LOGIN「んっ」 闇の中に落ちていた意識が戻ってきて、抱きしめられているのに気付いて俺はもっと自分から抱き着いた。その途端にもっと強い力で抱き寄せられた。 それが嬉しくて、もっと強く抱き着いた。そしたらクスって笑われちゃったよ。 「うーっ」 なんだかそれが悔しくて、一人でうなってたら、ますます笑われて、思わず顔を上げて睨んでやった。 「不細工になってる」 なんて言いながら、額に小さなキスが落とされた。 「なっ、なっ」 それがあまりにも突然で、自然な流れで行われてびっくりして変な声が出た。 「ゆいの目が腫れて不細工になってる。ちゃんと冷やしたんだけど、まだ腫れてるな」 そっと、大我の親指が目元を撫でる。 「んー、今回は本当に自分でもびっくりするぐらい涙腺崩壊して、大泣きしてたからなぁ」 「それだけ、唯斗の中では大きな傷になってたってことだからな」 大我の言葉に自然と苦笑が浮かぶ。だって、それは否定できない。中学から今まで大我に支えられてきたのは紛れもない事実だから。 それでも、不思議なことにあれだけ嫌な感情に包まれて、大泣きしたけれど、いつも以上にすっきりしてるし、気持ちが軽くなっている自分がいる。 いつもならもっと、落ちてるはずなのに…。 「唯斗の心のよりどころがちゃんとできたからだろ。もう一人じゃないっていう安心がゆいの心を軽くしてるんだよ。きっとな」 大我の言葉に「あー、そうかも」って納得しちゃった。今まで、大我が傍にいてくれるって、言葉や態度で示してくれてたけど、心のどこかで疑ってたんだ。大我も、大我の家族も、俺のことを捨てるかもしれないって…。疑心暗鬼になってる部分が心のどこかにあったんだ。 でも、それは俺の思い過ごしで…。大我の言葉も行動も全部、嘘偽りがなくて、大我は俺のことを常に優先に考えて、行動してくれていた。今回のことに関しても、今までのことにしても、俺が考えるよりも先に先にと手を打っていった。 俺よりも俺のことを知ってるこの男が常に傍にいてくれたから、俺はここまでこれたんだ。 「うん、やっぱり、俺は大我の愛情がなかったら死ぬ。大我に捨てられたら廃人になって死ぬな」 自分でブツブツ言いながら確信した。それだけ俺は大我に支えてもらってきたのだ。それこそ依存してると言われてもおかしくないぐらいには…。 「心配しなくて
「んっ、あ、れ?」 目が覚めて、変な声が出た。ベッドの上でちゃんと服を着て寝てた。寝落ちする前の記憶がある分だけまたやっちゃったと思う。 「たい、が?」 身体を起こして、大我の姿を探せば、机に向かって作業をしてるのを見つけた。 「起きたか、身体は辛くないか?」 俺の嗄れた声で名前を呼んだけど、ちゃんと大我は拾ってくれたらしい。 「ん、だい、じょぉ、ぶ、ちょっと、声、出にくい、けど」 身体はそんなに辛くない。ちょっと、声が嗄れて出にくいだけだ。だからそれを俺は素直に伝えた。 「あー、まぁ、それは仕方がないな。ほら、これ飲んで少しは喉を潤せ」 大我は水の入ったペットボトルを渡してくれた。俺はそれを受け取り飲んだら、半分ぐらい飲んじゃった。 「お腹は空いてるのか?」 そう聞かれて「う~ん」って考え込んだ。空いてるような空いてないような?そんな微妙な感じだったんだ。 「その顔は微妙な感じなんだな」 考え込んでる俺の顔を見て大我が聞いてくるから俺は素直に頷いた。 「食パンがあるからそれでも食べるか?」 なんて聞いてくるけど、大我がただ食パンだけを出すはずがない。きっと軽く食べれるものを作るはずだ。だけど、俺は素直に頷いた。食パンだけでもいいから食べた方がいいかなって自分で思ったんだ。 「なら、トーストでも作るか。自分で動けるか?」 大我が立ちあがり聞いてくる。 「わかんない」 俺は返事をしてからベッドから立ち上がろうとして失敗した。足腰が笑ってる。 「自業自得だからなそれ」 半ば呆れながら大我は俺を抱き上げてリビングまで連れて行ってくれた。そしていつも座ってる場所に座らせてから、キッチンへと行った。うん、俺ってやっぱり大我に迷惑ばっかりかけてるな。なんて思いながらキッチンでゴソゴソ動く大我の背を眺めていた。「お待たせ。熱いから気をつけろよ」 そういいながら大我が俺の前にアツアツのピザトーストとコーヒーを置いてくれた。でも、トースト1枚分だけ。大我さんよくわかってますね。俺が本当に微妙だって。しかもちゃんと切れ目が入ってて残しても大丈夫なようにしてくれてある。 「いただきます」 俺は手を合わせてそれを食べることに専念した。「御馳走様でした」 俺は出してもらったトーストを全部食べ終えて溜め息をついた。全部は食べられないかもって
「うっ、ふぅ、ぁ、ん、ぁ、やぁ、ん、ぁ」キスだけで、記憶がどっかに飛んじゃってた俺は気が付けば己の中に大我の熱い塊を招き入れていた。「や、なのか?」なんて言いながら意地悪く動く腰。「やぁ、ぁ、ダメっ、ぁ、ダメっ、ぁ」大我の背にしがみつき爪を立てる。「なら、やめる?」なんて、意地悪く耳元で囁かれる。熱い吐息交じりの声にぶるりと身体が震えた。ぞくりと腰にクル。だからギュって締め付けちゃったよ。「ん?ゆい、やめる?」なんて、また聞かれた。「やぁ、ぁ、ん、ぁ、やめちゃ、やぁ、ん、たい、がぁ、ぁ、」やめてほしいわけじゃない。嫌がってるわけじゃないってわかってるくせに意地悪だ。だから俺は腹いせに大我の背に爪を立てて肩に噛みついた。「っ、じゃぁ、このまま続ける?」噛みついた俺の頭を撫でながら聞いてくるから噛みついたままコクコクと何度も頷けば「じゃぁ、ちゃんと捕まってるんだぞ」なんて言いながら腰を掴まれるとズンッと勢いよく奥まで突き上げられた。「ぁ、ぁ、っ、ぁ、ぁぁ、たい、がぁ、ぁぁ」目の前がチカチカする。俺が一番感じるその場所を狙って大我が何度も突き上げてくるせいだ。「ぁ、ぁぁ、ん、ぁ、やぁ、ダメっ、ぁ、ぁぁ、ん」いつも以上に感じるその行為。心の奥底から神尾大我を欲してる自分がいる。もっと、もっと、もっと、もっと、欲しい、大我が、もっと欲しい「っ、クソッ」そんな呟きと共に唇が奪われた。繰り返すキスが気持ちよくて、絡め合う舌が熱くて、それでももっとして欲しくて俺は何度もキスを求めた。「んっ、ふぅ、ぁ、ん、ふぅ、ぁ、んん」止まらないんだ。自分で止められない。もっと、欲しい。「んっ、ふぅぁ、はっ、ぁ、はぁ」必要以上に大我を求めていたらバリってはがされた。「酸欠、キスはお預け」「ん、やぁ、もっと、ぁ」大我の言葉にイヤイヤと首を振り訴えれば「ダーメ。変わりにこっちで感じて」なんて、また最奥めがけてズンと突き上げられ首筋に吸い付かれた。「ぅぁ、ぁぁ、ん、ぁ、やぁ、らめ、それ、ダメ、ぁ、」イヤイヤと首を振れば「なんで?」首筋を舐めながら聞かれた。「やぁ、それ、ぁ、ん、ぁ、感じ、ぁ、すぎ、て、ぁ、波、きちゃ、ぁ、ぁ」さっきからお腹がキュンキュンしてるんだ。このままいいとこばっかり攻められたら波が来ちゃう。俺はもっと大我
「んっ、ふぅ、ぁ、ん」繰り返すキスはいつにも増して甘くて気持ちがいい。「ゆい、と…好きだ」わざととぎって呼ばれる名がぞくりと腰にクル。「ん、ぁ、たい、がぁ、キスぅ、もっと、して」気持ちが高ぶったままの状態で、溢れたフェロモンはいつも以上に濃く強くなる。大我の眉間に皺が寄り、その双眸はとっくに色を変え、澄んだ碧色を煌めかせていた。俺が好きな色。この瞳の大我になら骨の髄まで喰らいつくされたいと思う。普段の大我でもいいんだけど、この色の大我の方がより一層強くそう思う。「キス、だけ?」頬にキスを落とし、耳元で囁かれる。それだけでゾクゾクしてくる。もう、すでに俺は腰砕け状態。ホントに、この男はなんでこんなにもカッコいんだ。「ん、ぁ、やぁ、キス、だけじゃ、足り、ない、ぁ」イヤイヤと首を振ればクスリと笑われる。「じゃぁ、気持ちいいこと一杯する?」なんて、笑いながら聞いてくる。「ん、ぁ、する、ぁ、たい、がぁ、キス、以外、もぉ、して、ぁ」大我に触れたい、触れられたい。キスがしたい。そんな欲求がフェロモンとして溢れかえる。部屋の中に広がる俺の濃くなったフェロモン。「あー、でも、その前にたんま」急に大我が冷静になる。「ぁ、なんで?」不満げに呟けば「なんでって…もしもの保険が必要だから」大我はそういうと俺の頭を撫でて部屋を出ていった。本当はわかってる。俺のために薬を取りに行ったんだってこと。大我は過ちを起こさないために必ず俺の事を考えて行動してくれる。自分がどれだけ大変な状況だとしても…。ここまで濃くなったフェロモンは、確実に発情へと変化する。だってさっきから俺、大我が欲しくてウズウズしてるんだ。それもひどく欲してる。だから、このまま先に進めば確実に発情する。神尾大我という男に発情するのだ。「っ、また酷くなってるな」俺の薬の瓶を持って戻ってきた大我の言葉が詰まる。「んっ、たい、がぁ、欲しぃ、たい、が、が」戻ってきた大我に両手を差し出して訴える。今すぐにでも欲しい。喰らいつくされたい。「わかったから、これだけは飲んでくれ」さっきよりも眉間に酷く皺を寄せながら俺の口元に薬の入った小瓶をもってくる。俺は大我の手を借りてそれを飲み干した。大我は瓶が落ちて、割れない場所に置いて、俺を抱きしめて「ゆい、好きだ」そう告げて唇を塞いだ。触れ合う唇を
「劉を送らななきゃいけないからもう行くけど一人で大丈夫?」こうちゃんが俺を心配して聞いてくる。「はい、大丈夫です。今、すごく落ち着てるから一人で大我を待ってられるんで」うん、これは嘘じゃない。昨日までは酷い状態だったけど、今の俺はすごく落ち着ている。「わかった、ゆいちゃんのその言葉を信じるよ。でも、何かあったらちゃんと大ちゃんに連絡するんだよ」少しだけ心配性なこうちゃん。まぁ、俺が酷い状態になるの知ってるからなんだけどね。「うん、大丈夫。劉くん行ってらっしゃい、頑張ってね」俺は劉くんと同じ目線になって声を掛けた。「うん、また今度、大ちゃんと一緒に遊びに来てね」劉くんは大きく頷く。「勿論、大我にお願いして一緒に遊びに行くよ」俺が劉くんの言葉に返事をするとこうちゃんは劉くんを学校に送って行くために帰っていった。シンとなる部屋の中。不思議と落ち着いていた。この場所に来た時は酷い状態で、涙腺だって壊れてたのに、昨夜、夢を見て、朝起きてこうちゃんたちと一緒にいただけで、不思議と落ち着いている。「こうちゃんが片付けもやってくれたからすることないんだよな」そう、こうちゃんがご飯の準備も片付けも全部やってくれたからすることがない。しかも丁寧にお昼のご飯まで作っていってくれたのだ。俺も大我も自分でできるの知ってるはずなのにね。でも、ありがたい。「うん、することないし、大我が帰ってくるまでベッドでゴロゴロしてよう」そう思いながら俺はまたベッドに逆戻り。ベッドのサイドボードに大我が読んでる本が置いてあった。「これ、俺が読んでみたかったやつじゃん」本の題名が俺が読んでみたいと思っていたやつだった。それを手に取りしおりの場所を確認したら、一番最後に挟まっていて、そこは筆者のあとがきの場所だった。「あれ?」そのあとがきを読んで顔が熱くなった。「…これ…ダメだろ…」あとがきはまるで恋文のようなもの。読んだ読者がどう感じるかはその人にもよるが…。俺にはそれが盛大に愛の告白に感じた。「よし、最初から読もう」あとがきにしおりが挟んであるってことは大我は読み終えてるはずだからと、俺は解釈してその本をはじめから読むことにした。そうしてる間に大我が帰ってくるだろうなって思ったんだ。「…はぁ…」集中して、本を全部読み終えてしまった。本を抱きしめ天井を見上
「っ、たい、が、っ、」俺は大我に抱き着きまたしても大泣きをし始めた。泣き始めたら止まらない。本当に今の俺は涙腺がぶっ壊れすぎてるらしい。「ホントに涙腺ぶっ壊れてるな。あんまり泣くと目が腫れるんだけどな後でちゃんと冷やすか」俺の頭を撫でながら大我がいうけど、本当に止まらないんだ涙が。「っ、だって、とま、ん、ない」大我の服を掴み訴えてみる。「唯斗には悲しいことも嬉しいことも両方一度に起きて、頭ん中がキャパオーバーしてんだろうな」なんて言いながら撫でられていく頭は気持ちがいい。「んっ、もぉ、考え、らんない、」今の俺は本当に何も考えられない状態だったりする。「今は考えなくてもいい。だけど、また、実家にはいかないといけないから、そん時はしっかりしないとな」小さく笑いながら額にキスをくれる。まるでそれが、何かの呪文のようになって泣いてるにもかかわらず俺は眠たくなってくる。「もう少し、寝ればいい」大我のそんな優しい言葉に俺は頷き、誘われるままに泣きながら再び眠りの中へと誘われていった。夢を見た。大我と俺と…そして、まだ見ぬ大我と俺の子供。それだけじゃない、両親たちと、ヒロさんたち。家族で楽しく過ごしている夢を見た。笑いあって、時にはケンカして、涙を流し、そしてまた笑い合う。そんな優しい夢を見た。凄く心満たされた優しい夢だった。「んっ」ふわふわと夢の中に堕ちていた意識が戻ってきた。ボーっとする頭のまま周りを見渡せば大我の姿はなかった。自分の隣の温もりはなく、布団も冷たくなっている。いつ抜け出したのだろうか?ボーっとしたまま身体を起こし、部屋の中を見渡すが、やっぱり大我はいない。俺は溜め息をつきベッドから降りて部屋を出た。「あっ、ゆいちゃんおはよー」そんな言葉と共に足に抱き着かれた。「へっ?なんで、劉くんが?」ビックリした。この場所にいるはずのない劉くんがいることに。「おはよう、起きたゆいちゃん」そう声を掛けられた方を見ればこうちゃんがお皿をテーブルに置いてる所だった。「おはようございます。なんで2人がここに?」劉くんを抱き上げながら聞いてれば「大ちゃんね、お仕事行っちゃったのー。だからね僕が来たんだよぉ」ニコニコと笑いながら劉くんが教えてくれた。「そっかぁ、ありがとう劉くん」「ごめんね、本当はゆいちゃんとゆっくり話し
「大丈夫ですか聖くん」 溜め息をついた俺を心配そうに見ながら三枝さんが聞いてきた。 「はいって言いたいんですけど、やっぱりダメですね」 この施設にいた間、ずっと俺の事を気にしてくれていた三枝さんだからこそ、嘘を言ってみバレてしまう。だからこそ、俺は嘘をつかずに本当のことを口にした。 「やはり、あの人に会うのはダメみたいですね。神尾さんたちも申し訳ありませんでした。まさか、あの方がここに押しかけてくるとは思ってもみなかったので…」 三枝さんは大我たちに頭を下げた。 「頭を上げてください、予期せぬ訪問だったのは見ていてわかりました。それに、面倒ごとは早く片付けた方が我々にとっても、唯
「その子があんたたちの子供だっていうなら、金返せよ!」内藤さんはわなわなと拳を震わせながら怒鳴った。「…っ…もぉ…もうウンザリだ!」俺はその言葉を聞き大我に抱き着いたままで怒鳴っていた。俺が怒鳴ったことで、内藤さんがビクッて身体を震わせた。「あなたたちの身勝手にこれ以上、俺を振り回さないでくれ!」俺は内藤さんを睨みつけながら言い切った。もう、これ以上この人たちに振り回されたくない。「なっ、なっ」内藤さんは言葉にならないのか、驚いたままだ。「…たい、が…」俺は大我を見上げた。内藤さんを黙らせるのも、追い返す方法も大我がもってるはずだから…。「よく言ったな唯斗。三枝さん、ここ
「来客中に突然、押しかけてくるなんて何事ですか。出て行ってください」突然、押しかけてきた人物に三枝さんが毅然と言い放つ。「俺だって大事な話があるって言ってるだろ。それに本人がここにいるみたいだから話は早いだろ」チロリと俺の方を見て怒鳴りながら言う男。出来れば逢いたくなかった人。「彼からは2週間待って欲しいとお願いがあったと伝えたはずですが?」三枝さんは男に向かって言い放つ。男が言葉を発する前に「三枝さん、その人の事情っていうのを話してもらうのはどうですか?」静かに告げる大我。その言葉には怒りが込められていた。「ですが…」一瞬だけ俺の方を見る三枝さん。わかってる、俺がこの場所
「では、書類の方を確認させていただきますね」俺が1人、考え事に没頭してる間にママとパパが書類を書き終えて、三枝さんが確認をしてた。「はい、では、こちらの書類の方も問題なく書いていただいたので、本日より、神尾さんご夫婦は正式に聖くんの里親とさせていただきますね。では、神尾さんご夫婦と聖くんに最終確認ですが、本日付で聖くんをこの施設から退所という形で手続きをしてもよろしいですか?」本当だったら、もっと色んな手続きとかあるはずなのに、三枝さんは俺の為に簡素化してくれてるんだなって、改めて思った。「ゆいちゃんはどうする?」「ゆいちゃんの気持ちで決めていいわよ」2人はあくまでも俺の気持ちを