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第三話

مؤلف: 水沼早紀
last update تاريخ النشر: 2025-06-30 21:30:26

目の前にいるその人は私の腕をぐっと掴むと、そのまま唇を塞いで強引にキスをしてきた。

「ちょ、ちょっと……。何するのっ!?」

な、なんでキスなんてするの……!

「これが俺の妻になる君への、愛の誓いだ。 まだ何か文句でも?」

「………っ、最低っ!」

こうして私は、鷺ノ宮グループの御曹司、鷺ノ宮棗(さぎのみやなつめ)と愛のない、偽りの結婚することとなった。

✱ ✱ ✱

「棗さん、おかえりなさい」

「ただいま、聖良」

「カバン、預かります」

「ありがとう」

帰宅した棗さんからカバンを受け取った私は、リビングにカバンを置いた。

そしてふと目にする、私たちの結婚式の写真。 白いドレスに身に纏った私と、タキシード姿の棗さんが、二人で微笑んでいる。

だけどその笑顔だって偽物なんだ。 だって私たちは、偽りの夫婦だ。

これはウソで固められた、偽りの結婚生活なのだから……。

こんな生活を、誰が望んだのだろうか……。その写真に映っている笑顔も、全部ウソで固められている。

「……聖良」

「はい。……んっ」

棗さんはなぜか、愛のない結婚をした私に、毎日キスをしてくれる。 どうしてキスをするのかなんて、分からない。

だけど夫婦となった今、それを拒むことさえ私は許されない。 私は鷺ノ宮グループに、支配されているのだから。

そんなことをしたら、この結婚をした意味がない。 あわよくば彼の子供をいつか産んで、跡取りを残すことだって、彼はきっと考えているだろう。

棗さんは私よりも五歳年上だ。 結婚した以上、私は棗さんの言うことに逆らえる訳はないのだ。

「聖良、何を考えている?」

「……いえ、別に。 夕飯に、しましょうか」

「ああ」

棗さんがいつも私に対してそう言うんだ。 何を考えているかなんて、絶対に教えてあげない。

そんなこと教えたら、私は鷺ノ宮グループから去ることになってしまうだろうから。 そんなことは絶対に出来ない。

この結婚だって、棗さんが私の父を説得してくれたから出来ただけで、私一人だけなら絶対に説得はムリだった。

結局私は、彼と結婚してもコンシェルジュに戻ることはなかった。 コンシェルジュに戻りたいというよりも、こんなにもいい環境を与えてもらって申し訳ないくらいだし。

主婦ではないけど、そのまま家のことに尽力を尽くそうと思った。 仕事のことを忘れて、家事に集中しようっている。

「聖良、風呂に入ってくる」   

「はい。着替えは、洗面台に置いておきますね」

「ありがとう。助かるよ」

「はい」

鷺ノ宮棗、彼は私の夫。 いくら偽りであっても、ウソであっても、戸籍上私たちは夫婦だ。

私は鷺ノ宮グループの御曹司、鷺ノ宮棗の妻なのだ。 妻として認められたのかなんて分からないけど、それなりに懸命にやっていくつもりだ。 

結婚して夫婦になったんだから、中途半端なことは出来ないと分かっている。

着替えを洗面台に置き、私は一旦部屋へ戻った。 彼がお風呂を出たら、私もお風呂に入ろう。

この家は鷺ノ宮グループの社長、つまり棗さんのお父さんが用意してくれた家だった。 私たち二人が暮らすための家だ。

とても広くて、迷いそうなくらい広い家で、私も時々困惑する。 夫婦の寝室は偽りであっても一緒だ。

大きなキングサイズのベッドに夫婦二人、毎日並んで寝ている。

もちろん、結婚したから夫婦の営みだってきちんとある。 彼から求めてきた時は、その合図だ。  

もちろん好きな相手ではないけど、夫婦としてみるなら、彼とベッドの中で愛し合う行為は普通のことだと思う。

その普通は、私たちにとっては普通じゃない。 だって愛し合ってる訳じゃないから……。

そんなこんな考えているうちに、彼がお風呂から出てきたみたいで、濡れた髪をタオルで拭いている。 

でもその程よい筋肉のついた身体、目の横に付いているホクロとぷるっとした唇が美しく見える。

すらっとした身体と長身の彼は、私と身長差が20cmもある。 身長差があるけど、我ながら彼はすごくカッコイイなと思う。

彼の左手の薬指に付いた、そのキラリと光るその結婚指輪が、私たちが夫婦だと物語っている証だ。 私の左手の薬指にも、同じデザインの結婚指輪が付いている。

彼も私も、お互い夫婦になっても何も変わらない。 私も彼のことをほんの少ししかまだ知らない。 

あの結婚式の時、彼は私と永遠の愛を誓いあった。 だけどそんな偽りの愛が長く持つなんて、私には到底思えない。 

だって私たちは所詮、偽りの夫婦なのだから。 そんな簡単に夫婦生活が、うまく行くとも思えない。 

そう思ってるのはきっと、私だけじゃない。……彼もきっと同じだと思う。

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