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第32話

Author: 槇瀬陽翔
last update Last Updated: 2025-10-15 19:22:44

「その子があんたたちの子供だっていうなら、金返せよ!」

内藤さんはわなわなと拳を震わせながら怒鳴った。

「…っ…もぉ…もうウンザリだ!」

俺はその言葉を聞き大我に抱き着いたままで怒鳴っていた。俺が怒鳴ったことで、内藤さんがビクッて身体を震わせた。

「あなたたちの身勝手にこれ以上、俺を振り回さないでくれ!」

俺は内藤さんを睨みつけながら言い切った。もう、これ以上この人たちに振り回されたくない。

「なっ、なっ」

内藤さんは言葉にならないのか、驚いたままだ。

「…たい、が…」

俺は大我を見上げた。内藤さんを黙らせるのも、追い返す方法も大我がもってるはずだから…。

「よく言ったな唯斗。三枝さん、ここで全て終わらせてもいいですか?」

俺の頭を撫でてから三枝さんに向き合う大我。やっぱり全部終わらせる気でここに来てたんだ。

「はい、大丈夫です。神尾さんたちにお任せしますので…」

大我の言葉に快く承諾してくれた。

「唯斗に払った金を返せっていうなら熨斗付けて返してやるよ。だけど、二度と唯斗にはかかわらせない。連絡も取らせない」

大我がハッキリと言い切った。その言葉を聞きなおパパがドンッとテーブルの上にカバンを置いた。

「唯斗があんたたち夫婦に捨てられてから今日までの養育費をキッチリ計算して、倍にした金額が入ってる。今後、二度と唯斗に関わらないための手切れ金だと思ってくれればいい」

冷たい目で内藤さんを睨みながら淡々とゆう大我の顔に表情がない。それだけ大我が怒ってるってことなんだと思う。

「子供がそんな大金どうやって…。あぁ、親に出してもらったってことか」

内藤さんが笑いながら言う。金額的にポンッと出せるような金額じゃない。だから親に出してもらったんだろうって思ったんだろうなって。そして、もしかしたら、これからも金目当てに連絡してくるんじゃないのかって不安がよぎった。

「誰が、残念だけど、それは俺自身が稼いで貯めた金であって、一銭も両親たちからは出してもらってない。それに、唯斗は俺の家族だ、親に出してもらうわけがない」

大我から事前に聞いていたとはいえ、本当に大我の貯金から出したんだって俺は驚いた。俺が社会人になったらちゃんと返さないと。でも、大我のことだから自分たちの子供のために使おうって言って貯めていきそうだけどね。

「こんな大金をガキがどうやって…」

内藤さんの言葉がどんどん
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