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今世は貴方を愛さないと誓ったのに、何故縋りついてくるのか
今世は貴方を愛さないと誓ったのに、何故縋りついてくるのか
Penulis: みそ煮

第1話

Penulis: みそ煮
last update Tanggal publikasi: 2026-02-08 00:29:36

永山家の令嬢・美里と城田財閥の御曹司である宗助は幼馴染だった。

お金持ちの家の子が通うことで有名な幼稚舎で二人は出会い、美里は宗助に一目ぼれをした。

それから小中高と、美里と宗助は他の誰よりも共に時間を過ごし、お互いにとってかけがえのない親友となった。

その間も美里の宗助への思いが変わることはなかった。

しかし十八歳になったある日、宗助は同じ大学で出会った今野萌子と恋に落ちる。

「あんなに綺麗な人は初めて見たんだ、俺はきっと恋をしたんだと思う」

宗助は嬉しそうに頬を赤らめた。美里は今さら宗助に気持ちを伝えることなどできなかった。

宗助の初恋の相手である今野萌子は、同じ女である美里から見てもとても美しいと思える女性だった。

二人は恋人となり、お互いに結婚を望むようになったが、萌子は一般家庭の生まれで次期社長の宗助と釣り合う身分ではなかった。

二人の結婚に猛反発した宗助の両親は権力を使い、萌子を大学から追い出し、宗助との関係を強引に絶たせた。

萌子を失った宗助は悲しみに暮れ、笑わなくなった。

それでも美里は彼の傍を守り続けた。いつかは彼が笑顔を取り戻してくれることを願って。

時が経ち、大学を卒業して社会人となり数年が経過した頃、美里に縁談の話が持ち上がる。相手は何と意中の相手・宗助だった。

萌子を失って以来、彼女を忘れられずに恋人を作らなかった宗助と、そんな彼を密かに想い続けていた美里。

美里は彼の気持ちを誰よりもよく知っていたが、満面の笑みで頷いた。

「彼との結婚を受け入れます。こんなにも幸せなことはありません」

一方の宗助も、特に興味のない様子で美里との結婚を受け入れた。萌子と一緒になれないのなら、別に誰だってよかったのだろう。

宗助との婚約中、美里は幸せの絶頂にいた。萌子が現れた時点で彼と結ばれることは諦めていたからだ。

身分の違いで引き離されてしまった萌子には悪いが、美里は他人のことなど考えている場合ではなかった。

彼女がどこかで幸せに暮らしていればいいなと願うばかりだった。

約一年の婚約期間を経て、美里と宗助は結婚した。

結婚してからも宗助は美里に萌子に向けていたような笑顔を見せることはなかったが、彼の妻でいられるのならそれでよかった。

後継者として父親が経営する会社の役員となった宗助は多忙で、家に帰らない日も多く、二人は顔を合わせることも次第に減っていった。

そんな暮らしが半年ほど続いた頃、宗助の両親が交通事故により帰らぬ人となってしまう。

両親の葬儀に黒の喪服で現れた宗助は涙を流すことなく、何とも言えない表情で棺を見つめていた。

宗助の両親はとても厳格な人で、彼に対して必要以上に厳しく接していた。それに加え、最愛の人と引き離された恨みもあったのだろう。

しかし、その瞳は少しだけ悲しそうにも見えた。

両親の葬儀を終えた後、宗助は以前にも増して仕事に打ち込むようになった。

社長だった父親が亡くなり、彼がその代わりを務めなければならなかったからだ。

美里が思い描いていた甘い結婚生活とは程遠いものだった。

そんな中、ある知らせが美里の耳に入った。

宗助の初恋の相手であり元恋人だった今野萌子が帰ってくるというのだ。

萌子は大学二年のときに宗助の両親に嫌われ、大学を自主退学し、それからはずっと故郷へ身を寄せていた。

しかし今回、彼女が故郷へ帰ることになった元凶である宗助の両親が亡くなり、再び大学へ通うことになったのだという。

萌子が帰ってくると聞き、美里は頭を抱えた。

萌子がいなくなったから美里は宗助と結婚した。

しかし、萌子よりも宗助に愛されているという自信は無かった。

彼は結婚してから一度も美里に愛してると言ったことが無かったからだ。

その日、美里は深夜まで宗助の帰宅を待ち、彼を問い質した。

「宗助、今野さんが帰ってくると聞いたんだけど…」

「…そうだな」

宗助は目を合わせずにそれだけ言った。

やはり彼の耳にも萌子が帰ってくるという噂は入っていたのだろう。

彼は今何を考えているのだろうか。真っ黒な瞳からは何も読み取ることができない。

しかしどれだけ冷たくされようが、美里はここで退くわけにはいかなかった。

彼の気持ちによっては、二人の今の関係が変わる可能性が大いにあったからだ。

黙ってばかりで何も言わない宗助に痺れを切らした美里は、核心に迫った。

「宗助、貴方もしかして今でも彼女のことを…」

「疲れているんだ、後にしてくれ」

聞いたことのないくらい冷たい声だった。

彼はそれだけ言うと、逃げるように自室へ入り扉を閉めた。

残された美里は強く閉められた扉をじっと見つめていた。

結局、宗助の考えを知ることはできなかった。

***

萌子が美里たちの暮らす白羽区に帰ってくるという話を聞いてからというもの、美里は夜も眠れなかった。

萌子は宗助の愛する人で、美里がどれだけ努力しても勝てない人でもあったからだ。

「社長の昔の恋人が帰ってくるらしいわよ」

「なら今の奥様はどうなるのかしら」

「あら、城田社長がどれだけ今野さんを愛していたかは誰もが知っている話でしょう?」

「離婚するに決まっているわ。私が城田社長ならそうするもの」

萌子が帰ってくることは既に近所で広まっており、美里は好奇の目に晒された。

少し前までは羨望の眼差しを向けていた者たちが、今では手のひらを返すかのように彼女を嘲笑した。

それから三日後、萌子が白羽区に到着したという知らせが入った。

そのとき、ちょうど宗助は仕事で家にいなかった。

萌子がすぐそばにいるかもしれないと思うと居てもたってもいられなくなった美里は、気分転換も兼ねて外へ出ていた。

外出するのはずいぶん久しぶりだった。宗助と結婚した美里は勤めていた会社を寿退社し、専業主婦として家庭に入ったからだ。

外へ出た美里は、人々の視線を気にすることなく歩き続けた。こんなにも落ち着かないのは初めてだった。

しばらく外を歩き、自身が通っていた大学の前へ差し掛かると、聞き覚えのある声が耳に入った。

「―萌子、走ると危ないぞ」

声のするほうに顔を向けると、見慣れた顔が視界に映った。

宗助だった。そして横にいたのはー

「宗助ったら、心配性なところは変わっていないのね」

宗助の初恋の相手・今野萌子だった。

美里がいることに全く気付いていないのか、宗助と萌子は笑い合いながら大学の傍にとめてあった車に乗り込んだ。

傍から見ると、二人はとてもお似合いな夫婦のように見えた。

宗助のあんなに楽しそうな顔を見たのは久しぶりだった。そう、まさに宗助と萌子が交際していた頃によく見た光景だ。

仕事中なはずの宗助が何故萌子と一緒にいるのか。どれだけ考えても分からなかった。

妻に内緒で昔の恋人に会う。

それが何を意味するのか……ある程度予想はつくものの、認めたくなかった。美里は心を強く保った。

宗助は昔から真面目で、責任感の強い男だった。そんな彼が痴情のもつれで妻を捨てるとは考えにくい。

ましてや美里と宗助は幼い頃からの仲で、深い絆がある。

そうだ、何を馬鹿なことを考えているんだ。宗助が自分を捨てるわけがない。

美里は明るく考えながら帰路についた。

そしてその日の夜、宗助は家に帰ってこなかった。

朝になると、宗助が萌子の住むマンションから出てくるところを見たという噂が広まっていた。

美里は夜になってようやく帰宅した宗助を問い詰めた。

「宗助、昨夜今野さんのマンションで過ごしたって噂は本当なの?」

「……彼女とは何もない」

何もない?何もないなら何故妻に内緒で会っているのか。

いつだって宗助の気持ちを尊重し、言いづらいことは聞いてこなかった美里だったが、今回ばかりは我慢の限界だった。

「そんなの信じられるわけないわ!あなたは昔からいつだってそうだった!重要なことは何も言わずにはぐらかして……私が昨日どんな気持ちであなたの帰りを待っていたか……」

「美里」

宗助は美里の言葉を遮った。これ以上は聞きたくないといった様子だった。

彼は冷たい目で美里を見据えた。

「――俺の交友関係に口を挟まないでくれ」

「……!」

「いくら夫婦とはいえ、プライベートのことにまで口出しをされるのは疲れる」

宗助は美里に背を向けて自室へ戻っていった。

今の言葉は一体どういう意味で言ったのか。

夫の浮気に目を瞑れということだろうか。美里にはもはやそのようにしか聞こえなかった。

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