Beranda / 恋愛 / 俺とバンド女子のダメ人間契約 / 8話 甘やかして、甘やかされて

Share

8話 甘やかして、甘やかされて

Penulis: 宮坂大和
last update Tanggal publikasi: 2026-04-02 10:21:53

「ふぅ……私、もうお腹いっぱい」

「俺も……」

俺と東城は、2人揃ってパンパンになった腹を摩りながら言った。

やばいな。マジで腹がはち切れそうだ。こりゃ下手に動いたら、今食ったのを戻してしまいそうだ。

「残りはどうするの?」

「明日食うしかないね」

「うぅ……明日もかぁ」

「多少アレンジするから、我慢してくれ」

当初の予定では、俺の家でささやかな打ち上げである、すき焼きパーティーだったけど、残念ながらそれは中止になった。

理由は、外で猛威を振るってる台風のせいだ。

夜には通り過ぎる予報だったんだが、台風の進行はゆっくりになって、さらにその勢いを強めていた。

帰っている途中で交通規制が入り、大渋滞に捕まって、打ち上げはまたの機会ということに決まり、早めに帰ることになった。

おかげで、多めに用意したすき焼きを2人で処理する羽目になったのだ。

「あぁ……お腹キツい……」

「大丈夫か?」

「ギリギリね。とりあえず、少し横になる」

東城はそう言うと、ノロノロと立ち上がって、ソファーにゴロンと寝っ転がった。

「食後すぐに寝っ転がるのは、あんまり体に良くないぞ」

「大丈夫だって。それに今はこっちの方が楽」

「まぁ、確かにそうだけどさ」

「桜木君も横になっちゃいなよ」

「……そうするか」

自分で言っといてなんだけど、正直なところ俺も横になりたい気持ちでいっぱいだったんだよな。ぶっちゃけ、すぐに横になったからといって、速攻でどうにかなる訳じゃないからな。ここは、欲望のままに動くとしよう。

俺は、ソファーの上に置いてあるお気に入りのクッションを枕にして、カーペットの上に寝転がる。

「にひひっ、桜木君もどんどんダメ人間になっていくね」

「この程度で、ダメ人間なら世界中の人がダメ人間だよ」

「あー確かにそうだね」

「だろ?」

そこで会話が途切れる。いつもだったら、東城が何かしら話を振ってくるんだけど、流石の東城も今は喋る気力もないようだ。まぁ、俺としても今はその方が楽でありがたい。とりあえず、今は少しでも体を休めたい感じだ。

「……やべ」

やっちまったな……完全に寝てたわ。

まぁでも、満腹状態で横になれば、こうなるのは当たり前の話か。

スマホの時計を見ると、19時半を過ぎていた。となると、小1時間くらい寝てたことになるのか。

「ま、そうなるよな」

ソファーの方に目を向けると、規則正しい寝息をたてながら、気持ちよさそうに東城が寝ている。

起こすのもなんだし、しばらくこのまま寝かせておくか。

「さて」

とりあえず、片付けだな。

食器は食ったままにしてあるし、残ったすき焼きも皿に移さないと。後は、風呂の用意もか。

少しめんどくさいけど、まぁ仕方ない。時間が経つともっと面倒になるし、さっさとやっちまうか。

――――

――

「んっ、んん?」

ある程度、片付けが終わった頃にソファーで寝ていた東城が、ノロノロと起き上がる。

「おはよう」

「うん、おはよう……」

まだ眠そうに、目を擦りながら気の抜けた声で応える。

「私、どのくらい寝てた?」

「2時間くらいかな」

「あらら、結構寝てたんだね」

「疲れてたんだろ。仕方ないさ」

「そだね……」

東城はそう言いながら、何かを探すみたいにキョロキョロと辺りを見回している。

「ほい」

「ん、ありがとう」

俺はテーブルの上に置いていた、メガネを渡してやる。

フレームが曲がるといけないから、外してあげていた。

「東城って結構、目が悪いんだね」

「まぁね」

外した時にちょっと覗いてみたら、相当強めのレンズが入っていた。掛けてなくても、少し気持ち悪くなるくらいだった。

「コンタクトにしないの?」

「あれ、怖くて入れられないんだよねぇ」

「なるほどね」

そういう人たまにいるよな。

まぁ、確かに異物を目に入れてるようなものだもんね。多分、俺も入れらない。

「桜木君は、視力いいの?」

「いい方だね。両目とも2.0」

「羨ましい……」

東城は、少し拗ねた感じでプクッと頬を膨らませる。

おいおい……リスみたいで可愛いな。

「外、落ち着いたね」

「だね」

俺が起きた頃には、雨も大分弱くなっていて風も止んでいた。さっきまでが、ピークだったっぽいな。

「お風呂沸いてるけど、先に入る?」

「いや、私は後でいいや。桜木君が先でいいよ」

「ん、了解」

――――

――

「上がったよ」

「相変わらず、早いね」

「そうかな?」

俺が風呂に入っていた時間は、だいたい15分くらいだ。別に普通だと思うんだけどな。

「ちゃんと体とか洗ってるの?」

「失礼だな。洗ってるよ」

「まぁ、それならいいけどさ」

え? もしかして、俺って臭かったりするの? ちょっと不安になってきたんだけど。……とりあえず、これからはもうちょい長風呂しとこうかな。後、体ももっと丁寧に洗おう。

「んじゃ、私も入ってくるね」

「あいよ」

東城が風呂に向かったのを見送ってから、ソファーに身を預ける。

やっぱ、風呂上がりはこうやって、ダラっとするのが1番だよな。

「あ、そういえば」

忙しくて忘れていたけど、今日って、この間応募した新人賞の1次審査の発表日じゃん。

俺は、スマホで発表ページにアクセスをして結果を確認する。

「そっか……」

俺はスマホをテーブルに放り投げて、力なくソファーに倒れ込んだ。

結果は落選。何度も見返したけど、俺の名前は載っていなかった。

「くそ……これで何度目だよ……」

ここまで来ると、自分の才能の無さが嫌になってくる。ネットで書いてる方も、あんまり見られてないし、たまに見られても、高評価を付けられるわけでも低評価を付けられるわけでもない。有象無象みたいなものだ。

こんな調子で、ラノベ作家になれるのかな?

「あれ? 桜木君、寝ちゃったの?」

モヤモヤとする気持ちを落ち着かせるために、少しの間、目を瞑っているうちに東城が風呂から上がって来たみたいだ。

「寝てないよ」

「そっかそっか。んじゃ、いつものお願いしてもいい?」

「はいよ」

俺はソファーから起き上がって、隣をぽんぽんと叩いて、ここに座るように促すと、東城は俺に背を向けてそこに座った。

「にひひ、よろしくね」

「はいはい」

俺は予め用意していた、ドライヤーとタオルを手に取って、東城の髪を乾かす。

最初にやった時に、東城はこれが相当気に入ったらしく、それから毎日やっている。

「加減はいかがですか? お姫さん」

「うむ。今日もいい仕事してますわよ」

「そりゃ、ようござんした」

「にひひ」

しかし、最初の頃と比べて、随分と髪質が良くなったな。艶も出てきて、サラサラになった。

やっぱり、ちゃんと手入れすると変わるもんなんだな。

前はちょっと梳くだけで、どこかしらで引っかかっていたり枝毛があったりで、今時の女の子の髪にしては、なかなか残念だったのにな。

「ちょ、桜木君。くすぐったいよ」

「ごめんごめん」

いかんいかん。つい、触り心地が良くていたずらし過ぎたみたいだ。

「ねぇ桜木君」

「うん?」

「何かあったの?」

「俺、そんなに分かりやすい?」

「そうだね。すっごい分かりやすい」

「そっか」

これでも何事も無かったように、振舞っていたんだけどなぁ。どうやら、バレバレだったらしい。

まぁ、昔からよく顔に出やすいって言われてたもんな。

「それで? 何があったの? 私で良ければ聞くよ」

「新人賞に落ちた」

「ラノベの?」

「そ。しかも1次選考で」

「そっか」

東城はそれだけ言って、黙ってしまう。まぁ、そりゃそうだよな。こんな話、面白くも何ともない。聞かされたって、ただ反応に困るだけだ。

「ごめん。つまんない話した」

「全然、つまんなくないじゃん」

「え……?」

一瞬、何が起きたのか分からなかった。気が付いたら、俺は東城に膝枕されていた。

「えっと……東城?」

「ん?」

「何してんの?」

「膝枕。どうよ?」

「どうって……まぁ、気持ちいいな」

程よい柔らかと弾力。そして、どことなくいい匂いがする。出来ることなら、ずっとこうしていたい気分だ。

「桜木君」

「ん?」

「モヤモヤ〜ってする気持ちは、我慢しないで吐き出してた方がいいよ」

「別に大したことじゃないよ。今までだって何回も落ちてるし、もう慣れっこだって」

「そういう問題じゃないの〜」

東城はそう言うと、俺の頬っぺを摘んで軽く引っ張られる

「あのね、桜木君。それって、桜木君が辛いことや痛いことに慣れているってことだよ」

「慣れているならいいじゃん」

「よくないよ。マイナスな気持ちで作るったものはプラスにはならないよ。どこまで行ってもマイナスのままだよ」

「……」

「だからね。嫌なこと、モヤモヤなことは全部吐き出しちゃえ」

「簡単に言ってくれるなぁ」

「まぁねぇ。それに私が思うに、モヤモヤとゲロは吐き出しちゃうのが1番だよ」

「最後のゲロさえなければ、いい言葉だったのに台無しだよ……」

「にひひ〜。ほらほら、早くゲロっちゃいなよ」

「だから、ゲロ言うなっての……」

参ったな……そんなこと言われたら、全部出ちゃうじゃんか。

俺が目指しているのは、決して簡単じゃない。上手くいかないのは当たり前。その覚悟でやってきた。いや、やっていかないとダメだった。

俺に才能が無いのは分かっている。だから、せめて人前では弱音は言わないと決めていた。

だけど、それが今崩れてしまった。

「今回はさ。結構自信あったんだよね」

「うん」

「それがさ、まさかの1次選考で落選。いやぁ流石にしんどいわ」

「うん」

「しかもさ、前回は最終選考まで残ったんだぜ。だから、今回こそはいけると思ったんだけど……ダメだった。前より酷くなってどうすんだよって話だよな……」

あぁ……こりゃまずい。全然止まらない。1度話してしまったら、ボロボロと零れて溢れて流れていく。

「よしよし。辛かったね」

まるで子供をあやすように、優しく頭を撫でられる。

参ったね。普通だったら、恥ずかしくてこの手を払い除けているんだけど、今はそれが出来そうにないや。

「甘やかされるな、俺」

「甘やかしているからねぇ」

「マジでダメ人間になりそう」

「いいじゃん。一緒にダメ人間になろうよ。そういう契約だったでしょ?」

そういえば、そうだったな。

なら、こういうのも悪くはないのかもしれない。

「もう少し、このままでもいいかな?」

「うん。いいよ」

「……ありがとう」

「はーい。いい子だからゲロゲロゲーしましょうねぇ」

「いい子はゲロゲロゲーしません」

「にっひっひ」

「ったく……」

その後のことは、よく覚えてない。

多分、似たようなことを言葉を変えて、ダラダラと吐き出していたと思う。

東城は、俺の言うことを一切否定せずに、時より相槌を打ちながら聞いていくれていた。

――――

――

「落ち着いた?」

「まぁ……ね」

「ん? 何か歯切れ悪いね」

「……」

そりゃあね。

全部吐き出して、スッキリしたはいいけど、冷静になってみると、何て恥ずかしいことをしてしまったのだろう。間違いなく、黒歴史確定案件だよ。

出来ることなら、今すぐベットに飛び込んで、悶えながら叫び散らしたい気分だ。

「その……なんと言うかさ」

「ん?」

「ありがとな。後、今日のことは秘密にしてくれるとありがたい」

「うん、了解〜」

マジで頼みますよ。東城さん。

こんなのが、他の人に知られたら死んじゃいますからね。

「辛くなったら、何時でも言ってよ。その時はまた甘やかしてあげるからさ」

「考えとく……」

「もぅ、素直じゃないなぁ」

うっせぇ。ほっといてくれ。

「明日からはまた私を、たっぷり甘やかしてダメ人間にしてね」

「これ以上にダメ人間になる気なの?」

「もちろん。私はまだまだダメ人間になるよ」

「ははは……そりゃ大変だ」

「にひひっ」

でもまぁ、それが俺達の契約だ。それに不思議と嫌な気持ちはない。俺自身もこの契約を気に入っているんだろうな。

「それじゃ、そろそろ寝よっか」

「そうだね」

「大丈夫? 1人で寝れる? 添い寝してあげよっか?」

「うるさい。1人で寝れるわ」

「そっかそっか。なら、おやすみ。桜木君」

「おやすみ。東城」

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi

Bab terbaru

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   最終話 桜木家

    「なぁ頼むよ」 「えぇ〜」 今年、高校に入学したばかりの息子、桜木奏多《さくらぎ かなた》は心底嫌そうな声を出す。 むぅ……まさかここまで嫌がるとは思わなかったな。 「そんなに嫌なの?」 「嫌だよ。てか、それ以前に何でお見合いなんてしなくちゃいけないのさ。まずは、その理由を聞かせてよ」 「まぁ話せば長くなるんだけどな」 音葉《おとは》と夫婦契約を結んでから、早いもので18年の時が経った。 大学を卒業したその日に音葉と結婚して、その年に第1子である奏多が産まれた。 早くね? って思うかもしれんが、仕方がなかったことなんだ。ちょいとテンションが上がって、音葉とフィーバーし過ぎちまった結果だ。 まぁ色々大変ではあったが、全く後悔はないから良しとしよう。 そして何と驚いたことに、小鞠さんがいつの間にか結婚していて、おまけに奏多と同い年の娘を出産したらしい。めでたいことだ。 で、だ。俺は完全に忘れてたんだが、昔小鞠さんとした約束の話が持ち上がってきた。 そう、お互いの子供を結構させようっていうあれだ。あの時は、冗談だと思って適当に流していたが、どうやら小鞠さんは本気だったようで、つい先日お見合いをやろうという連絡がきたのだ。 んで、慌てて奏多にお願いをしているってわけだ。 「まぁそういうことだ。頼むぞ、我が息子よ」 「いや、頼むぞじゃねぇよ。クソ親父」 「こらこら奏多君。お口が悪いですよ。そんなんじゃいい大人になれませんよ」 「うっぜぇ……」 ち、本当に口が悪いなこのガキ。いったい誰に似たんだか。 「はぁ……分かったよ。とりあえず、出るだけ出てあげるよ」 「お? いいのか?」 「相手は雪城さんの娘さんなんだよね? 父さんと母さんの立場もあるからねぇ」 おぉ……流石俺の息子だ。その辺、言わなくてもちゃんと分かっていらっしゃる。 今の小鞠さんは、音葉が所属している事務所の社長さんだ。俺も個人的に小鞠さんには、そこそこお世話になってる。だから、断るのは少々都合が悪いんだよな。 まぁ断ったからって、あの人が何かしてくるとは全く思わないけど、それでもまぁ色々あるもんなんだよ。 「ただし、条件が3つある」 「ほう。言ってみろ」 「まず1つ目、お見合いはする。ただ、その後のこと

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   46話 新しい契約

    「おーい。アラタ君ー!」 「なんでいるんだよ……」 おっかしいなぁ。俺、今日帰るとは音葉に言ってなかったはずなんだけどなぁ。 てか、もう夜中なんだから、そんな大きな声出さないでもらえないですかね? 「お帰り」 「ただいま。んで? 何でいるの?」 「言い方悪い。何? 私が迎えに来るのは嫌なの?」 「まさか。嫌じゃないよ。ただ、何で俺が今日この時間に帰ってくるか、分かったのかなって思ってな」 「風実歌《ふみか》ちゃんから教えてもらったんだよ」 「なるほどな」 だから時間とか聞いてきたのか。納得納得。 「音葉は飯食ったのか?」 「うん。オムライス食べたよ」 「ほう。栞菜《かんな》ちゃんに作ってもらったの?」 「にひひっ。って思うじゃないですかぁ? でもね、私が作ったんだよねぇ」 「音葉。嘘つきは泥棒の始まりだぞ」 「全く信じてくれないねぇ!?」 当たり前だ。 卵すらまともに割れないやつが、オムライスを作った? そんなの信じろって言う方が無理だろ。 「胡桃《くるみ》に教えてもらったんだよ」 「胡桃ちゃんに?」 「うん。メイド喫茶特製のね」 「ほほう。まさに直伝ってやつだな」 「うん。これがめっちゃ美味いんだなぁ」 「え? てかガチで作れるようになったの?」 「ガチだよ。胡桃のやつに超スパルタで叩き込まれたんだよねぇ」 胡桃ちゃんのスパルタか。 めっちゃ厳しいってことだけは想像出来るわ。 「今度作ってあげようか?」 「お手並み拝見だな」 「にひひっ! 刮目していいよ」 「楽しみにしてる」 しかし、音葉と胡桃ちゃんがねぇ。 喧嘩ばかりしてるけど、やっぱ何だかんだで仲良いんだよな。 「そうだ。ありがとね、アラタ君」 「うん? 何のこと?」 「またまた〜、惚けちゃって」 「茶化すな。何の話だよ」 「スカウトのことだよ。雪城エンターテインメントから、契約の話が来てるんだよ。メジャーデビューしないかってね」 あぁなるほどね。その話か。 確か、もうすでにいくつかのバンドと契約して、メジャーデビューの話が進んでいるって言ってたな。まぁ当然、音葉達AGEにもこの話が来ててもおかしくはないか。 「別に俺にお礼を言うことじゃないだろ

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   45話 俺の好きなやつ

    「お? あにぃこれ美味しいよ」 「おぉ本当だな。絶品だ」 「あにぃ同じの作れない?」 「流石に無理だなぁ」 「うーん。残念」 クソ親父達が帰った後、俺と風実歌、それと雪城さん達で料理を食っていた。 まぁ残して行くには、少々もったいないくらいには、お高いところだからな。 ちなみに、和奏《わかな》さんは帰って行った。一緒にどうですか? って誘いはしたんだけど、和奏さん曰く、こういう高いところは仕事としてじゃなくて、プライベートで来たいからとのことだ。 まぁ気持ちは分からんでもない。 「それにしても、アラタさんと風実歌《ふみか》さんは仲がいいんですね」 「んー、多分普通ですよ。俺らとあのクソ兄貴が特別仲悪いだけなんで」 「なるほど。確かにそうかもしれませんね」 そもそもの話、あのクソ兄貴と仲良くなんて出来るわけがない。あいつ、性格が悪いってより、人として大分終わってるしな。 「あ、でもでも、あにぃは世の中のお兄ちゃんより、ずっといいと思いますよ!」 「こら、妹よ。恥ずかしいからやめなさい」 「えぇ〜、可愛い妹の愛を受け止めてよ」 「あーはいはい。ありがとな。愛してる愛してる」 「えへへぇ〜、私も愛してるよ。あにぃ」 やれやれ……何でうちの妹はこのやり取りがこんなに好きなんだろうねぇ? いい加減付き合うのにも飽きてきたぞ。 「う、う〜ん。やっぱり、仲がいいと思いますけど……色んな意味で」 「あはは……確かに僕の目にも、そう見えるかなぁ」 「気のせいですよ」 そうそう気のせいだ。俺はシスコンじゃないし、風実歌もブラコンじゃない。そこそこ仲がいいどこにでもいる兄妹なのだ。それ以上でもそれ以下でもないのである。 「そうだ。アラタさん、1つお願いがあるのですが」 「ん? なんすか?」 小鞠さんが俺にお願い? 何だろ? 全く想像出来ないな。 「私と結婚しませんか?」 「ぶほはっ!?」 「ちょ、あにぃ汚いよ! ほら、水」 「あ、ありが、と……」 きゅ、急に何言い出すんだこの人!? 食ってた餃子が変なところに入っていっちまったじゃねぇかよ。 「それでどうでしょうか? アラタさん」 「いや、ちょっと待ってくれ。いきなり何言ってんですか?」 「何って、

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   44話 面倒な話は迅速に

    「遅いぞ」 「時間通りだろ」 「社会人なら10分前行動が基本だ」 「はいはい。そいつは悪かったな」 今日はいよいよ、俺のお見合いの日がやってきた。昨日、一昨日と挨拶回りだのと、あっちこっち連れ回されての今日だ。おかげで休む暇もなかった。ったく、本当に人の扱いが酷いもんだぜ。 でもまぁ、それも今日で終わりだ。さっさと済ませて早くあっちに帰りたいものだ。 俺達は今、お見合い会場となっている料亭に来ている。珍しいことにクソ親父にクソ兄貴、クソババアと俺と風実歌の家族全員参加だ。しかも、俺らが早く来ての相手さんを待ってる状態だ。 こりゃ、よっぽど相手さんを立ててるってことだな。 ちなみに、ホームズはお留守番だ。今日は獅雄《れお》さんに預かってもらってる。 「恥じかかすなよ。アラタ」 「努力するよ。クソ兄貴」 「お前。間違っても、相手方の前でそんな呼び方するなよ?」 「わーってるよ。今だけだ」 「ふん。相変わらず、出来の悪いやつだな」 ったく……こっちはこっちで、うるせぇやつだなぁ。少し黙ってらんねぇのか? 「ねぇあにぃ? 本当に大丈夫なの?」 「心配するな。風実歌は料理が運ばれてきたら、美味しそうに食ってればいいさ」 「んな適当な……」 「いいんだよ。適当で」 どうせ、これから始まるのは茶番なんだからな。しっかりするだけ無駄ってもんだ。 だったら、味だけは美味いご飯を楽しんでた方が何百倍もいい。 「桜木さん。お待たせしました」 お? 来たっぽいな。 扉が開いて、50代後半くらいのスーツを着た男性と、俺と同い年くらいの和服を着た金髪の女性が入って来た。 「雪城さん。本日はお越しいただきありがとうございます」 「いえいえ。こちらこそ、ありがとうございます」 「どうぞ。まずはおかけ下さい」 お決まりの硬っ苦しい挨拶を済ませると、クソ親父は雪城さん達を席に通す。 雪城さん達が席に座ると、待ち構えてたかのように、料理が運ばれてきた。 うわ……高そう。いったい1食いくらするんだこれ? 「ほら、アラタ。何してる。お前も挨拶しろ」 はいはい。分かってますよ。 「桜木アラタです。今日はよろしくお願いします。雪城さん」 「あぁ。こちらこそよろしくね。アラタ君。ほ

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   43話 帰省

    「なぁ音葉《おとは》。1人で大丈夫か?」 「にひひっ、大丈夫だよ。栞菜《かんな》とかが助けに来てくれることになってるから」 「なるほど。確かにそれは心強いな」 まぁ……栞菜ちゃんには、また迷惑かけることになるけどね……。 ごめんね。うちの子がポンコツのダメ人間で。戻ってきたら、俺が責任もって世話するんで、少しの間お願いします。 「ねぇ……何か今、心の中で失礼なこと考えてなかった?」 「気のせいだよ」 「本当かなぁ」 「本当だって」 「まぁいいや。気をつけて行ってきてね。それと、ちゃんと帰って来てね」 「あぁ分かってるよ」 「行ってらっしゃい。アラタ君」 「行ってきます。音葉」 ―――― ―― 音葉達のライブバトルが終わって早数日。あの後、打ち上げやら、胡桃《くるみ》ちゃんの歓迎会やらをやっているうちに、あっという間にクソ親父との約束の日がやってきた。そんな訳で、嫌々ながら地元に帰ることになった。 あ、ちなみに胡桃ちゃんとは、歓迎会で結構仲良くなった。主に音葉に対する愚痴や苦労なんかを話してたら意気投合した。今じゃお互いに名前呼びする仲になった。 「新幹線に乗ってる間は、大人しくしてろよ?」 「にゃ〜あ」 「いや、ほんとに頼むぞ。ホームズ」 うちの愛猫、ホームズも連れて帰ることになった。まぁ、俺がいない間、音葉には流石に任せられないってことになったからだ。 ネットで調べたら、新幹線に猫を乗せても大丈夫とのことだったから安心したぜ。今は、俺のバックの中で頭だけ出して大人しくしてる。 ふむ。こうして見ると、某ゲームの主人公みたいだな。 「っと、そろそろ発車の時間だな」 ぼやぼやしてるとあっという間だな。 指定席を取ってあるから確実に座れるけど、ぎりぎりに行って乗り込むのに苦労したくないし、さっさと座ってしまおうか。 あーあ……それにしても、まじでくそめんどくせぇなぁ。 ―――― ―― 「あにぃ〜! こっちこっち!」 駅から出てすぐに、風実歌《ふみか》の大変元気な声が辺りに響き渡る。 うん。ちょい恥ずかしいから、あれやめてくれないかな? ほら、めっちゃ注目集めてるじゃん。お兄ちゃんは、シャイで恥ずかしがり屋さんだから目立つのは嫌いなんだよ? 「お

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   42話 AGE

    ―胡桃視点― 負けた……。 結果を聞くまでもない。完全に私達の負けだ。 その証拠に会場は、大AGEコールが鳴り響いている。 悔しい……悔しい悔しい悔しい! 「胡桃」 「大丈夫。帰ろう……」 私はそれだけ言って舞台袖へ帰ろうとする。 ごめん優。今はちょっと顔を見れない。多分、私すっごい酷い顔してるから。情けなくて見せられないよ。 「胡桃!」 「え?」 会場の大AGEコールをかき消すほどの大きな声で、音葉が私の名前を呼んだ。 余りにも突然のことで驚いてしまった私は、思わず音葉の方を向いてしまう。 「にひひっ」 音葉はいつものように、白い歯を見せて笑うと、ジャーンとギターを掻き鳴らす。 それに応えるように、璃亜はベースを栞菜はドラムを弾き始めだ。 「こ、この曲は……」 忘れもしない。これは、私達がまだAGEだった頃に初めて作って演奏した曲だ。 何で今さらこの曲をこの場所で演奏してんのよ。バカじゃないの? でも……。 「あぁ……そう……」 ほんとに腹立つやつだ。 何? その顔。 出来るよな? 早く入って来いって顔してさ。 いいよ。やってあげるよ。忘れてるかもしれないけど、この曲のメインは私なんだから! ―――― ―― 「はぁ……はぁ……」 突然始まった演奏に会場のお客さんは、戸惑いはしたものの、すぐに熱狂に変わった。 まぁ当然かな。この曲で盛り上がらないわけがないんだから。 「にひひ、出来るじゃん」 「うるさい。急になんのつもり?」 「べっつに〜。ただ泣きそうな顔してたから、ちょっと慰めてあげただけだよ」 「はぁ? 喧嘩売っての?」 ほんとに音葉は昔からこうだ。ほんとにムカつく。 「はいはい。2人ともその辺にして」 分かってましたよって言わんばかりに、栞菜が私と音葉の間に入ってきた。 なんというか、流石と言うべきかな。私と音葉が喧嘩しそうになると、いつもこうやって間に入ってくれたっけ? 「ごめんね胡桃。急にやっちゃって」 「別にいい……」 無視しようと思えば出来た。それなのに演奏に参加したのは私だ。だから、栞菜が謝ることじゃない。 「ねぇ胡桃。やっぱり戻ってこない?」 「その話は前に断ったでしょ」 「お

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   7話 嵐の中のライブ

    強風でガタガタと揺れる窓に、激しく打ち付けられる横殴りの雨。テレビから流れるニュースでは、危険なので不用意な外出を控えるようにと、警戒のアナウンスが朝からずっと流れている。 「なぁ、本当に今日行くつもりなの?」 「うん。もちろんだよ」 「大丈夫なの?」 「大丈夫じゃなくても、絶対に行く」 「……」 東城は、ギターケースにビニールをかけながら言う。どうやら、意思は硬そうだな。 今日は、東城達のライブがある日だ。だけど、天気は最悪の台風だ。しかも、今回の台風は過去最高レベルらしい。 「じゃ、行ってくるね」 「気をつけろよ」 「うん。あ、桜木君は無理に来なく

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   6話 夏祭り

    キーンコーンカーン…… 「んっんー! ようやく終わったな」 「あぁ」 今日最後の講義が終わった。 はぁ疲れた……やっぱ、90分って長いわ。 「しかし、夏休みだってのに何で講義があるのかねぇ」 「知らね」 「でもまぁ、夏休み中の講義はこれで最後だ。残りの2週間はゆっくりさせてもらおうぜ」 「だなぁ」 と言っても、課題で出されたレポートがあるんだけどね。あれがなかなか大変だ。 「アラタはこの後すぐに帰るのか?」 「そのつもりだよ。家に居るダメ人間の世話をしなくちゃいけないからね」 「なるほどね」 東城のやつ、ちゃんと昼飯食ったかな? 一応、冷蔵

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   5話 東城音葉の弱点

    「あの〜東城さん?」 「なんだね、桜木君?」 「何故にネカフェなんすかね?」 「そりゃ、ここが最高のスポットだからですよ」 最高のスポット……ねぇ…… うん、まぁ分からんでもないよ。ネット使い放題、ドリンクにアイス食べ放題、漫画読み放題だしね。そんでもって、料金はお財布に優しいプライスレスだもんね。 でもさぁ、デートでここをチョイスするってどうなのよ? 俺、結構ウキウキワクワクで東城に着いて行ったんだよ。なのにネカフェって……。 「むぅ……何か不満そうだね」 「めっちゃ不満だよ」 「でも、桜木君1人じゃ絶対に入れない、カップルシートだよ?」 「まぁ、そ

  • 俺とバンド女子のダメ人間契約   4話 1日目の終わりと2日目始まり

    よし、これで準備オッケーだな。 夕飯を食い終わり、洗い物を済ませる。ご飯も明日の朝6時半に炊きあがるようにした。 これで、今日やることは一通り終わりだな。 後は、風呂に入って寝るだけなんだけど、未だに東城が上がって来ないんだよなぁ。 かれこれ30分以上は経っているぞ。女子は、買い物と風呂が長いって言うけど、いくらなんでも長すぎないか? 「桜木君〜上がったよ〜」 っと、噂をすればだ。 「随分長かったね――って!? なんだその格好!?」 「ん?」 いやいや、東城さん! ん? じゃないからね! 何でTシャツ1枚なの! 幸いと言うべきなのか分からないど、T

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status