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第113話

作者: リンフェイ
「この前、唯花と結城さんが買ってきてくれたプレゼント、あの時私は割り勘のことでとても怒ってたから、全部私の部屋に持っていったの」

佐々木唯月は椅子に腰掛けた。内海唯花はキッチンへと行き、冷蔵庫からフルーツを取り出して、きれいに洗った後お皿に盛って、姉に持ってきた。牧野明凛は唯月に温かいお茶を渡した。

彼女はそのお茶を数口飲んだ。佐々木唯月は家庭事情を周りに知られるのは怖くなかった。今日彼女が来たのは、溜め込んでいた悔しさと怒りを妹にぶちまけたかったからだ。

これ以上溜め込んだものを誰かに打ち明けなければ、うつ病を発症してしまいそうだった。それに、牧野明凛も知り合ってから何年も経つ。彼女はなんといっても口が固い子だ。

彼女はこう言った。「私が翌日起きた時、あいつらは俊介がもう送ってしまった後だったわ。帰りたいなら勝手に帰ればいい。さっさと帰ってほしいって思ってたんだし。でも、あいつら帰る前に、唯花たち夫婦が買ってきてくれた贈り物を全部持っていったのよ。

陽にくれたおもちゃも、義姉さんにいくつも取られたの。ほんっとに腹が立つわ!俊介もうちにはそういう贈り物がいらないから、彼の姉に渡して食べてもらうって。

あいつの姉が何か足りないものある?あの人たちはどっちも働いてるし、収入もあるし、子供は義父母が面倒みてるじゃない。あの二人も若いころは年金もしっかり払ってたし、今二人とも退職金もらって食べるのだって困ってないわよ。それなのに、俊介に毎月お金をもらってさ、そのお金は義姉さんの家に払ってるようなものでしょ?

義姉さん夫婦が稼いだお金は全部貯金に回してるのよ。自分の親のお金と、弟のお金で生活してるの。弟に妻子がいなくて姉のためにお金を出すっていうなら、誰も文句は言えないけど、私と彼はもう一つの家庭を持っているのよ。家のローンも返さないといけないのに、恥もせず弟のお金を使って自分たちの生活をしているなんて」

佐々木唯月は自分の夫の愚かさと理不尽さに腹が立っていた。両親が彼のお金を愛娘に渡していると知りながら、依然として何がなんでも両親に毎月お金を振り込んでいるのだ。なのに、彼女に対してはケチでお金を惜しむのだから、彼女の怒りはすでに頂点に達していた。

さらに、夫の家族たちはうまく本性を隠し通していたと罵った。結婚する前、それぞれ彼女に対して良い態度を取っており
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