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第895話

Penulis: 花崎紬
「ご安心ください、晋様。

既にA国最強のセキュリティ会社に依頼済みです。これから彼らが晋様のご安全をお守りいたします」

「不審なヤツを見つけたらすぐに報告してくれ」

「はい、晋様!」

そう言って、杉本肇と小原は事務所を出た。

事務所の中はまた静かになり、森川晋太郎は脳裏で入江紀美子の姿を思い浮かべた。

彼女からは未だに返信がない。

もしかして自分に構いたくないのか?

A国は今午後1時半、国内では朝だが、紀美子はまだ寝ているのだろうか?

晋太郎は我慢できず、携帯を出して紀美子に電話をかけた。

しかし、電話に出たのは渡辺翔太だった。

電話が鳴り出した瞬間、翔太は携帯を出して画面を覗き込んだ。

晋太郎からの電話を見て、彼は暫く考えてから出た。

「紀美子?」

晋太郎はかすれた声で呼んだ。

「私だ」

翔太は冷たい声で返事した。

「なぜあなたが紀美子の携帯を持っている?」

晋太郎はやや驚いた。

「昨日の飲み会で紀美子が携帯を落としたんだ。俺が今警察署で受け取ってきた」

翔太は下手な嘘をついて誤魔化そうとした。

「紀美子はもう落ち着いたか?」

晋太郎は少し声を低くした。

「よくもそんな質問できたな」

翔太はあざ笑いをした。

「あんたじゃなかったら、彼女はこんなに心を乱すことはなかった。晋太郎、約束したことを忘れたのか?まだ数日しか経っていないのに、また紀美子を一人で置き去りにしたな?」

翔太は我慢できず、怒りを晋太郎にぶつけた。

「俺も不本意だったんだ!」

晋太郎は冷たい声で言った。

「会社の機密情報が何を意味するか、あんたも分かってるだろ?」

「たとえそうだとしても、ちゃんと説明してから行ったらどうだ?今のその態度は何なんだ?」

翔太は聞き返した。

「急だったから説明する余裕はなかったんだ。だが俺は既に公表した。婚約式は、ちゃんと後日とりおこなって紀美子に償う」

「ならば、話はそれが実現してからだ!」

翔太は怒って電話を切った。

通信が切られ、晋太郎は深く眉を寄せた。

何が「それが実現してから」だ?

紀美子は自分と縁を切ってしまいたいのか?

そう考えているうちに、ルアー・ウェイドが入ってきた。

「社長、そろそろ会議室へ参りましょう」

晋太郎はその思惑を後にして、会議を優先するしかなかった。

会議室
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