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第31話

Author: 槇瀬陽翔
last update Last Updated: 2025-10-13 19:16:07

「来客中に突然、押しかけてくるなんて何事ですか。出て行ってください」

突然、押しかけてきた人物に三枝さんが毅然と言い放つ。

「俺だって大事な話があるって言ってるだろ。それに本人がここにいるみたいだから話は早いだろ」

チロリと俺の方を見て怒鳴りながら言う男。出来れば逢いたくなかった人。

「彼からは2週間待って欲しいとお願いがあったと伝えたはずですが?」

三枝さんは男に向かって言い放つ。男が言葉を発する前に

「三枝さん、その人の事情っていうのを話してもらうのはどうですか?」

静かに告げる大我。その言葉には怒りが込められていた。

「ですが…」

一瞬だけ俺の方を見る三枝さん。わかってる、俺がこの場所にいるから追い出そうとしてるのを…。

「大丈夫です。理由も知らずに一方的に金を返せと言われてもこっちは納得できませんからね。その人の事情というのをキッチリ聞かせてもらいましょうか」

言葉の節々に怒りが込められている。それでも俺を撫でる手はいつものように温かくて優しい。

「それなら、大我、唯斗の隣に座りなさい。あなたが聞く権利あるもの」

いつもなら愛称で呼んでるのに、名前をちゃんと呼びながらみきママが場所を大我と変わった。俺の隣に座った大我はギュッと俺の手を握りしめてくれた。一緒に話を聞くから大丈夫だと言わんばかりに…。

「わかりました。では、今回の件の理由を本人から説明していただきますね」

三枝さんは溜め息をつき、本来の予定とは違うが、今回話さなくてはならないかったことについて、本人からの説明を聞くという形で話を進めることになった。

「3ヶ月前に妻の病気が発覚したんだ。その治療には莫大の費用がかかることがわかって、まだ子供たちにも金ががかかるんだ。だから、君に出していた養育費を回収したいんだ」

その言葉を聞き、大我の周りの空気が冷たくなった気がする。ううん、違う。この部屋の温度が下がったんだ。だって、俺以外のみんなが静かに怒ってるから…。

「自分勝手だな」

ポツリと大我が呟いた。

「なっ、お前には関係ないことだろ。俺はこの子に言ってるんだ!」

大我の呟きを拾った男、内藤さんが大我に怒鳴りながら俺を指さす。

「俺に関係があるからこの場所にいるんだが?それに、唯斗は俺の家族だ」

いつになく冷たい瞳で内藤さんを見て、俺の頭を撫でていく。

「…っ…たい、がぁ…」

言葉がうまく続かない。
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