情は変わらなかった。
「私も人間ですから。手に入らないものをいつまでも欲しているわけにはいきません」
「……よく決断しましたね」
そう言うと、彼女は瀬奈に一歩近づいた。
「――二十年間、ご苦労様でした」
「……」
その言葉に瀬奈は何だか泣きそうになった。やっと解放されるのだという嬉しさか、それとも最後まで彼に相手にしてもらえなかった惨めさからくるものなのかわからない。
「……どうか、湊斗をよろしくお願いしますね。沙織さん」
「……」
瀬奈はそれだけ言うと、急いで邸宅の中へ入って行った。
そして部屋に入って扉を閉めると、彼女は嗚咽を上げて泣いた。
警察署に連行された沙織は、警察官による取り調べを受けている最中だった。取り調べ中の彼女の態度は、傲岸不遜で警官を見下している。腕と足を組み、取調室の椅子でふんぞり返っていた。彼女はハァ……とため息をつくと、呆れたように言った。「だから、私はやっていないって言ってるでしょう?」「証拠があるんだ。言い逃れできないぞ」警官はそんな彼女に怒りを募らせた。何の罪もない一人の女性を殺害しようとしただけではなく、最後まで罪を認めないつもりか。「証拠って何のことよ?どうせくだらない状況証拠か何かでしょう?」沙織は絶体絶命の状況であるにもかかわらず、動じる素振りも見せなかった。一体どこからそんな余裕が来ているのかと、警官たちは彼女の精神面の強さに驚いた。「実行犯たちから証言が取れている。お前に命令されてやったと、あの男が証言した」「……減刑したいがための嘘だって可能性もあるでしょう?そんなどうしようもない犯罪者の言葉を、警察は何の迷いもなく信じるわけ?」愚かね―――と沙織は警官たちを嘲笑った。明らかに彼らを馬鹿にしているようないやらしい笑み。見た目こそ美しいが、内面はまるで魔女のようだった。しかし、唯一の取り柄であろう外見も、今は全く綺麗には見えなかった。「お前……いい加減にしろよ……」「私は何もしていないわ。弁護士を呼んでちょうだい。必ず無罪を勝ち取ってみせるから」沙織が無罪になる可能性はないに等しい。それなのに、彼女は自分が勝つことを確信しているようだった。一体何を企んでいるんだ?警官たちは底知れない彼女の恐ろしさを感じた。沙織は学歴こそないが、決して馬鹿というわけではなかった。むしろ悪事においては知恵の働く女だった。そんな彼女は、今何を考えているのだろうか。全く想像がつかなかった。(……このままいけば、私は加害者から一転、被害者として世間に名が知られることになるわ)彼女が心の中でとんでもない計画を立てていることなど、当然警官たちは知らなかった。美しい薔薇には棘がある。沙織の場合は棘ではなく、猛毒だった。彼女の持つ毒は近いうちに警察官たちを蝕むこととなる。「さぁ、早く取り調べの続きをしましょう?私もできるだけすぐ終わらせたいから」「……」ニッコリと笑った沙織に、彼らの中の不信感は強まることとなった。
瀬奈は静香からスマートフォンを受け取り、口を開いた。「も、もしもし……湊斗……」「……ああ、瀬奈」スマートフォンを耳に当てると、湊斗の声がハッキリと聞こえた。何だかいつもより声が低い。疲れているのだろうか。些細な声の変化にすら気付くほど、瀬奈は湊斗のことを愛していた。久々の会話のせいか、胸がドキドキする。瀬奈は何とか言葉を紡いだ。「今日のニュース見たんだけど……驚いちゃった」「ああ……沙織のことか?」湊斗はいつもと変わらない声色で返事をした。その反応で、瀬奈は彼が沙織を追い詰めたのだと確信した。「湊斗、あなたが動いてくれたんでしょう?ありがとう、あの一件はてっきり諦めたのかと思っていたわ」「…………諦める?」そのとき、湊斗の声が途端に低くなった。不快に感じさせてしまっただろうかと、彼女は不安になった。しかし、電話の向こうから聞こえてきたのは、予想外の言葉だった。「―――諦めるなんて、そんなことするわけないだろ。お前を傷付けた人間を、俺が生かしておくとでも?」「湊斗……」湊斗は力強い口調で言葉を続けた。「たとえ、犯人がこの世界のどこにいようとも―――どんなに強い権力を持っていようとも、地獄の果てまで追いかけるだけだ」「…………そこまで私を思ってくれていたなんて、嬉しいわ」瀬奈は嬉しそうに微笑んだ。湊斗は何を今さら――と言いながらクスッと笑った。顔を上げると、一連の会話を聞いていた静香がニヤニヤしながら瀬奈を見ている。こんな付き合いたてのカップルみたいな会話を姉に聞かれるとは、何とも恥ずかしい。「今は……仕事中かしら?」「ん、いや……もう終わった。疲れてるけど、今は家でゆっくりしてるよ」「そう……」聞きたいことが山ほどあったけど、電話で話すのは違うのではないか。様々な思いが交錯し、結局今は何も聞くことができなかった。ただ、言えることは一つだけだった。「―――湊斗、しっかり休んで疲れを取ってね。帰ったら元気な姿のあなたに会えるのを楽しみにしているわ」「ああ、お前も風邪引くことのないようにな」瀬奈はもちろんと頷いた。彼とこんなにも穏やかな会話ができるのは、ずいぶんと久しぶりだった。「……おやすみ、湊斗」「おやすみ」通話を終えると、瀬奈は嬉しそうに静香のほうを向いた。「姉さん、湊斗が……」振り向いた先に見えた姉の姿
その日の夜、瀬奈の元にあるニュースが舞い込んできた。「瀬奈、大変よ」「どうかしたの?姉さん」切羽詰まった様子で瀬奈に声をかけたのは、ちょうど暁家に泊まっている静香だった。彼女は父には挨拶していないが、数日の間瀬奈と共に泰西の暮らす別邸に宿泊することとなっている。静香は自身のスマートフォンの画面を瀬奈に見せた。そこに映っていたのは、ネットニュースだった。ちょうど今日の昼頃に起きたものだった。『青島区で起きた女性誘拐監禁事件・容疑者の女を逮捕』見出しを黙読した瀬奈は、どこかで聞いたことがあるような気がして考え込んだ。彼女が結論に辿り着くより先に、静香が答え合わせをした。「―――沙織が捕まったそうよ」「な、何ですって……!?」それは、瀬奈にとって衝撃的なものだった。瀬奈は慌てて自分のスマートフォンでネットの記事を確認した。どうやらかなり話題になっているニュースで、既にSNSで記事が拡散されていた。「本当だわ……嶋田沙織と書いてある……」そこに書かれていた名前は間違いなく沙織のもので、黒川区在住の無職という点も彼女と完全一致していた。さらに、SNSには沙織が捕まった瞬間の様子が動画で拡散されていた。彼女がみっともなく警察官に暴言を吐く姿まで、世間に知れ渡ることとなったのである。犯罪者として捕まったうえに、そのような姿までさらされてしまうとは、何とも憐れだった。呆然とその動画を眺めていた瀬奈は、ポツリと呟いた。「捜査に進展がなくて捕まらないと思っていたのに……」「…………きっとアイツよ、アイツがやってくれたのよ」静香は瀬奈の手を取り、沙織の逮捕を喜んだ。当然、瀬奈も嬉しかったが、突然のことで理解が追い付かなかった。「姉さん……」「何よ、なかなかやるじゃない!やっぱりアイツは誰よりもあなたのことを思っているのよ!」彼女の言うアイツが湊斗であることが、瀬奈にはすぐにわかった。たしかに、急に沙織が捕まったとなれば湊斗以外には考えられない。「―――そうだ、瀬奈。ちょうどいい機会だし、アイツに電話してみたら?」「え、み、湊斗に?電話?」静香の提案に、瀬奈は困惑した。前に電話で冷たくされたときのことが思い出される。狼狽える瀬奈のスマートフォンを取った静香は、勝手に湊斗に電話をかけた。「ほらほら、愛する旦那にお礼の一つくらい言わないと!」
沙織はまるで罪人のように警察に腕を掴まれ、家の外に引きずり出された。パトカーが家の周りに集まるという異様な光景に、外には人だかりができていた。「……沙織さんが?嘘でしょう?」「そんな……彼女が一体何の罪を犯したというんだ」近隣住民たちは沙織のことをよく知っていた。元々、黒川区で彼女のことを知らない者などほとんどいない。近所に住んでいるのならなおさらだ。沙織は外面だけは取り繕っていたため、美しく愛想が良いことで評判だった。そんな彼女が警察に連れていかれる姿は、人々にとって衝撃だった。黒川区は裕福な家庭が多い都会だが、治安はあまり良いとは言えず、事件が起きるのはよくあることだった。しかし、犯人が美しい女性ともなれば注目を集めるのも当然である。(……みんなが私を見ているわ。噂が立つのだけは避けないと)沙織は近隣住民たちからの視線を避けるように、下を向いた。いつものように弱々しく振舞うことで、自身が被害者であるように見せるつもりだった。しかし、追い詰められたこの状況では意識していても本当の姿が出てしまう。沙織はパトカーに乗せられる際、警官の一人に頭を掴まれた。毎日手入れを欠かさない美しい髪の毛を見ず知らずの男に触られ、彼女は不快感を隠せなかった。「ちょっと、乱暴にしないでよ!」「……」犯罪者が何を言っているんだ――とでも言うかのように、冷たい目。彼女の美貌など、既に本当の姿を知っている警官たち相手には何の役にも立たなかった。彼女を軽蔑している若い警察官は、短く命じた。「さっさと乗れ」一回り以上年下であるにもかかわらず、なんて失礼な言い方。頭に血が上った沙織は思わず反論していた。「何よその言い方!私が釈放されたら、アンタたち全員皆殺しにしてやるわ!」「………」我に返ったときには、既に遅かった。普段の彼女からは想像もつかない暴言を吐いたことで、一部始終を見ていた近隣住民たちの視線が厳しいものへと変化した。「沙織さんがあんな言葉を使うなんて……」「やはり本当は悪人で、何らかの罪を犯して捕まってしまったのだろう」最初は何かの間違いだと思っていた近隣住民たちも、先ほどの暴言で考えを変えたようだった。沙織は羞恥で顔を真っ赤にしながらも、パトカーに乗り込んだ。突然大人しくなった彼女は、諦めたように車内にいる警官に向かって呟いた。「……さっさ
湊斗はここ数日間の出来事を振り返った。瀬奈と里亜がいない屋敷で、一人寂しく過ごすのはなかなかに辛いものがあった。しかし、彼女を危険から遠ざけたいと思っていたため、帰省を反対することができなかった。「それももう終わるんだな……長かったな……」全て終わった――とでも言いたそうに強張っていた表情を緩めた湊斗を、一馬がからかうように声をかけた。「まぁ、終わったとしても瀬奈ちゃんがいつ実家から帰ってくるかわからないけどな。もしかするとこのまま永遠にってことも……」「……お前、一発殴られたいか?」湊斗の身体から放たれる冷気を感じ取り、一馬は慌てて首を横に振った。「じょ、冗談だよ冗談!ちょっと場を明るくしようと思っただけで」「二度とくだらない冗談を言うな」湊斗の忠告に、一馬はわかったわかったと何とか彼を宥めた。「………ところで、子供たち二人は保護してあるんだな?」「ああ、沙織はあの子たちに悪影響を及ぼしてしまうだろうし……今は別の場所で暮らしてる」百合子と愛斗は、湊斗の計らいで今はベビーシッターの家にいる。いくら毒親だったとはいえ、血の繋がった母親が捕まるところを見るのは辛いだろう。そのような配慮からだった。「……今頃、沙織の家に警官が来ているはずだ。アイツに裁きが下る日も近いだろう」***湊斗の言う通り、沙織の家の前にはパトカーが停まっていた。警察官だけではなく、刑事までが彼女の家に集結していた。「ちょ、ちょっと何なのよ!」「――嶋田沙織さんですね?署まで同行願います」自身の家に押しかけた大量の警官を前に、沙織は狼狽えた。決して、心当たりがないわけではない。(どうして今になって警察が……?あの一件は終わったと思っていたのに……!)自分が黒幕だとバレることは絶対にないと高を括っていた。共犯たちは絶対に口を割らないだろうし、証拠だって全て燃やしている。ならば一体なぜ、彼女の存在が明るみに出てしまったのか。考える隙など与えられず、彼女は警官たちに引きずられていく。「ちょ、やめてよ!触らないでちょうだい!私には二人の子供がいるのよ!?」「関係ありません、さっさと連れて行け」沙織は外へ引きずり出され、代わりに刑事たちが家に入った。「何すんのよ!人の家に勝手に入らないでよ!」「家宅捜索です。あなたは容疑者ですから、話したいことがあるの
女の友情とは、儚く脆いものである。湊斗は今回の一件で、そのことをより強く感じることとなった。マナミという自称沙織の親友の女は、まるで彼女を売るようにペラペラと語り始めた。『そういえば……沙織があの一件に関与したと言っていたわ』『…………それは本当か?』『ええ、間違いないわ。ついこの間、酒の席で口を滑らせたのよ。あの女ったら、どこまでも愚かだわ』マナミは沙織とは学生時代からの仲で、かなり親しい間柄だった。お互いが内心どう思っているかは知らないが、何でも打ち明けられる関係なのは間違いないようだ。『沙織が犯行を主導したという証拠が欲しいんだが……』『すぐにでも手に入れるわ、あの女は酒に酔ったら何でも言っちゃうんだから。簡単に引き出せると思うわ。お礼は……わかっているわね?』『…………ああ、約束しよう』マナミは狡猾な女で、事件の証拠を集める代わりに湊斗に金銭を要求した。彼女は金さえあれば何でもする女だった。しかし、要求された額は湊斗にとっては大したことがないので、別に躊躇うこともなかった。マナミは絵に描いたような悪女だったが、約束はきちんと守る女だった。マナミは超小型ボイスレコーダーを着け、沙織に接触した。『証拠を手に入れたわ。あの女の証言は全てここに録音してある』『……感謝するよ、マナミ』湊斗はマナミからボイスレコーダーを受け取った。そこには、恐るべき彼女の犯行内容と隠された本性がハッキリと記録されていた。『―――邪魔だったから、始末しようと思ったの。せめて瀬奈が死んでくれていたらよかったけど、あの女は生きていた』『―――アイツらが失敗したんだって知ったときは焦ったわ。いつ自分に捜査の手が及ぶかわからない。湊斗は絶対に犯人たちをただでは済まさないでしょうから……証拠は全て燃やしておいたの』『―――目的は何かって?そりゃあ湊斗の子である里亜を消すことよ。それ以外にあり得ないでしょう?アイツは生きてちゃいけないのよ。この世からいなくなるべき』どれも、聞くに堪えないような侮辱の言葉だった。もはや沙織を断罪することに対する罪悪感などなかったが、こんなものを聞いたあとでは何の未練もなくやれそうだった。その後、湊斗は共犯の男たちにも面会をし、沙織が首謀者だと証言を取ることに成功した。確実な証拠を手に入れ、彼女を追い詰める準備は着々とできていた